家族の肖像5
第2章
子どもの成長と
お子さんにどう話していくか?

 親というものは皆、子どもにベストのことをしていきたいと思うものでしょう。皆さんも、お子さんがDSD:体の性の様々な発達(性分化疾患)を持っているということに関わる課題にしっかりと挑んでいくことを期待されているかもしれませんし、あらゆる面でお子さんを支えていきたいと自然に思われているかもしれません。お子さんを支えていく方法のひとつは、お子さんの体、気持ち、そして精神の成長の段階を理解することです。更には、息子さんや娘さんと、お子さんのDSDのことや思っていること・考えていることを、定期的に話し合うことも支えになります。

 

 この章では、お子さんの成長段階について、皆さんが今から知っておけることをご紹介します。そしてそれは、皆さんがお子さんを、愛情と隠し事のないコミュニケーション、そして精神的サポートでもって、支えていく方法についてお話しすることにもなるでしょう。ここには、困難のときにいかにお子さんと話をするのか、いかにお子さんを支えるのか、実際的なアイデアも載せておきます。

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。また、性分化疾患は、同じ診断のつく体の状態でも個々に状態像は異なり、全てに当てはまる100%の方法というものはありません。ですので、ここに書いてあることが必ずしも正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。お子さんの体の状態・発達や、精神的な成長について、担当のお医者さんや児童精神科医、臨床心理士などとよく話し合った上で、ご家族それぞれの方針を立てて行っていただければと思います。

サッカーをする女の子も女の子に変わりありません
ここで使う用語について(1)

代名詞(彼/彼女、息子さん/娘さん)

 

 お気づきかもしれませんが、このハンドブックで私たちは、お子さんやご両親について話をする際、「彼(息子さん)」という代名詞を使うこともあれば、「彼女(娘さん)」という代名詞を使うこともあります。このハンドブックを執筆するとき、まず私たちは常に「息子さんや娘さん(彼や彼女)」というフレーズを使うようにしました。これは、息子さん娘さん、男性・女性、父親・母親どちらにも対応できるようにするためなのですが、読みにくくなっているかもしれません。また、私たちが「彼もしくは彼女(息子さんや娘さん)」というフレーズを使うのは、お子さんの心の性別がはっきりしないということを示すためにそうしているのではないということをご理解いただければと思います。ただただ、様々な人に対応できるように、代名詞を使い分けているだけです。

 

 実際にはDSDsを持つ子どもたち・人々で、トランスジェンダーや性同一性障害の人々のように「生まれの性別」と「性自認」が一致しないということはほとんどありません。生まれた時に性別判定検査が必要な外性器の状態で生まれた女の子・男の子も、専門医療機関でのしっかりした性別判定検査が行われていれば、いわゆる性別違和が起きるということはほとんどないのです。

 

性別役割

 

 「性別役割」という言葉は、いわゆる「男らしさ・女らしさ」と呼ばれている社会的に決められている固定観念・規準です。たとえば昔の社会では「男の子は黒いランドセル・女の子は赤いランドセル」「男の子はスポーツ・女の子は文化系」「男性は理系・女性は文系」といった固定観念がありました。ですが現代の社会では、このような固定観念はすべての女性・男性に当てはまるというわけではないことが分かっています。実際には古い「性別役割」の固定観念に関係なく、さまざまな女性・男性がいるのです。

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「性別同一性」

 「性別同一性」という言葉は、自分は男の子、女の子、男性あるいは女性であるという、心の中での感覚を表すものとして使用します。“赤ちゃんが女の子と「判定」された”とは、彼女(娘さん)は(外科手術は関係なく)女の子として育てられるということを、「性別同一性の発達」とは、その娘さんの心の中での自己感覚(“私は女性である”という感覚)の成長を表します。

  「性別役割」と「性別同一性」は混同されがちです。たとえばですが、日曜日の朝にプリキュアを見ている男の子は、女の子になったわけでも「性別同一性は女性」というわけでもありません。日曜日の朝に仮面ライダーを見て、お父さんにライダーキックをしてくる女の子は、仮面ライダーとお父さんが大好きな女の子です。決して「性同一性障害」というわけではありません。もしそのような混同が起きるのだとしたら、それは「性別役割」への古い固定観念が強すぎるからなのです。

 DSDを持つ娘さん・息子さんを育てている親御さんの中には、娘さんがサッカーが好きだったり、息子さんがお人形遊びをすると、「性別が間違っていたんじゃないか」「性別違和があるんじゃないか」「染色体のほうが当たってるんじゃないか」(XY女性など)と不安になる親御さんもいらっしゃいます。特に生まれた時に性別判定検査が必要だった娘さん・息子さんの場合は、親御さんが不安になっても全くおかしくありません。ですが、まずはご安心ください。お子さんがどのような行動をするか、どのような遊びが好きかということは、お子さんの性別判定検査が間違っていたり,性別同一性が違うということではないのです。(これについてはこの後もう少し詳しくお話をします)。

セクシャリティ・性的指向

 

 「セクシャリティ」とは、人間の性的存在としての体験のことを言います。パートナーとの愛情を持った性的行為やその他の親密な関係などが、セクシャリティのひとつです。愛したい愛されたいという気持ちもセクシャリティのことと言えるでしょう。

 

 「性的指向」とは、ある人が異性愛(「異性」の人を好きになること)か、同性愛(同性の人を好きになること)か、あるいは両性愛(男性も女性も好きになること)かということを表すのに一般に使われる言葉です。DSDsを持つ子どもたち・人々でも、大多数の女性は男性のことが好きになり、大多数の男性は女性を好きになりますが、人間の性的指向はその人の性別同一性や体の性のつくりから分かるものではないのです。

ここで使う用語について(2)

体の性のつくり・体の性別

 

 最後の章でも触れますが、このハンドブックでは、男性であること、女性であることに関わる私たちの体のつくり・生物学的組織についてお話しするときは、「体の性のつくり」「体の性別」という言葉を使います。このハンドブックで「体の性別」と言う時は、生物学的(からだ的)見地から、その人が男性であるか女性であるかという話をするときです。

 

 「体の性のつくり」には、「X・Y染色体(性染色体)」卵巣・精巣などの「性腺」、陰唇・クリトリス、おちんちん・陰嚢といった「外性器」、女性の膣や子宮といった「内性器」などの性に関する生物学的組織などがあります。

 

 「性ホルモン」も体の性別の別の側面を形成します。性ホルモンは血液によって運ばれる、化学物質でできた体の中のメッセンジャーです。性ホルモンによって、私たちの体は成熟し、性的に機能できるようになります。

 

 「体の性の発達・成熟」という言葉を使うときは、生物学的観点から見た、体の変化のことを指します。それはたとえば、生殖器の構造の変化や、性ホルモンの変化(思春期の二次性徴など)のことなどです。

 さて、実は「女性・男性の体の性のつくり」についても、「女性なら生まれつきこういう体のはず,男性なら生まれつきこういう体のはず」という固定観念があります。このような固定観念は「社会的生物学固定観念」と呼ばれています。

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 ですが、このような「女性・男性の体のつくり」に対する固定観念は、実は1960年頃に作られたものでしかなく、その後の医学の進歩によって、実は、女性にも男性にも生まれつきさまざまな体の状態があるということがわかっています。

 

 それがDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)と呼ばれている「女性・男性の体の多様性」なのです。

 

 DSDsでは、「X・Y染色体(性染色体)」の構成がXYでも女性に生まれ育つということはありますし(スワイヤー症候群女性やフレイジャー症候群女性、SF1症候群女性)、XXでも男性に生まれ育つということはあります(XX男性)。X・Y染色体の構成が、Xひとつの女の子もいますし(ターナー症候群女性)、XXY染色体の男の子もいます(クラインフェルター症候群)。また、「性ホルモン」についても、性腺でアンドロゲンが作られていても、体の細胞がアンドロゲンに反応しないために全くの女性に生まれ育つということもあります(アンドロゲン不応症女性)。さらに「外性器」(陰核や陰茎、陰唇や陰嚢)が女の子・男の子の一般的な形や大きさと違っていても(尿道下裂男性や)、その子が女の子・男の子であることには変わりはありません。「性腺」も、精巣に卵巣組織が残っていたり卵巣の一部が精巣組織に分化していても(卵精巣性DSD)、その子が女の子・男の子であることには、やはり変わりはありません。

 親御さんみなさんはこれから実感されていく(もう十分に実感されている)ことだと思いますが、DSDsを持つ娘さん・息子さんも、他の女の子・男の子たちとなんのかわりもありません。

  社会の人々には、大学の学者さんでも、DSDsを短絡的に、トランスジェンダーのみなさんの「性自認の不一致」のように考えてしまう人がまだまだたくさんいらっしゃいます。ですがこれは、「『普通の』女性なら生まれつきこういう体のはず,『普通の』男性なら生まれつきこういう体のはず」という社会的生物学固定観念が全く意識されていなくて、少し体の状態が違うからと、DSDsを持つ人々を「男でも女でもない体の人(なので性自認の不一致がある)」と思いこんでしまっているからなのです。

 これは言ってみれば、ズボンを履いている女の子を「女じゃない」と思いこむような酷くて強迫的な昔の意識が、女性・男性の体の性のつくりの固定観念にはまだまだ残っているということなのでしょう。

いろいろな女の子・男の子

ジェーン・ゴトーさんとお母さん

第1章のまとめ

前提となるキーポイント

  
幼稚園の子供たち
前提となるキーポイント

 DSDを持っているかどうかに関係なく、子どもはみな成長するにつれて、自分自身の個性とセクシャリティに関する発達の過程を進んでいきます。ここではこの発達過程について詳しくお話しして行きましょう。

 

 DSDを持つ子どもの親御さんの多くは、DSDのことを知らされたその瞬間から、他の多くの親御さんたちにはないような様々な心配事を持つことになります。自分の子どもは「間違った」性別を判定されたんじゃないだろうか、自分の子どもは同性愛になるのかもしれない、そういった心配です。

 

 

 自分の子どもが他の子とどんなふうに遊ぶのか、どんなふうに友達関係を作るのかを注意深く見て、子どもが「男の子っぽく」振る舞うのか、「女の子っぽく」振る舞うのか、どちらなのかということを見極めることに大きなエネルギーを使うとおっしゃっています。自分の子どもが「反対の」性別のように振る舞っているのを見たり、「同性愛」のように振る舞っているのを見たりすると、DSDのせいで(それとも「間違った」性別を判定されたから)、そうなっているんじゃないかと戸惑われることが多いのです。子どもがこのように「違った」行動をするのを見ると、親御さんたちには、罪悪感や恐れ、恥ずかしさ、怒りも含めた強い感情が湧き起こることがあります。

 

 ではDSDは、LGBTQなど性的マイノリティのみなさんの性的指向や性自認の不一致の原因なのでしょうか? 実は,性的指向や性自認の不一致のある、いわゆるLGBTQなど性的マイノリティの人々で、DSDを持つ人は昔考えられていたほど多くないということがわかっています。海外の学術的調査でも、性別違和のある人でなんらかのDSDsが発見されることもほとんど無いということが判明しています。

 

 DSDsに限らず、私たち人間の性別同一性や性的指向は生物学的なものなのか、育ちや文化によるものなのか、それともそういったものの相互作用なのか? これまで多くの学者の人達がまるでケンカのように大論争を行ってこられています。そしてとても残念ですが、そういう論争にDSDsを持つ人々やその身体が、まるで標本のように巻き込まれることもあります。

 

 性別同一性や性的指向の起源は学者の人たちたちにとっては重要なことなのかもしれません。ですが、多分皆さんにとってはそれほど重要な問題ではないのではないでしょうか。皆さんにとって一番大切なのは、お子さんの幸せと健やかな成長でしょう。お子さんが自分のことを男の子だと思うのか女の子だと思うのか、誰を愛するのか、このことについてとても重要なのは、お子さんが自分が誰なのかを理解し表せるようになってくるその成長の過程で、お子さんを愛し、支えていくことなのです。

 

 私たちがDSDを持つ子どもの親御さんたちからお話いただいたことから、確実にわかったことは、親御さんたちはどうしても子どもの「男らしい・女らしい」という振る舞い・行動ばかりが目に入り、深刻に捉えてしまうということです。でも、自分がこういうふうになっていると思ったときは、もしかしたら自分は子どものDSDのことを知ったことで「警戒」してしまって、他のたくさんの子どもでもやってそうなことになおさら敏感に反応しているのかもしれないと考えてみましょう。

 

 同じような経験をされてこられた親御さんは、お子さんの「男らしさ・女らしさ」に関わる振る舞い・行動を「監視する」ことには、あまりエネルギーを使わないでくださいとアドバイスされています。なぜなら、そういうことを気にするあまり、逆にお子さんをそのままに受け止めにくくなっていくからです。そして大事なのは、お子さんに時々「逆の」性別のような振る舞いがあったり、同じ性別の人が好きになることがあったりしたからと言って、息子さんや娘さんの性別判定が間違っていたと絶対に結論づけないことです。男の子もどこか女の子っぽかったりすることもありますが、だからと言って、その男の子が女の子になるわけではありませんし、女の子が他の女の子を好きになったからといって、男の子に育ったというわけでもないでしょう。

 

 DSDを持って生まれた方たちとお話される機会があれば、当事者の方の大多数が、自分は「間違った」性別で育ったとは思ってらっしゃらないことにお気づきになるでしょう。そうです。統計的にも、皆さんのお子さんが、生まれた時に判定された性別を変更するということはほとんどないのです。DSDを持っている方々で、自分の振る舞いや行動が「らしさ」という固定観念と異なっているという理由で、親に拒絶されたり恥ずかしく思われたりした時に傷ついた記憶をお持ちです。もう一度繰り返します。このことが私たちに教えるところは、親の愛情と隠し事のない受け止めこそが、DSDを持つ子どもが最も求め必要とすることなのです。

 

 次のセクションでは、お子さんの人生のそれぞれの段階をひとつずつ見て行って、どうすればお子さんを支ええていけるか皆さんが考えていけるお手伝いができればと思います。

12ヶ月から36ヶ月まで

 よちよち歩きが始まる前後(子どもが12ヶ月から36ヶ月の頃)、子どもには大きな変化が訪れます。そして親御さんにも。この時期の間にほとんどの子どもは歩き方を覚えますし、他の体の動かし方もこの時期に発達していきます。たとえば皆さんのお子さんも日々自分の動きをどんどんコントロールできるようになっていくでしょう。親に向けてボールを転がすといったような目で見て手を動かすということもできるようになっていきます。たいていこの時期にはトイレの訓練も進んでいくでしょう。おむつが取れてトイレを使えるようになっていくのです。

 お子さんがこの時期に入っていくと、子どもは周りの世界を探検するのに興味津々になっていきます。いろいろなことに夢中になって、何度も何度も「なぜ?なぜ?」と聞いてきます。そして、親御さん皆さんから離れた時の不安に何とか対処しようともしはじめます。たとえば、寝る時や保育園に行く時など、親御さんから離れるとき、タオルや人形、動物のぬいぐるみなどを使って不安に耐えようとするのです。この頃は同時に、お子さんにはちょっとした独立心が芽吹きはじめます。親御さん皆さんに頼り続けはしますが、それは困難だったり痛みを伴ったりする状況でも自分で対応できるようになるためなのです。

 

 この時期の成長としては、考える力の成長も挙げられます。子どもは自分の周りで起きていることを理解したいと思うようになります。この時期子どもたちは、他の人の振る舞い・行動を観察しコピーし始めます。また、毎日の生活で繰り返される行動パターンを認識しはじめ、ある種のパターンが繰り返されることを望むようになります。たとえば、お母さんが仕事から帰ってきてから夕食が始まるんだということを認識し、毎日その同じ時間に食事がとれるんだと予測することを学習するのです。更に子どもはこの時期、非常に気が強く強烈な意思を示すようになります。ものごとが自分の思い通りであることを望むことが多くなり、思い通りにならないと強いかんしゃくを起こすようになります。また子どもは簡単な計画や目標を決められるようにもなります。

 

 この時期には、言葉とその使い方を理解するようにもなっていきます。2歳から3歳の間には、自分がどんなふうに感じているか(たとえば、お腹がすいた、かゆい、悲しいなど)を説明したり、欲しいものを言ったり、周りの世界についてもっとたくさんのことを発見するといったような社会的手段として言葉を使い始めます。お父さんお母さんに何かを伝えたいのに伝えられなくて、もどかしさを感じるということもあります。

 

 遊びもまた、子どもが自分の思いや考えを親御さんに伝えるひとつの方法です。お子さんの遊びを見れば、子どもがどんなことを考えているのか、子どもがどんなふうにものごとを体験しているのか学べることが多いでしょう。たとえばお医者さんの診察で自分が一番はっきり覚えていることを、子どもは人形を使って表現するということもあります。(あるお母さんのお話では、幼い息子さんが「お医者さん」役になって、定規で友達のおちんちんの長さを測ろうとしたことがあったそうです。それはお医者さんの診察で毎回行われたことでした)。公園のブランコを飛行機に見立てて、おばあちゃんの家に行くという遊びをすることもあるかもしれませんね。もし子どもが同じことを何度も何度も表現しているなら、何か戸惑ったり重苦しく思っているというサインかもしれません。そういう場合は、親御さんが一緒に遊んだりお話したりするといいでしょう。

 

 信じられないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、このまだ幼い時期であっても子どもは善悪の感覚を身につけはじめています。どんなことが「よいこと」とされ、どんなことが「わるいこと」とされるのか、子どもはそれを見ながら、善悪の感覚を身につけはじめているのです。善悪の違いを学ぶこのプロセスは、「道徳感覚の発達」と呼ばれます。この年代の子どもは、自分が求めるものを得る方法(たとえば、「よい子」であることで求めるものを得るという方法)を見つけ出そうとしますし、どうすれば親を喜ばせられるか発見しようともします。

 

 自分が何者であるのか、そしてそれは他の人とどう違うのか、その感覚が発達しはじめるのもこの時期です。まだもっと幼い時期であれば、鏡を見ても、そこに映るものは子どもにとってはただの動くイメージです。けれどもよちよち歩きの時期の前後になると、子どもはたいていの場合、鏡に映るイメージが他の何ものでもない自分自身なのだということを発見します。誰が自分の家族のメンバーなのか、自分と家族との関係、誰が兄弟で誰がそうでないのかということも理解しはじめます。なぜ自分には名字があるのかという理解も進みますし、娘さんであれば、男の子の兄弟とは違って、女の子の姉妹と同じように自分は女の子であると認識されているということも理解しはじめます。また、自分が求めるものが必ずしも親が求めるものと同じとは限らないという理解もはじまります。このような「自分」ということに関わる感覚は、「自己同一性(自己アイデンティティ)」の発達と呼ばれています。

 

 一般的に、子どもは2歳ごろまでに、自分が男の子であるか、女の子であるかという感覚を持ちます。子どもはさまざまな形で性別の違いを理解しはじめ、多くの人から女の子なのか男の子なのか聞かれますので、子どもたちは自分に与えられた性別に合わせようとします。子どもは自分の周りの人々を見たり、自分が女の子のような活動をしたとき、あるいは男の子のような活動をしたときに、人々が自分をどのように扱うかを観察することで、どういうことが自分の性別に「適切」とされるのか手がかりを得ていくのです。子どもは人々が基本的なふたつのグループ(男の子/男性と、女の子/女性)に分かれているんだと気がつきはじめます。声の質や着ているもの、ヘアスタイル、果たしている役割などで、それに気がつきはじめるのです。人の裸を見ることがあったら、ほとんどの男の子や男性、ほとんどの女の子や女性の体つきの違いにも気がつくでしょう。

 

 この年代、ほとんどの子どもは他の子どもたちと思いっきり遊びたいと思うようになります。子どものそういう好奇心は、自分自身の体、他のひとの体への好奇心にもつながっていきます。時にその好奇心は自分自身の性器や一緒に遊ぶお友達の性器への好奇心にもつながりますが、これはほとんどの全ての子どもにふつうに見られることです。

 

 この年代で性器の違いに気がつく子もいますが、小学校に入る前後まで知らないままでいる子もいます。お子さんがこういう好奇心を持っているかどうかに関係なく、自分の体について話もしてもいいんだということをお子さんに分かっておいてもらうようにしていくのがいいでしょう。DSDを持つ子どもの親御さんの多くは、性器のことのような繊細な話題を子どもと早めに話ができるようにすれば、子どもの成長に合わせてDSDについても話しあいやすくなるとおっしゃってます。オムツを換えたりトイレを使うのをお手伝いするときに、お子さんとお子さんの性器について話をするというのもいいでしょう。大層な話ではなく、「さあ、おちんちんをトイレに向けて。そうすればおしっこがちゃんと中に入っていくよー」とか、「うんちが終わったら、うんちが出てくるのとは違うもうひとつの大切なところがあるでしょう。そっちからお尻ちゃんと拭いていこうね」というふうに、時々簡単に話してあげればいいのです。

 

 こんなふうに、お子さんが自分の体について話すのに必要なことばを少しずつ教えていくのですが、決してお子さんが理解や受け入れができる以上の情報を押し付けるようなことはしないでください。お子さんの疑問や興味を聞いていて、何かきっかけがあれば答えてあげるという程度でいいのです。お子さんがどれほどのことを知ったらいいのか知らないほうがいいのか心配しすぎると、必要以上の話をしてしまったり、ほとんど話をしないということになりがちです。ゆっくり行けばいい、深呼吸しよう、子どもが訊いてることにしっかり耳を傾けよう、そう自分に言い聞かせれば、お子さんが本当に訊きたいことにどう応えればいいか分かってくるはずです。お子さんの疑問に答えるときに、新しいことばを少しずつ教えていけばいいだけなのですから。

 

 この年代のお子さんには、自分のDSDの細かなところまで全部を理解するなんてできません。でも、ほとんどの女の子には陰核と陰唇(ふくらみと大切なところ)があって、ほとんどの男の子にはおちんちんと陰嚢(たまたま袋)があって、そうじゃない人もいるんだよというようなことはお話ししていけるでしょう。息子さんや娘さんが生まれた時、どんなふうに見えたのか、そういう説明も少しずつはじめることができます。

 

 お子さんが3歳にもなると、皆さん親御さんの不意をつくような質問をしてくることもあります。ですので訊かれそうなことに答える準備を事前にしておくのもいいでしょう。この頃の子どもは、自分の性器がどんなふうなはたらきをしているのか、なぜこんな形をしているのかという疑問を訊いてくることが多いです。ここでは3歳の子どもが訊いてきそうな疑問と、どんなふうに答えればいいかその例を挙げてみます。

 

 

子ども: 「なんで僕のおちんちんはパパみたいなのと違うの?」

 

こんな答えはどうでしょう: 「みんな顔もそれぞれ違うでしょ。それと同じで、体もみんな少しずつ違うの。おちんちんにもいろいろな形や大きさがあるのよ。○○のおちんちんはパパとは違う成長をしているの。だから違うように見えるのよ」。

 

 

 もしお子さんが性器の手術を受けていたなら、すでに手術は終わっているわけですから、お子さんの性器の外見や手術跡の感覚がなぜそうなっているのか少しずつ説明しはじめるちょうどいいチャンスです。手術がどのように行われたのか、人形や動物のぬいぐるみなどを使って少しずつ説明していけばいいのです。さて、もう一度くり返します。娘さんや息子さんが知りたいと思うことについては、あくまでお子さん自身のペースに合わせましょう。そしてその疑問が自然に出てきたときには、隠し事はしないようにしましょう。息子さんや娘さんの体のことについて早めにお子さんと話をはじめるようにすれば、お子さんの成長に合わせてお子さんとの会話を気おくれせずに続けられるでしょう。

父と息子と遊ぶ
クレヨンを持つ男の子
3歳から5歳頃まで:小学校に入る前
(この時期の子どもの発達)

 お子さんもこの時期になると、もっとたくさんの情報を理解する能力が発達してきます。3歳以前にはそれほどたくさんの質問をしてこなかったとしても、この時期には、たくさんの疑問を皆さんに聞いてくるようになるでしょう。もちろん、3歳頃までと比べればたくさんの情報を吸収できるようになっていくとは言え、自分のDSDのことを細かいところまで全部理解できるにはまだ早い時期です。けれども、この時期のお子さんは周りの同じ年齢のお友達とどこが似ててどこが違うのか理解しはじめるようになってきますし、自分のDSDについて簡単な説明なら理解できるようになってきます。

 この時期の子どもは身体的にも成熟し続けます。ほとんどの子どもは、走ったりジャンプしたり三輪車に乗ったり鉄棒にぶら下がったりするようなことを覚えていきます。ボタンをかけたり靴ひもを結ぶなど、もっと小さかった頃にはできなかったこともしはじめます。

 この頃多くの子どもは、親から離れていても大丈夫なようになってきます。もっと小さかった時よりも記憶力が伸びて、皆さん親御さんがどこかに出かけてもちゃんと戻ってきてくれるんだということが覚えておけるほど、時間の感覚が成熟してくるからです。けれども、なにか不安なことがあるときにはしがみついて離れなかったり「バイバイ」がなかなか言えなかったり、行動面で幼児がえりをすることもあります。このような行動は普通に見られることですので、DSDとは関係はありません。

 DSDを持つ子どもの多くは、特別な医療検査を受けたり、他の多くの子どもとは違う見た目の性器を持って生まれたことを知っていくという難題など、他の子どもがしないような体験をしていかねばなりません。こういう事情で、親御さんには、子どもが自分の手の届く範囲の外に行かないようにするために必要以上に保護的になったり、子どもだけでなく自分自身も社会的交流から遠ざかろうとされることがあります。それが少しの間だけであれば、親も子どもも安心を得られるでしょうが、それが長期間になると、親から離れるという練習の機会を少なくしてしまうことになります。これではむしろ親御さんにも子どもにも、離れなければいけないときにストレスを増やしてしまうことになってしまいます。

 自分がこういう状態になってしまっているとお気づきになったら、お子さんから離れるような用事を避けてお子さんやご自身を守ろうとし過ぎているんじゃないか、どうなんだろう?と考えるようにしてください。そして子どもはみんな、時々親から離れるということを学んでいかなきゃならないんだということを思い出していただきたいのです。親と離れる時は「安心な」ところにお子さんを預けるということも考えてみましょう。知り合いで信頼出来る他の親御さんと子どものおうちでしたら、皆さんも安心ではないですか?皆さんはずっとお子さんと一緒の部屋にはいられません。だから、離れていても大丈夫でいられる方法に取り組んでいくことが大事なのです。よく覚えておいてください。

 皆さん親御さんと離れるときにお子さんが悲しんだり不安になるようであれば、これはたくさんの親御さんがおっしゃってることですが、ちゃんと自分は戻ってくるんだよということをお子さんに約束するなどしてあげて、そういうことを毎日しっかりと繰り返してあげるといいでしょう。出かけることと戻ってくることを日常のくり返しにして、離れている間はできるだけ同じ人に面倒をみてもらうようにして下さい。そうすればお子さんも、お父さんお母さんと離れても大丈夫なんだと学んでいきますし、皆さんも子どもと離れることに慣れていけます。


 お子さんの成熟も進み、この時期は子どもの考える能力も増大します。まだ幼かったころと比べて、理解力やものごとを記憶する力も成長し、ものごとを分類することもできるようになっていきます。自分の周りの世界のものごとひとつひとつを理解し、それをどんな風に組み合わせていけばいいのかも分かってくることで、「大きな絵」を組み立てられるようになってくるのです。

 けれどもまだこの時期では空想と現実の区別がつかないということもあります。たとえば、既に亡くなっているおじいちゃんでも子どもは自分が望めば生き返ると思っていたりします。空想と現実の区別は成長するにつれて理解できるようになっていきます。更に、ものごとがどのように起きるのか、なぜ起きるのか、つまり、ものごとの「原因と結果」を理解する力の芽が出てきます。また、自分以外の他の人の目から見た世界を想像できるようにもなっていきます。子どもはそれまでは、自分が世界の中心で、みんな自分と同じように感じるものなのだと信じ込んでいます。けれども、主にお友達との遊びを通して、他の人の立場に立ってものごとを見ることができるようになっていくのです。

 この時期になれば、子どもはことばを学び、それを使って他の人とコミュニケーションをとる練習をしていきます。自分の気持ちをことばで伝える方法を学んでいくのですが、とは言ってもまだこの時期では、ことばにするのではなく直接行動に走ったり(「行動化」と言います)、遊びを通してコミュニケーションをとろうとすることがほとんどです。大きな声で独り言を言うこともよくあります。

 

3歳から5歳頃まで:小学校に入る前
(お友達との関係)

 この発達段階では、子どもは他の子どもとの友情を育みたいと強く思うものです。そのため子どもは、友だちを作るにはどうするのが大切か見つけだそうと躍起になります。どうすれば友だちができるのか分かってくると、他の子どもが友だちになってもらうには、自分の行動をどう変えればいいか考え出していきます。このことで、子どもは自分以外の人との協力、分かち合い、他の人の気持ちの理解、対立や相違の解決、そして他の子どもの振る舞いや関心との折り合いの付け方も学んでいくのです。

 もちろん子どもは出会う子出会う子全員と完璧なバラ色の関係を持つわけではありません。この時期のほとんどすべての子どもは、友だちになりたいと思っている子を仲間はずれにすることがあります。これはひとつには、この年代、子どもはカテゴリーでものごとを考えはじめるようになっているからです。子どもはこの時期、お友だちの中には自分に似ている子と違う子がいることに気がつきます。そして、あるお友達を違うカテゴリーの人として見て、それを遊びから仲間はずれにする理由にするのです。仲間はずれにされた子どもにとっては、これはとても苦痛な体験になります。なのでこの発達段階では、子どもはお友達から自分がどんなふうに見られているかとても気にします。

 お子さんの友達やクラスメートが上手にことばを使えるようになってくると、皆さんは自分のお子さんが周りの子どもからことばで傷つけられるのではないかと心配になるかもしれません。DSDを持っていることでからかわれるのではないかと。これについてまず知っておかねばならないのは、いじめやからかいは私たち人間の生活では普通にあることだということです。親御さんはもちろん子どもをいじめやからかいから守ろうとするでしょう。それは当然のことです。けれども、みなさんがずっとお子さんをいじめから守れるかというと、それは単に現実的ではありません。大多数の子どもは(もちろん全員ではありませんが)、ある時点でいじめやからかいを受けたり、悪口を言われたりするものです。お子さんがからかわれていると聞くと、皆さんはすぐさま反応的に、お子さんを元気にさせるようなことを言われるかもしれません。でも、まず重要なのは、お子さんが傷ついたという事実をちゃんと受け止め、それをちゃんと理解したよということをお子さんに知ってもらうことです。「別に殴られたわけでもない。ことばで言われたくらいどうってことない」と、お子さんの傷つきを消し去ろうとするのは、お子さんが本当に傷ついているという事実を否定してしまうことになります。

 お子さんが悲しんでいるのを見るのは忍びないでしょうが、横に座ってあげて、お子さんが感じていることを話させてあげましょう。無理やり話させるのではなく、いつ話すのか、そのタイミングはお子さんに任せることも大切です。早く元気にさせようと焦ったり、逆に、お子さん自身が話をして自分の中で済んだと思えたようなら、(皆さんがまだそうじゃないからという理由で)それ以上は長引かせようともしないでください。


 そうです。お子さんがからかわれたときに皆さんがどうすればいいか。それは、どの子どもの親御さんでも、子どもが傷ついたときにやるべきことと同じです。ここでは、お子さんがからかわれたり悪口を言われたりして、悲しくなったり腹を立てていたりしているときに、どう応えてあげればいいか、その例を挙げてみましょう。

 

 

子ども: 「アンナとサラがもう遊ばないって、私に…。私のこと女の子に見えないし、変で気持ち悪いって…。」

 

このように答えるのはどうでしょう: 「悪口言われたり、一緒に遊びたくないって言われたら、本当悲しいよな。ふたりがそんなこと言って傷つけてくるのは、お父さんも悲しい。そんな意地悪なこと言い合ってるの見るのも辛い。どんなふうに感じた?もっと教えてくれないか?」

 

 

 親御さんの経験談としては、外見や見た目へのからかいについては、お子さんにそれがどういうものなのか事前に話をしておくというのも手です。そういうものは無知や意地悪から来るもので、からかわれる人は何も悪くないのだと、先に子どもに話しておかれる親御さんもいらっしゃいます。どんないやな目に遭っても、自分はいつでも味方でいるし助けたいと思っているとお子さんに伝えておくのも、お子さんの助けになるでしょう。あなたのことを愛しているし、好きだよということを、もう一度お子さんに保障してあげるのもお子さんの助けになります。

 もしからかわれたり悪口を言われたりしたら、どうすればいいか、どう言い返せばいいか、子どもと話しをしておかれる親御さんもいらっしゃいます。もしまた同じことがあったら、今度はどう言ったらいいと思う?と聞いておくことはできますね。そんなことがまたあったら、どうすればいいか事前に知っておけば、子どもも少し安心できるでしょう。同じような状況に直面しても、準備できていると思えれば、子どもは前よりも心強く、どうにかしようと思えるようになります。

 

 

 「もしまたアンナとかサラとか他の人があなたをからかったら、今度はなんて言えばいいと思う?」

子どもはこう言うかもしれません: 「こう言おうと思う。“いじわる!そんなこと言われたら傷つくよ。私はそんなこと絶対言わない”。」

 

 

大事なのは、親からどう言えばいいか指示するのではなく、お子さんが一番いいと思うことを、まずお子さんに言ってもらうことです。

 

幼稚園
スタッキングブロック
3歳から5歳頃まで:小学校に入る前
(性器の質問)

  もしお子さんの性器が、他の大多数の男の子、あるいは女の子とで見た目が違ったり、おしっこの仕方が違ったりする場合、お子さんは成長するにつれて、それに気がついていかれるでしょう。小学校に入るまでの時期には、多くの子どもはお医者さんごっこなどをして、お互いの体がどんなふうになっているか探求します。これはこの時期の子どもには普通に見られることですが、DSDを持つ子どもの中には、自分の性器が同じ性別の友達と見た目が違ったり、おしっこの仕方が違うことに気がつくようになる子もいます。まだこの年齢ではそれがどんな違いなのかまでは分からないにしても、体のつくり(体のそれぞれの部分)と、お子さんが平均的なものとはどんなふうに違うのか、話をしはじめることが大切でしょう。たとえば・・・

 

 

子ども: 「なんで僕のおちんちんは、他の人のと違うの?」

 

親: 「お前のおちんちんの見た目が違うのは、[DSDの状態名:たとえば「尿道下裂」「卵精巣性DSD」など]って呼ばれているものを持っているからなんだ。お前が生まれる前、お母さんのお腹の中にいるときに、お前のおちんちんは[DSDの状態名]で違う形になったんだ。」

 

子ども: 「なんで違っちゃったの?」

 

(ここではそれぞれの状況に合わせて、あり得る答えを3つご紹介します)

 

親: (原因が全くわからない場合)「お母さんにもなんでなのかはっきり分からないの。人間の体にはたくさんのパーツがあって、それぞれいろんな形や色があるのよ。目や目の色もそう。青い目の人もいれば茶色の目の人もいるでしょう。なんで私たちの体がそうなるのか、今でも誰にも分からないの。あなたが大きくなったら、なんであなたのおちんちんがこういう形なのか分かるようになるかもしれない。でも、どんな違いがあったって、お母さんがあなたを愛していることはかわりない。そのままのあなたが、お母さんは大好きなのよ。」

 

親: (遺伝子が原因と思われる場合)「お前の持ってるおもちゃにも、どうやって組み立てるのか説明書が入ってたのがあっただろ。それと同じで、人間にもそれぞれ、遺伝子っていう組み立て説明書が入ってるんだ。人間はみんな、ひとりひとり自分自身の組み立て説明書を持ってるんだよ。青い目の人もいれば茶色の目の人もいる。それはみんなそれぞれの組み立て説明書からそうなってるんだ。お前もお前自身の組み立て説明書を持っていて、それでお前がそうなってるんだ。お父さんはそういうそのままのお前が大好きなんだよ。」

 

親: (胎内での発達が原因と思われる場合)「あなたがお母さんのお腹の中にいるとき、その時におちんちんは出来上がるの。お腹の中にいたとき、あなたの周りで起こったことで、他の人とはちょっと違う形になったの。お母さんのお腹の中で起こったことで、あなただけの形になったのよ。あなたが生まれたとき、あなたには指が10本あって、もうたくさん髪が生えてて、おちんちんは[どんな形だったか説明して下さい]だったの。あなたという大好きな人が生まれてとてもうれしかった。お母さんはそのままのあなたが大好きなの。」

 

 

 もしお子さんがすでに性器の手術を受けていらっしゃるなら、手術について優しく簡単に話しはじめるちょうどいい機会です。なぜ手術が行われたのか基本的なところをお話しし(たとえば、「あなたのおちんちんはね、おしっこが出る穴がなかったの。だから、おしっこがちゃんと出るようにって、お医者さんは穴を開けなきゃいけなかったの。」というように)、お子さんの手術についての疑問・質問に答えてあげてください。人形や動物のぬいぐるみを使って説明してもいいでしょう。

 DSDによって、生まれた時に性別判定検査が必要な外性器の状態だった子どもの親御さんは、子どもが質問してきたときには、「生まれる前の外性器の発達」と「様々な外性器の形」が役に立ったとおっしゃっています。「生まれる前の外性器の発達」は、6週間目の胎児からの性器の発達が図示してあり、人の性器はこの時点では、男の子も女の子もみんな同じように見えることが説明できます。図はそれからの性器の成長を描いていますので、これをお子さんに見てもらい、どの時点でお子さんの性器は違う形になりはじめたのか教えることができます。お子さんが図を理解できるなら、自分に起こっていることを理解しやすくなるでしょう。「様々な外性器の形」は、息子さんや娘さんの性器が、生まれたときどんな形をしていたのか、今どんな形になっているのか、お子さんに説明できるようになっています。 (図のPDF版はこちらをクリックしてください

 

3歳から5歳頃まで:小学校に入る前
(ナゼナニ期の対応)

 この時期の子どもは、体のはたらきについてたくさん質問してくるものです。皆さんのお子さんには、何を聞いても大丈夫だよと知っておいてもらうのが大切です。親御さんにとっては、性器のことや子どもがどうやってできるかということ、生殖機能のことを子どもに話をするのはためらわれても当然でしょう。子どもに生殖機能の話をするときはこのハンドブックが役に立ったとおっしゃる親御さんもいらっしゃいました。ハンドブックの最後の方の資料集ではいくつかヒントを載せています。子どもが性交渉について聞いてきたときはどうしたらいいのか困る親御さんがほとんどですが、経験を積んでいけば説明しやすくなるようです。お子さんのレベルに合わせて、お子さんの疑問に誠実に答えていきましょう。

 

 

子ども: 「赤ちゃんてどうやってできるの?」

親: 「ほとんどの女の人は、卵子っていう赤ちゃんの卵のようなものを体の中に持ってるんだ。ほとんどの男の人は精子っていうのを体の中に持ってる。卵子が精子とが出会ったとき、赤ちゃんがお母さんの子宮の中で育ちはじめることがあるんだよ。」

 これで納得する子どももいますが、もっと聞いてくる子どももいるでしょう。会話の流れはお子さんに任せて、お子さんが理解できる範囲で誠実に答えていきましょう。

子ども: 「精子と卵子はどうやって一緒になるの?」

親: 「男の人がおちんちんを使って、女の人に大切なところからあげるのよ。」

子ども: 「赤ちゃんはどうやって出てくるの?」

親: 「赤ちゃんは大きくなったら、お母さんの大切なところから出てくるんだよ。」

 

 まだこの年代の子どもが、自分は子どもの親になれるのかと聞いてきても驚かないで下さい。DSDを持つ人が生物学的なつながりのある子どもを持てるかどうかは、それぞれの疾患状況やどのような医療を受けてきたかによって違います。また、お子さんが将来子どもの親になりたいと思ったときの生殖医療技術の進歩がどれほどのものになっているかにもよるでしょう。DSDが原因で現在不妊と思われる子どもの中にも、生殖技術が進めば、まだまだ先のこととして生物学的な親になれる可能性はあるかもしれません。

 お子さんのケースで不妊が問題であるようならば、親になる他の方法について息子さんや娘さんに誠実に話しをしていくのに早すぎるということはありません。ただし、くりかえしますが、あくまでお子さんが知りたいと思っている範囲に気をつけて下さい。そしてお子さんの疑問に答えるときは、皆さんの中では様々な感情が呼び起こされるでしょうが、お話されるときに悲しくなったり防衛的になったとしてもそれは当然のことなのです。ご自身の感情について考えながら、お子さんに誠実に話しをしていくようにしましょう。

 

 

子ども: 「赤ちゃんを作るのに、僕は精子を女の人にあげられるの?」もしくは「私は赤ちゃんをお腹の中で育てられるの?」

親: 「今はね、それができるかどうかお母さんにも分らないの。そういうふうに赤ちゃんを作るっていうのができない人もたくさんいるの。いろいろな理由でね。あなたは[お子さんの疾患の名前]があるから、もしかしたらそういうふうには赤ちゃんができないかもしれない。でも、あなたがママ(パパ)になれないってわけじゃないの。親になる方法はたくさんあるのよ。養子で子どもに来てもらうっていう方法もあるの。ママ(パパ)になるのに絶対赤ちゃんを作らなきゃいけないってわけじゃないのよ。お友達のジョー君を知ってるでしょ。ジョー君のお父さんとお母さんが言ってたの覚えてる?ジョー君のお父さんとお母さんは、彼を生んだお母さんから、ジョー君を養子にもらったって。ふたりは今はジョー君のお父さんとお母さんよ。あなたも大きくなったら、ジョー君のお父さんお母さんと同じように、子どもを養子にもらうことができるの。ふたりのように、あなたも毎年、赤ちゃんが来てくれた日をお祝いするようになるかもね。(少し待って、お子さんが何も言わないようなら)もっと何か聞きたいことはある?」

 

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ピアノを弾く先生
3歳から5歳頃まで:小学校に入る前
(認識能力の発達)

 この時期になると、子どもは自分自身を男の子もしくは女の子として見なす認識能力も成長し、同性の親をコピーするようになっていきます。女の子ならお母さんのように行動しようとするでしょうし、男の子ならお父さんのように行動しようとします。このプロセス、すなわち「性別役割の社会化」のプロセスは、10歳代になってもずっと続きます。性別役割の社会化は、子どもが男の子と女の子、男性と女性がそれぞれどのように行動するか、どのような行動を求められているか、その違いに気がつくところからはじまっていきます。自分の性別にとって、どのような行動が「適切だ」と見なされているか認識しはじめるのです。一般的には、女の子はお母さんごっこなどの「ごっこ遊び(人との関係の中での役割を演じる遊び)」をしようとし、男の子はブロック遊びなどの「物を操作する遊び」をしようとします。これは別に、男の子は人形遊びをしないというわけではありませんし、女の子は乱暴だったりスポーツをしたりしないということでもありません。けれどもこの時期、多くの子どもたちは自分が身につけつつある性別役割を遊びの中で実践したがるものなのです。

 皆さんのお子さんがこのように分類に基づいた遊びや行動をされるでしょうが、覚えておいていただきたいのは、男の子、女の子それぞれの行動と言っても、それぞれには大きな幅があるということです。今日、性別役割の固定観念は昔ほど厳しいものではありません。現在では女の子も、昔は男の子のやることだと思われていたこと(相手にぶつかっていくようなスポーツなど)を仕事にできるようになっていますし、男の子も、昔は女の子がやると思われていたこと(子ども保育など)を仕事にできるようになっています。昔と違って今は別にからかわれるということもありません。実際にはこれまでもずっとそうだったのでしょうが、現在では、どちらの性別の子どもの行動には、広い幅があります。女の子でもおしとやかで静かな子もいれば活発で大胆な子もいますし、同じく男の子でも思慮深く用心深い子もいれば積極的ですぐ行動に移す子もいますよね。

 大事なことですが、お子さんの男の子っぽさ女の子っぽさについて否定的に考えて、直そうとしないでください。たとえば「男の子みたいよ!」と娘さんに言ったり、「女みたいに投げるな!」と息子さんに言うようなことは止めるようにしてください。このように否定的に矯正しようとすると、子どもは自分が何者なのか逆に恐ろしく不安になってしまいます。そして逆に、男の子が「男らしい」振る舞いや行動をとっても、娘さんが「女らしい」振る舞いや行動をとっても、それを止める必要もありません。この時期はそういうものなのだと思っていただいて大丈夫です。

 まだこの時期の子どもは、反対の性別であるかのように遊ぶことは珍しくありません。まだ小さな男の子が女性のように着飾ったり、まだ小さな女の子が、自分は男の子だと言ったりすることはあるのです。皆さんのお子さんがそういうことを言ったりやったりしても、それは息子さんや娘さんがDSDを持って生まれたこととは関係ありません。DSDを持たない子どもでもこの年代ではそういうことはたくさんあります。お子さんがどのように感じどのように振る舞うか全く無視するべきだとは言いませんが、ちょっとしたお子さんの言動だけで、お子さんの性別が決まるわけではありませんし、ましてや「間違った」性別を判定してしまったとは思わないようにしてください。

 幼年時代のこの時期、子どもは自分自身のセクシャリティにも好奇心を持つようになりますが、もちろんまだそれを言い表すことばを持っていません。この時期で子どもは、自分の性器がある種の気持ちよさを生み出すことを発見することもあります。自分の性器を触ったり遊んだりすることは、この時期の発達段階では普通に見られ、自然で健全なことです。自分自身の性器に興味を持ったからといって、それを阻止したり叱ったりしてはいけません。もちろん、外ではあまりそういうことは言ってはいけないという、内と外の違いも学ばなければなりません。お子さんが性器いじりをしたそうなときは、静かな時でひとりなら大丈夫だよと説明してあげて下さい。それと同時に、もし他の子や誰かが性器を触ってくるようなことがあったら、必ず親に言わなきゃならないということも知っておいてもらうようにしてください。DSDを持った子どもは、性器の検査をたくさん受けていきますので、嫌なのに性器を触られるということから自分自身を守るということを学んでいくようにする必要があります。嫌だ!と思うような触り方をしてくる人がいたら、必ず親に言うように、お子さんに時々話しておいてあげて下さい。決してお子さんを怖がらせるのではなく、けれども、自分にとっての「プライヴェートな大切なところ」は自分自身のものであり、誰か他の人のものではなく、自分自身のためにあるのだということを、お子さんに分かってもらうようにしてください。

 

6歳から11歳頃まで:小学生の時
(この時期の子どもの発達)

 児童期(6歳から11歳頃まで)の子どもは、精神的能力、肉体的能力、ことばの能力、自己コントロール、友達との友情、そして社会的能力で、更に成長し続けます。一般的には、この頃の子どもは論理的に考えることができるようになり、現実と空想の区別もつくようになっていきます。問題を解決する力も身につけていき、集中力も続くようになり、時間や自分の周りの世界も意識しはじめ、物事を準備したり計画したりすることを覚えていきます。

 

 この時期になると子どもは少しずつ親への甘えから脱却していきます。とりあえずの期間は、親がいない代わりに毛布や動物のぬいぐるみを使って自分を安心させようとすることもあるでしょう。けれども、小学校に通うようになると、親ばかりだけの状態から自分の友だちも信頼するようになっていきます。この変化は、お子さんが更に自信を持てるようになっている証拠でしょう。これは皆さんが親として立派な仕事を成し遂げたという証拠でもありますので、安堵するべきことです。ですが、ご両親にとっての思いは、逆のことが多いでしょう。子どもが成長し親から離れはじめると、多くの親御さんは自分自身にも子どもにも不安を感じるようになります。これは特に子どもがDSDのような何らかの疾患を持つ場合はよくあることです。子どもが成長するにつれ、親は不安が大きくなり、子どもを守らんと子どもの活動を制限しようとするかもしれません。これでは親も子どももストレスがたまる原因になってしまいます。大切なのは皆さんがお子さんと自分自身のこのような変化にまず気がつくことです。こういう状況に対処したいとお考えなら、カウンセリングなども助けになるでしょう。他の親御さんと話をすることも助けになります。

 同年代の友達との友情や友達関係はこの発達段階の子どもにとってとても大事なものです。自分は友だちからどのように見られているか、子どもにとっては更にとても重要なことになっていきます。この時期の子どもはグループを作りはじめ、そのグループを通してそれぞれ自分自身の立場を明確にしていきます。この年代の多くのグループは性別の違いを基本にしており、男の子と女の子それぞれにとってどのようなことが「適切」か、たくさんのメッセージを受け取っていくのです。一般的には児童期のあいだは、女の子は女の子同士で遊び、男の子は男の子同士で遊びますが、これはいつもそうというわけではありません。皆さんのお子さんも、自分が一番心地いいと思う友達と一緒にいることを選ぶようになるでしょう。

 

 この発達段階でも、お子さん自身の振る舞いや行動について、お子さんを安心させ支持しつづけることが大切です。ここでもお子さんにとって普通であることが、お子さんにとっての「普通」なのだということを忘れないでください。それがたとえ、他の人にとってはそうでなくても。お子さんは皆さんの愛情と受け止めから力を得るのです。

 

 小学校の間は、子どもにとっては難しい時期にもなりえます。この年代のグループでは、子どもは更に、友達から自分がどんなふうに見られるかとても意識するようになります。この時期の子どもの自己感覚や自尊心のほとんどは、自分が友達からどう見られるかによって形づくられます。中には、友達に受け入れられなかったり友達の中に溶け込めてるように感じられなくて、難しさを感じる子どももいます。ですがこれは、同じ年代の他の子どもと違うところを持っているかどうかに関係なく、すべての子どもに起こりうることです。

 お子さんがそういう難しさを感じているとしても、それは必ずしも現実を反映しているとは限りません。実際には周りの子どもが仲間はずれにしていなくても、この子は自分たちと違うと見ていなくても、子どもの中には、強く「自分は違う」というとても強い思いを持つ子どもがいます。このような場合は、親御さんがどれだけ子どもをサポートしようとしても、子どもは不安に思い続けて、親御さんがもどかしくなるということもあります。ここでも大事なのは、皆さんがお子さんにできることについて、現実的な感覚を持つことです。皆さんはお子さんの不安や悲しい思いの全部を消し去ることはできないのだということを思い出してください。ご自身のそういう思いだって、皆さんは全て消し去ることはできないでしょう。もしお子さんがそういう思いを抱えていると感じられるなら、ご自身だけで抱え込むのではなく、お子さんの担当医師やメンタルヘルスの専門家、サポートグループを利用するようにしてください。皆さんがひとり孤独に葛藤することがないよう、お子さんを支援するネットワークを作っていくようにするのです。 

 

学校の子供たち
本を選ぶ女性
6歳から11歳頃まで:小学生の時
(治療の相談)

 DSDを持つ子どもの親御さんたちは、その多くが、この児童期からおとなになるまでがたいへんだろうとおっしゃっています。この年代は、お子さんが、自分が平均とは異なるということを本当に理解していく時期だからです。親御さんたちは、そういう時期はお子さんが感じていることを話してもらえるようにする時間を作るのがいいと提案してくださっています病院のソーシャルワーカー看護師さんカウンセラーなど、外に話を聞いてもらえるような人にお子さんをつなげるのも助けになるでしょう。同じような状況・状態にある子どもと交流を持つのもお子さんのためになります。似たような体験をしてきた同じような状態を持つ大人にも。そういう大人の人と出会うことで、自分も「やり通せるのだ」という感覚を子どもが持てるようになることが多いです。お子さんが求める分の、お子さんの状態についての情報や医療履歴を教えていくのもいいでしょう。お子さんがそういう情報を恐れているようなら、お子さんがどれくらい知りたいか聞いてみて、お子さんの流れに任せるようにするのです。 

 小学校も高学年頃になってくると、お子さんから治療や手術という選択肢について聞いてくるかもしれません。この発達段階では、子どもは自分を友達と比べるものです。子どもはもしかしたら、もっと他の男の子や女の子のようになりたいと思い、そうなるための方法を考えているのかもしれません。DSDを持つ子どもの親御さんの中には、小学校高学年頃からのホルモン療法や手術の可能性を考えはじめる方もいらっしゃいます。治療の可能性についてお子さんと話し合いをされるときに大切なのは、お子さんの気持ちと望みに注意深く耳を傾けることと、治療選択肢それぞれにあり得るリスクと利点を、お子さんと共に調べることです。たとえば…



子ども: 「わたし、性器を普通に見えるようにしたい。他の子と同じように見えるように今すぐ手術できない?」

 

親: 「他の女の子と同じように見えるようにしたいんだよね。じゃあ、あなたがどうしたいのか質問リストを作ってみようか。もっといろいろ分かるようにね。それでそれをお医者さんのところに持って行って、いっこずつ聞いてみよ。どうするのか、いろいろ良い点と悪い点があるだろうし、それをちゃんと聞いておかなくちゃね。それに、同じような状態を持ってるお姉さんがいると思うから、手術を受けた人と受けてない人を見つけて、それぞれ話を聞いてみない?どうだったかって。お母さんは、あなたにちゃんと納得できる決断をしてもらいたいの。今すぐ手術を受けたいっていうのは分かるわ。それがどんな気持ちかも。でも、お母さんにとっては、長い目で見て、あなたが幸せでいられる決断をしてもらいたいの。だから、一緒にやっていきましょ。じゃ、まず紙を持ってきて、質問リスト作ろ。」

 もしお子さんが既に手術を受けているなら、この機会に前に受けた手術のことをお子さんと話をするのがいいでしょう。いつ手術をしたのか、どんな手術だったのか、お子さんに知ってもらうようにしましょう。こんなふうにお子さんに聞いてみましょう。

 

親: 「お前が受けた手術のこと、もっと知りたいか?なぜお父さんたちがお前の手術をすることにしたのか、手術が終わった後おまえがどんなだったか、手術してるときお父さんたちがどんな気持ちだったか、お前が聞きたかったらね。」

 

 どこまで話し合いをするのか、どこで話を終えるのか、それはお子さんに決めてもらうようにしましょう。次の日にこう聞いてみてください。「あなたが話したいと思ったことで、まだ話せてなかったことってある?どんなことでもいいのよ」。こうすればお子さんにもっと話してもいいんだと分かってもらえます。

思春期
(この時期の子どもの発達)

 思春期は性的な成熟のはじまりを知らせるもので、お子さんが子どもから大人になっていく時期です。ほとんどの女の子は、男の子よりも早く思春期を迎えます。女の子の思春期は、たいていの場合には、10歳から14歳の間にはじまりますが、これには大きな幅があります。8歳で思春期を迎える女の子もいれば、10代ではじまるということもあります。平均的には、男の子の思春期は女の子よりも2年遅れてはじまります。

 

 ホルモンは(自然に出てきたものでも、お医者さんの処方によるものでも)、青年期の体の多くの変化を引き起こします。思春期を通り抜けた青年期の女性は、たいていの場合は身長が伸び、体の形が変わり、胸が大きくなり、脇の下や陰部の毛が成長し、クリトリスが大きくなり、皮脂腺や汗腺の活動が活発になるなどの変化があります。もし卵巣がある場合は、一般的にはある時点から月経周期がはじまることになります。男の子の思春期には、たいていの場合は体毛が増加し、皮脂腺や汗腺の活動が活発になり、性器が大きくなり、声変りをし、身長が伸び、体重・筋肉量が増加するなどの肉体的変化があります。また思春期の間は、男の子・女の子両方ともに肉体的精神的に性的な感情の高まりを体験します。この性的な感情は、子ども自身が望まない時でもしばしば湧き起こってくるようになります。

 

 DSDが原因で、皆さんの息子さんや娘さんは平均的な子どもとは異なる思春期を送ることになるかもしれません。皆さんのお子さんの思春期は、他の子どもよりも早くはじまったり、遅くはじまったり、思春期の一般的な変化がすべてあらわれないということもあるかもしれません。どのようなことが正確に予期されるか、お子さんの担当医に聞き、その内容をお子さんに伝えて、みんなで心の準備をしておくようにしてください。起きるはずの思春期がはじまらないという場合は、お子さんの担当医にご相談ください。小児内分泌医が思春期の専門です。

 

 もしお子さんの精巣や卵巣が機能するものである場合、息子さんや娘さんの思春期は自然にはじまると思われます。もしお子さんの性腺(卵巣や精巣、卵精巣、線状性腺)が思春期より前に手術で摘出されている場合は、息子さんや娘さんの思春期は、病院でホルモン治療を受けるまではじまらないでしょう。ある種のDSDでは、お子さんが望まないような体の変化を起こす性腺をお子さんが持っているというものもあります。たとえば、精巣がある5α還元酵素欠損症の女の子は、なんらかの「高アンドロゲン作用化」する(体のいくつかの部分が男性のように見えるようになる)かもしれず、それを彼女は望まないかもしれません。

 

 思春期の体の変化をお子さんの望む形で行なっていけるよう、お子さんと担当医が一緒になって取り組むことがとても大切です。ホルモン治療や自然な形の思春期も、ホルモンの効果による変化には元に戻すことができないものもありえます。もちろん皆さんの息子さんや娘さんは、自分自身のアイデンティティを基づいて思春期を迎えたいと思われるでしょう。ですので、たとえば自分自身を女の子だと思う5α還元酵素欠損症を持つお子さんは、男の子のような変化をもたらす思春期は望まれないでしょうし、思春期がはじまる前に精巣を取り、女性ホルモンをの処方を受けて思春期を迎えたいと思われるでしょう。既に性腺を摘出している女の子のお子さんで、胸があまりに大きくなり過ぎるほどの量の女性ホルモンは望まないということもあるかもしれません。その女の子は、自分の体が自分の望まないよう影響がないようにホルモンの量を調整したいと望んでいるわけです。息子さんや娘さんがどうしたいか、まだこころに決めていない段階で思春期が訪れてしまったという場合、思春期を少しだけ先に伸ばす特殊なホルモン療法が使えるかもしれません。これについては小児内分泌医にご相談ください。

 

 思春期は皆さんとお子さんを支える医療専門家につながる調度いい機会になります。メンタルヘルスの専門家(児童心理学者や精神科医など)は、息子さんや娘さんがどうしたいか、自分で考え、ことばで言い表す手助けができます。お子さんの望みに合うような思春期を計画できるよう、メンタルヘルスの専門家と小児内分泌学医とが協力してもらうのがいいでしょう。

 

 お子さんの発達の中でも気がかりが多く、難しいときは特に他の親御さんと電話や直接に会って相談したり、資料になる本に目を通したり、インターネットのサポートグループにアクセスすることが役に立つでしょう。覚えておいてください。DSDを持つ子どもの親御さんは、心強く自信を持って行ける時もあれば、心細くはっきりしない時期を過ごさねばならない時もあるのが普通です。助けが必要なときは、専門家やサポートグループなどに相談し、自分が必要とすることを伝えるようにしてください。

教室で手を上げる学生
クラス間の学生
思春期
(性的意識の芽生え)

 女の子であれば小学校高学年から、男の子であれば中学生頃から、皆さんのお子さんも、他の人への自分の性的な気持ちに気づいていかれるでしょう。子どもは自分の中のこのような気持ちに、少しずつ少しずつ気がついていくものです。男の子であれば女の子を好きになる(女の子であれば男の子を好きになる)子どもでも、自分自身の性的な気持ちには最初は戸惑うことがほとんどです。同性の子が好きだったり、両方を好きになる子どもは更に戸惑われることでしょう。自分の周りから、それはダメだよというメッセージを受けるわけですから。

 DSDsを持つ子どもたち・人々は、他の一般的な身体の人々と同じように、その大多数は異性の相手を好きになります。ですが、お子さんが同性の人を好きであったり、分け隔てなくどちらの性別の人も好きで、でもそういう自分が嫌だったり当惑されていたりすると、学校での家族も参加する行事やスポーツなどに人並みはずれてがんばることで、皆さんに対して「埋め合わせ」をしようとするかもしれません。皆さんがそう望むだろうと思い込んで、お医者さんで治療しようとされるということもあるかもしれません。なぜならそういう子どもは、同じ性別の人を好きになったり、両方ともを好きになったりする自分に罪悪感を感じているからです。この時期に皆さんのお子さんが、これからの長い人生に関わる治療(二次性徴をうながすためのホルモン療法や、性器の手術を受けると決めること)決心されるところであれば、体の治療を受ける決断は、お子さん自身がお子さん自身のためにすることが非常に重要です。ただ単に親御さんが安心するためにお子さんを誘導したり、親御さんが安心できる型にお子さんをはめようとしてはいけません。お子さんが治療を希望する理由が全然はっきりしない場合は、プロのメンタルヘルスサポート(病院の臨床心理士など)にご相談いただくのもいいかもしれません。そうすれば、お子さんは自分の気持ちや、治療を受けたい理由を、心の中で整理できるでしょう。「お父さんお母さんたちは、そのままのおまえを愛しているし受け入れている。私たちのために体を治療しようと思ってるのなら、それは必要ないよ」ということを、お子さんに知ってもらうようにしてください。

 性について話をしはじめるのは、子育ての中でも一番難しいことのひとつでしょう。ほとんどの親御さんにとって、やりにくいことだと思います。セクシャリティについてお子さんと話すのは難しいことですが、それを乗り越えることで、お子さんは自分自身を大丈夫だと思えるようになりますし、お子さんが自分自身について良い選択をする助けにもなります。DSDを持つ方たちのお話では、自分の体のことを話し合って、自分がどうしたいかちゃんと考えてはっきりさせたいと思ってもそうできなかったので、自分の性のことについていい加減なことになってしまうことがあったそうです。たとえば、生殖能力を持てないと知ったDSDを持つ女性の中には、だったらコンドームを使う必要がないと性交渉で性感染症になってしまったという人もいらっしゃいます。セクシャリティについては、こんなふうに話をはじめてみられてはいかがでしょうか?

 

 

親:  「あなたが成長したら、性もね、成長していくの。性のことって話しにくいよね。でも、分からないこと聞いてくれればお母さんも答えられるかもしれない。性のことでなにか困ってることある?不安に思ってることとか…。」

 

 

 性について話をするのはやはり大きく戸惑いをお感じのようであれば、皆さんが信頼できる誠実で支えになってくれそうな人とお子さんが話をできるようにするというのもひとつの手です。お子さんが親しくしている看護師さんやお医者さん、他の家族メンバーや名付け親の方などがいいかもしれません。その場合は、お子さんのDSDについてその人たちが他の人にたまたま話してしまうということがないように、事前に親子でどこまで話をするか知っておいてもらうようにしてください。

 お子さんの成長に合わせて、自分の体は自分自身のものであり、自分が嫌だ、安全じゃないと思うようなふうに自分の体を扱われてはならないのだということを、くり返しお子さんに理解してもらうようにしてください。嫌だなと思ったり、安全じゃないと思う、あるいは暴力的だと思ったら、必ず皆さんに話せるようお子さんにはたらきかけるのです。病院の性器の検査でも、自分が嫌だなと思ったことを皆さんに話せるようになれば、皆さんからお医者さんにそれはストップしてもらうようお願いすることもできます。お子さんには、自分自身のセクシャリティを自分自身が大切にできると思え、自分の人生を幸せで健やかに感じられるようにしてあげてください。

青年期
(この時期の子どもの発達)

 青年期は、人生の中でも、肉体的にも感情的にも知的にも大きな成長を遂げる時期です。青年期前半では、子どもは子どもっぽい考えを後にして、より大人の思考をするようになっていきます。抽象的なことや人間関係、自分の人生について考えるようになっていくのです。この変化は突然起きるものではありません。成長した考えをする能力は行きつ戻りつ育っていくのですが、このために子ども自身やその周囲の人たちも巻き込んで、大きな混乱を起こすことがあります。

 思春期からはじまる肉体的変化は、青年期の子どもにとって混乱と不安の元になることがあります。人生の中でのこの段階、お子さんにはメンタルヘルスの専門家なども含めた医療関係者や家族からの特段の支援が必要になることもあるでしょう。お子さんを、大人のDSDを持つ人に会ってもらうのも助けになるでしょう。そういう機会があれば、お子さんは同じような状況にある人が実際に青年期を乗り切り、なんとかやり遂げたことを知ることができるでしょう。

 思春期にお子さんに起こる最初の肉体的変化は、お子さんにとっては不意を撃たれるようなものになることがあります。思春期に起きる変化についてお子さんと皆さんとで事前に勉強しておくことで、皆さんとお子さんとで心の準備をしておくことが大切でしょう。小さい頃から、お子さんのDSDについて話すようにしていたなら、思春期や二次性徴について話し合うのはまだやりやすいでしょう。もしそうじゃなかったら、今こそ本当に話をはじめるときでしょう。お子さんは、自分の体に起こっていることをちゃんと理解し、自分は大丈夫なんだとはっきりさせるのに皆さんの助けを求めていることでしょうから。


 青年期の心理的発達は体の発達よりも大きなものになります。お子さんはこの時期、気分の大きな変動や感情的爆発をいつもよりしがちです。どの子どもでも、この時期には肉体的変化と精神的変化と役割変化を一挙に体験せねばならず、それはどの子どもにとっても困難なものです。もしお子さんの気分の動きが激しくても、それは青年期には当たり前のものなのだと覚えておいてください。難しいかもしれませんが、お子さんとひざを突き合わせて話せる機会をできるだけとり、息子さんや娘さんの思い、興味、関心ごとを一緒に話せるようなチャンスを作ってみてください。そしてもし話ができたら、お子さんの話は真剣に受け止めてあげてください。ただ耳を傾けるようにして、お子さんの言うことに一々文句をつけないようにしましょう。話すたびに文句を言われるようなら、もう話はしたくないと思われてしまいます。

 青年期の子どもの多くは自意識が強く、自分に批判的になり、体の見かけをとても気にするようになります。多くは、自分は太りすぎなんじゃないかとか、服がきれいかそうじゃないかとかを心配するのです。男の子よりも女の子の方がそういう見栄えを気にすると思われがちですが、実は青年期では、男の子もその多くが見栄えを気にしています。男の子も女の子も同等に考えてあげてみてください。私たちは女の子にはしょっちゅう見栄えの話をしますが、男の子にはこういう類のことはあまり聞かないってことがありますよね。親御さん皆さんも「正しく見える」ようにしなくちゃならないという社会的プレッシャーは理解できるとお子さんに話をされて、そういうプレッシャーを感じているか聞いてみてもいいでしょう。こういうことをお子さんと一緒に考える機会があると、お子さんの自尊心(自分が自分自身のことをどう感じるかということ)について、もっと話し合えるようにもなるでしょう。10代の子ども全員がこういう課題で悩むというわけではありません。でも、もしこういうことで悩んでいて、それが自分ではどうしようもないほど大きいものであれば、息子さんや娘さんを支える方法はたくさんあります。プロのカウンセラーやセラピストによる支援が効果的であることが多いです。

 青年期になると子どもは、肉体的にも精神的にもより一層おとなになっていく自分を知っていきます。彼らは両親からの自立を望むようになっていきます。この年代の子どもが親離れをしはじめ、自立と自分自身のアイデンティティを求めるのは普通のことです。この時期の最初の頃には、外で家族と一緒にいるところを見られるのを嫌がるのも普通のことです。家の中でも、もっと自分ひとりでいられる時間とスペースが欲しいと言ってくることもあるでしょう。以前にはなかった「見ないで!入らないで!」という札が、子どもの部屋のドアにかかっているなんてこともあるかもしれません。こういう時期にお子さんと繊細な話題を話そうとしても、性について突然お子さんが話すのをためらうようになるということがあっても、別に驚くようなことではありません。青年期の間は友達や仲間のグループが何よりも重要なものになることが多いです。仲間のグループに受け入れられているかどうかが、子どもにはとても重大なことになるのです。この時期の子どもは、グループからのけ者にされないために仲間に受け入れてもらえるよう行動しようとします。そのプレッシャーは強力なものです。

 この時期の子ども全員が友達を持つわけではありませんし、仲間から受け入れられているとも限りません。青年期は、時にひとりを仲間はずれにしたり、孤立させたり、からかったりするということがあります。こういう残酷な行動はこの時期には稀なことではありませんが、孤立させられた子どもにとっては、とても心痛むものとなります。もしお子さんにこういうことがあったら、「いじめは絶対になくす」というルールで、学校と相談するようにしてください。(学校はいじめを絶対に容認しないというルールを示してもらうのです)。もしお子さんが仲間はずれになっているようなら、皆さんにもできることがあります。特に子どもが傷ついているときには、お子さんの気持ちに耳を傾けることが重要です。ちゃんと聞いているよと態度で示してあげましょう。お子さんの表情から目をそらさず、非難するように腕を組まずに、じっと聞ける姿勢で耳を傾けるのです。お子さんが言ったことを時々繰り返して、ちゃんと聞いているよという態度を示しましょう。お子さんが言ったことを、そんな気持ちたいしたことないと「言いくるめる」のではなく、お子さんが言ったことをそのまま返してあげてください。そうすれば、聞いてもらってるんだ、真剣に自分の気持ちを取り合ってくれてるんだと、お子さんに伝わります。

 DSDを持って生まれたから受け入れられないなんてことはありませんが、そういう状態で生まれた子どもは一般的な体の状態とは異なり、私たちの社会ではそういう平均とは異なる人々が隅に追いやられるようなことが多くあります。お子さんも、自分の周りで見たり聞いたりすることから、こういうことを知っていかれるでしょう。たとえば、性のことで平均とは違う人々への中傷や、障害を持って生まれた人への心無いことばなど、そういうことをお子さんも見たり聞いたりされていくと思います。ここでも、お子さんの気持ちに十分に耳を傾けてください。そして、もし誰かがお子さんや、お子さんのような人に心無いことばを言っていたら、それは、お子さんのような人はダメだと勝手に思っているその人たちが不公平な人なのだ、「あなたはDSDだけじゃない、もっといろいろな側面を持った一人の人なのだ」ということを、お子さんに教えてあげてください。お子さんが、自分は何者なのか、さまざまな側面からできたひとりの人間として(新聞部のメンバーであるということや、劇団グループの一員なんだということ、弟や妹の優しい兄や姉であるということなど、そういうものを全部含めて)、自分自身を理解できるように皆さんがお子さんを支えられたら、いじめの影響は少なくなるでしょう。お子さんが参加できて、楽しいと思えるような、満足を得られるような、お子さんがお子さん自身として受け入れられていると感じられるような校外活動を、お子さんと一緒に探すのもいいでしょう。学校でいじめを受けている子どもは、地方の子ども劇団や趣味のグループ、スポーツグループなどの学外の活動で、肯定的な体験を積んでいけば、さまざまなことを体験できるだけでなく、DSDに囚われてしまうのではない「もっと大きな視点」で自分自身が何者なのか学んでいけるようになるでしょう。

 

理科の授業(顕微鏡)
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青年期
(DSDを持つ子どもの悩み)

 先にお話したように、青年期を迎える子どもにとっては、思春期は性の目覚めにあたります。子どもは性的な気持ちを大きく感じるようになり、他の人に対してはっきりとした身体的魅力を感じるようになっていきます。この時期の子どもは、ボーイフレンドやガールフレンドのこと、デートのことなどを考えるようになります。皆さんのお子さんは、そういうセクシャリティについて、特定の心配をされるかもしれませんし、されないかもしれません。ですが、好きな人に魅力を感じたりすることへの戸惑いや、どうやってつき合えばいいのか分からないといった心配は、青年期の子どもにはみんな普通に見られることです。これまでと同じように、皆さんや誰か他の専門の人からの、性教育が重要になるでしょう。皆さんが自分ではどうしていいのか分からない場合や、お子さんが皆さんのほかの人とも話をしたいと希望される場合は、青年期の性について詳しいカウンセラーを探せば支えてくれますよ。そういうカウンセラーを見つけるには、お子さんの担当医やサポートグループに問い合わせてみてください。お子さんの人生のこの時期どんなふうにお子さんに接すればいいか、その例を挙げてみましょう。

 

 

親: 「性のこと、お前がお父さんに話してもいいって思ってるかどうか、お父さんには分からないけど、お前が何か聞きたいことがあるんなら、言ってくれればいいぞ。そうだったら、お父さんはちゃんと話しをしようと思ってる。お前が聞きたいこと、言いたいこと、どんなものでもな。ちょっと恥ずかしくなるかもしれないけど、話せればいいと思ってる。(ここで一旦止めて、必要なら、こう続けましょう。)性のことは、他の人に話すほうがいいと思ってるなら、同じような仲間や、専門のカウンセラーと話せるようにすることもできるぞ。」

 

 妊娠が可能かどうか、この段階でお子さんが気にされることもあるでしょう。お子さんが娘さんなら妊娠ができるのかどうか、息子さんなら相手の女の子に妊娠してもらえるのか、それぞれどうすれば妊娠が可能なのか、皆さんから聞いておきたいというお子さんもいらっしゃるでしょう。もしお子さんが不妊ならば、お子さんが生物学的な親になるのに人工生殖技術が役に立つかもしれないこともあるし、そうじゃない場合もあるということをお子さんと話し合うようにしてください(可能かどうかの結論は、お子さんの担当医やサポートグループが答えられると思います)。養子縁組についても話をしておいてください。養子縁組した子どもを持つ家族をお子さんに紹介すれば、こういうことも可能なんだとお子さんに分かってもらえるでしょう。

 前にもお話したように、お子さんは外科手術やホルモン療法をどうするかお考えになるでしょう。お子さんには、どういう選択肢があるのかということと、それぞれのリスクと長所、それぞれどんな結果になるのかということをちゃんと調べておいてもらうようにしましょう。そして、息子さんや娘さんにとってよりよい決断ができるよう、じっくり考える時間をあげてください。お子さんは、自分がDSDを持っていることから、親御さん皆さんに「穴埋め」しようとしたり「場に馴染もう」とするために、外科手術やホルモン療法を考えるという場合もあります。そのような様子があれば、その選択が長い目で見て自分自身にとって本当に正しいものなのかどうか、お子さんが落ち着いて考えられるよう、必ずメンタルヘルスの専門家に相談させてあげるようにしてください。

 DSDを持つ人は、青年期、同じような状況を分かち合える人と会う機会がないと、一人ぼっちで孤独のように感じられるかもしれません。お子さんがかかっている病院のソーシャルワーカーや看護師さん、子どもの生活の専門家に問い合わせてみれば、お子さんと同じ状況にある人にアクセスできるかもしれません。DSDを持った同年代の子どもや年上の人は、自尊心やアイデンティティの問題に葛藤する10代の子どもにとっては共感できる生きた見本となってくれるでしょう。同じか似たようなDSDを持つ人と会うことは、自分は全くただの普通の人間でしかないんだということをお子さんが再確認できる大きな役にたってくれるのです。

 お子さんのセクシャリティについて考えることで、皆さんが深い悲しみの感情を抱かれても、その感情は十分ありうることですので、動揺しないでください。お子さんは、自分が「普通の」体を持って生まれなかったことを悲しまれる時期を過ごされることがあるかもしれません。DSDを持つ子どもは、誰かを好きになって付き合いたいと思っても、それが大きなストレスを引き起こすこともありえます。「誰も自分と一緒にいたくないだろう。自分は体が違うのだから」と。拒否されるのではないかと恐れ、誰かと付き合いたいと思うことさえしないようにされるということもあるかもしれません。もしお子さんにそういう様子があるようなら、誰かと付き合うということは体のパーツの問題なのではなく、大切な関係を育んでいくことなのだとお子さんに何度も何度も話してあげてください。どういうふうに大切な関係を結んでいくのか、息子さんや娘さんが考えるのを手伝ってあげてください。皆さんご自身の経験から、お互いの愛情と受容こそが大切なのだとお子さんに示してください。どうやって好きな人との関係を育んでいくのかということや、性分化疾患のことをボーイフレンドやガールフレンドに話すという課題については、お子さんとカウンセラーが一緒に考えていくということも検討してください。同じか似たようなDSDを持つ年上の人と会い、その人が幸せな関係を長く続けているのを見れば、皆さんもお子さんも心強くなれるでしょう。

 このセクションでは、思春期から起こりうるたくさんのストレスや課題についてお話ししてきました。けれども、お子さんが成長して大人になっていくという特別の喜びも同じようにあるのだということは忘れないで下さい。お子さんもこの時期になれば、皆さんとたくさんの興味深い話を話せるようになりますし、一緒にもっと大人びたことを共有できるようになるでしょう。(たとえば、もっと難しいスポーツをされたり、ニュースを一緒に見て話し合ったり、有意義なボランティアに参加したり、もしかしたらDSDを持つ家族のためのサポートグループの運営に加わったりなんてこともあるかもしれません)。皆さんが子どもと一緒にいろいろなことを話したりやったりすることを楽しんでいる姿をお子さんが見せてあげてください。自分が自分自身であることはとても大切なことなのだと、お子さんに話してあげてください。親御さん皆さんの人生の歴史を話してあげてください。そうすれば、自分が成長し立派な大人になっていくのを見るのが皆さんは楽しみなのだと、お子さんに分かってもらえるでしょう。

 

人生を、共に。

 この章を読まれると、DSDの子どもを持つことで、なんてたくさんの試練に立ち向かわなきゃならないんだとお感じになっているかもしれませんね。でも、これは覚えておいてください。どんな親でも、たくさんの試練に立ち向かわねばならないし、どんな子どもの親でも、たくさんのことを理解していかねばならず、子どもを支えていくには他の人の助けを必要とするのは、当たり前のことなのだということを。

 ここで私たちが挙げた、お子さんとの特別な会話は全て、皆さんにとって大きな重荷に思われることでしょう。でも、こういう会話をしていくことで、むしろ大切なこと、つまり、信頼のできる、オープンな、愛情を持った関係をお子さんと築き上げていくいくことができるのです。ご自身の人生の中でも、本当に大きな問題を今お子さんと話しているのだと、皆さんその時にはお気づきになるかもしれません。他の親御さんは決して体験しないようなことを。それは大変なことでしょう。けれども、皆さんにはなんとかそれを乗り越えていただきたいのです。親御さんが誠実に、オープンに、愛情を持って、繰り返し話をしてきたDSDを持って大人になった人たちは、親御さんと本当に固い絆を結んでらっしゃいます。そして、自分自身の人生を自信を持って有意義に歩んでらっしゃるのです。

 

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第2章のまとめ
  • 皆さんの息子さんや娘さんは、成長するにつれ、たくさんの肉体的、感情的、精神的変化を経験していかれます。それがどういう変化なのか理解しておけば、お子さんを支えていくのに役に立つでしょう。

   

  • DSDを持つお子さんは他の子どもにはない特別の課題に直面します。そういう時は、皆さんと他の人(カウンセラーや、医療専門家、サポートグループなど)からの特別な支援が必要となるでしょう。

   

  • お子さんが感じたり話したりすることにオープンでいましょう。お子さんの心の痛みから目を逸らさず、「そんなことは大したことではないかのような」受け応えはしないようにしましょう。

   

  • お子さんに対しては、オープンで、誠実に支えていくようにしましょう。そうすればお子さんは、皆さんから愛されているのだ、受け入れられているのだと感じることができます。それに、皆さん親御さんは自分の人生の真実をちゃんと教えてくれる人なのだと思ってもらえるようになります。

   

  • お子さんのDSDは、皆さんの親子関係の特別な絆を築きあげていくことにもなるでしょう。