第2章 子どもの成長と、
          子どもにどのように話していくか?

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。また、性分化疾患は、同じ診断のつく体の状態でも個々に状態像は異なり、全てに当てはまる100%の方法というものはありません。ですので、ここに書いてあることが必ずしも正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。お子さんの体の状態・発達や、精神的な成長について、担当のお医者さんや児童精神科医、臨床心理士などとよく話し合った上で、ご家族それぞれの方針を立てて行っていただければと思います。

 親というものは皆、子どもにベストのことをしていきたいと思うものでしょう。皆さんも、お子さんが性分化疾患を持っているということに関わる課題にしっかりと挑んでいくことを期待されているかもしれませんし、あらゆる面でお子さんを支えていきたいと自然に思われているかもしれません。お子さんを支えていく方法のひとつは、お子さんのからだ、気持ち、そして精神の成長の段階を理解することです。更には、息子さんや娘さんと、お子さんの性分化疾患のことや思っていること・考えていることを、定期的に話し合うことも支えになります。

 この章では、お子さんの成長段階について、皆さんが今から知っておけることをご紹介します。そしてそれは、皆さんがお子さんを、愛情と隠し事のないコミュニケーション、そして精神的サポートでもって、支えていく方法についてお話しすることにもなるでしょう。ここには、困難のときにいかにお子さんと話をするのか、いかにお子さんを支えるのか、実際的なアイデアも載せておきます。

フリーマ・ヒルマンさんと娘さんのティアさん

ここで使う用語について

代名詞(彼/彼女、息子さん/娘さん)

 お気づきかもしれませんが、このハンドブックで私たちは、お子さんやご両親について話をする際、「彼(息子さん)」という代名詞を使うこともあれば、「彼女(娘さん)」という代名詞を使うこともあります。このハンドブックを執筆するとき、まず私たちは常に「息子さんや娘さん(彼や彼女)」というフレーズを使うようにしました。これは、息子さん娘さん、男性女性、父親母親どちらにも対応できるようにするためなのですが、読みにくくなっているかもしれません。また、私たちが「彼もしくは彼女(息子さんや娘さん)」というフレーズを使うのは、お子さんの心の性別がはっきりしないということを示すためにそうしているのではないということをご理解いただければと思います。ただただ、様々な人に対応できるように、代名詞を使い分けているだけです。
(訳者注:原文の英語では、お子さんの話をするときは、"he"(彼)、"she"(彼女)、"he or she"(彼や彼女)などの代名詞が使われています。私たちの日本語訳では、"he""she"と書かれている場合は、すべて「お子さん」と訳し、"he or she"と書かれている場合は「息子さんや娘さん」と訳すように統一しています)。


心の性別

 このハンドブックでは、男の子・女の子、あるいは男性・女性としてのアイデンティティについてお話をするときに、「心の性別」という言葉を使っています。「性別役割」という言葉は、人が社会的に、男の子あるいは女の子、男性あるいは女性として見られるかどうかということを表すものとして、「性自認(性別同一性)」という言葉は、自分は男の子、女の子、男性あるいは女性であるという、心の中での感覚を表すものとして使用します。“赤ちゃんは女の子と「判定」された”とは、彼女(娘さん)は(外科手術は関係なく)女の子として育てられるということを、「性自認(性別同一性)の発達」とは、彼女の心の中での自己感覚(“自分である”という感覚)の成長を表します。

 「心の性別」は、「体の性」のこととは違います。「体の性」は、その人のからだのつくりのことを指します(詳しくはこれからお話していきましょう)。重要なことですが、「性染色体」、「性ホルモン」そして「性組織(おちんちんや精巣など)」は、その人が自分の心の中でどのような性自認を感じるように成長するのかということを、必ずしも決定するわけではありません。時には人の性自認は、その人の性染色体や性器から推測するものとは異なるということがあるのです。

 「心の性別」は、単純に2つに収まるものではありません。ほとんどの女性・女の子でも、「男っぽい」と言われるような傾向や興味、ふるまい方を少しは持っているでしょうし、ほとんどの男性・男の子でも、「女っぽい」と言われるような傾向や興味、ふるまい方を持っているものでしょう。「男っぽい」要素と「女っぽい」要素が混じっているというように感じている人もいますし、心の性別に求められるものは文化によっても異なります。


体の性

 最後の章でも触れますが、このハンドブックでは、男性であること、女性であることに関わる私たちのからだのつくり・生物学的組織についてお話しするときは、「体の性」という言葉を使います。このハンドブックで「からだの性別」と言う時は、生物学的(からだ的)見地から、その人が男性であるか女性であるかという話をするときです。「体の性」には、「性染色体(XまたはY染色体)」卵巣・精巣・陰唇・クリトリス・おちんちん・陰嚢などの性別に関わる生物学的組織などがあります。性ホルモンもからだの性別の別の側面を形成します。性ホルモンは血液によって運ばれる、化学物質でできた、からだの中のメッセンジャーです。性ホルモンによって、私たちのからだは成熟し、性的に機能できるようになります。「体の性の発達・成熟」という言葉を使うときは、からだ的性質の観点から見た、からだの変化のことを指します。それはたとえば、生殖器の構造の変化や、性ホルモンの変化(第二次性徴など)のことなどです。


セクシャリティ・性的指向

 「セクシャリティ」とは、人間の性的存在としての体験のことを言います。パートナーとの愛情を持った性的行為やその他の親密な関係などが、セクシャリティのひとつです。愛したい愛されたいという気持ちもセクシャリティのことと言えるでしょう。「性的指向」とは、ある人が異性愛(「異性」の人を好きになること)か、同性愛(同性の人を好きになること)か、あるいは両性愛(男性も女性も好きになること)かということを表すのに一般に使われる言葉です。大多数の女性は男性のことが好きになり、大多数の男性は女性を好きになりますが、人間の性的指向は、その人の心の性別や体の性から分かるものではないのです。

ジェーン・ゴトーさんとお母さん

第1章のまとめ

前提となるキーポイント

  

オランダの文部科学省に当たる教育文化科学省の解放政策局の要請により、政策研究機関である社会文化計画局が作成した、世界ではじめての国家機関による、DSDs(体の性の様々な発達:性分化疾患)を持つ人々の実態調査書を日本語に翻訳しました!

 

探索的調査としながらも、DSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。

 

近年日本でも、教育現場や地方・国レベルで、性的マイノリティの人々の一つとしてDSDsが取り上げられるようになっていますが、DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 

性教育などでDSDsについて触れたり、地方・国レベルでDSDを持つ人々と家族についての政策を進言したいとお考えの皆様には、とても参考になる資料です。是非ご参照下さい。

オランダ社会文化計画局報告書

 「インターセックスの状態/性分化疾患と共に生きる」

ネクスDSDジャパン DSD(性分化疾患)を持つ子どもと家族のための総合情報サイト

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日本性分化疾患患者家族会連絡会:ネクスDSDジャパンは、世界のDSDs患者家族会・サポートグループと連携し、主にDSDを持つお子さんとご家族のための医療ケア、子育ての疑問などについて、世界中のサポートグループからの情報を発信し,日本の性分化疾患各種患者家族会との連携をしています。

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