3歳から5歳ごろまで(小学校に入るまで)

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。また、性分化疾患は、同じ診断のつく体の状態でも個々に状態像は異なり、全てに当てはまる100%の方法というものはありません。ですので、ここに書いてあることが必ずしも正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。お子さんの体の状態・発達や、精神的な成長について、担当のお医者さんや児童精神科医、臨床心理士などとよく話し合った上で、ご家族それぞれの方針を立てて行っていただければと思います。

 お子さんもこの時期になると、もっとたくさんの情報を理解する能力が発達してきます。3歳以前にはそれほどたくさんの質問をしてこなかったとしても、この時期には、たくさんの疑問を皆さんに聞いてくるようになるでしょう。もちろん、3歳頃までと比べればたくさんの情報を吸収できるようになっていくとは言え、自分の性分化疾患のことを、細かいところまで全部理解できるにはまだ早い時期です。けれども、この時期のお子さんは、周りの同じ年齢のお友達とどこが似ててどこが違うのか理解しはじめるようになってきますし、自分の性分化疾患のことについて簡単な説明なら理解できるようになってきます。

 この時期の子どもは身体的にも成熟し続けます。ほとんどの子どもは、走ったりジャンプしたり三輪車に乗ったり鉄棒にぶら下がったりするようなことを覚えていきます。ボタンをかけたり靴ひもを結ぶなど、もっと小さかった頃にはできなかったこともしはじめます。

 この頃多くの子どもは、親から離れていても大丈夫なようになってきます。もっと小さかった時よりも記憶力が伸びて、皆さん親御さんがどこかに出かけても、ちゃんと戻ってきてくれるんだということが覚えておけるほど、時間の感覚が成熟してくるからです。けれども、なにか不安なことがあるときには、しがみついて離れなかったり「バイバイ」がなかなか言えなかったり、行動面で幼児がえりをすることもあります。このような行動は通常、普通に見られることですので、性分化疾患とは関係はありません。

 性分化疾患を持つ子どもの多くは、特別な医療検査を受けたり、他の多くの子どもとは違う見た目の性器を持って生まれたことを知っていくという難題など、他の子どもがしないような体験をしていかねばなりません。こういう事情で、親御さんには、子どもが自分の手の届く範囲の外に行かないようにするために必要以上に保護的になったり、子どもだけでなく自分自身も社会的交流から遠ざかろうとされることがあります。それが少しの間だけであれば、親も子どもも安心を得られるでしょうが、それが長期間になると、親から離れるという練習の機会を少なくしてしまうことになります。これではむしろ親御さんにも子どもにも、離れなければいけないときに、ストレスを増やしてしまうことになってしまいます。

 自分がこういう状態になってしまっているとお気づきになったら、お子さんから離れるような用事を避けてお子さんやご自身を守ろうとし過ぎているんじゃないか、どうなんだろう?と考えるようにしてください。そして子どもはみんな、時々親から離れるということを学んでいかなきゃならないんだということを思い出していただきたいのです。親と離れる時は「安心な」ところにお子さんを預けるということも考えてみましょう。知り合いで信頼出来る他の親御さんと子どものおうちでしたら、皆さんも安心ではないですか?皆さんはずっとお子さんと一緒の部屋にはいられません。だから、離れていても大丈夫でいられる方法に取り組んでいくことが大事なのです。よく覚えておいてください。

 皆さん親御さんと離れるときにお子さんが悲しんだり不安になるようであれば、これはたくさんの親御さんがおっしゃってることですが、ちゃんと自分は戻ってくるんだよということをお子さんに約束するなどしてあげて、そういうことを毎日しっかりと繰り返してあげるといいでしょう。出かけることと戻ってくることを日常のくり返しにして、離れている間はできるだけ同じ人に面倒をみてもらうようにして下さい。そうすればお子さんも、お父さんお母さんと離れても大丈夫なんだと学んでいきますし、皆さんも子どもと離れることに慣れていけます。

 

 お子さんの成熟も進み、この時期は、子どもの考える能力も増大します。まだ幼かったころと比べて、理解力や、ものごとを記憶する力も成長し、ものごとを分類することもできるようになっていきます。自分の周りの世界のものごとひとつひとつを理解し、それをどんな風に組み合わせていけばいいのかも分かってくることで、「大きな絵」を組み立てられるようになってくるのです。

 けれどもまだこの時期では、空想と現実の区別がつかないということもあります。たとえば、既に亡くなっているおじいちゃんでも、子どもは自分が望めば生き返ると思っていたりします。空想と現実の区別は、成長するにつれて理解できるようになっていきます。更に、ものごとがどのように起きるのか、なぜ起きるのか、つまり、ものごとの「原因と結果」を理解する力の芽が出てきます。また、自分以外の他の人の目から見た世界を想像できるようにもなっていきます。子どもはそれまでは、自分が世界の中心で、みんな自分と同じように感じるものなのだと信じ込んでいます。けれども、主にお友達との遊びを通して、他の人の立場に立ってものごとを見ることができるようになっていくのです。

 この時期になれば、子どもはことばを学び、それを使って他の人とコミュニケーションをとる練習をしていきます。自分の気持ちをことばで伝える方法を学んでいくのですが、とは言ってもまだこの時期では、ことばにするのではなく直接行動に走ったり(「行動化」と言います)、遊びを通してコミュニケーションをとろうとすることがほとんどです。大きな声で独り言を言うこともよくあります。

 この発達段階では、子どもは他の子どもとの友情を育みたいと強く思うものです。そのため子どもは、友だちを作るにはどうするのが大切か見つけだそうと躍起になります。どうすれば友だちができるのか分かってくると、他の子どもが友だちになってもらうには、自分の行動をどう変えればいいか考え出していきます。このことで、子どもは自分以外の人との協力、分かち合い、他の人の気持ちの理解、対立や相違の解決、そして他の子どもの振る舞いや関心との折り合いの付け方も学んでいくのです。

 もちろん子どもは出会う子出会う子全員と完璧なバラ色の関係を持つわけではありません。この時期のほとんどすべての子どもは、友だちになりたいと思っている子を仲間はずれにすることがあります。これはひとつには、この年代、子どもはカテゴリーでものごとを考えはじめるようになっているからです。子どもはこの時期、お友だちの中には自分に似ている子と違う子がいることに気がつきます。そして、あるお友達を違うカテゴリーの人として見て、それを遊びから仲間はずれにする理由にするのです。仲間はずれにされた子どもにとっては、これはとても苦痛な体験になります。なのでこの発達段階では、子どもはお友達から自分がどんなふうに見られているかとても気にします。

 お子さんの友達やクラスメートが上手にことばを使えるようになってくると、皆さんは自分のお子さんが周りの子どもからことばで傷つけられるのではないかと心配になるかもしれません。性分化疾患を持っていることでからかわれるのではないかと。これについてまず知っておかねばならないのは、いじめやからかいは私たち人間の生活では普通にあることだということです。親御さんはもちろん子どもをいじめやからかいから守ろうとするでしょう。それは当然のことです。けれども、みなさんがずっとお子さんをいじめから守れるかというと、それは単に現実的ではありません。大多数の子どもは(もちろん全員ではありませんが)、ある時点でいじめやからかいを受けたり、悪口を言われたりするものです。お子さんがからかわれていると聞くと、皆さんはすぐさま反応的に、お子さんを元気にさせるようなことを言われるかもしれません。でも、まず重要なのは、お子さんが傷ついたという事実をちゃんと受け止め、それをちゃんと理解したよということをお子さんに知ってもらうことです。「別に殴られたわけでもない。ことばで言われたくらいどうってことない」と、お子さんの傷つきを消し去ろうとするのは、お子さんが本当に傷ついているという事実を否定してしまうことになります。

 お子さんが悲しんでいるのを見るのは忍びないでしょうが、横に座ってあげて、お子さんが感じていることを話させてあげましょう。無理やり話させるのではなく、いつ話すのか、そのタイミングはお子さんに任せることも大切です。早く元気にさせようと焦ったり、逆に、お子さん自身が話をして自分の中で済んだと思えたようなら、(皆さんがまだそうじゃないからという理由で)それ以上は長引かせようともしないでください。
 そうです。お子さんがからかわれたときに皆さんがどうすればいいか。それは、どの子どもの親御さんでも、子どもが傷ついたときにやるべきことと同じです。ここでは、お子さんがからかわれたり悪口を言われたりして、悲しくなったり腹を立てていたりしているときに、どう応えてあげればいいか、その例を挙げてみましょう。

 

 

子ども: 「アンナとサラがもう遊ばないって、私に…。私のこと女の子に見えないし、変で気持ち悪いって…。」

 

このように答えるのはどうでしょう: 「悪口言われたり、一緒に遊びたくないって言われたら、本当悲しいよな。ふたりがそんなこと言って傷つけてくるのは、お父さんも悲しい。そんな意地悪なこと言い合ってるの見るのも辛い。どんなふうに感じた?もっと教えてくれないか?」

 

 

 親御さんの経験談としては、外見や見た目へのからかいについては、お子さんにそれがどういうものなのか事前に話をしておくというのも手です。そういうものは無知や意地悪から来るもので、からかわれる人は何も悪くないのだと、先に子どもに話しておかれる親御さんもいらっしゃいます。どんないやな目に遭っても、自分はいつでも味方でいるし助けたいと思っているとお子さんに伝えておくのも、お子さんの助けになるでしょう。あなたのことを愛しているし、好きだよということを、もう一度お子さんに保障してあげるのもお子さんの助けになります。

 もしからかわれたり悪口を言われたりしたら、どうすればいいか、どう言い返せばいいか、子どもと話しをしておかれる親御さんもいらっしゃいます。もしまた同じことがあったら、今度はどう言ったらいいと思う?と聞いておくことはできますね。そんなことがまたあったら、どうすればいいか事前に知っておけば、子どもも少し安心できるでしょう。同じような状況に直面しても、準備できていると思えれば、子どもは前よりも心強く、どうにかしようと思えるようになります。

 

 

 「もしまたアンナとかサラとか他の人があなたをからかったら、今度はなんて言えばいいと思う?」

子どもはこう言うかもしれません: 「こう言おうと思う。“いじわる!そんなこと言われたら傷つくよ。私はそんなこと絶対言わない”。」

 

 

大事なのは、親からどう言えばいいか指示するのではなく、お子さんが一番いいと思うことを、まずお子さんに言ってもらうことです。

ハワード・タイガー・デヴォアさんとご両親

  もしお子さんの性器が、他の大多数の男の子、あるいは女の子とで見た目が違ったり、おしっこの仕方が違ったりする場合、お子さんは成長するにつれて、それに気がついていかれるでしょう。小学校に入るまでの時期には、多くの子どもはお医者さんごっこなどをして、お互いのからだがどんなふうになっているか探求します。これはこの時期の子どもには普通に見られることですが、性分化疾患を持つ子どもの中には、自分の性器が同じ性別の友達と、見た目が違ったり、おしっこの仕方が違うことに気がつくようになる子もいます。まだこの年齢では、それがどんな違いなのかまでは分からないにしても、からだのつくり(からだのそれぞれの部分)と、お子さんが平均的なものとはどんなふうに違うのか、話をしはじめることが大切でしょう。たとえば・・・

 

 

子ども: 「なんで僕のおちんちんは、他の人のと違うの?」

 

親: 「お前のおちんちんの見た目が違うのは、[性分化疾患の疾患名:たとえば「尿道下裂」「卵精巣性性分化疾患」など]って呼ばれているものを持っているからなんだ。お前が生まれる前、お母さんのお腹の中にいるときに、お前のおちんちんは[性分化疾患の疾患名]で違う形になったんだ。」

 

子ども: 「なんで違っちゃったの?」

 

(ここではそれぞれの状況に合わせて、あり得る答えを3つご紹介します)

 

親: (原因が全くわからない場合)「お母さんにもなんでなのかはっきり分からないの。人間のからだにはたくさんのパーツがあって、それぞれいろんな形や色があるのよ。目や目の色もそう。青い目の人もいれば茶色の目の人もいるでしょう。なんで私たちのからだがそうなるのか、今でも誰にも分からないの。あなたが大きくなったら、なんであなたのおちんちんがこういう形なのか分かるようになるかもしれない。でも、どんな違いがあったって、お母さんがあなたを愛していることはかわりない。そのままのあなたが、お母さんは大好きなのよ。」

 

親: (遺伝が原因と思われる場合)「お前の持ってるおもちゃにも、どうやって組み立てるのか説明書が入ってたのがあっただろ。それと同じで、人間にもそれぞれ、遺伝子っていう組み立て説明書が入ってるんだ。人間はみんな、ひとりひとり自分自身の組み立て説明書を持ってるんだよ。青い目の人もいれば茶色の目の人もいる。それはみんなそれぞれの組み立て説明書からそうなってるんだ。お前もお前自身の組み立て説明書を持っていて、それでお前がそうなってるんだ。お父さんはそういうそのままのお前が大好きなんだよ。」

 

親: (胎内の環境が原因と思われる場合)「あなたがお母さんのお腹の中にいるとき、その時におちんちんは出来上がるの。お腹の中にいたとき、あなたの周りで起こったことで、他の人とはちょっと違う形になったの。お母さんのお腹の中で起こったことで、あなただけの形になったのよ。あなたが生まれたとき、あなたには指が10本あって、もうたくさん髪が生えてて、おちんちんは[どんな形だったか説明して下さい]だったの。あなたという大好きな人が生まれてとてもうれしかった。お母さんはそのままのあなたが大好きなの。」

 

 

 もしお子さんがすでに性器の手術を受けていらっしゃるなら、手術について優しく簡単に話しはじめるちょうどいい機会です。なぜ手術が行われたのか基本的なところをお話しし(たとえば、「あなたのおちんちんはね、おしっこが出る穴がなかったの。だから、おしっこがちゃんと出るようにって、お医者さんは穴を開けなきゃいけなかったの。」というように)、お子さんの手術についての疑問・質問に答えてあげてください。人形や動物のぬいぐるみを使って説明してもいいでしょう。

 性分化疾患を持つ子どもの親御さんは、子どもが質問してきたときには、図5.1「生まれる前の外性器の発達」と図5.2「様々な外性器の形」が役に立ったとおっしゃっています。図5.1は、6週間目の胎児からの性器の発達が図示してあり、人の性器はこの時点では、男の子も女の子もみんな同じように見えることが説明できます。図はそれからの性器の成長を描いていますので、これをお子さんに見てもらい、どの時点でお子さんの性器は違う形になりはじめたのか教えることができます。お子さんが図を理解できるなら、自分に起こっていることを理解しやすくなるでしょう。図5.2の「様々な外性器の形」は、息子さんや娘さんの性器が、生まれたときどんな形をしていたのか、今どんな形になっているのか、お子さんに説明できるようになっています。

(クリックすると、大きな画像が出てきます。)

PDF版はこちらから。

  

 この時期の子どもは、からだのはたらきについてたくさん質問してくるものです。皆さんのお子さんには、何を聞いても大丈夫だよと知っておいてもらうのが大切です。親御さんにとっては、性器のことや子どもがどうやってできるかということ、生殖機能のことを子どもに話をするのは、ためらわれても当然でしょう。子どもに生殖機能の話をするときは、このハンドブックが役に立ったとおっしゃる親御さんもいらっしゃいました。ハンドブックの最後の方の資料集では、いくつかヒントを載せています。子どもが性交渉について聞いてきたときは、どうしたらいいのか困る親御さんがほとんどですが、経験を積んでいけば、説明しやすくなるようです。お子さんのレベルに合わせて、お子さんの疑問に誠実に答えていきましょう。

 

 

子ども: 「赤ちゃんてどうやってできるの?」

親: 「ほとんどの女の人は、卵子っていう赤ちゃんの卵のようなものを、からだの中に持ってるんだ。ほとんどの男の人は、精子っていうのをからだの中に持ってる。卵子が精子とが出会ったとき、赤ちゃんがお母さんの子宮の中で育ちはじめることがあるんだよ。」

 

 

 これで納得する子どももいますが、もっと聞いてくる子どももいるでしょう。会話の流れはお子さんに任せて、お子さんが理解できる範囲で誠実に答えていきましょう。

 

 

子ども: 「精子と卵子はどうやって一緒になるの?」

親: 「男の人がおちんちんを使って、女の人に大切なところからあげるのよ。」

子ども: 「赤ちゃんはどうやって出てくるの?」

親: 「赤ちゃんは大きくなったら、お母さんの大切なところから出てくるんだよ。」

 

 

 まだこの年代の子どもが、自分は子どもの親になれるのかと聞いてきても驚かないで下さい。性分化疾患を持つ人が生物学的なつながりのある子どもを持てるかどうかは、それぞれの疾患状況やどのような医療を受けてきたかによって違います。また、お子さんが将来子どもの親になりたいと思ったときの、生殖医療技術の進歩がどれほどのものになっているかにもよるでしょう。性分化疾患が原因で現在不妊と思われる子どもの中にも、生殖技術が進めば、まだまだ先のこととして、生物学的な親になれる可能性はあるかもしれません。

 お子さんのケースで不妊が問題であるようならば、親になる他の方法について、息子さんや娘さんに誠実に話しをしていくのに早すぎるということはありません。ただし、くりかえしますが、あくまでお子さんが知りたいと思っている範囲に気をつけて下さい。そしてお子さんの疑問に答えるときは、皆さんの中では様々な感情が呼び起こされるでしょうが、お話されるときに悲しくなったり防衛的になったとしても、それは当然のことなのです。ご自身の感情について考えながら、お子さんに誠実に話しをしていくようにしましょう。

 

 

子ども: 「赤ちゃんを作るのに、僕は精子を女の人にあげられるの?」もしくは「私は赤ちゃんをお腹の中で育てられるの?」

親: 「今はね、それができるかどうかお母さんにも分らないの。そういうふうに赤ちゃんを作るっていうのができない人もたくさんいるの。いろいろな理由でね。あなたは[お子さんの疾患の名前]があるから、もしかしたらそういうふうには赤ちゃんができないかもしれない。でも、あなたがママ(パパ)になれないってわけじゃないの。親になる方法はたくさんあるのよ。養子で子どもに来てもらうっていう方法もあるの。ママ(パパ)になるのに絶対赤ちゃんを作らなきゃいけないってわけじゃないのよ。お友達のジョー君を知ってるでしょ。ジョー君のお父さんとお母さんが言ってたの覚えてる?ジョー君のお父さんとお母さんは、彼を生んだお母さんから、ジョー君を養子にもらったって。ふたりは今はジョー君のお父さんとお母さんよ。あなたも大きくなったら、ジョー君のお父さんお母さんと同じように、子どもを養子にもらうことができるの。ふたりのように、あなたも毎年、赤ちゃんが来てくれた日をお祝いするようになるかもね。(少し待って、お子さんが何も言わないようなら)もっと何か聞きたいことはある?」

 

 

 この時期になると、子どもは、自分自身を男の子、もしくは女の子として見なす認識能力も成長し、同性の親をコピーするようになっていきます。女の子ならお母さんのように行動しようとするでしょうし、男の子ならお父さんのように行動しようとします。このプロセス、すなわち「性別役割の社会化」のプロセスは、10歳代になってもずっと続きます。性別役割の社会化は、子どもが男の子と女の子、男性と女性がそれぞれどのように行動するか、どのような行動を求められているか、その違いに気がつくところからはじまっていきます。自分の性別にとって、どのような行動が「適切だ」と見なされているか、認識しはじめるのです。一般的には、女の子はお母さんごっこなどの“ごっこ遊び(人との関係の中での役割を演じる遊び)”をしようとし、男の子はブロック遊びなどの“物を操作する遊び”をしようとします。これは別に、男の子は人形遊びをしないというわけではありませんし、女の子は乱暴だったりスポーツをしたりしないということでもありません。けれどもこの時期、多くの子どもたちは、自分が身につけつつある性別役割を、遊びの中で実践したがるのです。

 皆さんのお子さんがこのように分類に基づいた遊びや行動をされるでしょうが、覚えておいていただきたいのは、男の子、女の子それぞれの行動と言っても、それぞれには大きな幅があるということです。今日、性別役割は昔ほど厳しいものではありません。現在では女の子も、昔は男の子のやることだと思われていたこと(相手にぶつかっていくようなスポーツなど)を仕事にできるようになっていますし、男の子も、昔は女の子がやると思われていたこと(子ども保育など)を仕事にできるようになっています。昔と違って、今は別にからかわれるということもありません。実際にはこれまでもずっとそうだったのでしょうが、現在では、どちらの性別の子どもの行動には、広い幅があります。女の子でも、おしとやかで静かな子もいれば、活発で大胆な子もいますし、同じく男の子でも、思慮深く用心深い子もいれば、積極的ですぐ行動に移す子もいますよね。

 大事なことですが、お子さんの男の子っぽさ女の子っぽさについて否定的に考えて、直そうとしないでください。たとえば、「男の子みたいよ!」と娘さんに言ったり、「女みたいに投げるな!」と息子さんに言うようなことは止めるようにしてください。このように否定的に矯正しようとすると、子どもは自分が何者なのか、逆に恐ろしく不安になってしまいます。

 まだこの時期の子どもは、反対の性別であるかのように遊ぶことは珍しくありません。まだ小さな男の子が女性のように着飾ったり、まだ小さな女の子が、自分は男の子だと言ったりすることはあるのです。皆さんのお子さんがそういうことを言ったりやったりしても、それは息子さんや娘さんが性分化疾患を持って生まれたこととは関係ありません。性分化疾患を持たない子どもでも、この年代ではそういうことはたくさんあります。お子さんがどのように感じどのように振る舞うか全く無視するべきだとは言いませんが、ちょっとしたお子さんの言動だけで、お子さんの性別が決まるほど、心の性別とは単純なものではありませんし、ましてや「間違った」性別を判定してしまったとは思わないようにしてください。

  

ピーター・トリンクルさん

 幼年時代のこの時期、子どもは自分自身のセクシャリティにも好奇心を持つようになりますが、もちろんまだそれを言い表すことばを持っていません。この時期で子どもは、自分の性器がある種の気持ちよさを生み出すことを発見することもあります。自分の性器を触ったり遊んだりすることは、この時期の発達段階では普通に見られ、自然で健全なことです。自分自身の性器に興味を持ったからといって、それを阻止したり叱ったりしてはいけません。もちろん、外ではあまりそういうことは言ってはいけないという、内と外の違いも学ばなければなりません。お子さんが性器いじりをしたそうなときは、静かな時でひとりなら大丈夫だよと説明してあげて下さい。それと同時に、もし他の子や誰かが性器を触ってくるようなことがあったら、必ず親に言わなきゃならないということも知っておいてもらうようにしてください。性分化疾患を持った子どもは、性器の検査をたくさん受けていきますので、嫌なのに性器を触られるということから自分自身を守るということを学んでいくようにする必要があります。嫌だ!と思うような触り方をしてくる人がいたら、必ず親に言うように、お子さんに時々話しておいてあげて下さい。決してお子さんを怖がらせるのではなく、けれども、自分にとっての「プライヴェートな大切なところ」は自分自身のものであり、誰か他の人のものではなく、自分自身のためにあるのだということを、お子さんに分かってもらうようにしてください。

12ヶ月から36ヶ月まで

6歳から11歳頃まで

(小学校の頃)

オランダの文部科学省に当たる教育文化科学省の解放政策局の要請により、政策研究機関である社会文化計画局が作成した、世界ではじめての国家機関による、DSDs(体の性の様々な発達:性分化疾患)を持つ人々の実態調査書を日本語に翻訳しました!

 

探索的調査としながらも、DSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。

 

近年日本でも、教育現場や地方・国レベルで、性的マイノリティの人々の一つとしてDSDsが取り上げられるようになっていますが、DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 

性教育などでDSDsについて触れたり、地方・国レベルでDSDを持つ人々と家族についての政策を進言したいとお考えの皆様には、とても参考になる資料です。是非ご参照下さい。

オランダ社会文化計画局報告書

 「インターセックスの状態/性分化疾患と共に生きる」

ネクスDSDジャパン DSD(性分化疾患)を持つ子どもと家族のための総合情報サイト

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日本性分化疾患患者家族会連絡会:ネクスDSDジャパンは、世界のDSDs患者家族会・サポートグループと連携し、主にDSDを持つお子さんとご家族のための医療ケア、子育ての疑問などについて、世界中のサポートグループからの情報を発信し,日本の性分化疾患各種患者家族会との連携をしています。

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(図5.1)生まれる前の外性器の発達