6歳から11歳頃まで(小学校の頃)

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。また、性分化疾患は、同じ診断のつく体の状態でも個々に状態像は異なり、全てに当てはまる100%の方法というものはありません。ですので、ここに書いてあることが必ずしも正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。お子さんの体の状態・発達や、精神的な成長について、担当のお医者さんや児童精神科医、臨床心理士などとよく話し合った上で、ご家族それぞれの方針を立てて行っていただければと思います。

 児童期(6歳から11歳頃まで)の子どもは、精神的能力、肉体的能力、ことばの能力、自己コントロール、友達との友情、そして社会的能力で、更に成長し続けます。一般的には、この頃の子どもは論理的に考えることができるようになり、現実と空想の区別もつくようになっていきます。問題を解決する力も身につけていき、集中力も続くようになり、時間や自分の周りの世界も意識しはじめ、物事を準備したり計画したりすることを覚えていきます。

 この時期になると、子どもは少しずつ親への甘えから脱却していきます。とりあえずの期間は、親がいない代わりに、毛布や動物のぬいぐるみを使って、自分を安心させようとすることもあるでしょう。けれども、小学校に通うようになると、親ばかりだけの状態から、自分の友だちも信頼するようになっていきます。この変化は、お子さんが更に自信を持てるようになっている証拠でしょう。これは皆さんが親として立派な仕事を成し遂げたという証拠でもありますので、安堵するべきことなのです。ですが、ご両親にとっての思いは、逆のことが多いでしょう。子どもが成長し親から離れはじめると、多くの親御さんは、自分自身にも子どもにも不安を感じるようになります。これは特に、子どもが性分化疾患のような何らかの疾患を持つ場合、よくあることです。子どもが成長するにつれ、親は不安が大きくなり、子どもを守らんと、子どもの活動を制限しようとするかもしれません。これでは、親も子どももストレスがたまる原因になってしまいます。大切なのは、皆さんが、お子さんと自分自身のこのような変化に、まず気がつくことです。こういう状況に対処したいとお考えなら、カウンセリングなども助けになるでしょう。他の親御さんと話をすることも助けになります。

 同年代の友達との友情や友達関係は、この発達段階の子どもにとって、とても大事なものです。自分は友だちからどのように見られているか、子どもにとっては更にとても重要なことになっていきます。この時期の子どもはグループを作りはじめ、そのグループを通してそれぞれ自分自身の立場を明確にしていきます。この年代の多くのグループは性別の違いを基本にしており、男の子と女の子それぞれにとってどのようなことが「適切」なのか、たくさんのメッセージを受け取っていくのです。一般的には児童期のあいだは、女の子は女の子同士で遊び、男の子は男の子同士で遊びますが、これはいつもそうというわけではありません。皆さんのお子さんも、自分が一番心地いいと思う友達と一緒にいることを選ぶようになるでしょう。

 この発達段階でも、お子さんの性自認に関する表現について、お子さんを安心させ、支持しつづけることが大切です。ここでも、お子さんにとって普通であることが、お子さんにとっての普通なのだということを忘れないでください。それがたとえ、他の人にとってはそうでなくても。お子さんは皆さんの愛情と受け止めから力を得るのです。

 小学校の間は、子どもにとっては難しい時期にもなりえます。この年代のグループでは、子どもは更に、友達から自分がどんなふうに見られるかとても意識するようになります。この時期の子どもの自己感覚や自尊心のほとんどは、自分が友達からどう見られるかによって形づくられます。中には、友達に受け入れられなかったり、友達の中に溶け込めてるように感じられなくて、難しさを感じる子どももいます。ですがこれは、同じ年代の他の子どもと違うところを持っているかどうかに関係なく、すべての子どもに起こりうることです。

 お子さんがそういう難しさを感じているとしても、それは必ずしも現実を反映しているとは限りません。実際には周りの子どもが仲間はずれにしていなくても、この子は自分たちと違うと見ていなくても、子どもの中には、強く「自分は違う」というとても強い思いを持つ子どもがいます。このような場合は、親御さんがどれだけ子どもをサポートしようとしても、子どもは不安に思い続けて、親御さんがもどかしくなるということもあります。ここでも大事なのは、皆さんがお子さんにできることについて、現実的な感覚を持つことです。皆さんは、お子さんの不安や悲しい思いの全部を消し去ることはできないのだということを思い出してください。ご自身のそういう思いだって、皆さんは全て消し去ることはできないでしょう。もしお子さんがそういう思いを抱えていると感じられるなら、ご自身だけで抱え込むのではなく、お子さんの担当医師や、メンタルヘルスの専門家、サポートグループを利用するようにしてください。皆さんがひとり孤独に葛藤することがないよう、お子さんを支援するネットワークを作っていくようにするのです。 

デイヴィッド・キャメロンさん

 性分化疾患を持つ子どもの親御さんたちは、その多くが、この児童期からおとなになるまでがたいへんだろうと、おっしゃっています。この年代は、お子さんが、自分が平均とは異なるということを本当に理解していく時期だからです。親御さんたちは、そういう時期は、お子さんが感じていることを話してもらえるようにする時間を作るのがいいと提案してくださっています病院のソーシャルワーカー看護師さんカウンセラーなど、外に話を聞いてもらえるような人に、お子さんをつなげるのも助けになるでしょう。同じような状況・状態にある子どもと交流を持つのも、お子さんのためになります。似たような体験をしてきた同じような状態を持つ大人にも。そういう大人の人と出会うことで、自分も「やり通せるのだ」という感覚を子どもが持てるようになることが多いです。お子さんが求める分の、お子さんの状態についての情報や医療履歴を教えていくのもいいでしょう。お子さんがそういう情報を恐れているようなら、お子さんがどれくらい知りたいか聞いてみて、お子さんの流れに任せるようにするのです。 

 小学校も高学年頃になってくると、お子さんから治療や手術という選択肢について聞いてくるかもしれません。この発達段階では、子どもは自分を友達と比べるものです。子どもはもしかしたら、もっと他の男の子や女の子のようになりたいと思い、そうなるための方法を考えているのかもしれません。性分化疾患を持つ子どもの親御さんの中には、小学校高学年頃からのホルモン療法や手術の可能性を考えはじめる方もいらっしゃいます。治療の可能性についてお子さんと話し合いをされるときに大切なのは、お子さんの気持ちと望みに注意深く耳を傾けることと、治療選択肢それぞれにあり得るリスクと利点を、お子さんと共に調べることです。たとえば…



子ども: 「わたし、性器を普通に見えるようにしたい。他の子と同じように見えるように今すぐ手術できない?」

 

親: 「他の女の子と同じように見えるようにしたいんだよね。じゃあ、あなたがどうしたいのか質問リストを作ってみようか。もっといろいろ分かるようにね。それでそれをお医者さんのところに持って行って、いっこずつ聞いてみよ。どうするのか、いろいろ良い点と悪い点があるだろうし、それをちゃんと聞いておかなくちゃね。それに、同じような状態を持ってるお姉さんがいると思うから、手術を受けた人と受けてない人を見つけて、それぞれ話を聞いてみない?どうだったかって。お母さんは、あなたにちゃんと納得できる決断をしてもらいたいの。今すぐ手術を受けたいっていうのは分かるわ。それがどんな気持ちかも。でも、お母さんにとっては、長い目で見て、あなたが幸せでいられる決断をしてもらいたいの。だから、一緒にやっていきましょ。じゃ、まず紙を持ってきて、質問リスト作ろ。」

エスター・モリス・レイドルフさん

 もしお子さんが既に手術を受けているなら、この機会に、前に受けた手術のことをお子さんと話をするのがいいでしょう。いつ手術をしたのか、どんな手術だったのか、お子さんに知ってもらうようにしましょう。こんなふうに、お子さんに聞いてみましょう。
 

 

親: 「お前が受けた手術のこと、もっと知りたいか?なぜお父さんたちがお前の手術をすることにしたのか、手術が終わった後おまえがどんなだったか、手術してるときお父さんたちがどんな気持ちだったか、お前が聞きたかったらね。」
  

 

 どこまで話し合いをするのか、どこで話を終えるのか、それはお子さんに決めてもらうようにしましょう。次の日に、こう聞いてみてください。「あなたが話したいと思ったことで、まだ話せてなかったことってある?どんなことでもいいのよ」。こうすれば、お子さんに、もっと話してもいいんだと分かってもらえます。

 

 小学校時代を過ごす中で、皆さんのお子さんも、他の人への自分の性的な気持ちに気づいていかれるでしょう。そういう流れの中で、お子さんはご自身の性的指向を理解しはじめます。つまり、お子さんが娘さんであれば、男の子を好きになるか、女の子を好きになるか、それとも両方を好きになるのか分かるようになってくるのです。子どもは自分が男の子を好きになるのか、女の子を好きになるのか、両方を好きになるのか、自分で選ぶことはできません。子どもは自分の中のこのような気持ちに、少しずつ少しずつ気がついていきます。男の子であれば女の子を好きになる(女の子であれば男の子を好きになる)子どもでも、自分自身の性的な気持ちには最初は戸惑うことがほとんどです。同性の子が好きだったり、両方を好きになる子どもは更に戸惑われることでしょう。自分の周りから、それはダメだよというメッセージを受けるわけですから。

 自分が同性の人を好きであったり、分け隔てなくどちらの性別の人も好きであるということを、もしお子さんが自分自身で嫌だったり当惑されていたりすると、学校での家族も参加する行事やスポーツなどに、人並みはずれてがんばることで、皆さんに対して「埋め合わせ」をしようとするかもしれません。皆さんがそう望むだろうと思い込んで、お医者さんで治療しようとされるということもあるかもしれません。なぜならそういう子どもは、同じ性別の人を好きになったり、両方ともを好きになったりする自分に罪悪感を感じているからです。この時期に皆さんのお子さんが、これからの長い人生に関わる治療(二次性徴をうながすためのホルモン療法や、性器の手術を受けると決めること)決心されるところであれば、治療でからだを変える決断は、お子さん自身がお子さん自身のためにすることが、非常に重要です。ただ単に親御さんが安心するためにお子さんを誘導したり、親御さんが安心できる型にお子さんをはめようとしてはいけません。お子さんが治療を希望する理由が全然はっきりしない場合は、プロのメンタルヘルスサポート(病院の臨床心理士など)にご相談いただくのもいいかもしれません。そうすれば、お子さんは自分の気持ちや、治療を受けたい理由を、こころの中で整理できるでしょう。「お父さんお母さんたちは、そのままのおまえを愛しているし受け入れている。私たちのためにからだを変えようと思ってるのなら、それは必要ないよ」ということを、お子さんに知ってもらうようにしてください。

 性について話をしはじめるのは、子育ての中でも一番難しいことのひとつでしょう。ほとんどの親御さんにとって、やりにくいことだと思います。セクシャリティについてお子さんと話すのは難しいことですが、それを乗り越えることで、お子さんは自分自身を大丈夫だと思えるようになりますし、お子さんが自分自身について良い選択をする助けにもなります。性分化疾患を持つ方たちのお話では、自分のからだのことを話し合って、自分がどうしたいかちゃんと考えてはっきりさせたいと思ってもそうできなかったので、自分の性のことについていい加減なことになってしまうことがあったそうです。たとえば、生殖能力を持てないと知った、性分化疾患を持つ女性の中には、だったらコンドームを使う必要がないと、性交渉で性感染症になってしまったという人もいらっしゃいます。セクシャリティについては、こんなふうに話をはじめてみられてはいかがでしょうか?

 

 

親:  「あなたが成長したら、性もね、成長していくの。性のことって、話しにくいよね。でも、分からないこと聞いてくれれば、お母さんも答えられるかもしれない。性のことで、なにか困ってることある?不安に思ってることとか…。」

 

 

 性のことについて話そうとしても、やはり大きく戸惑いをお感じのようであれば、皆さんが信頼できる誠実で支えになってくれそうな人と、お子さんが話をできるようにするというのもひとつの手です。お子さんが親しくしている看護師さんやお医者さん、他の家族メンバーや名付け親の方などがいいかもしれません。その場合は、性分化疾患について、これはちゃんと自分たちからお子さんに話したいと思っていることを、その人たちがたまたま話してしまうということがないように、事前に親子でどこまで話をしているか知っておいてもらうようにしてください。

 お子さんの成長に合わせて、自分のからだは自分自身のものであり、自分が嫌だと思う、安全じゃないと思うようなふうに、自分のからだを扱われてはならないのだということを、くり返しお子さんに理解してもらうようにしてください。嫌だなと思ったり、安全じゃないと思う、あるいは暴力的だと思ったら、必ず皆さんに話せるよう、お子さんにはたらきかけるのです。病院の性器の検査でも、自分が嫌だなと思ったことを皆さんに話せるようになれば、皆さんからお医者さんに、それはストップしてもらうようお願いすることもできます。お子さんには、自分自身のセクシャリティを自分自身が大切にできると思え、自分の人生を幸せで健やかに感じられるようにしてあげてください。

3歳から5歳頃まで

(小学校に入る前まで)

思春期

オランダの文部科学省に当たる教育文化科学省の解放政策局の要請により、政策研究機関である社会文化計画局が作成した、世界ではじめての国家機関による、DSDs(体の性の様々な発達:性分化疾患)を持つ人々の実態調査書を日本語に翻訳しました!

 

探索的調査としながらも、DSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。

 

近年日本でも、教育現場や地方・国レベルで、性的マイノリティの人々の一つとしてDSDsが取り上げられるようになっていますが、DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 

性教育などでDSDsについて触れたり、地方・国レベルでDSDを持つ人々と家族についての政策を進言したいとお考えの皆様には、とても参考になる資料です。是非ご参照下さい。

オランダ社会文化計画局報告書

 「インターセックスの状態/性分化疾患と共に生きる」

ネクスDSDジャパン DSD(性分化疾患)を持つ子どもと家族のための総合情報サイト

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日本性分化疾患患者家族会連絡会:ネクスDSDジャパンは、世界のDSDs患者家族会・サポートグループと連携し、主にDSDを持つお子さんとご家族のための医療ケア、子育ての疑問などについて、世界中のサポートグループからの情報を発信し,日本の性分化疾患各種患者家族会との連携をしています。

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