青年期(11歳から18歳頃まで)

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。また、性分化疾患は、同じ診断のつく体の状態でも個々に状態像は異なり、全てに当てはまる100%の方法というものはありません。ですので、ここに書いてあることが必ずしも正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。お子さんの体の状態・発達や、精神的な成長について、担当のお医者さんや児童精神科医、臨床心理士などとよく話し合った上で、ご家族それぞれの方針を立てて行っていただければと思います。

 青年期は、人生の中でも、肉体的にも感情的にも知的にも、大きな成長を遂げる時期です。青年期前半では、子どもは、子どもっぽい考えを後にして、より大人の思考をするようになっていきます。抽象的なことや人間関係、自分の人生について考えるようになっていくのです。この変化は、あるときに突然起きるものではありません。成長した考えをする能力は行きつ戻りつ育っていくのですが、このために子ども自身やその周囲の人たちも巻き込んで、大きな混乱を起こすことがあります。

 思春期からはじまる肉体的変化は、青年期の子どもにとって混乱と不安の元になることがあります。人生の中でのこの段階、お子さんには、メンタルヘルスの専門家なども含めた医療関係者や家族からの特段の支援が必要になることもあるでしょう。お子さんを、成人した性分化疾患を持つ人に会ってもらうのも助けになるでしょう。そういう機会があれば、お子さんは、同じような状況にある人が実際に青年期を「乗り切り」、なんとかやり遂げたことを知ることができるでしょう。

 思春期にお子さんに起こる最初の肉体的変化は、お子さんにとっては不意を撃たれるようなものになることがあります。思春期に起きる変化について、お子さんと皆さんとで事前に勉強しておくことで、皆さんとお子さんとで心の準備をしておくことが大切でしょう。小さい頃から、こころの性別やセクシャリティ、お子さんの性分化疾患のことを話すようにしていたなら、思春期や二次性徴について話し合うのは、まだやりやすいでしょう。もしそうじゃなかったら、今こそ本当に話をはじめるときでしょう。お子さんは、自分のからだに起こっていることをちゃんと理解し、自分は大丈夫なんだとはっきりさせるのに、皆さんの助けを求めていることでしょう。


 青年期の心理的発達は、からだの発達よりも大きなものになります。お子さんはこの時期、気分の大きな変動や感情的爆発をいつもよりしがちです。どの子どもでも、この時期には肉体的変化と精神的変化と役割変化を一挙に体験せねばならず、それはどの子どもにとっても難しいものです。もしお子さんの気分の動きが激しくても、それは青年期には当たり前のものなのだと覚えておいてください。難しいかもしれませんが、お子さんとひざを突き合わせて話せる機会をできるだけとり、息子さんや娘さんの思い、興味、関心ごとを一緒に話せるようなチャンスを作ってみてください。そして、もし話ができたら、お子さんの話は真剣に受け止めてあげてください。ただ耳を傾けるようにして、お子さんの言うことに一々文句をつけないようにしましょう。話すたびに文句を言われるようなら、もう話はしたくないと思われてしまいます。

 青年期の子どもの多くは、自意識が強く、自分に批判的になり、からだの見かけをとても気にするようになります。多くは、自分は太りすぎなんじゃないかとか、服がきれいかそうじゃないかとかを心配するのです。男の子よりも、女の子の方がそういう見栄えを気にすると思われがちですが、実は青年期では、男の子もその多くが見栄えを気にしています。男の子も女の子も同等に考えてあげてみてください。私たちは女の子にはしょっちゅう見栄えの話をしますが、男の子にはこういう類のことはあまり聞かないってこと、ありますよね。親御さん皆さんも、「正しく見える」ようにしなくちゃならないという社会的プレッシャーは理解できるとお子さんに話をされて、そういうプレッシャーを感じているか聞いてみてもいいでしょう。こういうことをお子さんと一緒に考える機会があると、お子さんの自尊心(自分が自分自身のことをどう感じるかということ)について、もっと話し合えるようにもなるでしょう。10代の子ども全員がこういう課題で悩むというわけではありません。でも、もしこういうことで悩んでいて、それが自分ではどうしようもないほど大きいものであれば、息子さんや娘さんを支える方法はたくさんあります。プロのカウンセラーやセラピストによる支援が効果的であることが多いです。

 青年期になると子どもは、肉体的にも精神的にも、より一層おとなになっていく自分を知っていきます。彼らは両親からの自立を望むようになっていきます。この年代の子どもが親離れをしはじめ、自立と自分自身のアイデンティティを求めるのは普通のことです。この時期の最初の頃には、外で家族と一緒にいるところを見られるのを嫌がるのも普通のことです。家の中でも、もっと自分ひとりでいられる時間とスペースが欲しいと言ってくることもあるでしょう。以前にはなかった「見ないで!入らないで!」という札が、子どもの部屋のドアにかかっているなんてこともあるかもしれません。こういう時期に、お子さんと繊細な話題を話そうとしても、こころの性別やセクシャリティについて、突然お子さんが話すのをためらうようになるということがあっても、別に驚くようなことではありません。青年期の間は、友達や仲間のグループが何よりも重要なものになることが多いです。仲間のグループに受け入れられているかどうかが、子どもにはとても重大なことになるのです。この時期の子どもは、グループからのけ者にされないために、仲間に受け入れてもらえるよう行動しようとします。そのプレッシャーは強力なものです。

 この時期の子ども全員が友達を持つわけではありませんし、仲間から受け入れられているとも限りません。青年期は、時に、ひとりを仲間はずれにしたり、孤立させたり、からかったりするということがあります。こういう残酷な行動はこの時期には稀なことではありませんが、孤立させられた子どもにとっては、とても心痛むものとなります。もしお子さんにこういうことがあったら、「いじめは絶対になくす」というルールで、学校と相談するようにしてください。(学校はいじめを絶対に容認しないというルールを示してもらうのです)。もしお子さんが仲間はずれになっているようなら、皆さんにもできることがあります。特に子どもが傷ついているときには、お子さんの気持ちに耳を傾けることが重要です。ちゃんと聞いているよと態度で示してあげましょう。お子さんの表情から目をそらさず、非難するように腕を組まずに、じっと聞ける姿勢で耳を傾けるのです。お子さんが言ったことを時々繰り返して、ちゃんと聞いているよという態度を示しましょう。お子さんが言ったことを、そんな気持ちたいしたことないと「言いくるめる」のではなく、お子さんが言ったことをそのまま返してあげてください。そうすれば、聞いてもらってるんだ、真剣に自分の気持ちを取り合ってくれてるんだと、お子さんに伝わります。

 性分化疾患を持って生まれたから、受け入れられないなんてことはありませんが、そういう状態で生まれた子どもは平均の状態とは異なり、私たちの社会では、そういう平均とは異なる人々が隅に追いやられるようなことが多くあります。お子さんも、自分の周りで見たり聞いたりすることから、こういうことを知っていかれるでしょう。たとえば、性のことで平均とは違う人々への中傷や、障害を持って生まれた人への心無いことばなど、そういうことをお子さんも見たり聞いたりされていくと思います。ここでも、お子さんの気持ちに十分に耳を傾けてください。そして、もし誰かがお子さんや、お子さんのような人に心無いことばを言っていたら、それは、お子さんのような人はダメだと勝手に思っているその人たちが不公平な人なのだ、「あなたは、性分化疾患のことだけじゃない、もっといろいろな側面を持った一人の人なのだ」ということを、お子さんに教えてあげてください。お子さんが、自分は何者なのか、さまざまな側面からできたひとりの人間として(新聞部のメンバーであるということや、劇団グループの一員なんだということ、弟や妹の優しい兄や姉であるということなど、そういうものを全部含めて)、自分自身を理解できるように皆さんがお子さんを支えられたら、いじめの影響は少なくなるでしょう。お子さんが参加できて、楽しいと思えるような、満足を得られるような、お子さんがお子さん自身として受け入れられていると感じられるような校外活動を、お子さんと一緒に探すのもいいでしょう。学校でいじめを受けている子どもは、地方の子ども劇団や趣味のグループ、スポーツグループなどの学外の活動で、肯定的な体験を積んでいけば、さまざまなことを体験できるだけでなく、性分化疾患のことに囚われてしまうのではない、「もっと大きな視点」で自分自身が何者なのか学んでいけるようになるでしょう。

 

 先にお話したように、青年期を迎える子どもにとっては、思春期は性の目覚めにあたります。子どもは性的な気持ちを大きく感じるようになり、他の人に対してはっきりとした身体的魅力を感じるようになっていきます。この時期の子どもは、ボーイフレンドやガールフレンドのこと、デートのことなどを考えるようになります。皆さんのお子さんは、そういうセクシャリティについて、特定の心配をされるかもしれませんし、されないかもしれません。ですが、好きな人に魅力を感じたりすることへの戸惑いや、どうやってつき合えばいいのか分からないといった心配は、青年期の子どもにはみんな普通に見られることです。これまでと同じように、皆さんや誰か他の専門の人からの、性教育が重要になるでしょう。皆さんが自分ではどうしていいのか分からない場合や、お子さんが皆さんのほかの人とも話をしたいと希望される場合は、青年期の性について詳しいカウンセラーを探せば、支えてくれますよ。そういうカウンセラーを見つけるには、お子さんの担当医やサポートグループに問い合わせてみてください。お子さんの人生のこの時期、どんなふうにお子さんに接すればいいか、その例を挙げてみましょう。

 

 

親: 「性のこと、お前がお父さんに話してもいいって思ってるかどうか、お父さんには分からないけど、お前が何か聞きたいことがあるんなら、言ってくれればいいぞ。そうだったら、お父さんはちゃんと話しをしようと思ってる。お前が聞きたいこと、言いたいこと、どんなものでもな。ちょっと恥ずかしくなるかもしれないけど、話せればいいと思ってる。(ここで一旦止めて、必要なら、こう続けましょう。)性のことは、他の人に話すほうがいいと思ってるなら、同じような仲間や、専門のカウンセラーと話せるようにすることもできるぞ。」

ジェーン・ゴトーさんとお母様

 妊娠が可能かどうか、この段階でお子さんが気にされることもあるでしょう。お子さんが娘さんなら妊娠ができるのかどうか、息子さんなら相手の女の子に妊娠してもらえるのか、それぞれどうすれば妊娠が可能なのか、皆さんから聞いておきたいというお子さんもいらっしゃるでしょう。もしお子さんが不妊ならば、お子さんが生物学的な親になるのに、人工生殖技術が役に立つかもしれないこともあるし、そうじゃない場合もあるということをお子さんと話し合うようにしてください。(可能かどうかの結論は、お子さんの担当医やサポートグループが、答えられると思います。)養子縁組についても話をしておいてください。養子縁組した子どもを持つ家族をお子さんに紹介すれば、こういうことも可能なんだとお子さんに分かってもらえるでしょう。

 前にもお話したように、お子さんは、からだの見た目を変えたり、性徴を進めるような、外科手術やホルモン療法をどうするかお考えになるでしょう。お子さんには、どういう選択肢があるのかということと、それぞれのリスクと長所、それぞれどんな結果になるのかということを、ちゃんと調べておいてもらうようにしましょう。そして、息子さんや娘さんにとってよりよい決断ができるよう、じっくり考える時間をあげてください。お子さんは、自分が性分化疾患を持っていることや、あるいは自分が同性の人を好きになるということを、親御さん皆さんに「穴埋め」しようとしたり、「場に馴染もう」とするために、外科手術やホルモン療法を考えるという場合もあります。そのような様子があれば、その選択が、長い目で見て自分自身にとって本当に正しいものなのかどうか、お子さんが落ち着いて考えられるよう、必ずメンタルヘルスの専門家に相談させてあげるようにしてください。

 性分化疾患を持つ人は、青年期、同じような状況を分かち合える人と会う機会がないと、一人ぼっちで孤独のように感じられるかもしれません。お子さんがかかっている病院のソーシャルワーカーや看護師さん、子どもの生活の専門家に問い合わせてみれば、お子さんと同じ状況にある人にアクセスできるかもしれません。性分化疾患を持った同年代の子どもや年上の人は、自尊心やアイデンティティの問題に葛藤する10代の子どもにとっては、共感できる生きた見本となってくれるでしょう。同じか似たような性分化疾患を持つ人と会うことは、自分は全くただの普通の人間でしかないんだということをお子さんが再確認できる、大きな役にたってくれるのです。

 お子さんのセクシャリティについて考えることで、皆さんが深い悲しみの感情を抱かれても、その感情は十分ありうることですので、動揺しないでください。お子さんは、自分が「普通の」からだを持って生まれなかったことを悲しまれる時期を過ごされることがあるかもしれません。性分化疾患を持った子どもは、誰かを好きになって付き合いたいと思っても、それが大きなストレスを引き起こすこともありえます。「誰も自分と一緒にいたくないだろう。自分は性的に違うのだから」と。こういう思いは、息子さんや娘さんが同性の人を好きにだと分かった場合、更に強いものとなるかもしれません。拒否されるのではないかと恐れ、誰かと付き合いたいと思うことさえしないようにされるということもあるかもしれません。もしお子さんにそういう様子があるようなら、誰かと付き合うということは、からだのパーツの問題なのではなく、大切な関係を育んでいくことなのだと、お子さんに何度も何度も話してあげてください。どういうふうに大切な関係を結んでいくのか、息子さんや娘さんが考えるのを手伝ってあげてください。皆さんご自身の経験から、お互いの愛情と受容こそが大切なのだと、お子さんに示してください。どうやって好きな人との関係を育んでいくのかということや、性分化疾患のことをボーイフレンドやガールフレンドに話すという課題については、お子さんとカウンセラーが一緒に考えていくということも検討してください。同じか似たような性分化疾患を持つ年上の人と会い、その人が幸せな関係を長く続けているのを見れば、皆さんもお子さんも心強くなれるでしょう。

 このセクションでは、思春期から起こりうるたくさんのストレスや課題についてお話ししてきました。けれども、お子さんが成長して大人になっていくという、特別の喜びも同じようにあるのだということは忘れないで下さい。お子さんもこの時期になれば、皆さんとたくさんの興味深い話を話せるようになりますし、一緒にもっと大人びたことを共有できるようになるでしょう。(たとえば、もっと難しいスポーツをされたり、ニュースを一緒に見て話し合ったり、有意義なボランティアに参加したり、もしかしたら性分化疾患を持つ家族のためのサポートグループの運営に加わったりなんてこともあるかもしれません)。皆さんが子どもと一緒にいろいろなことを話したりやったりすることを楽しんでいる姿をお子さんが見せてあげてください。自分が自分自身であることはとても大切なことなのだと、お子さんに話してあげてください。親御さん皆さんの人生の歴史を話してあげてください。そうすれば、自分が成長し立派な大人になっていくのを見るのが皆さんは楽しみなのだと、お子さんに分かってもらえるでしょう。

思春期

人生を、共に。

オランダの文部科学省に当たる教育文化科学省の解放政策局の要請により、政策研究機関である社会文化計画局が作成した、世界ではじめての国家機関による、DSDs(体の性の様々な発達:性分化疾患)を持つ人々の実態調査書を日本語に翻訳しました!

 

探索的調査としながらも、DSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。

 

近年日本でも、教育現場や地方・国レベルで、性的マイノリティの人々の一つとしてDSDsが取り上げられるようになっていますが、DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 

性教育などでDSDsについて触れたり、地方・国レベルでDSDを持つ人々と家族についての政策を進言したいとお考えの皆様には、とても参考になる資料です。是非ご参照下さい。

オランダ社会文化計画局報告書

 「インターセックスの状態/性分化疾患と共に生きる」

ネクスDSDジャパン DSD(性分化疾患)を持つ子どもと家族のための総合情報サイト

About nexdsd JAPAN

 

日本性分化疾患患者家族会連絡会:ネクスDSDジャパンは、世界のDSDs患者家族会・サポートグループと連携し、主にDSDを持つお子さんとご家族のための医療ケア、子育ての疑問などについて、世界中のサポートグループからの情報を発信し,日本の性分化疾患各種患者家族会との連携をしています。

Contents

YouTube

Twitter

  • Twitter Clean

日本性分化疾患患者家族会連絡会

ネクスDSDジャパン 

© 2013-2019 by nexdsd JAPAN. All rights reserved.