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「正しい性別を選ぶ」

Choosing the right gender

トニー

PAIS(部分型アンドロゲン不応症)

 

 

 

トニーは困難を抱えた子ども時代を送ったが、彼はそれをはね返すほどの柔軟性を持った現実主義者で、素晴らしいユーモアのセンスにもあふれている。

(リリー・ブラッジ記者)
 

 部分型アンドロゲン不応症(PAIS)にも様々な表現型があり、現在ではしっかりとした厳密な検査を行い、男性か女性かが判定されているのですが、トニーさんが生きていた時代、欧米やオーストラリアでは、現在のような検査技術もなく、あるいは検査も行われず、行われたとしても、ペニスの長さだけで性別を振り分け、女児として育てる場合は、本人に知らせることもなく、ペニスと精巣を切除し女性ホルモンを打ち、手術で膣を作るという「治療」が行われていました。

 

 トニーさんはまさしく、そういう「治療」が本人の意志とは関係なく行われた人です。同じPAISを持っているジムさんのライフストーリーとはまた異なり、辛い人生を歩まれていますが、トニーさんはそういう困難の中から、大切なことを学んでいかれます。

 

※PAIS(部分型アンドロゲン不応症)を持つ人は、そのパターン・ケースによって、男性の方もいらっしゃいますし、女性の方もいらっしゃいます。

僕が女の子だってはっきりちゃんと受け入れられるようにって、僕の両親は、僕をそう育てることを絶対疑っちゃダメだって言われたんだ。

 トニーは困難を抱えた子ども時代を送ったが、彼はそれをはね返すほどの柔軟性を持った現実主義者で、素晴らしいユーモアのセンスにもあふれている。(リリー・ブラッジ記者)

 トニーは1970年アルトナ病院で生まれた。しかし医師たちは彼の性別を確定できなかった。双子のもうひとりの妹キャサリンは自信を持って女の子だと告げられたが、トニーには多くの疑問が挟まれた。

 さらなる検査のために王立こども病院に送られ、トニーは不完全型睾丸性女性化症(現在では部分型アンドロゲン不応症と呼ばれる)という稀なインターセックスの状態を持って生まれたことが判明した。

 トニーは染色体的には男性であることが判明したが、医師たちは彼を女性として育てた方がいいと判断した。彼の両親には、彼は女の子であり、それに従って育てるよう勧めた。彼らの息子には精巣があるとは言われず、性腺(医学的に卵巣もしくは精巣に分化する以前の状態)があるだけだと告げられたのだ。

 マルタからの移民で限られた英語しか理解できなかったトニーの両親は、診断方針に疑問を挟むことなく、「アントワネット」には女性の生殖器官がなく、決して子どもは産めず、何度も手術と生涯に渡る女性ホルモン補充が必要ということを受け入れるしかなかった。

 「僕が女の子だってはっきりちゃんと受け入れられるようにって、僕の両親は、僕をそう育てることを絶対疑っちゃダメだって言われたんだ。つまり、部屋はピンクにして、クリスマスや誕生日には人形をたくさん与えて、フリルのドレスを着せて、2歳になったら耳にピアスの穴をあける、っていうふうにね」。そういう彼への教育が邪魔されないようにと、トニーの子ども時代は夏休みを王立こども病院で過ごすために何度も中断させられた。

友達はたくさんいた。けれど、学校でのダンスなんかには絶対参加しなかった。勉強と音楽ばっかりやってた。

 彼が7歳になる頃、ペニスが成長し始めた。精巣は癌になっているから切除することになるので、結果的にはこれ以上男性化することはないと、医師たちは彼の両親に誤って知らせたと言う。

 現在、約5,000人のオーストラリア人が他の人とは少し違う形の外性器を持っていると診断されている。アンドロゲン不応症は133,000人に1人の割合だ。

 

 

 

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 子どもから青年になる間、彼が数カ月ごとに受けた検査で、まるで自分は見世物小屋の奇人変人のように感じたと、トニーは語る。

 

 医師たちはそれを拒否して、どれだけ男性ホルモンを入れても、体に拒絶されるだけだと言った。彼がこれは真実ではないと知ったのは、1999年になってからだった。

 「僕が部分型アンドロゲン不応症を持っているって、彼らは絶対言わなかったんだ。部分型じゃない、完全型だってね。この2つには違いがあるって彼らは説明しなかった」。

 部分型アンドロゲン不応症であるということは、彼は医学的介入なしでもある程度男性の性徴を迎える可能性もあったかもしれないことを意味する。人工的な女性化を彼に強制するのではなく、最終的な性別で生きるか自分で選べるようになる年齢までは、医師は外科手術の実施やホルモン療法を控えるべきと彼は主張する。失意と怒り、そして絶望。10代の頃は時に自殺を真剣に考えたこともあった。「まるで全く光のない、永遠に続く真っ暗なトンネルにいるようだった」。

 彼は学校では自分は全く普通の女の子だとしていたが、決して女の子として誰かと付き合うことはなかったと言う。「友達はたくさんいた。けれど、学校でのダンスなんかには絶対参加しなかった。勉強と音楽ばっかりやってた」。

 

 VCE(オーストラリア、ビクトリア州の高校終了検定試験)の後、彼は大学の工学部に入った(その学部ではその年女性は彼を含めて2人だけだった)。「ああ。女性がひとりいたよ。あとは男性49人と僕だ」。

 トニーは自分は女性だということを何とか受け入れようとしていた。「やけくそになって、周りが僕に望むことをやったよ。普通の女の子になるようにってね」。彼は最初のボーイフレンドと結婚をする。夫は彼のからだの状態の真実を承知していたが、結婚生活は長くは続かなかった。自然に女性のことが好きになり、次に彼は、自分は同性愛の女性なのだと思うようにすることに。「でも、どっちもピンとこなかった。レズビアンであるためには、僕は女性である必要があるから」。

 

  

子どもにとっては彼は、ただのトニーなのだ。

  2000年、30歳の時、トニーはきっぱりと、常に彼が感じていたように、つまり男性として生きていこうと決意する。

 

 身長は158センチしかなく、がっちりした小柄な体格。医学的介入がなければ、通常の身長まで伸びていただろう。「医師たちはわざと僕を158.2センチにしたんだ。(何もされなければ)僕の身長は大体173から178センチはあったと思う。けれども、それは女の子にしては高すぎると思われたんだろうね。だから今、僕はとても背が低い。ずっと不十分な身長だと思ってる」。国防省で航空宇宙エンジニアを勤めながら、トニーは今でもアルトナに住み、コミュニティの活動と支援を熱心に行なっている。ちょうどシーブルックのコミュニティセンターの議長に選ばれ、AISサポートグループの書記、それにビクトリア州の遺伝子疾患サポートグループの第2期会長も務めている。 アルトナ移住者の第3世代として、この地域と人々の福祉活動にも熱心だ。緑の党の候補者として、2000年の連邦議会、2002年の州議会に立候補したが、これには惜敗し、現在はホブソン・ベイ地方議会の無所属候補として選挙活動中だ。 彼は予備選の27%の票を獲得し、労働党の現職の次の2位につけた。 15歳の女の子、13歳の男の子、二人の子どもの里親でもある。ふたりは彼のことを育ての母でもあり育ての父でもあることを承知している。ふたりとも全然気にしてないとトニーは語る。子どもにとっては彼は、ただのトニーなのだ。

怒りや復讐心はない。嘲笑と侮辱、偏見の歳月は、トニーを、素晴らしいユーモアのセンスを持った柔軟な現実主義者にしていった。

 怒りや復讐心はない。嘲笑と侮辱、偏見の歳月は、トニーを素晴らしいユーモアのセンスを持った柔軟な現実主義者にしていった。しかし、真実を追求し、正義を模索する態度には激しいものがある。現在彼は、18歳以降彼に対して行われた医療ミスの疑いで、彼の担当医師の二人を訴え、係争中だ。できるなら子ども時代全部についても同じようにしたいところだが、時効が既に過ぎており、起訴する法的手段はもう残されていないのだ。

 トニーは外性器の再構築手術は受けておらず、この段階ではそのつもりはないと言う。今は男性ホルモン療法を受け続けているが、様々な問題が起きており、何度も感染症にかかったり入院をしたりを余儀なくされている。

 ふたりの子どもや家族、コミュニティへの関わりなどに集中することも好きだが、彼は女性との付き合いには問題を抱えている。「もちろん異性愛の女性と付き合いたいんだ。でも、異性愛男性としての機能が僕には全くない。だから、正直なところ、そういう関係は避けがちだね」。

PAIS(部分型アンドロゲン不応症)とは?

 DSDsのひとつである、部分型アンドロゲン不応症(PAIS)は、男性に一般的な染色体XYと、男性に一般的な性腺を持っているのですが、男性に多い性ホルモンであるアンドロゲンを受け取るレセプターが体に一部しか存在せず、生まれた時、男性か女性か、然るべき検査なしではその場では分かりにくい外性器を持って生まれることもある体の状態です。

 

 現在ではちゃんと検査が行われた上で、パターン・ケースが把握され、男性か女性かを判定するようになっています。ですが、いずれにしても不妊の状態で、多くの男性・女性は孤独の中を生きていらっしゃいます。

※ここでご紹介したトニーさんの場合は、検査技術も無いままに、「治療」によって女性に育てられるということになってしまっていました。PAISを持つ人でも、女性のケース・パターンもあり、PAISを持つ人が全員男性であるというわけではありません。DSDs、更にAISでも様々な体の状態があるのです。

オランダの文部科学省に当たる教育文化科学省の解放政策局の要請により、政策研究機関である社会文化計画局が作成した、世界ではじめての国家機関による、DSDs(体の性の様々な発達:性分化疾患)を持つ人々の実態調査書を日本語に翻訳しました!

 

探索的調査としながらも、DSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。

 

近年日本でも、教育現場や地方・国レベルで、性的マイノリティの人々の一つとしてDSDsが取り上げられるようになっていますが、DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 

性教育などでDSDsについて触れたり、地方・国レベルでDSDを持つ人々と家族についての政策を進言したいとお考えの皆様には、とても参考になる資料です。是非ご参照下さい。

オランダ社会文化計画局報告書

 「インターセックスの状態/性分化疾患と共に生きる」

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