第5章:医療ケアの体験





A.医学的治療について


 外性器の見た目あるいは性腺への外科手術,そして子どもへのこういった医学的介入についての彼/彼女へのインフォームドコンセントといったテーマは,政治的(あるいは医学的)領域での中心の話題になっている。しかしながら,こういった問題は,すべてのインターセックスの体の状態/性分化疾患に関わるものではないことをまず強調しておかねばならない。多くのインターセックスの体の状態で,そういうテーマは特段議論されていない(たとえば古典的ターナー症候群),あるいは診断が思春期もしくは青年期のみである体の状態(CAISやMRKH),手術についてのインフォームドチョイスに十分に参加できる年齢の当事者(すべての治療選択肢のメリットとリスクを伝えられる)という場合が大多数である。また,外科手術的介入にも体の状態によって(そしてそのウェルビーイングへの効果にも)様々なものがある。


 見た目が違う形状の外性器の外科手術は,たとえば,1度限りのもの(たとえば陰核減縮)もあるが,手術が複雑になるために(たとえば高度尿道下裂),複数回の手術が必要となるような体の状態もある。

 年齢が経って新たな問題が起きることもあれば,新たな合併症が発生し手術が必要となることもある。さらに,同じ体の状態/症候群でもばらつきが大きいため,ひとりひとりの治療選択や決断が個々に異なってくる。また,医学的介入としてホルモン治療もあるが,これも体の状態によってその目的が異なってくる。たとえばCAHでは,出生時から抗ストレスホルモンの分泌が不足しているため,そのホルモンの補充が必要となる。またターナー症候群などの体の状態では,性腺が機能していないため,ホルモンを補充しないと二次性徴が起きない。したがって,医学的治療(幼年期・青年期・成人期での外科手術,性腺摘出,ホルモン治療)の転帰に関する議論は,(体の状態の)多様性と,特定の集団の反応を一般化できないということを考慮するべきである。


1.幼少期の外性器手術


 1950年台から1990年代まで,インターセックスの体の状態/性分化疾患のケア方針では,外科手術は,非定型的な外性器の見た目を持つ人々には良好な性心理的well‐beingをもたらす手段であると考えられていた(Money & Ehrhardt, 1972)。


 しかし徐々に,この医学的必要性は,恣意的な基準なのではないか(図4参照)と疑問が付されるようになっている。性別判定に関してそれほどはっきりしないわけではないケース (Lee et al., 2016)での,児童期に外性器の見た目を変えることを主な目的とした不可逆的な外性器への手術介入に対する慎重な姿勢見識が拡大しつつある。こういう姿勢は,たとえばCAHを持つ女児での外科手術に関するコンセンサス・ステートメントや特定ガイドラインといった,近年の多くの臨床ガイドラインでも公的に支持されている(Speiser et al., 2010)。そういったケースよりも明らかな外性器の違いについては,意見は分かれたままで,それは果たして医学的な必要性によるものなのか,あるいは社会的な要請によるものなのかが議論の焦点になっている(Mouriquand et al., 2016)。


図4)北米インターセックス協会が作成した「ファラオメーター」の図

 児童期の「女性化」もしくは「男性化」手術の非医学的な必要性の目的は,外性器の見た目を「非典型的」なものではないようにすること(2)の時もあれば,泌尿器的な適用(たとえば,排尿の飛び散りを調節する,あるいは男児が立って排尿できるようにするなど)の時もあれば,人生の後の性的な能力を広げる(たとえば,ペニスが屈曲していて勃起が困難になるケース)だけに限られない場合もある(de Win, Cuckow, Hoebeke, & Wood, 2012)。児童期での早期介入と,後期介入,あるいは非介入,いずれが,このような子どものための最善の結果となるかは,しっかりとした長期間の方法によるアウトカムの比較研究が欠如しているため,明らかではない。一般的にも,児童期の外科的介入(様々な医師が様々な病院で様々な技法で行っている)の結果を評価するのは難しくもある。この評価には,たいてい15-20年後の,性的なウェルビーイングやセクシャリティ,泌尿器的機能,そして外性器の見た目への影響を評価せねばならないからだ。さらに外科手術の技法は急速に進化しており,常に「時代遅れの」技法の結果を評価するしかできず,子どもに対するリスクを桶の湯水と一緒に流すことになるのである。


 さらに,臨床上の実際の変化を評価するにはまだ早いということもありうる。2006年のコンセンサス・ステイトメントは,児童期の不可逆的な手術について更に「待って様子を見る」方針を打ち立て始めることを考慮したが,現在の大多数の科学的調査研究は,ステイトメントが出された時期あたりやそれ以前に手術を受けた人々のコホート集団に関するものなのである。したがって,2006年以降に生まれた児童たちのコホート集団での結果評価(ただし,2017年時点で実際的なレベルでの結果はまだ完全に評価されていない)が非常に大きなものともなるのだ。


(2)しかしながら,幅広い表現系型のバリエーションを仮定すれば,典型的あるいは「普通の」外性器の見た目を定義できる基準がない(Lloyd, Crouch, Minto, Liao, & Creighton, 2005を参照)。



1.1 成人当事者


 出生時に診断された体の状態を持つ体験専門者の4分の3の人が,性器の手術(たとえばクリトリス減縮術,膣形成術,陰唇拡大術,尿道下裂の手術)を,子どもの頃に受けていた。このような手術についての意見は割れている。体験専門者の中には,治療のタイミングや医学的必要性を疑問視せず,まだ子どもの頃のこういう治療について後悔していないという人もいた。たとえば,あれは「必要悪でした」(40代のCAHを持つ女性。陰唇とクリトリスの減縮術について)という言葉が示しているし,「もし必要ないなら不必要な手術なんてしないですよね」(PAISを持つ男性:19歳。尿道下裂の手術について)と,医師に対する大きな信頼感を持つ人もいた。このグループの人々はみな,思春期にもさらなる性器の手術を受けているが,治療のタイミングや医学的必要性について疑問を投げかける人もいた。


 CAHを持つひとりの女性(40代)は,子どもの時ではなく,後になって造膣術のオペを受け,「もっと若い時に子どもは手術を受けてるんですよね。手術は私にとっては,全部終わって,本当にとても幸せになりました。すべてが変わって良くなってます。子どもの時はあまり問題ないですし,こういうことにわずらわされないですから」と,良い変化だとしている。CAHを持つ別の女性は,クリトリス減縮術の医学的必要性に懸念を持っていたが,それは機能的な話での手術結果が望んでいたようなものではなく,そういうことをよく分かった上での決断ができるように,情報や考える時間,ピアサポートが必要だというものであった。


「ええ。インターネットや今の人々なら,もっと調査研究ができるというのもあると思います。彼ら(医師たち)が言うことや勧めてくることを,「本当に私に必要なことって?」とか「それってもしかして必要ないんじゃない?」って本当に知ることなしにそのまま信頼するのって実際とても難しいことですから。だから私は,なんと言うか…。もちろん私はお医者さんじゃないです。でも早い時期から手術を何度も受ける必要があるのかどうか,私には分からないんです。あの時ももっとちゃんと知ることができていればって。[…]もし知っていれば,「やめときます。もっと待ちたい」って言って,多分男性とベッドに入って,まずどんなふうになるか確認して,「うまくいってないかどうか」分かったり,彼が,「なんだか違うね」って私に言ったら,それからやっとどうすれば良いのか考えることができるでしょう。とても残念に思ってるのは…,何度も手術を受けて,神経が切れてしまって,感覚のほとんどを失って。私にとっては,そういうのがこの問題の悲しい側面なんです。一番後悔してることで…。母に言ったことがあるんです。「お母さんは最善のことをしたいと思ってたって分かる。ちゃんと教えてもくれたし。でも,もう少し待たなくちゃいけなかったんだと思う」って。母は言いました。「私はいつもあなたのために最善のことをしたいと思ってたからこそ,あなたがそういうことを言わなくちゃいけないのはとても辛いことだったと思う」って。多分私でも,母と同じことをやったんじゃないかと思います。分からないですが…。でも私が特に思うのは,親もお医者さんももう少し時間をかけて,どうするか深く考えてもいいんじゃないかってこと。お医者さんも,他のお医者さんや他の患者さんを紹介するべきなんじゃないかって」(CAHを持つ女性:33歳)。


 (再)手術は,性器の感覚やオーガズムの減退など,後の人生でのウェルビーイングやセクシャリティに予期しないネガティヴな影響を与えうる(匿名者, 1994, Creighton, L Minto, & J Steele, 2001)。今回の(限られた集団である)体験専門者には,術後の外性器について,恐怖やスティグマとして認識したり,親密な関係や医療状況での身体のコントロールを失う原因となったと示唆する人はいなかったが,他の研究調査ではそういった例が報告されている(Meyer-Bahlburg, Khuri, Reyes-Portillo, & New, 2016)。


 また,ひとりの調査参加者が,不可逆的な手術が行われ,子どもの時に選ばれた性が,後の人生で自分の性別同一性とマッチできなかったことをほのめかしたが,インターセックスの体の状態/性分化疾患を持たない人々でも,そういうことはかなりあり得ることだとも同時に言及した。


「自分の身体にあまり良い気分がしないものがあったらって想像してみてください。でももういろいろ行われていて引き下がらなくちゃいけないって状況を…。それは…,それはとてもつらいですよね。私もそうだと認めます。そうだったって…。事前には何もわからない。…でも,CAHじゃない人で,今の自分をこれで良しとは感じてなくて,男の子になりたいとか女の子になりたいと思うような人もいますよね。だから『そういうこともあるから延期します』って。[…]私自身は個人的には,(子どもの早期の手術に)賛成なんです。でもみんながそうじゃないってことも理解しています…。でも,CAHには『ジェンダーの問題があるのだ』ってあまりに簡単に言いすぎなんじゃないかって思うことがあります」(CAHを持つ女性:40代)。



 この最後の人はこういう考えから,インターセックスの体の状態/性分化疾患でのジェンダー(性別)の問題について,いくらか存在するだろう混乱についても勉強されていた。インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々は,自分自身を女性もしくは男性であると感じることが多く,それは(医師の判定による)出生時の性別と一致したものである。彼ら彼女らは見た目も男性もしくは女性だし,性別同一性(自分を男性もしくは女性と感じるか?)も適合しているのが一般である(Cohen-Kettenis, 2010)。この問題はトランスジェンダーの人々の問題ではない。出生時の性別と自分を男性もしくは女性と感じるかという感覚の不一致を体験するのは,トランスジェンダーの人々なのである (Cohen-Kettenis, 2010)。性分化疾患/インターセックスの体の状態を持つ個人でも,人生の何処かの時点で出生時に判定された性別と自分の性別同一性がマッチしないと感じるかもしれない人がいるのは,性分化疾患/インターセックスの体の状態を持たない人々の一般人口でもそういう人がいるのと同じであるに過ぎないのだ。結果として,自分が自分自身をいかに体験している(体験したい)かをもっと近づけるために,法的な手続きで名前や体の特徴を適合させることを決定することもできる(NNID, 2013; OII-Europe & ILGA-Europe, 2015)。今回の対象集団で公的に性別移行した人はいないが,多くの科学的研究が,性別違和(もしくは判定性別に不満を持っている・感じている)のリスクを示唆してはいる。しかし,それはやはり少数なのだ。特定の型の性分化疾患/インターセックスの体の状態,たとえばCAHや46,XY DSDのいくつか特定の型で高くなるというものもあるが,そこには実は社会的な文脈の要因がはたらいている (更に詳しくはCohen-Kettenis, 2010を参照) (Callens et al., 2016b; Dessens, Slijper, & Drop, 2005)。性分化疾患/インターセックスの体の状態における性別違和というのは,トランスジェンダーの人々の性別違和とは異なる形式を取りうるということも指摘するのも重要である。もし性別に対する心理的な疑いが伴うという場合は,それは男性もしくは女性としての自尊心に関係することが多く,あるいは男性もしくは女性としての社会から向けられる期待の判断についての疑問を持っているのである。それはたとえば,「生物学的な子どもを産めないから私は女性として十分ではない」「膣への貫通ができないから,自分は十全に兼ね備えた男性/女性ではない」(Davis, 2015)といったものなのだ。 1.2 親御さん


 出生時に顕著に非定型的な外性器の見た目(陰核肥大や高度尿道下裂,陰唇や膣もしくは陰嚢の萠出など)で生まれた子どもたちの親御さんのほとんど全員が,子どもの頃の手術を選択していた。このような親御さんは,外性器が非定型的であることによって,自分の子どもや親御さんたちがさらされるであろう周りからのネガティヴな感情や,社会的に必然的に起きるだろうことを回避するために,自分で「正しい」ことができると強く信じていた。そう考えることで親御さんたちは,何もしないことで起きるかもしれない,子どもの社会的アイデンティティや安全,将来の自尊心のリスクよりも,外科手術のリスク(感覚脱失や,合併症の可能性,その次の手術など)を取っているのだ。たとえば男の子が立って排尿できるといった手術の整形術的転帰が,その子どもの性別(同一性)と身体的機能の調和があるという意味で,オペの成功のパラメーターとなっている (Jürgensen et al, 2006を参照)。


 非可逆的な外科手術との関連で,子どもの将来の性別同一性についての疑問を持つ親御さんの数は限られていたが,言外のメッセージ(時にはそういうことがないように話をされることもある)としては,性別違和の機会を手術を行う青信号としていると解釈できた。


「彼ら(医師)がその時『ええ。遺伝子的には完全な女の子でも,こういう児童は男の子のように感じたりします』と言ってたら,待ってみようって思ったかもしれません。でもお医者さんはとても明快でした」(CAHを持つ児童の母親)。


 もうひとりの親御さんも,担当の医師が,本質的な性別同一性の体験での外性器の見た目の重要性や,性別の(操作的な)「構築可能性」といった内容に言及したことを証言した。


「お医者さんがやって来て,『女の子です』って言ったんです。それに『男の子に手術するなんてありえませんから』とも。…それで私は訊いたんです。『もしこの子が後になって,男の子になりたいって言ったら?』と。するともうひとりのお医者さんがいて,『今まで私はそういう経験はありません』って言って」(性染色体DSDを持つ10代の子どもの母親)。


 親御さんは,子どもの最善の利益のために行ったと真摯に考えているので,手術をすることに決めたことを後悔している人はひとりもいなかった。外科手術は人生のどこかの時点で行われなければならないとするなら,自分の子どもに難しい決定の重荷を背負わせたくないとも想っているからだ。保護者の中には,後の人生で,子どもに手術をするか決めさせるのは,子どもに過度の重荷になると考える人もいた(Callens, Longman & Motmans, 2016)。


「はい。インターネットで調べました。そこには辛い体験をした人の体験談が書かれていて,『これは自然なものだから,手術する必要はない』とも書いてありました。だから迷いました。『もしかしたら成長するまで待ったほうがいいのでは?』って。でも次のお医者さんとの話し合いで,お医者さんは『子どものためには手術したほうがいい』と言ってるような印象を受けました。[…]それからっていうのもありますが,子どものためには,この子に重荷を背負わせるなんてできないと思いました。どういう問題が起きようと,手術するかどうかの選択は私が引き受けるべきだと。だから私たちが息子に代わって決意しました。だって,子どもの幸せのために決意するというのは,究極的に親の役割でもあるからです」(XY DSDを持つ子どもの母親)。

 親御さんの中には,こういう手術はもっと年齢が経ってから行うこともできると説明された人もいたが,医師の勧めは子どもの時に介入したいという医師の望みの上での話だったとも想起された。


「選択肢はありますと言われました。それは確かにはっきり言われました。でも私たちがそのアドバイスについてお医者さんに訊くと,こうも言われたんです。『後よりも早めに手術したほうがいいと思います』と。[…](医師が)私にあまりインターネットを見てもらいたくなかったのもその理由のひとつでした。お医者さんは昔からクリトリスを小さくすることをされていて,それに怒ってる人々が,幼い時は手術するべきじゃないと言っているからですよね。でもお医者さんの方は『もう昔みたいなことはありません。今はもう技術がずっと改良されてますから』と。なので,お医者さんはもちろん早期の手術を勧めてこられました。その方が身体組織の悪化が少ないからということだったと思います。[…]傷はすぐに良くなったので本当嬉しいです。お医者さんも,娘が『保育園に行けますよ』って。『お母さんがお尋ねになられてことで手術を求めて満足する人があまり多くなかったのは最初の頃だけです』とも」(CAHを持つ女の子の母親)。


 非定型的な外性器の見た目が続くことで,どの程度親子間のきずなや受け止めのプロセスが大きく阻害されることになるかは明らかではない(Crissman et al, 2011, Wolfe-Christensen et al, 2012)。しかし親御さんの中には,周りからのネガティヴな反応や疑義,社会的スティグマの可能性を恐れ(それは関係する医師に示唆されることもある),子どもを(時には自分たちも)守りたいと想う人もいる(Duguid et al, 2007)。多くの外科医が主張するのは,傷の治りや組織の回復は成人期よりも子どもの時の方がスムーズで,機能的にも整形的にも良い結果になるということだが,その当の外科医の熟練度が良い結果の決定因であるというのもあるかもしれない(Mouriquand et al..,2014)。


 将来は,この選択が子どもにとっても満足するものだったかどうか明らかにしなくてはいけない日が来る。


 限定されたものであるが,若い人々の中には,親が幼いころの手術に関して決めたと知って安堵する人もいることを示す調査もある(Fagerholm et al.,2011, Meyer-Bahlburg et al.,2004)。しかし,子どもの声や子どもが将来このことをどう考えるかということは,親御さんたちの手術に関する決断の話ではカバーされなかったことが印象的であった。


 子どもが成人になってからの性的感覚・快感に関わる,手術の潜在的な結果可能性を認識している親御さんはいなかった。親御さんたちは,身体的機能とネガティヴな心理社会的障壁(将来の性的パートナーを見つけたり,いじめに遭ったりなど)に対して,子どもの頃の手術が予防になると真摯に望んでいるのだ (Crissman et al, 2011)。


 最後に。外性器手術を選択した親御さんたちは,自分の子どもにはこの話をオープンにしていた,あるいは子どもに先走って話すこともしたくないと思っていることを示された。子どもが続いての手術について疑問があるかどうかひとつずつ確かめ,子どもに説明できていることもである。この親御さんがお話されたようにである。「もし娘が必要としたりなにか質問があれば,娘には完全に全部(の情報)を話したいと思ってます。いつでも自分で判断できるようにって」(卵精巣性DSDを持つ10代の子どもの母親)。


 親御さんの中には,こういう手術はもっと年齢が経ってから行うこともできると説明された人もいたが,医師の勧めは子どもの時に介入したいという医師の望みの上での話だったとも想起された。


 まだ幼い子どもの親御さんの中には,医師と子どもが良い関係でいられるよう努力していると語った人たちもいた。もし子どもがなにかの疑問を持った場合,いつでも医師のところに行けるような信頼感を持ってもらうためだ。


「(夫と私は)いつも子どもと一緒に診察全部に行くようにしています。一緒に行って,疑問に思ったことはなんでもお医者さんに訊けるって,息子に分かってもらうためです。それに,医学的なことについては,私以外に分かる人がいるということも知っておいてもらえるように。[…]もしペニスになにか悪いところがある場合,もうその時には,母親と一緒に行って一緒に訊こうなんて息子も思わないでしょうから」(混合性性腺異形成を持つ男の子の母親)。



2.思春期後半もしくは青年期での性器治療


2.1 成人当事者


 思春期前後に判明する体の状態の女性(n=6)では,その半数が膣を拡張することを目的とする,性器への外科的介入を(思春期後半もしくは青年期に)受けていた。その中の1人はこの型の介入を後悔していた。彼女は本当は自分で行うダイレーション治療(たとえば段階的にサイズを大きくしていく)を求めていたのだが,担当の医師がこの選択肢の経験が無いと言ったのだった。残りの半分の女性では,介入の必要なし(ポジティブな意味で)とした女性(n=1),代わりの自分で行うダイレーション治療を選択した女性(n=2)であった。


 基本的にはこれらの治療は,体験専門者が「普通」だと感じる,もしくは「普通のセックス」を期待できるよう,(彼女たち自身のためということで)受け入れられ,かつ(将来の)性的パートナーのために行われるものである。


「それで,ただダラダラ待ってるだけなんてできませんでした。だからお医者さんに言ったんです。『もう手術してください。人生もう先に進みたいんです』って。本当にもう自分の人生ちゃんとどうにかしたいと思いましたし,決まった恋人がいてもいなくても,とにかく自分は身も心も誰かと接することができるように絶対なりたかったんです」(CAISを持つ女性:25歳)。




 ダイレーションでも手術治療でも,適切な医療的・心理的サポートが強調されていた。


「『うまくいってますか?それともうまくいってないですか?』って訊かれたって,分からないですよね。調べられるものでも誰かに訊けることでもないですから。女の子の友達がやってることとは,ぜんぜん違うことなんですから」(ダイレーションについて:MRKHを持つ女性:24歳)。


「家に帰ってからがもう最悪でした。そう,アフターケアって,楽しいものじゃないです。特に精神的に。もうめちゃくちゃパニックになってました…。『(膣は)もう十分広くて十分深いです。十分長いですよ』って言われましたが,また閉じていくんじゃないかと思うと恐ろしいほどパニックになりました。とても不安でした」(手術について:MRKHを持つ女性:36歳)


 どちらのタイプの治療においても,積極的なダイレーションのメンテナンスが必要となるため,膣の手術についてより控えめな方針が2017年に実行される予定である。専門病院では,まず第一手段としてのマニュアルの膣ダイレーションが用いられるようになる可能性がある。同時に心理的ケアとガイダンスが注視され,外科手術への移行も選択肢として残ることになる (Callens et al., 2014; Ismail-Pratt, Bikoo, Liao, Conway, & Creighton, 2007)。このように治療方を自分で選択することで,一般的に,5分の3の女性が女性としての自尊心を高め,(性的な)関係に到れるようになっている。残りの女性がそうでないのは,いくつかの複合的な理由,あるいは(メンテナンスの)ダイレーションをするモチベーション自体があまりないためである。


2.2 親御さん


 思春期に子どもの体の状態が診断され,性器の介入の可能性について決断した親御さんは1人だけで,主に思春期の娘さん自身に決めさせることにされた。この親御さんは,将来の性的な関係などでのネガティヴな反応から思春期の娘さんを守る必要性を強く感じていたが,それが自分の娘の最善の利益となるのかどうか自分では分からないと疑問に思いながらも,性器の手術を行うことについては特定の役割を果たしたと示唆された。


「娘に言いました。『もし恋愛をしたいと思ったら,自由にそうしてほしい。あなたと一緒にいてあなたの顔を見る男の人は,決して一人だけじゃないから』って。その後,娘は自分がそうしたいと思ったら,実際そうしましたし,それを喜んでました。娘にはこうも言いました。『今行うこともできるし,将来行うこともできる。決めるのはあなた次第だから。私はどちらでもいい。でもとにかく,将来あなたがもっと深い関係になりたいと思ったら…』と。今から思えば,あれで良かったと思ってます。でも,うん。それが良い伝え方だったのかどうかはまだ分からないですが…」(MRKHを持つ女性の母親)。



3. 性腺の治療


 Y染色体が関連するいくつかの性分化疾患の体の状態では,精巣や未分化の性腺の胚細胞がんのリスクが高くなる (Cools et al., 2014)。部分型性腺未形成といった体の状態を持つ人では,性腺の悪性発達の可能性が極めて高い(30-50%)。このようなケースでは,性腺が精巣に発達しきれていないからだ。CAISやPAISといった,アンドロゲンに対する細胞の反応が減少する体の状態を持つ人での,リスクは相対的に低くなる(児童期は<1%,思春期後は10-15%)(Deans, Creighton, Liao, & Conway, 2012) (Cools et al,精査)。アンドロゲン合成あるいは代謝の問題(17βHSD欠損症あるいは5α還元酵素Ⅱ型欠損症)を持つ人では,大きな調査がないが,リスクは恐らくその間くらいになる。ここで注記しておかねばならないのは,局所的な前駆的病変(上皮腫瘍形成)のリスクは常に有り,浸潤的な変性のリスクはまだ不明であるという点である。性腺の発達の段階のほかにも,多くの変調因子(遺伝的傾向や,生殖細胞の成熟,年齢,性腺の解剖学的位置など)が知られている。


 よって,性腺のマネージメントには次の2つの方法があることになる。ⅰ)予防(=用心)として性腺を摘出する,あるいはⅱ)性腺をそのままにして,浸潤的な腫瘍の存在を早期段階で調べる結像法を用いるようにする(もちろんだが,ガンが発見された時には,既に悪性の転移があるというリスクを伴う)。


 以前は,性腺の予防的切除が幼い時あるいは思春期に行われ,この場合,親御さんや子どもには完全な情報が与えられず,よってインフォームド・コンセントの上での同意もないことが多かった。親御さんや子どもは,一方ではリスクや変調要因についての知識がないが,また一方では,関係者の福利のためというこのような態度を保守的な(パターナリスティックな)なものとも思っていたということなのである (Cools, Drop, Wolffenbuttel, Oosterhuis, & Looijenga, 2006)。現在の性分化疾患専門医療では,診断と性腺のマネージメントの微妙な情報も提供するのが決まりになっており,様々な治療選択肢の長所と短所が親御さんに,あるいは可能そうなら子どもや若い人にも常に説明されていて (D‘Alberton, 2010, Deans et al., 2012),ベルギーの医療提供者によって,これが「最善の医療」と名付けられてもいる。性腺を機能させたままにしておく最大の利点は,それが自然のホルモンを産生し,ホルモン補充療法を受ける必要性がないということである。おそらくこれは,身体的にも性的ウェルビーイングにも,活力,骨密度にも好ましい効果があると考えられているが,ここのところを調べた研究はほぼ皆無である。性腺をそのままの場所に機能させたままにしておく最大のリスクは,ガン化のリスクに加えて,その性腺が産生する性ホルモンが,思春期以降,その子どもが望まぬ女性化/男性化を身体に引き起こす可能性(たとえば,PAISを持つ女性での,クリトリスが大きくなることや,体毛の増加:PAISを持つ男性での乳房発達など)があることだ。今の若い人々は,eHealthなどのアプリを使って,こういう変化の兆候を自分で調べられるようになっている(たとえば,http://zaadbalkanker.nl/zaadbalkanker/zelfonderzoek)。


3.1 成人当事者


 性腺の悪性腫瘍化の可能性を元にした医療介入を経験した体験専門者は,その4分の3が思春期に性腺摘出を行っていた。2人の人は自分の体の状態について知らされておらず,従ってこの介入の正確な内容も知らされていなかった。1人の人は,これは自分の本当の選択ではなかったと語っている。


「でも今から振り返るなら,最初よりもずっと悪くなったということでしょう。みんなそうしてるからと,『そうしなくてはいけない』ようなことだと私も受けとめた。今までずっとお医者さんはずっとそうしてきたいうこともあるだろうけど,そうするべきじゃなかったんじゃないかって。そうする方が良かったんじゃないかって。分かってます。お医者さんもそんなこと知らなかったって。でもそれって本当に緊急とかそういうものではなかった。それが正確に医学的緊急性を持つことだったのか,生命の危険性があることだったのかって後悔しています。[…]でも,お医者さんは善意でそうしたんだと本当に思っています。悪く言うことはできません。お医者さんは,いろいろ分かっている専門家だから,本当に患者の利益のためにやっているのだって」(CAISを持つ女性:25歳)


 3人全員がこの介入を後悔しているが,その3人ともが,医師も親も当時普通に行われていたことで,当時の科学的知識では最善の方法だったと認識していた。


 CAISを持つ若い女性では,性腺の悪性腫瘍化のリスクは児童期では低い(<1%)ことが分かっていて,児童期の性腺摘出は現在では推奨されていない。その結果,この女性は自然に二次性徴が起こり,性腺を残すかどうか,自分で決定できるようになっている。約16%の女性が思春期以降も性腺を残すことを選択しているが (Deans et al., 2012),思春期以降の性腺の悪性腫瘍化のリスクは10-15%と見積もられており,腹部に位置する性腺は,イメージング検査では兆候の判断が難しくなる。


 45,X/46,XYやXY部分型性腺未形成,PAISなどいくつかの体の状態の男児・男性,また本調査の男性で起きたことでは,停留精巣を外科手術で陰嚢まで,そうでなければ鼠径部まで下げることが推奨されている。この場合は,男児はホルモン補充無しで自然な二次性徴に入るが,より早期の段階で浸潤癌の可能性を検査することができる(Cools et al., 2014)。


3.1 親御さん


 悪性腫瘍化のリスクが増えることが知られているこういう子どもたちの性腺の手術は,親御さん(n=4)には更に複雑な想いをもたらす。がんのリスクが高い(30-50%)ために子どもから性腺を摘出する決断を親御さん全員がしてきたが,子どものためにとした決断や,将来の生殖医療の発展の可能性によって生物学的な親になれる可能性について葛藤している親御さんもいた。


「娘を不妊にしてしまったと,とてもつらい時間でした。娘のために決断したのは私でしたから。つらい時間を過ごしましたが,選択の余地はありませんでした。お医者さんは『娘さんは後にガンになります』と。でも娘のために決めるのは親なんです。決めるのは私。『あなたは自分自身の子どもを授かることができないだろう』って。それはとても重い重責だったと思います」(卵精巣性DSDを持つ10代の女の子の母親)。



4. ホルモン治療


4.1 成人当事者


女性で性腺摘出後のエストロゲン治療


 1人の女性は自分の体の状態の性質と性腺摘出について知らされたのがずっと後になってからだったため,なぜ性腺摘出後のホルモン治療が必要なのかが見積もれず,ホルモン補充を受けていれば改善されていたはずの,重度の骨粗鬆症の症状に見舞われた。


 他の女性達は最初から良好なホルモン補充(たとえばパッチや錠剤など)をしていたが,それが活力やウェルビーイングにどれほど効果があったかは全く不明であった(骨粗鬆症については特に見返されるということはなかった)。ホルモン補充とフォローアップ(例えば骨年齢の測定)に関連する医療費はほぼ保険の対象となっていた。


男性におけるホルモン補充療法


 男性たちはホルモン補充(主にテストステロン)の効果を大きいものだったと語った。クラインフェルター症候群を持つ1人の男性は,自分や妻はテストステロンの注射の実施にとても慣れていったと話した。あごひげが伸びただけでなく,疲れにくくなったりセックスで感じやすくなったなど,「若い雄鶏のように」なったと話した。もうひとりの男性は,乳房発達に対する抗エストロゲン治療でポジティブな効果を体験した。しかしこの男性2人共が,これらの治療の医療費が高いということを示唆した。こういった治療は,彼らの体の状態についてはそれぞれ新しい実験的な医療とされており,従って保険の適用がないからだ。テストステロンについては,2-4週間ごとの注射は保険適用になっている。しかし3ヶ月ごとの注射は適用されておらず,ただしこれにはホルモンの大きな変動の問題(性欲過剰など)がある。抗エストロゲン治療(PAISでの乳房発達などに対するもの)は実験的な治療となっていて全く保険が適用されない。費用が高額になるため,こういう人々は(乳房減縮の)手術を行うことになるという矛盾が起きることになる。手術は完全に保険適用だが,合併症も多いものとなる。よって,保険適用の改正は良いものとなるだろう。


CAHに対するホルモンの補助


 CAHは命の危険性のある体の状態で,(ストレスホルモンの)コルチゾールの不足により,日々,生涯に渡っての治療薬療法が必要となる。CAHを持つ体験専門者は,ホルモンレベルの治療薬療法体制と(3-6ヶ月ごとの)フォローアップは特に問題はない(ただし子どもの時の血液採取はあまり良いものだとは言えなかった)と語った。彼女たちは治療薬療法についてはよく順応して完全に安定していて,子どもの時も大人になっても何でもやってこれたと感じていたが,病気になった時は体への影響が大きいとも語った。彼女たちは自分のことをよく分かっていて,それは,医師からの現実的な情報よりも,どのように多めのお薬を飲むか,どのように副腎ショックの悪化を防ぐかなど,試行錯誤を重ねた上でのものであった。治療薬代についてはRIZIV(訳者注:ベルギーの疾病障害保険機構)でその多くが保険適用されているが,遺伝性で生涯に渡っての治療が必要な性質の体の状態なのに,全額保険適用にならないことに体験専門者たちは驚いていた。ここでも,保険制度について他の慢性疾患との比較で批判的に検討される必要がある。


4.2 親御さん


CAHのホルモン療法


 CAHを持つ子どもの親御さんたちも,実際的に薬物管理を行っていく時の情報(たとえば,毎日2-3回の苦い塩味のお薬をどのように飲んでもらうか)や,子どもが病気になったときのお薬の量やタイミングについて子どもにどんなアドバイスをすればいいか(たとえば,すぐにいつもより多めの薬を飲むのか,あるいは待って様子を見たほうがいいのか?)などの情報の少なさを語られた。また親御さんたちは,子どもの健康管理について自分の直観ばかりに頼らなくてはいけないという思いも持っておられた。こういう側面は他の疾患についての調査研究でも知られていることで,専門ケアではその不完全さとして,「事前に何をどのようにするのか知っておく(knowing what and how)」ではない,「その場で知っていくしかない(knowing now)」と言われている(Lundberg, Lindström, Roen, & Hegarty, 2016)。


二次性徴と身体成長


 性腺摘出後や,あるいは思春期のホルモン産生が不十分で,ホルモンが少なくなることが見えている子どもの親御さんたちはそのほとんどが,二次性徴(乳房発達や体毛の発達など)の身体発達や,女の子の生理の可能性,情緒的ウェルビーイングについて,医療的介入の効果がどういうものになるのか,一種の不安緊張を持っておられた。体の状態によるが,低身長が予想されることを示唆されている子どもたちについては,更に成長ホルモン治療に対する難しい選択を迫られている親御さんもいた。この治療は骨成長には良い効果があるが,子ども時代に長く続く徹底した治療(毎日の注射)になる。ここでもだが,身体の特定の特徴を原因とするネガティヴな心理社会的帰結(例えばいじめなど)に対抗することを目的とした介入は,友達と比べて自分は「違う」のだという思いを引き起こさないのかどうかという問いを立てることはできるだろう(Sandberg & Colsman, 2005)。



5.他の治療


 DSDを持つ子どもたちや体験専門者の中には,DSDsの種類や早期の治療の有り無しに関係なく,物理的療法(たとえば重度の筋肉痛に対応するものや,性器の手術による痙攣的な痛みに対応するもの),言語障害療法(書字・会話障害に対応するもの),ソーシャルスキルトレーニング(自閉症を原因とするもの)といった,他の更なる治療が必要となる場合がある。(訳者注:筋肉痛は主にCAH治療におけるもの,書字・会話障害や自閉症はX・Y染色体異数に多く見られる。)


 こういった更なる治療は,身体的・社会的ウェルビーイングや社会参加にポジティブな効果を持つことが多い。2人の体験専門者は,極度の筋肉痛や疲労のため,フルタイムの仕事につくことができない状況にある。このような治療は保険の対象外で,経済的負担になることが多い。




B.医療ケアでの体験


成人当事者


 多くの人が,この障害と治療選択肢の対応方法を知っている専門家に出会うのに多くの遠回りをすることはあったが,自分は「幸運」だったとはっきりと強調した。そういう「幸運」にはならず,治療選択肢が,訪れる病院によって異なることに驚いた人もいた


「私たち患者は,こういう症候群の人は自分だけだと思いがちなんです。婦人科医さんでも,ある大学病院でも,自分は一人の患者しかケアしてないということで,自分ひとりだけなんだって思っていました。そういうお医者さんは他の病院に専門家がいるかどうかも調べませんでしたから…。だからその結果,造膣にいろいろな選択肢(ダイレーションや,外科手術でも様々な技法)があるという正確な情報は説明されませんでしたし,十分吟味された治療法が提供されることもありませんでした。合併症のリスクが高い治療法で。いくら専門家と言っても,自分のやっている手術法しか提供できません。お医者さんは私たちを『興味深い症例』としてしか見てないんじゃないか,患者の精神的なケアやウェルビーイングを考えず,治療をやりたいというだけなんじゃないかという印象を持つこともありました」(MRKHを持つ女性:35歳)。


 ほとんど全員が,共感的で患者中心の,専門的な全人的健康ケアの必要性について語った。なぜなら,「心配なことはいろいろありました。それは全部関係し合うものだったと思いますが,何から考えればいいのか,整理して俯瞰的に捉えられる人はひとりもいなかったんです」(CAISを持つ女性:34歳)。


 専門家の病院センターでのケアの集約化について,以下のように語る人もいた。


「そっちの方が良いのは明らかです。私たちはとても数が少ないからすべての病院ごとってわけにはいきませんから。でも,病院って患者を手放したくないっていう問題もありますよね。互いに競争してますから。でも,専門の病院に集約化するべきだっていうのは合理的だと思います。あっちこっちの医師のところに行く必要もなくなりますから」(CAISを持つ女性:44歳)。


 専門家の病院センターでの,より包括的なケアと治療選択肢を増やすことなどの利点を強調する人もいた。そういった病院センターへの物理的距離は,インフォームドチョイスの上での方針決定を行うための十分なコンサルテーション(と時間)を提供する障害にはならないとも語られた。最後に。医師との個人的長期的信頼関係(がずっと重要だと)をも強調された。


「専門のお医者さんたちのところに行かなきゃって,そんなの当たり前でしょ。最初に他の医師のところに行くべきじゃない。13か14歳の時から,すぐにセンターに行くようにしなきゃ。何度も新しいところに行くんじゃなくて」(PAISを持つ男性:19歳)。



親御さん


 親御さんは一般的には,過去に(大抵の場合地方の病院で)自分たちが受けた医療フォローアップとは逆に,現在の医療フォローアップには大変満足していた。


「今までこういう状態は見たことないとか,聞いたこともないって。現実的にそんなことないはずなんですけどね」(高度尿道下裂で生まれた男の子の母親)。


 多くの専門家がいるセンターへの紹介が直ちに行われたケースがいくつかあったが,これは肯定的に語られていた。


「お医者さんがおっしゃったんです。『ここです。ここはもっと専門でやってます。もちろん,ここに行かれるかどうかはお母さんが選択できます』って。そうおっしゃっていただいたのは本当とても良かったです。これは本当に重要なことだと思います。だって,お医者さんがそういうところを知っている,そこならどうすればいいか知っているって思えましたから」(スワイヤー症候群を持つ10代の女の子の母親)。


 あっちこっちの遠回りになった人もいた。「繊細な話でしたから。私達自身で大きな時計をかけ直すことは許されませんでした」(高度尿道下裂で生まれた男の子の母親)。小規模のセンターと大規模のセンターとの競合だけでなく,同じベルギーでもフランス語話者のセンターとオランダ語話者のセンターとの競合が,子どもと親の福祉に対して障害になっていると考えられた。


 親御さんたちは,性分化疾患医療の集約化と専門化を強調した。


「Maggie De Block(訳者注:ベルギーの医師で政治家)が,『すべて集約化しなくてはいけない』と言ってましたが,私も賛成です。フランドルでも,ベルギー全体でも。[…]『専門の医師のところに行ってください』と紹介して,万事うまく行くようにする。お医者さんたちも1年に1度か2度,専門のお医者さんを紹介するようなこととそれほど違わないと思います。こういう体の状態の子どもは地方の病院では毎年生まれるわけでもないでしょうから。すぐに専門センターに送っていただくようにしてもらいたいです」(卵精巣性DSDを持つ子どもの母親)。


 アプローチの標準化も強調された。


「同じ問題でも,お医者さんによって扱い方や説明の仕方がそれぞれで違いますから。いまお会いしてる専門のお医者さんは,ひとりで3つの方法を知っている人でした。そこに通えて良かったです。またどこか別の所にというのはしたくないですから…。だから,複合センターなら,患者家族側はそこでいろいろな専門家に会えますし,そこの質も上がっていくことになるというのもあります」(混合性性腺異形成を持つ子どもの母親)。



 最後に。患者中心の,人間としての共感的な関わり,明白な(分かりやすい,けれども単純化しすぎない)コミュニケーション,そして疑問や心配事を熟考できるコンサルテーションに十分な時間をとることが,より良いケアの重要な要素であると考えられた。


「私たちに疑問があるか訊かないことを好むお医者さんって,多分その人自身が疑問を持たない人なんだと思います。「はい,ドクター。いいえ,ドクター」くらいしか言われなくて。でも私たちは少し食い下がりました。お医者さんが知らないことを話し合おうとかじゃなくて,ただ単に情報が欲しかっただけなんです」(混合性性腺異形成を持つ子どもの母親)。




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