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ロキタンスキー症候群を
知らされた女の子へ!

あなたはひとりじゃありません!

 ロキタンスキー症候群が判明したばかり、親御さんやお医者さんから知らされたばかりの女の子・女性、そしてご家族の皆さんご自身も、これからどうなるんだろう、自分は大丈夫なのか?と、不安や恐れでいっぱいになられていてもおかしくないと思います。

 女性5,000人に1人と言われると,自分は世界でただひとりと思いがちですが、実は日本だけでも12,000人,世界では77万人の当事者の女の子・女性がいるのです。

 このコーナーは、同じような不安と恐れを体験されてこられた、世界中のロキタンスキー症候群のある女性のみなさんからのメッセージや体験談、そしてボストンこども病院The Center for Young Women's Health (CYWH)(若い女性のための健康センター)」のロキタンスキー症候群のコンテンツの日本語訳をご紹介します。

 

 みなさんのお役に立てれば!

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ロキタンスキー症候群のみなさん

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ロキタンスキー症候群の女性の

ライフストーリーズ

ライフストーリーズ

「ロキタンスキー症候群に 

自分の人生を決められたくないんです。」

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ボストンこども病院

ロキタンスキー症候群

ALL GUIDE

ロキタンスキー症候群の
診断を受けた
10代のみなさんへ

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保護者の
みなさんへ

 

患者と話している医者

医療従事者の
みなさんへ

 

 このコーナーは,ボストンこども病院の「The Center for Young Women's Health (CYWH)(若い女性のための健康センター)」のコンテンツ,「MRKH(ロキタンスキー症候群): All Guides」を,CYWHの許可を得て,日本語訳をしたものです。

 

 このコンテンツの日本語訳は,みなさんと同じロキタンスキー症候群のある女性,土 多恵子さんの「これからの若い当事者の女の子たちには,ロキタンスキー症候群の十分な情報,そして十分なケアを受けてもらいたい」という,強い思いから実現しました。昔は十分な情報もケアも全く得られず,ロキタンスキーの女の子・女性のみなさんは,ひとり孤独な思いをしなくてはいけなかったのです。

 翻訳は土さんが行い,以前ロキタンスキー症候群などDSDsの臨床を行っておられた,現北海道大学大学院保健科学研究院教授の,蝦名 康彦先生にご監訳をいただきました。

 アメリカと日本の医療の違いはありますが,この翻訳コンテンツが,これからのロキタンスキーの女の子・女性のみなさん,家族のみなさんのお役に立てることを祈ります。

当事者女性のみなさんへのメッセージ

 

 こんにちは。私は53歳(1968年生まれ)のロキタンスキー症候群の一人です。

 私は17歳で「膣と子宮がない」と診断されました。1980年代半ばです。

 当時インターネットはなく、情報のない暗闇でした。ロキタンスキー症候群という言葉と、造膣手術の可能性を知ったのは15年以上後のインターネットが普及した30代半ばでした。

 今回、「ロキタンスキー症候群を知らされた女の子へ!」の翻訳をする機会に恵まれたことをうれしく思っています。翻訳経験がない素人ですが、少しでもロキタンスキー症候群の方へ情報を届けたい思いで取り組みました。

 「ロキタンスキー症候群を知らされた女の子へ!」を翻訳する機会と翻訳文修正をしていただいたネクスDSDジャパンのヨヘイルさん、医学的監修と専門情報を提供していただいた北海道大学大学院の蝦名康彦先生に感謝しています。本当にありがとうございました。

 

土 多恵子(つち たえこ)

 本コンテンツは米国以外では適用できない場合があります。

 ボストン小児病院は、本サイトのいかなるコンテンツも、米国、その領土、所有地、保護領以外での使用が適切であること、または利用可能であることを保証するものではありません。利用者が他の地域から本サイトにアクセスした場合、利用者ご自身の判断と責任で利用するものとします。現地の法律が適用される場合、その法律が適用される範囲において、利用者が現地の法律を遵守する責任を負います。利用者は、米国および利用者の居住国から、技術データを国外に送信することに関するすべての適用法令を遵守することに同意するものとします。

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ロキタンスキー症候群の診断を受けた

10代のみなさんへ

10代の皆さんへ
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基本的な情報

基本的な情報

基本情報

  • ロキタンスキー症候群(MRKH)は、女性生殖器の疾患です。

  • ロキタンスキー症候群(MRHK)の女性は、正常な卵巣と卵管があり、腟は存在しないか完全ではなく、子宮頸部はなく、子宮体部は完全に発達していない(痕跡子宮)か、存在しません。

  • ロキタンスキー症候群(MRKH)と診断された女性は、妊娠キャリア(代理懐胎)により実子を持つことができます。子宮移植などの他の生殖補助医療技術は、現在のところ研究段階です。

  • 治療法には、ダイレーターでの拡張術、手術、およびダイレーターと手術の組み合わせ、そして治療しないという選択肢があります。

 

 

 みなさんは、ロキタンスキー症候群(MRKH:メイヤー・ロキタンスキー・クスター・ハウザー症候群)だということを知ったばかりかもしれません。「なぜ、こんなに長い名前なの?」思った人もいるでしょう。この長い名前は、病気を発見したお医者さん全員の名前から名付けられました(訳者注:日本では名前を省略して「ロキタンスキー症候群」と呼ばれています)。ロキタンスキー症候群(MRKH)であることを知り、戸惑ったり、怖くなったり,悲しくなったりするのは当然です。なかには、初潮が来ない理由がわかって安心したという人もいるかもしれないですね。みなさんだけでなく親御さんもいろいろたくさんの疑問を持っているかもしれません。このガイドがそのような疑問や不安に答える手助けになれば幸いです。また、親御さんのためのガイドも用意しています。

 

ロキタンスキー症候群(MRKH)ってなんですか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)は、女性の生殖器の先天的疾患です。「先天的」とは、生まれつきという意味です。女の子の約5,000人に1人がこの疾患を持っています。ロキタンスキー症候群(MRKH)は、いくつか特有の症状をもつ「症候群」です。

 原因はまだわかっていませんが、胎児は子宮の中にいるときにいろいろな臓器や器官が発達していくことはわかっています。その器官の一つが生殖器系です。女の子の生殖器には子宮、腟、卵管、卵巣などがあります。生殖器系は「胎児期」(赤ちゃんがお母さんの子宮の中にいる期間)の最初の数カ月間に形成されます。ロキタンスキー症候群(MRKH)の場合も生殖器系は育ち始めたのですが、子宮や腟が完全には発達しなかったのです。

 

ロキタンスキー症候群(MRKH)の女性の特徴は…

  • 正常な卵巣と卵管が存在します

  • 子宮は存在しないか小さい場合が多い 

  • 腟は一般よりも短くて狭いか、もしくは存在しない

  • 腎臓が2つではなく、1つという場合もある

  • 約3%に、軽度の聴覚障害があらわれることがある

  • 一部の人は脊柱側湾症(脊柱が曲がっている)のような,脊椎の障害を持っている人もいる

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)は、腟の外側には何の影響も与えないため,外陰部(クリトリス、尿道、陰唇、腟口、処女膜、肛門)は他の女性と同じです。

ロキタンスキー症候群(MRKH)が判明するのはいつですか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)の多くは、15-18歳ごろに判明します。初潮がないことで、医療機関を受診するケースが多いからです。これより早く、もしくはもっと後に判明する場合もあります。

診察ってどんなことをするんですか?

 

 お医者さんは最初に「思春期になって、体の変化に気づいたのはいつですか?」と質問するかもしれません。次に、みなさんの外陰部を診察し、腟の長さを確認することもあります。この場合,細い綿棒や手袋をした小指で、腟の深さを確認するといった方法がとられます。ロキタンスキー症候群(MRKH)の可能性が疑われた場合は、超音波検査やMRI検査(磁気共鳴画像法)が行われます。この検査には痛みはなく、X線検査に似ています。

 

 その後、一般的にはロキタンスキー症候群(MRKH)の患者さんの診察の経験があり、女性のリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)に関する知識がある、専門の小児科医や婦人科医が紹介されます。

腹部超音波検査や骨盤MRI検査でどのようなことがわかりますか?

 

 腹部超音波検査は、子宮の状態を確認する場合に行われる最初の検査です。この検査では、卵巣が2つ、腎臓が2つあることも確認することができます。非常に小さな子宮が見つかるという場合もあります。この小さな子宮は、「子宮角」または「痕跡(こんせき)子宮」と呼ばれています。女性器官をより詳しく診察するために、骨盤MRI検査を受ける場合もあります。

お医者さん以外に、私がロキタンスキー症候群(MRKH)だとわかりますか?

 

 周りの人たちに自分がロキタンスキー症候群(MRKH)だと知られるのではないかと心配する人がいるでしょう。ですが答えは「ノー」です。みなさんと婦人科のお医者さん以外は、みなさんの腟が生まれたとき完全ではなかったことに誰も気づきません。ダイレーター(拡張器)や手術による治療を受けた後は、みなさんの性的パートナーも何の違いも感じないでしょう。

子どもは持てますか?

 

 腟が発達していなくても子宮が一般的な大きさであれば、妊娠、出産の可能性はあります。子宮がない、もしくは子宮が小さい場合は、妊娠することができません。ですが、みなさんには卵巣があり、その卵巣は卵子を作ることができるので、その卵子のひとつにパートナーやドナーの精子が受精することができます。また、身寄りのない子どもを自分の子どもとして授かる養子縁組という選択肢もあります。

 

代理出産:姉妹や友人の女性、その他には同意した女性に、妊娠キャリアになってもらう方法です。妊娠キャリアとは、あるカップルのために代理に妊娠することに同意した女性です。みなさんの卵子とみなさんのパートナーの精子を使うので、みなさんがこの子どもの生物学的な実の親ということになります。(iii)

 

子宮移植:子宮移植は、2014年にスウェーデンで初めて行われた、高度な技術を要する手術です。

 

  • まず、臨床試験を行っている医療機関を特定し、プログラム参加申請をする必要があります。

  • 次に行うのがIVF(体外受精)です。IVFとは、医療機関で卵子と精子を採取して体外で受精させることです。その後、受精卵(胚)は,移植子宮に使われるまで凍結保存しておきます。(IVFは代理出産でも行われます) 

  • 適合する子宮を提供してくれるドナー(第三者もしくは亡くなった方)を特定します。

  • ドナーから提供された子宮をレシピエント(子宮移植を受ける人)に移植手術したのち、1年間待ちます。

  • レシピエントが移植された子宮を保持している期間は、移植臓器に対する拒絶反応を抑制する免疫抑制剤の投与が必要になります。

  • その後,受精卵(胚)を移植された子宮に戻しますiiiiv

  • 何の問題も起こらず,健康な妊娠が実現すれば、帝王切開で出産します。

 

 子宮移植は「一時的」なものです。出産後、レシピエントは第2子のために子宮を体の中に置いておくという選択肢もあります。その後、移植された子宮は摘出されます。

 

 スウェーデンではこれまでに、子宮移植を受けた女性から16人の赤ちゃんが誕生しています。v 米国では2016年2月に初の子宮移植が行われ、2017年にはテキサス州ダラスのベイラー大学医療センターで子宮移植による出産が成功しました。また最近では、米国で死亡した人のドナーからの移植後、出産に成功した例もあります。

 

 現在のところ、原発性の子宮性不妊症(AUI)viの女性に対する子宮移植手術は実験的な段階です。すべてのリスクが解明されているわけではありません。ですが、この手術は他の方法では妊娠することができない女性に希望を与えるものです。

 

 科学は常に進化しており、生殖医療の選択肢は日々改善されています。みなさんが子どもを持つ準備が整う頃には、より多くの選択肢が用意されているかもしれません。

i 訳者注:2022年2月現在、代理出産は日本では法的に認められていません。

 

ii 久具宏司:「代理懐胎と倫理」,医の倫理の基礎知識 2018 年版

iii 木須伊織:総説 子宮移植の現状と展望, Organ Biology VOL.25 NO.1 2018

iv 児玉正幸:本邦の子宮移植の現状と倫理的課題の考察, 『人間と医療』第9号(2019年)

v ⽇本医学会⼦宮移植倫理に関する検討委員会 報告書, 2021年7⽉14⽇:2021年3⽉時点の木須らによるまとめ 4) では、16 カ国 の 19 施設から 85 例の実施例が報告され、妊娠が確認できたのは 70 例、出産にまで⾄ったのは 40 例である。40 例の出産中、⽶国(3 施設合計)が 17 例、スウェーデンが 11 例、チェコが 3 例、ドイツが 2 例、中国、ブラジル、セルビア、インド、トルコ、レバノン、フランスが各 1 例である。85 例中 63 例が⽣体ドナーからの⼦宮提供であり、そのうち28 ⼈のレシピエントが児32⼈を出産している。脳死体からの移植は22 例で、そのうち 8 ⼈のレシピ3エントが児8⼈を出産している。出⽣した児(調査時点で最年⻑ 6 才 6 ヶ⽉)について、奇形や発育遅滞の報告はこれまでにない。

vi 子宮性不妊(uterine factor infertility, UFI)、Absolute uterine factor infertility (AUFI) (Bruno, 2018)やAbsolute uterine infertility (AUI) (Testa 2017)とも表記される。

毎月、骨盤(お腹)が痛くなるのはなぜですか?

 

 一般的には,女性の中には、下腹部に違和感や痛みがあることで、毎月の排卵(生理)が分かる人がいます。ほとんどの場合、この軽い痛みは正常な排卵によるものなので、心配することはありません。

 ロキタンスキー症候群(MRKH)の女性の中には、「痕跡子宮」または「子宮角」と呼ばれる小さな子宮が残っている場合があります。このタイプの子宮は小さく、妊娠、出産はできませんが、月経血がお腹の中に漏れ出すと下腹部痛の原因になることがあります。婦人科医は、あなたに小さい子宮があるかどうか、それを摘出する必要があるかどうかを判断することができるでしょう。もしみなさんに腹痛がある場合は、医療チームに伝えることが重要です。

腟を作らないと性行為に問題がありますか?

 

 ダイレーターや手術で腟を作る前に腟内性交をすると、セックスは非常に苦痛である場合がほとんどです。腟が破れて出血する可能性もあります。腟内性交だけで腟を広げることは可能ですが、リスクを伴い、非常につらいものです。

 

 でも、カップルが性的に親密になるのに、必ずしも腟への挿入をしなければならないというわけではありません。誰かを好きになって、夜をともにしたいと思うようになることもあるでしょう。その時にロキタンスキー症候群(MRKH)であることで、挿入以外の性行為をすることが制限されることはありませんし、性的な満足を経験することが制限されることはありません。

将来、満足な性生活は送れますか?

 

 Yesです! 年齢や健康状態に関係なく、すべての女性が、さまざまな方法で性的な感覚や満足を経験していることを知ってください。自分が何に性的な満足を感じるか発見していくことは、生涯にわたる成長の過程と言えます。ですからロキタンスキー症候群(MRKH)の女性とそのパートナーは、自分たちの性生活で何が快適で満足を感じるか、いろいろと探求していくことをお勧めします。

今私は学校の寮に住んでいて、でルームメイトがいます。 ダイレーターを使うためにプライバシーを確保するにはどうすればいいですか?

 

 ダイレーターを使用するにはプライバシーが必要です。でも、同室の姉妹やルームメイトがいると、「ひとりにして」と言うのは難しいかもしれません。特にロキタンスキー症候群(MRKH)やその治療を秘密にしておきたい場合はなおさらでしょう。

 瞑想、勉強、お昼寝、祈りなど、ひとりで過ごす時間が必要な理由はたくさんあります。ルームメイトが授業などで、寮の部屋にいない時間をチェックして、ダイレーターのためのプライベートな時間がいつ取れるか見つけましょう。

通院がいつも辛いです。楽になるのでしょうか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)と診断された若い女性の多くは、未知の情報と体験の世界に放り込まれたと感じます。悲しみ、怒り、希望、不安、恐怖、恥辱など、さまざまな感情を抱くのは当然です。医療チーム(婦人科医、看護師、ソーシャルワーカー)は、みなさんのそのような思いや状況に対応できるよう訓練されているはずです。診察で詳しい説明と相談する時間が欲しいというタイプの人もいますし、短時間の診察で事実情報だけ求めるタイプの人もいます。ストレスを少なくするために、次の診察の時に、どのような診察の形態や相談を希望しているか、医療チームに伝えることが大切です。医療チームは、みなさんの診察ができるだけストレスのないものになるよう、最善を尽くします。

 

 

親はロキタンスキー症候群(MRKH)について話したいようですが、私はもう自分のプライバシーを守りたいと思っています。どのように境界線を引けばいいですか?

 成長ともに、精神的にも自立し、親御さんとの間にある程度の距離ができるのは自然です。とくに病院での診察や検査が何度も必要な場合は、親御さんに対してプライバシーが確保されないと感じることもあるでしょう。ロキタンスキー症候群(MRKH)はプライベートな性的領域にかかわるため、家族のストレスのレベルも非常に高くなることもあります。多くの若い女性とその親御さんにとって、自分の体についての会話というものは、時に不快で、プライバシーの侵害だと感じたりするかもしれません。

 みなさんがロキタンスキー症候群(MRKH)の診断とそれが意味することを受け止めていかなければならないのは,みなさんの親御さんも同じです。多くの親御さんは、みなさんを心配して、いろいろな質問するかもしれません。そういう時は,みなさんが何を必要としているのか正直に話すことが大切です。話す気になれないときは、正直にそう言いましょう。みなさんの親御さんは、おばさんやおじいさん・おばあさんなどの親戚に悩みを相談したいと思うかもしれません。みなさんも,誰にまで話していいのか、親御さんとよく話し合うようにしてください。

 

 親御さんには、ロキタンスキー症候群(MRKH)に関するよくある質問と回答が書かれている「親御さんのためのガイド」が役に立つかもしれません。

 また、みなさんの親御さんとのコミュニケーションについて、医療チームのメンバーに相談することもできるでしょう。

親以外にもロキタンスキー症候群(MRKH)のことを相談できる人はいますか?

 

 親や家族と話すほうが役に立つと考える人もいますし、カウンセラーや親しい友人と話す方がいいと思う人もいます。私たちは、ロキタンスキー症候群(MRKH)を持つ同年代の人と話すことが、とても役に立つことを知っています。ボストン小児病院のYoung Women’s Healthセンターでは、ロキタンスキー症候群(MRKH)の若い女性のために、2ヶ月に1回無料のオンラインチャットを開催していますし、ロキタンスキー症候群(MRKH)の10代と若い女性、その家族のための会議を毎年開催しています。また、医療チームは、みなさんに他の若いロキタンスキー症候群(MRKH)患者を紹介や、カウンセラーを探す手伝いをしてくれるかもしれません。

 

 

私はまだ生物学的に女性なのでしょうか?

 自分が不完全な腟と子宮を持って生まれたことを知ったとき、自分は「本物の女性と言えるのだろうか?」と悩む若い女性は珍しくありません。ですが、自分はまったくの女性であると理解することはとても大切です。お医者さんは、みなさんが生物学的に女性で、染色体の構成が46,XXであるかを確認するために、特別な血液検査をすることがあります。

 

 

腟が閉じてしまうことはないのでしょうか?

 一度腟を作れば、週1回程度の腟内性交やダイレーターの使用で、腟が変化したり縮んだりすることはありません。性交をしない場合は、週に一度、一番大きいサイズのダイレーターを20分程度使用するようにしてください(腟成形後のみ)。

 

 

今はダイレーターを使いたくないのですが、心の準備ができるまで待ってもいいのでしょうか? もしずっと腟を作らなければ、どうなりますか?

 治療を受けるかどうか、またいつ、どのように治療を受けるかの選択は、みなさん自身の選択です。大切な選択ですから、治療を受けるかどうかを決定する前に、関係する情報をすべて得ることが必要です。他のロキタンスキー症候群(MRKH)の女性たちと話すことも大切です。みなさんの体の持ち主はみなさん自身です。みなさんは、親御さんやパートナー、医療チームから治療を受けることを強制されたり、圧力をかけられたりしてはいけません。みなさんが治療を受けるのは,自分自身が適切な時期だと判断したときだけです。医療チームには、みなさんが十分な情報を得た上で決断できるように、みなさんの生殖に関する健康問題を理解するための情報や資料を提供する責任があります。親御さんには、みなさんが医療を受けるのを助け、ダイレーターを使用する場合には家庭でプライバシーを確保できるようにする責任があります。そしてみなさんには、ロキタンスキー症候群(MRKH)についてもっと学び、つらいい時には信頼できる大人に相談する責任があるのです。

ウーマン&ドクター

治療の選択肢

治療の選択肢

 みなさんがロキタンスキー症候群(MRKH)と診断され、腟が未発達もしくは十分に発達していない場合、次のような選択肢があります。

 

  1. 何もしない。

  2. ダイレーターを使い、手術をせずに腟を広げる。ダイレーター(腟拡張器)を使い、断続的な圧力を加えることで,時間をかけてもともとある腟を広げて伸ばす方法です。手術をすることなく、副作用のない自然な方法です。

  3. 外科的手術の「腟形成術」。もしくは手術とダイレーターとの組み合わせ。

 自分の体のことを決めるのは自分自身です。腟を作るかどうかは、みなさんの選択次第です。その時期を決めるのもみなさんです。腟性交をする予定がないのであれば、今はまだ腟形成の必要はありません。もし、今または将来,腟性交をする予定があるのであれば、腟を作ることを検討した方がよいでしょう。

 

 もし治療を考えるなら、まずダイレーターの使用を検討されることをお勧めします。手術の場合はどの方法でも全身麻酔が必要で、手術後はダイレーターを使用することになります。ですから、手術は短期間での解決方法にはなりませんし、いずれにしてもダイレーターを使わなくてはなりません。

アメリカでの一般的な治療基準

 米国産科婦人科学会は、腟を作るための最適な治療法として、手術をせずにダイレーターを使用することを推奨しています。医療従事者は、この治療法が非常に効果的であり、非侵襲的であり、手術や麻酔に伴うリスクがないとしています。

 

ダイレーター(腟拡張器):ダイレーターによる方法は、フランク法と呼ばれることもあります。これは、若い女性が自宅でプライバシーを守りながら自分でできる治療法を紹介したことで有名になった最初の医療従事者の名前にちなんでいます。当初のダイレーターはガラス製で,1980年代の最初にイングラムという医師がいくつかのサイズのプラスチック製のダイレーターをくっつけた,自転車に使われる椅子を作成しました。当時のロキタンスキー症候群の女性たちは、この椅子を使って腟を拡張する方法を教えられました。ですが現在,ボストン小児病院の婦人科プログラムでは、イングラム方は難しくて使いにくいため推奨していません。

 

 現在では、ガラス製のダイレーターに代わって、硬質プラスチック製のダイレーターが使われています。いろいろな種類のダイレーターがありますが、最も一般的に処方されているものは、XS~Lまでのさまざまなサイズがセットになっています。いちばん小さなダイレーターは、細いタンポンのサイズです。最初は一番小さいダイレーターを使い、腟を伸ばすためにダイレーターの持ち方や、圧力をかける方法を学びます。最初はダイレーターの大部分が「持ち手」として使用されます(そこまでしか入らないからです)。その後、腟が伸びるにつれて、ダイレーターをより深く挿入することができるようになります。ボストン小児病院の患者さんがこの治療法を選択した場合、訓練を受けた臨床医がダイレーターの使い方を教えます。家にダイレーターを持ち帰って、1日に2回、20分程度使用するプランを立ててください。

ダイレーター治療は成功するのですか?

 

 ダイレーター治療は非常に成功率が高い方法です。ですが、治療の成功にはばらつきがあり、成功率は主に,ダイレーター治療が適切だったかどうかと、指導する医療従事者の知識と教え方によって違ってきます。

 確認しなくてはならないのは,その婦人科の腟拡張プログラムが,十分に機能する腟を作るのに少なくとも85-95%の成功率であるかどうかというところです。婦人科医に、先天的な腟未形成(腟が未発達もしくは十分に発達していない)の患者を毎年・毎月何人治療しているか、その成功率について聞くことをお勧めします。みなさんが取り組んでいるプログラムや医療提供者の成功率が低ければ、満足な治療が受けられず、ダイレーターの使用での成功率が低くなります。そして外科的処置(手術)が必要になるリスクが高くなります。

 

 

婦人科の診察はどのくらいの頻度で受ける必要がありますか?

 ダイレーターを使って腟を拡張することになった場合、どれぐらい遠方に住んでいるかによりますが、1~2ヶ月に1回程度の診察がいいでしょう。ボストン小児病院では、限定的ですが遠隔診療の選択肢も用意しています。みなさんが正しい位置と角度で圧迫しているかどうかなど経過を確認するために、定期的な診察は必要です。腟の拡張具合に応じて、婦人科医は、次の少し大きなダイレーターに変えていきます。

腟を作る手術にはどのようなものがありますか?

 

 腟形成術として知られている腟を作る手術は、みなさんの体の他の部分(腸や臀部など)から組織または皮膚を使用して腟を作るものです。

 

マッキンドー法:臀部(お尻)からの皮膚移植や、特殊な皮膚のような素材を使って腟壁を形成する方法です。この手術を受けた女性は、新しく作られた腟が癒えるまで、手術後1週間ほど病院での入院と安静が必要になります。術後は、約3~6ヶ月間、トイレ以外の時はソフトダイレーターを常時装着する必要があります。手術で腟が短期間で形成できますが、ダイレーターを使用する必要があります。

 

ウィリアム法:腟に「袋」を作る手術です。他の手術が失敗した場合に行われることがあります。この手術は、米国よりもヨーロッパで行われています。術後はダイレーターを約3~4週間使う必要があります。これは、最長6ヶ月間(マッキンドー法では一般的な期間)より短期間です。この手術では、腟の開口部が斜めになることがあります。

 

Bowel vagina法: 腸の一部を利用して腟を作る大きな手術です。大手術なので、回復には4~6週間必要で、その後もダイレーターの装着が必要です。この手術を受けた多くの女性は、慢性的に腟分泌物が出てくるので、常にパッドを着用する必要があります。

 

腹腔鏡ヴェキエッティ法: ヴェキエッティ法は、ダイレーターと外科的処置を組み合わせたものです。この技術(これを開発したお医者さんの名前にちなんで命名されました)は、 下腹部においた牽引装置で、腟腔を形成するものです。この方法は全身麻酔のもと,腹腔鏡を使って行われます。同時に、プラスチック製のビーズ(オリーブの実くらいの大きさ)を腟の中に入れ、それを紐で固定して、腟から腹腔内を通り、牽引装置(腹部の外側の皮膚に固定)へ出します。一日24時間常に圧力をかけることで腟を形成します。張力は、腹壁の外側にある「クランク」を回すことで出されます。張力はプラスチックビーズを上向きに引っ張り、腟の長さを作り出します。7~10日ほどで腟を作ることができますが、すべて終了するまで長い入院が必要です。その後、器具を取り外すために麻酔を使った再手術が必要です。この手術では、腟ダイレーターを使う必要もあることを理解しておくことが非常に重要です。ヴェキエッティ法はヨーロッパではよく行われますが、アメリカではそれほど一般的に行われていません。

(訳者注:日本語での参考文献)

http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/57/9/KJ00003655372.pdf

腹腔鏡下Vecchietti(ヴェッキエッティ)法

腹腔鏡下に膀胱と痕跡子宮の間に腹膜を切開して腟前庭部近くまで膀胱と直腸の間を慎重に剥離した後、オリーブにつけた牽引糸を腹腔に引き込み腸骨窩腹膜下に牽引糸を通し,恥骨上の腹壁より引き出し, 牽引装置に装着し, 1日1から1.5㎝牽引する。術後3日で退院。以後は外来通院を続け、約1週間で腟が完成する。

 

ダヴィドブ法:患者さんの腹膜を使って腟を作る手術です。腹膜とは、腹部と骨盤の壁を覆っている膜のことです。麻酔をした後、腟の入り口となるべき場所を切開します。さらに、おへその近くを切開し、細い器具を腹膜腔に挿入します。腹膜は引き下げられ、腟口に縫い付けられます。新しくできた腟の上部を縫合して閉じます。その後、腟の空間にガーゼを詰めます。ガーゼは通常、手術後2日ほどで取り外されます。詰め物が取り除かれた後、患者さんは数ヶ月間、あるいは性的行為を行うまで、様々なサイズの腟ダイレーターを1日に数回使用する必要があります。これは,作られた腟を長く広くするためではなく、(新しく作られた)腟を維持し傷跡を残さないようにするためです。この手術を受ける女性のほとんどは、経過観察のために一晩入院し、術後7~10日以内にさらに経過を観察するために再来院が必要になります。

 

(訳者注:日本語での参考文献)

https://www.tachikawa-hosp.gr.jp/shinryo/14/rokitansky.html

Davydov法:

腟粘膜の代わりに骨盤腹膜を用いて、腟からのアプローチだけではなく、腹腔鏡を併用して行います。腹膜による腟形成は、腟入口部の狭窄、腟腔の狭小化、短縮が少なく、プロテーゼ挿入期間も少なくて済む利点があり、社会復帰も早いです。

①腟腔形成:腟の入り口からお腹側に向かって、腟腔を形成する

②腹膜を腟口まで牽引:お腹側にある腹膜を腟の位置口まで引っ張り、腟の入り口付近に縫合する。

③腹膜を腟腹鏡で接合する:腟腹鏡を使用して、お腹側の腹膜を利用した、腟が形成される。

 みなさんの気持ちや悩みを理解できる経験豊富な医療専門家チームを選ぶようにしましょう。治療方法を決めるときは、現在ではダイレーターが標準的な方法であり、手術を検討する前に一度試すべきだということを忘れないでください。ですが、腟を作る治療を受けるかどうかはみなさん自身が決めることであり、周りの人から強制されたりプレッシャーをかけられたりすることではありません。

美術館への訪問者

よくある質問

よくある質問

子宮頸部がありません。毎年行われるパップテスト(子宮頸部細胞診)は受けるべきですか?

 

 子宮頸部細胞診は子宮頸部のある患者さんが対象です。米国産科婦人科学会は、子宮頸部がない方への定期的なパップテストは推奨していません。

 

 

年に一度の婦人科検診は必要ですか?

 

 一般的な婦人科診療は重要ですが、症状や既往歴によって診療が異なります。合併症の心配がある場合や、腟の狭窄やおりものなどの症状がある場合は、婦人科の内診が必須な場合があります。また、性交渉がある人は性感染症のリスクがあるため、年1回の検診が重要です。

 

 

子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種は必要ですか?

 はい、必要です。性交渉のある若い女性の少なくとも2人に1人は、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染したことがあると言われています。HPVワクチンは、特定のタイプのヒトパピローマウイルス感染症を防ぎ、子宮頸がんなどの発病を予防しますi。HPVワクチンには3種類ありますii

 ガーダシル®は尖圭(せんけい)コンジローマ(6型と11型)および、子宮頸がん、腟がん、外陰がん、肛門がん(16型と18型)の4タイプのHPVを予防します。

 

 サーバリックスョは16型と18型の2種類の予防を目的としていますが、31型、45型に対しても一定の予防効果があります。

 

 最後にガーダシル®9はHPV6、11、16、18型と31、33、45、52、58型を予防します。

 

 2017年5月より、米国ではガーダシル®9がのみがHPVワクチンとして販売されています。その他の国では、現在もサーバリックス®とガーダシル®が使用されています。性的交渉のある方、性的交渉を考えている方は、ワクチンを接種するまで性的交渉を避けることで予防してください。子宮頸部がなくても、性的交渉を行うときは、他の女性と同じように性器いぼや外陰がん、腟がんのリスクがあることに変わりはないのです。

 

訳者注:2021年現在、日本で使われているワクチンは3種類(サーバリックス®、ガーダシル®,シルガード9®)ありますiii

 

毎月同じ時期に骨盤(お腹)が痛むのはなぜでしょうか?

 下腹部に違和感や痛みを感じることで、自分の毎月の排卵日がわかる女性もいます。ほとんどの場合、この軽い痛みは一般的な排卵によるものなので心配することはありません。ロキタンスキー症候群(MRKH)の女性の中には、「子宮遺残」または「子宮角」と呼ばれる小さな子宮が残っている場合があります。このような子宮は子どもを持つことができるほど大きくはありませんが、 月経血がお腹の中に漏れ出すと下腹部痛の原因になることがあります。その場合は、産婦人科で小さな子宮を摘出するまでの間、生理を止めるためにホルモン剤(避妊薬)を飲み続ける必要があります。

 

 

もっと大人になるまで腟を作るのを待っても大丈夫ですか?

 治療を受けるかどうか、どのように、いつ受けるかなどの選択は、みなさんの選択次第です。治療を受けるかどうかを決定する前に、すべての情報を得ることが重要です。いつでも腟を作ることができるし、全く作らなくてもよいことを覚えていてください。

 

 

ロキタンスキー症候群(MRKH)ことを、いつパートナーに伝えたらいいのでしょうか?

 すべての女性、すべての状況に当てはまるルールはありません。信頼、思いやり、これからの将来を共にする可能性を考えれば、パートナーと情報を共有した方が良いでしょうが、すべての性的な交渉がこの3つの要素を備えているわけではありません。その都度自分で判断することが大切です。ロキタンスキー症候群(MRKH)は生殖能力に関する合併症を伴うので、将来、親になりたいと願っている女性の中には、早めにパートナーと選択肢について話し合うことを望む人もいるでしょう。ロキタンスキー症候群を持つ他の女性がどのようにパートナーとどのように話し合っているのか聞いてみるのもいいでしょう。きっと役に立つはずです。

i https://www.know-vpd.jp/children/va_c_cancer.htm#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6,%E4%B8%8B%E8%A1%A8%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%81%8A%E3%82%8A%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 

ii https://www.know-vpd.jp/children/va_c_cancer.htm

 

iii https://www.mhlw.go.jp/content/000679261.pdf

 

その他の参考文献

https://www.nhk.or.jp/gendai/feature/1/article02/

https://www.jstage.jst.go.jp/article/organbio/25/1/25_35/_pdf/-char/ja

https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%882%EF%BC%89%E5%AD%90%E5%AE%AE%E7%A7%BB%E6%A4%8D%E3%80%80%E6%A6%82%E8%A6%81%E3%80%80vs-%E5%80%AB%E7%90%86%E7%9A%84%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9/

https://itetsu.jp/kyushu/wp-content/uploads/2020/12/JoHiM09_01.pdf

 

先天性難治性稀少泌尿生殖器疾患群(総排泄腔遺残、総排泄腔外反、MRKH 症候群) におけるスムーズな成人期医療移行のための分類・診断・治療ガイドライン

看護師は、患者に話します

成人婦人科への移行

成人婦人科への移行

​ 子どもから青年の年齢になれば,みなさんは、成人婦人科診療に移行することになります。それはみなさんが大人になったという祝福するべきことですが,特に小児科や思春期婦人科医にずっと診てもらっている場合は、最初はこの変化に少し不安を感じることでしょう。ですがこれからはひとりの大人の女性として、ロキタンスキー症候群(MRKH)に詳しい婦人科医、あるいはロキタンスキー症候群とその患者さんについて学ぶ意欲があり、性の健康についてのみなさんの悩みに対応することができる婦人科医と共に取り組んでいく必要があります。

 

 アメリカでも地域によって医療制度は違います。思春期婦人科医の中には、18歳、21歳、25歳まで患者を診て、その後に専門病院や地域の婦人科医での診察と治療を勧める人もいます。また、婦人科医によっては、同じ病院で生涯ケアを提供する人もいます。大人になって違うことは、若い時は病院や婦人科の受診に、親や保護者が付き添ってくれることが多いですが、大人になってからは自分ひとりで医療機関を受診することになります。あくまで大切なのはみなさん自身であり、みなさんの親御さんや保護者ではないのですから。

思春期から大人になるにつれ、このような変化があるでしょう。

 

  • 新しいことに挑戦し、より多くのことを自分で行うようになります。

  • 選択と選択肢が増えます。

  • 自由,自立という新しい自覚を持つようになっていきます。

  • 自分の健康管理に責任を持つことになります。

 

 今までは親御さんや保護者が診察の予約や婦人科医との話をしていたかもしれません。ですが,大人として,自分で予約を取り、自分で医療チームと話し合うというのは、最初はぎこちなさを感じるかもしれません。ですが、自分で責任を持てば持つほど、前よりもむしろ楽にさえ感じるようになるでしょう。みなさん自身がいちばん自分のことを分かっているのです。大人になるために重要なことは、自分のまわりに,家族、友人、医療従事者などの,自分を支えてくれるサポートシステムを確立することです。

成人婦人科への診療移行をサポートしてくれる人たち。

 

  • かかりつけの小児科医や思春期婦人科医

  • 婦人科看護師やソーシャルワーカーなど

  • 親や保護者 (アメリカでは健康保険でカバーされる婦人科医を探すのを手伝ってもらいましょう。)

  • 年上の兄弟姉妹または親戚

  • 同じような経験をしたロキタンスキー症候群(MRKH)の友人

 

 婦人科医全員がロキタンスキー症候群(MRKH)の患者の治療を行った経験があるわけではありません。ですので,まず経験があるかどうか問い合わせるようにしましょう。例えば病院に電話して、予約担当者に婦人科医がロキタンスキー症候群(MRKH)診療経験の実績があるかどうか聞いてみるようにしましょう。「〇〇医師(または診療所の誰か)は腟や子宮の先天疾患のある女性を治療した経験がありますか?」と聞いてみるのもよいでしょう。また、その婦人科医が不妊女性のケアをできるかどうか、つまり、みなさんが家族を作るための選択肢を考えたとき、そのための知識を持っていて,手助けをしてくれるかどうかも聞いておくとよいでしょう。もし近くにロキタンスキー症候群(MRKH)について知っている婦人科医がいない場合や、近くのかかりつけのお医者さんや看護師に治療を依頼したい場合は、そのお医者さんがロキタンスキー症候群(MRKH)専門のお医者さんと連携してくれるか聞いてみてください。そして、ロキタンスキー症候群(MRKH)についての情報文書と、ロキタンスキー専門の婦人科医にこれまでの治療経過についての要約を書いてもらって,渡すのがよいでしょう。

一般成人治療(婦人科・一般科)の移行時に、以下のことが出来るようになりましょう。

  1. 健康保険の適用範囲、自己負担額や控除額について知る。

  2. 現在治療を受けているお医者さんに頼んで、新しい婦人科医(成人婦人科医療機関など)に自分の医療記録を送ってもらうための同意書にサインするか、コピーを受け取り、初診時にその書類を持っていく。

  3. 服用しているすべての薬のリストを作成し、アレルギーがあれば書き出す(該当する場合)。

  4. 自分が受けてきた医療記録の簡単な年表を作成する:診断日、治療日、担当医、病院の名前などがすぐにわかるようにしておくと、後にこれらの情報を探す必要がなくて、とても便利です。

  5. 今まで自分が受けてきた医療機関の名前と電話番号を把握し、その連絡先を携帯電話か、すぐに情報が得られる場所に保存しておきましょう。

  6. 婦人科(その他の医療機関)の予約日時もカレンダーに書き込んでおきましょう。

 

 婦人科(または他の医療機関)の予約を変更またはキャンセルする場合は、必ず事前に電話連絡を入れるようにしましょう。医療機関によっては、予約の24~48時間前に連絡しないと、診察料を請求する場合があります(アメリカの場合で,日本では大丈夫です)。

婦人科やその他の医療ケアを自分で管理することができるか、下の質問に答えてチェックしてみてください。

 

  • ロキタンスキー症候群(MRKH)(および自分の他の病気)について、婦人科や医療機関に説明することができる。(できない場合は、婦人科医や他の医療提供者に「医療提供者のためのロキタンスキー症候群(MRKH)ガイド」のコピーを提供すると良いでしょう)。

  • 自分が関わっているすべての医療機関の名前と電話番号を知っている。

  • 婦人科医や他の医療提供者の診察時に、自分で質問できる。

  • 自分が飲んでいる薬のリストを婦人科や医療機関の受診時に用意できる。また、どの薬の服用をやめたか、いつ新しい薬を飲み始めたか伝えることができる。

  • 婦人科医や他の医療提供者からの質問に答えることができる。

  • 自分で婦人科や他の医療機関の予約ができて、忘れないように予約管理ができる。

  • 自分の健康保険がカバーできる範囲について知っており、医療サービスごとの自己負担額を知っている。

  • 自分の医療記録のコピーをどこで、どのように入手できるか知っている。

  • 婦人科やその他の診療科の受診に一人で行くことができる。

  • 処方薬をどこで受け取れるか知っていて、質問があるときや、補充が必要なときに薬局に電話したことがある。

すべて、またはほとんどの項目をチェックした方:

みなさんはすでに大人の責任を担っています!大人の一般婦人科、医療機関に移行する準備ができています。現在のお医者さんに成人医療への移行について相談してください。

 

半分以上チェックした方:

もう少しです!みなさんは、すでに自分の医療ケアの責任をじゅうぶん担っています。次回の診察までに出来るようになる項目をいくつか選んでみましょう。そして現在のお医者さんと成人医療への移行についての相談を始めてください。

 

半分以下にチェックした方:

今、チェックリストの中のいくつか自分でできると思う項目を選んで、次回の診察の時に実践してみましょう!助けが必要な場合は、親御さんや友人、ソーシャルワーカー、看護師、お医者さんなどに相談してください。

庭にたたずむ女性

将来は親になる?

ならない?

将来は親になる?

 家族を作るかどうかは、ロキタンスキー症候群(MRKH)の女性に限らず、大きな決断をともなうものです。子どもの親になるかどうかは、それぞれの人次第です。家族に関して何がベストな決断かは、みなさん自身にしかわかりません。

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)の女性は子宮が未発達なので、妊娠、出産できない場合がほとんどです。卵巣は一般的なので、代理母という手段で,実子を授かることは可能です。これは、卵巣から卵子を採取し、男性パートナーまたは精子ドナーから精子を採取し、専門施設で受精させるものです。卵子が受精すると、受精卵(胚)になります。受精卵はその後、代理母と呼ばれる別の女性の子宮に入れられます。この女性は受精卵と何の遺伝的なつながりもなく、出産までの代理の母親ということになります。このように、受精卵移植には、多くの過程を経なければならず、不妊治療チームによる調整が必要です。代理出産の保険適用範囲は複雑です。保険会社、州、国によって保険適用範囲が大きく異なります。代理出産自体だけでなく、代理母への支払いも非常に高価になるかもしれません。代理出産がみなさんの州で合法であるか調べる必要があります。また、みなさんの家族にとって、経済的に可能かを検討しなくてはなりません。私たちのこのリソースガイドでは、州ごとの代理出産と養子縁組の法律を比較することができます。また、代理出産で子どもを産む場合、保険会社がどのような補償をするか確認しておく必要があります。州によって、体外受精などの不妊治療に対する保険適用が義務付けられている場合があります。お住まいの州の法律については、こちらをご覧ください。

 

家族を作るための選択肢は以下の通りです。

養子縁組:国内、国際、私的団体、公的な児童・家庭プログラムによる養子縁組

体外受精(IVF):代理母が必要

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パートナーに

ロキタンスキー症候群(MRKH)について話す

パートナーに話す

 ロキタンスキー症候群(MRKH)の若い女性の多くは、自分にロキタンスキー症候群(MRKH)があることを恋愛相手に伝えるかどうか、いつ、どのように伝えるかという決断に迫られるときが来るでしょう。パートナーに伝えるかどうかは、すべてみなさん自身が決めることであり、すべての女性や状況に当てはまるルールはありません。信頼、相互理解、思いやり、これからの将来を共にする可能性を考えれば、パートナーと情報を共有した方が良いでしょうが、すべての性的な交渉がこの要素を備えているわけではありません。ロキタンスキー症候群(MRKH)があることを伝えるのか、それはいつなのかを判断するのは、みなさん自身なのです。

 

伝えるべきか、伝えないべきか?

 

 パートナーに話すかどうかは、さまざまな要因によって決まります。まず第一に、みなさんのパートナーが,みなさんの個人情報を守ると信頼でき、感情面もみなさんを全面的にサポートしてくれる人かどうかを見極めることが大切です。情報を共有することで、みなさんが傷つく可能性もありますから、パートナーがみなさんの気持ちを尊重してくれる人なのか,みなさんも知りたいと思いますよね。もし、みなさんが将来的に一緒に子どもを育てることを考えている人と交際しているのであれば、ロキタンスキー症候群(MRKH)について早く伝えて、子どもを持つ選択肢について話し合いをするのがいいでしょう。最後に、もしみなさんとみなさんのパートナーが性的な関係を考えていて、(ダイレーターの使用または手術のいずれかで)まだ腟を広げていない場合、パートナーが誤ってみなさんに痛みや不快感を与えないように、みなさんの体の状態を伝えることが重要です。すでに腟の治療を受けた場合は、パートナーは何も違いを感じないでしょうから、ロキタンスキー症候群(MRKH)について話すかどうかは、みなさんで決められるということを覚えておいてください。

適切なタイミングはいつですか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)のことを話すのに適切なタイミングや間違っているタイミングはありません。ですが、診断を伝える前に、みなさんとみなさんのパートナーが築いた信頼と親密さのレベルを考慮することをお勧めします。隠しごとをすることがつらいと感じ、交際の早い段階で話すことを選ぶ人もいるでしょうし、とても個人的な情報なので、伝える心の準備ができるまで、数ヶ月から数年待つことを選ぶ人もいるでしょう。ロキタンスキー症候群(MRKH)について、いつパートナーに伝えるのが良いかを決めるのはみなさん自身であり、パートナーがそれを聞く準備ができたかどうかを判断するのもみなさん自身なのです。みなさんのロキタンスキー症候群(MRKH)がみなさんの心に影響を与えたのと同様に、みなさんのパートナーの心にも影響を与えるだろうということを認識することも大切です。パートナーはみなさんが話した内容を理解するまで時間がかかるかもしれません。それに相手はみなさんが話したことについて訊きたいことが出てくるかもしれないので、自分で相手の質問に答える準備ができたと思う時に話すということも念頭においてください。

 

 

どう伝えればいいのですか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)についてパートナーに話す方法は、みなさん自身とみなさんの気持ちによります。ロキタンスキー症候群(MRKH)についてすべて率直に話す女性もいますし、時間をかけて少しずつ話す人もいます。例えば、ダイレーターや手術で腟を広げていない場合、腟が未発達な状態で生まれてきたことは早い段階でパートナーに伝えても、生殖能力への影響について話すことはまだ待つかもしれません。また、子宮がないことを伝えても、腟が未発達な状態で生まれてきたことをパートナーに伝えるのは先にしたいと思う女性もいるでしょう。みなさんが治療を受けていない場合、性的パートナーが意図せずみなさんを傷つけるようなことがないように、みなさんの体の状態をパートナーも知る必要があることを心に留めておいてください。もし役に立つと思うのであれば、このページを印刷するなどして、パートナーに読んでもらうことも考えてみてください。

​​

 最後に、みなさんはひとりじゃないことを忘れないでください。同じロキタンスキー症候群(MRKH)のある女性と話をして、彼女たちがいつ、どのようにパートナーに話したかを聞くことは、とても役に立つことでしょう。また、みなさんの医療チームも、みなさんの質問に答えたり、みなさんの決断を手助けしたりすることができます。最も重要なことは、パートナーに話す時にみなさんが安心しているか、自信を持っているかということです。セクシュアリティは、充実した健全な恋愛関係の一部でしかないということを覚えておいてください。みなさんの体の状態についてパートナーに話すことで、ふたりの関係はより豊かで深く、より親密なものになり、ふたりは自分たちの想い、望み、考えについてオープンに話すことができるようになるでしょう。パートナーは、みなさんが自分の大切な情報を話してくれるほど信頼されたのだと誇りに思うことでしょう。そしてみなさんも,秘密にしなくてよくなり、ホッとすることにもなるでしょう。

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ロキタンスキー症候群(MRKH)に対する思い

思い

 ロキタンスキー症候群(MRKH)に対する思いは、年齢を重ねて大人になるにつれて変化していきます。診断を受けた直後は、若い女性の多くが「ずっと何も考えることができなかった」とおっしゃいます。でも,これは自然なことです。自分の身体とこれからのことについて,予想もしなかった情報を受け止め、経験し、理解していくには,多くの段階を踏まなくてはいけないからです。ダイレーターを使う期間や、その後の週1回の「メンテナンス」の時は、特に負担や面倒を感じることがよくあります。

 

 ですが、20代以降になり、大学、キャリア、新しい人間関係、旅行、趣味などで生活が充実してくると、ロキタンスキー症候群(MRKH)について考えたり感じたりすることは少なくなり、全く考えない時もあったという女性もいます。時間が経つにつれて、ほとんどの女性は、ロキタンスキー症候群(MRKH)は,自分の人生のほんの一部に過ぎず、治療方法のある他の慢性疾患と同じようなものだと考えるようになります。そして、ある程度適応をしながら人生を歩んでいかれます。これは「ニューノーマル(新しい日常)」の確立と呼ばれることもあります。このような心の変化は、自然に起こることもあれば、臨床心理士に相談することが有効な場合もあります。

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)であることで、みなさんがどのような人間か、またみなさんがどのような大人になるのか、どのような親になるのか、どのような仕事をするのかを決められるべきではありません。みなさんひとりひとりの将来の希望や目標を制限される必要はないのです。

これからのこと...

 

 友達の出産のお祝いや親戚の集まりだけでなく、友人とのカジュアルな時間でも、出産や子育ての話題が自然に出てくることがあるでしょう。みなさんにも何か質問されることを想定して、答え方の練習しておきましょう。もちろん、すべての状況を想定することはできませんし、「その時」自分がどう感じるか,正確に予想することもできません。みなさんには,自分の感情を大切にする権利、どう対応するかを選択する権利があります。結局のところ、みなさんの大切な身体のことであり、みなさんに説明する義務はありませんし、何を言うかを決めるのはみなさん自身です。

 

 ただ、みなさんの体の状態を知らない人は、自分の発言がみなさんにどのような影響を与えるか、気づかないかもしれないことを覚えていてください。

スイッチを押される経験

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)の女性の多くは、「感情のスイッチを押される」(何かが自分の感情を爆発させる)体験をします。例えば友人や親戚が妊娠しているという話を聞いたとき、もしくは、誰かが深く考えず、みなさんが将来子どもを持ちたいか聞いたとき、不安になったり、悲しくなったり、時には怒りさえ覚えたりするのはとても自然なことです。10代の頃、クラスメートから生理用品を貸してもらえないかと聞かれて困ったり、妹の生理が始まったときに動揺したりしたことがあるかもしれません。そのようなときは、サポートシステムの助けを借りて、自分の反応や感情をコントロールする方法を学ぶことができればと思います。

 

 実際、ロキタンスキー症候群(MRKH)であるということは、成人期以降の人生においても、「スイッチが押され」て、ストレスを経験する状況を受け入れざるを得ません。どのような状況がつらく感じるか予想して、前もって対応策を考えておくと良いでしょう。また、湧き上がった自分の感情と時間をかけて向き合うことも大切です。ロキタンスキー症候群(MRKH)の女の子や女性は、特に気まずく、時にはストレスになると感じる体験として、次のようなことを挙げています。

 

  • 他の女性が妊娠について話したり、「いつ家族をつくるの?」などと質問されたりすること。

  • 病院などで、「最後の生理はいつですか? 最初の生理は何歳でしたか?」と聞かれたとき。

  • 医療関係者にロキタンスキー症候群(MRKH)について説明しなければならないとき。

  • 「悪意のない」無神経な言葉。生理がないことで「少なくとも生理痛に悩まされることはないよね!」など。

  • 悪意のない不適切な言葉。みなさんを元気づけようとして「少なくとも外見は普通だよ!」など。

  • 友人や親戚の出産通知や、出産祝い、洗礼式、命名式、割礼式への招待を受ける。

 

 代理出産や養子縁組で子どもを持った場合でも、みなさんの出産に関して立ち入った質問をして、「スイッチを押し」、みなさんの感情を波立たせる人がいるかもしれません。そのため、事前に気まずくなったり、ストレスになりそうな状況を想定し、質問を予測し、自分の答えを準備しておくと、とても役に立ちます。

海辺を歩く女性

腟ダイレーター(拡張器)の使い方

ダイレーター

 このガイドを読んでいる方は、婦人科医から腟拡張のために、ダイレーター(拡張器)を勧められたことがあると思います。一定数の女性は、腟未形成(腟がないこと)で生まれてきます。ここからの情報は、ダイレーターを使って腟を作る方法について説明します。ダイレーターによる腟拡張法は安全で、手術を伴うものではありません。

注意:このガイドは治療を勧めるものではなく、医学的なアドバイスでもありません。質問がある場合は婦人科医にご相談ください。

 腟ダイレーターは、すべての検査を受け、婦人科医が腟未形成の診断を下し、みなさんがすべての選択肢をよく理解し、時間をかけて自分とって正しい決断と判断をした後のみ始めるようにしましょう。婦人科医と一緒にここに書いてある方法を必ず確認してください。ダイレーターの使用期間中は,月に一度,婦人科医に経過観察を受けることをお勧めします。

はじめる前:まず、婦人科医や訓練された臨床医から、使い方の指導とカウンセリングを受ける必要があります。最初は質問するのも気が引けるかもしれませんが、自分の腟をどのように広げるかを知るためにはとても大切です。

ダイレーターはどのような役割をするのですか?

 

 ダイレーターは、腟内の皮膚を時間をかけてゆっくりと伸ばします。腟未形成の若い女性の多くは、腟の皮膚に小さなくぼみがある状態です。また、腟の入り口が小さかったり、腟が短かったり狭かったりする人もいます。この部分にダイレーターで圧力をかけると、皮膚が伸びて腟が形成されるのです。

 

 

腟拡張にはどれくらいの時間がかかりますか?

 

 腟ダイレーターの使用頻度や正しい使い方にもよりますが、腟を拡張するには最短で2~3ヶ月、最長で1年半以上かかります。一般的には、1日2回、15~20分程度、圧力をかけながら正しく使用すれば、約3~6ヶ月以内で腟を拡張することができます。コンスタントに使用しないと、もっと時間がかかるかもしれません。毎日同じ時間にダイレーターを使うと、良い結果になる場合が多いようです。朝一番や睡眠前など、時間を決めて習慣化しましょう。慣れて違和感がなければ、片手でダイレーターを適切な位置に保持して、もう片方の手で読書、テレビ、電話など他のこともできます。

 

 

ダイレーターの使い方が正しいか、どう判断すればいいですか?

 

 ダイレーターを自宅に持ち帰る前に、婦人科医または看護師が使い方を説明し、正しい位置で使う練習をする時間を作ってくれるはずです。ほとんどの場合、最初はいちばん小さいサイズのダイレーターを使い、その後次のサイズに代えていきます。ダイレーターを使う時、膝を曲げて、仰向けで上半身を少し起こした姿勢がベストです。腟ダイレーターを挿入する正しい場所を見つけるために、鏡をどのように使えばいいか聞いてみましょう。

準備: 1日2回、20分程度、誰にも邪魔されず、寝室などプライバシーが保てる場所と時間を確保してください。親や家族と話して、誰にも邪魔されないような対策をしてください。寝室のドアに「Do Not Disturb(邪魔しないで)」のサインをかけておくといいでしょう。

 

  1. できるなら、ダイレーターを使う前に、少なくとも10分間は温かいお風呂に入りましょう(オプション)。このステップは絶対に必要ではありませんが、温かいお湯は、みなさんがダイレーターを使う位置の皮膚を柔らかくし、拡張がしやすくなります。特にダイレーターを使い始めたときに有効です。

  2. ダイレーターの洗浄:温水と中性石鹸でダイレーターを洗い、乾燥させてください。

  3. 水性潤滑剤を少量塗布:K-Yジェリー®やSurgilubeジェリー®などを、腟ダイレーターの先端に塗布してください。

 

ダイレーターの使用:仰向けに寝て(半横たわり姿勢)、足を曲げます(骨盤検査と同じ姿勢)。潤滑剤を塗ったダイレーターを尿道(尿が出るところ)の下の皮膚に当て、腟のくぼみにちょうど収まるようにします。腟に小さい開口部がある場合は、開口部にダイレーターを当てます。尿道の真下の部分にダイレーターの先端をゆっくり優しく滑らせると、その場所を見つけることができます。

 

 圧力をかけながら、ダイレーターを20分ほど保持します。腰や尾骨の方向に斜めにダイレーターを押し、そのまま保持します。出し入れはしないでください。圧迫感はありますが、痛みは感じないはずです。痛みがある場合は、強く押しすぎている可能性があります。何も感じない場合は、十分な圧力をかけていない可能性があります。何度か試しているうちに、適切な圧力がわかるようになります。

 

拡張した後: ダイレーターをジッパー付きのケース(化粧品ケースや筆箱など)に入れて、引き出しなど、忘れない場所に保管してください。ダイレーターは殺菌する必要はありませんが、収納する前に中性石鹸と水で洗い、完全に乾かしてください。

 

婦人科医の定期診察:お医者さんは定期的な診察でみなさんの進行状況を確認します。みなさんの腟が拡張していれば、少し大きい次のサイズのダイレーターを使用するように指導します。婦人科の診察の時はダイレーターを持参してください。

ダイレーターを使うかどうかは、他の誰でもなく、みなさん自身が決めるべきことです。親御さんや医療チームがみなさんの治療をサポートするのは,みなさんがダイレーターを使って腟拡張する心の準備ができでからです。腟は必要ないと思う人もいるでしょう。それでも大丈夫です。どちらの判断をしても、それが自分にとって最も良い選択だと感じることが大切です。もし、ダイレーターを長期間使っても良い結果が得られない場合は、婦人科医に手術を勧められるかもしれません。

 

参考:ダイレーターに関する日本語での情報

腟ダイレーター論文

腟ダイレーター – 適応疾患と使用の実際 —(東京大学大学院医学系研究科健康学習・教育学分野 高橋 都) 

腟ダイレーターについて(日本性科学会)

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ロキタンスキー症候群の診断を受けた娘さんの

保護者のみなさんへ

保護者
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基本的な情報

親基本

基本情報

  • ロキタンスキー症候群(MRKH)は、女性生殖器の疾患です。

  • ロキタンスキー症候群(MRHK)の女性は、正常な卵巣と卵管があり、腟は存在しないか完全ではなく、子宮頸部はなく、子宮体部は完全に発達していない(痕跡子宮)か、存在しません。

  • ロキタンスキー症候群(MRKH)と診断された女性は、妊娠キャリア(代理懐胎)により実子を持つことができます。子宮移植などの他の生殖補助医療技術は、現在のところ研究段階です。

  • 治療法には、ダイレーターでの拡張法、手術、およびダイレーターと手術の組み合わせ、そして治療しないという選択肢があります。

 

 

 娘さんがロキタンスキー症候群(MRKH)だと知り、親御さんはたくさんの疑問を持ち、さまざまな感情を体験されているかもしれません。娘さんが診断結果を受け止められるのかご心配されていることと思います。そして親御さんご自身もショックを受けられたことでしょう。思春期、生殖、セクシュアリティについて、娘さんと話し合うということは親にとって簡単なことではありません。娘さんがロキタンスキー症候群(MRKH)であるという診断結果は、不安や、疾患や症状についての知識のなさ、そして娘さん、家族、婦人科医やかかりつけ医とどのように話し合えばよいかなどさまざまなことが心配になり、押しつぶされそうに感じているかもしれません。このガイドは、みなさんがロキタンスキー症候群(MRKH)を理解し、みなさんの疑問に答え、みなさんが娘さんをサポートする手助けになることを目的としています。

 

ロキタンスキー症候群(MRKH)ってなんですか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)は、女性生殖器の先天性の疾患で,約5,000人に1人の女性に起こります。ロキタンスキー症候群(MRKH)と診断された女性は,腟が存在しないか不完全な状態の腟欠損症(膣未形成)です。子宮体部は存在していないか、とても小さく、子宮頸部はありません。ロキタンスキー症候群の女性は生来的な女性で、正常な排卵があり、無月経ですが女性の二次性徴は起こります。ロキタンスキー症候群(MRKH)は,腎臓の一つが存在しなかったり、骨格系、聴覚障害などの合併症を伴う場合があります。

 

治療の選択肢

 みなさんの娘さんがロキタンスキー症候群(MRKH)と診断され、腟が不完全か存在しない場合、娘さんには次の選択肢があります。

 

  1. 何もしない

  2. ダイレーター(腟拡張器)を使い、手術をせずに腟を広げる。断続的な圧力を加えることで、時間をかけて、もともとある腟組織を広げて伸ばす方法です。手術をすることなく、副作用のない自然な方法です。ダイレーターの使い方は、小児・思春期婦人科医もしくは臨床看護師から指導が必要です。

  3. 外科手術の「腟形成術」。臀部などの移植皮膚を用います。術後はダイレーターを使用します。

  4. 今は何もしないで、時間を置いてみる。

 娘さんの体ですから、腟の治療を受けるかどうかは、娘さん本人が決めるべきことです。もし娘さんが治療をすると決めたら、その時期も娘さんご自身が決めるべきです。もし娘さんが将来に腟を使ったセックスをしたいと望むなら、腟を作ることをお考えになるでしょう。

 「治療しない」以外では、腟を拡張・形成する基本的な方法は3つあります。もし娘さんが治療を望むなら、まずダイレーター(拡張器)の使用を検討することをお勧めします。どの手術方法でも全身麻酔が必要で、術後はダイレーターを使用することになります。ですから、手術は短期間での解決方法にはなりませんし、いずれにしてもダイレーターを使わなくてはなりません

アメリカでの一般的な治療基準:米国産科婦人科学会は、腟を作るための最適な治療法として、手術をせずにダイレーターを使用することを推奨しています。医療従事者は、この治療法が非常に効果的で、非侵襲的であり、手術や全身麻酔に伴うリスクがないとしています。

ダイレーター(腟拡張)法による治療

 

 ダイレーターによる方法は、フランク法と呼ばれることもあります。これは、若い女性が自宅でプライバシーを守りながら自分でできる治療法を紹介したことで有名になった最初の医療従事者の名前にちなんでいます。当初のダイレーターはガラス製でした。1980年代前半にイングラム医師がいくつかのサイズのプラスチック製のダイレーターをくっつけた自転車のサドルの形の椅子を作りました。当時のロキタンスキー症候群の女性たちは、動かない自転車につけられた特製のサドルを使って腟を拡張する方法を教えられました。イングラム法は難しくて使いにくいため、ボストン小児病院の婦人科プログラムでは推奨していません。

 

 現在では、ガラス製のダイレーターに代わって、硬質プラスチック製のダイレーターが使われています。いろいろな種類のダイレーターがありますが、最も一般的に処方されているものは、XS~Lまでのさまざまなサイズがセットになっています。いちばん小さなダイレーターは、細いタンポンのサイズです。最初は一番小さいダイレーターを使い、腟を伸ばすためにダイレーターの持ち方や、圧力をかける方法を学びます。最初はダイレーターの大部分が「持ち手」として使用されます(そこまでしか入らないからです)。その後、腟が伸びるにつれて、ダイレーターをより深く挿入することができるようになります。もしみなさんの娘さんが、ボストン小児病院の患者さんで、ダイレーターによる治療を選択した場合、専門家がダイレーターの使い方を教えます。娘さんは家にダイレーターを持ち帰って、1日に2回、20分程度、ダイレーターを使います。腟が伸びてくると、娘さんは次の少し大きいサイズのダイレーターを受け取ります。腟を作るのに必要な期間は、ダイレーターをどれぐらいコンスタントに使ったかによります。一般的には6~12か月程度必要です。もし1日2、3回ダイレーターをコンスタントに使えば3~6か月ほどに短縮できます。

 

ダイレーター治療は成功しますか?

 

 ダイレーター治療は非常に成功率が高い方法です。ですが、治療の成功にはばらつきがあり、成功率は主にダイレーター治療が適切だったかどうかと、指導する医療従事者の知識と教え方によって違ってきます。

 

 確認しなくてはならないのは,その婦人科の腟拡張プログラムが,十分に機能する腟を作るのに少なくとも85-95%の成功率であるかどうかというところです。婦人科医に、先天的な腟欠損症(腟が不完全か存在しない)の患者を毎年・毎月何人治療しているか、その成功率について聞くことをお勧めします。もしプログラムや医療提供者の成功率が低ければ、娘さんは治療にストレスを感じ、ダイレーター使用での成功率が低くなります。そして外科的処置(手術)が必要になるリスクが高くなります。

 

婦人科の診察はどのくらいの頻度で受ける必要がありますか?

 

 一般的に治療中は経過観察ために、娘さんは月1回受診するように言われます。ダイレーター、外科手術のどちらの治療を選択しても、定期的な婦人科医による経過観察はとても大切です。娘さんがダイレーターを使用して腟を広げる場合、婦人科医は、正しい位置と角度で圧迫しているかを確認します。腟の拡張程度に応じて、婦人科医は、娘さんに次の少し大きなダイレーターを渡します。

 

 

手術で腟を作る治療方法

 腟形成術(Vaginoplasty)として知られている腟を作る手術は、娘さんの体の他の部分(腸や臀部など)から組織または皮膚を使用して腟を作るものです。

 

マッキンドー法:臀部(お尻)からの皮膚移植や、特殊な皮膚のような素材を使って腟壁を形成する方法です。この手術を受けた女性は、新しく作られた腟が癒えるまで、手術後1週間ほど病院での入院と安静が必要になります。術後は、約3~6か月間、トイレ以外の時はソフトダイレーターを常時装着する必要があります。手術で腟が短期間で形成できますが、ダイレーターを使用する必要があります。

 

ウィリアム法:腟に「袋」を作る手術です。他の手術が失敗した場合に行われることがあります。この手術は、米国よりもヨーロッパで行われています。術後はダイレーターを約3~4週間使う必要があります。これは、最長6か月間(マッキンドー法では一般的な期間)より短期間です。この手術では、腟の開口部が斜めになることがあります。

 

Bowel vagina法: 腸の一部を利用して腟を作る大きな手術です。大手術なので、回復には4~6週間必要で、その後もダイレーターの装着が必要です。この手術を受けた多くの女性は、慢性的に腟分泌物が出てくるので、常にパッドを着用する必要があります。

 

ダヴィドブ法:患者さんの腹膜を使って腟を作る手術です。腹膜とは、腹部と骨盤の壁を覆っている膜のことです。麻酔をした後、腟の入り口となるべき場所を切開します。さらに、おへその近くを切開し、細い器具を腹膜腔に挿入します。腹膜は引き下げられ、腟口に縫い付けられます。新しくできた腟の上部を縫合して閉じます。その後、腟の空間にガーゼを詰めます。ガーゼは通常、手術後2日ほどで取り外されます。詰め物が取り除かれた後、患者さんは数か月間、あるいは性的行為を行うまで、様々なサイズの腟ダイレーターを1日に数回使用する必要があります。これは、作られた腟を長く広くするためではなく、(新しく作られた)腟を維持し傷跡を残さないようにするためです。この手術を受ける女性のほとんどは、経過観察のために一晩入院し、術後7~10日以内にさらに経過を観察するために再来院が必要になりますi

 

腹腔鏡ヴェキエッティ法: ヴェキエッティ法は、ダイレーターと外科的処置を組み合わせたものです。この技術(これを開発したお医者さんの名前にちなんで命名されました)は、下腹部においた牽引装置で、腟腔を形成するものです。この方法は全身麻酔のもと、腹腔鏡を使って行われます。同時に、プラスチック製のビーズ(オリーブの実くらいの大きさ)を腟の中に入れ、それを紐で固定して、腟から腹腔内を通り、牽引装置(腹部の外側の皮膚に固定)へ出します。一日24時間常に圧力をかけることで腟を形成します。張力は、腹壁の外側にある「クランク」を回すことで出されます。張力はプラスチックビーズを上向きに引っ張り、腟の長さを作り出します。7~10日ほどで腟を作ることができますが、すべて終了するまで長い入院が必要です。その後、器具を取り外すために麻酔を使った再手術が必要です。この手術では、腟ダイレーターを使う必要もあることを理解しておくことが非常に重要です。ヴェキエッティ法はヨーロッパではよく行われますが、アメリカではそれほど一般的に行われていません。

 

 みなさんと娘さんの気持ちや不安を理解できる、経験豊富な医療専門家チームを選ぶようにしましょう。治療方法を決めるときは、現在ではダイレーターが標準的な方法であり、手術を検討する前に一度試すべきだということを忘れないでください。ですが、治療を受けるかどうかは娘さん自身が決めることです。娘さんは、決してみなさんや医師、その他の誰からもプレッシャーを受けてはいけません。治療を受けるかどうか決めるのは娘さん本人なのです。

i 立川病院:ロキタンスキー症候群(Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群)

 Davydov法:腟粘膜の代わりに骨盤腹膜を用いて、腟からのアプローチだけではなく、腹腔鏡を併用して行います。腹膜による腟形成は、腟入口部の狭窄、腟腔の狭小化、短縮が少なく、プロテーゼ挿入期間も少なくて済む利点があり、社会復帰も早いです。

  1. 腟腔形成:腟の入り口からお腹側に向かって、腟腔を形成する

  2. 腹膜を腟口まで牽引:お腹側にある腹膜を腟の位置口まで引っ張り、腟の入り口付近に縫合する。

  3. 腹膜を腟腹鏡で接合する:腟腹鏡を使用して、お腹側の腹膜を利用した、腟が形成される。

https://www.tachikawa-hosp.gr.jp/shinryo/14/rokitansky.html

 

生殖器系はどのような影響を受けたのですか?

 

 生殖器系は、胎児期の最初の数か月間に形成されます。女性の生殖器系には子宮、腟、卵管、卵巣などがあります。腟欠損症(腟が不完全か存在しない)は、生殖器系が完全には発達しないときに起こります。結果、腟は通常より短くて狭いか、存在しません。子宮は存在していないか小さい場合が多く、卵巣(ホルモンを生成する器官)と卵管は通常正常です。

 

 

なぜ今まで、ロキタンスキー症候群(MRKH)だとわからなかったのでしょうか?

 ロキタンスキー症候群(MRKH)の多くは、15-18歳くらいに判明します。多くの女性がこの時期に初潮を迎えますが、初潮がないということで、小児科を受診するケースが多いからです。かかりつけ医が内診を行った場合、すぐに診断されることもあります。それ以外の場合は思春期婦人科医などの専門家を紹介されます。通常、腹部超音波検査もしくは骨盤MRI検査(磁気共鳴画像法)で、子宮があるのか、腎臓が一つか二つかを調べます。骨盤の検査は、出産時や児童健診で行われないので、10歳未満でロキタンスキー症候群が判明することはあまりありません。

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)の女の子たちは、他の女性と同じく思春期があり、陰毛や乳房の発達などの女性の二次性徴を迎えます。ですから、この時期までに医療従事者が異常を疑うことはほとんどありません。

ロキタンスキー症候群(MRKH)の診断を確定するための他の検査はありますか?

 

 超音波検査やMRI検査の他に、核型(女性遺伝子)や卵巣機能が正常か確認するために、血液検査が行われることもあります。

娘の疾患の原因が、私にある可能性はありますか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)は遺伝や遺伝子の問題ではありません。胎児の発育中に起こる先天性異常または先天性欠損で、女性の出生児5,000人のうち1人程度に発生します。原因は分かっておらず、妊婦がロキタンスキー症候群(MRKH)を防ぐ方法はありません。

娘はいつ腟を治療すればいいのでしょうか?

 

 腟ダイレーター使用でも、手術でも、娘さんの準備ができたときがベストなタイミングです。タイミングは人それぞれです。ロキタンスキー症候群の女の子が腟を作る準備ができたと決断する最も一般的な年齢は、大学入学前の16歳か17歳頃です。大学生になるまで待ち、夏休みに治療を開始する女の子もいます。性的パートナーができるまで待ってから治療を始めることを希望する人もいますし、まったく何もしないことにする人もいます。みなさんは,保護者としてできるだけ早い治療を望むかもしれませんが、治療は娘さんが腟を作る準備ができてから始めるべきでしょう。。

 

腟ダイレーターがうまくいかなかったり、娘がダイレーターを使えない場合はどうしたらよいですか?

 もし、娘さんがダイレーターをうまく使うことができなかったり、使い方が間違っていることが心配なら、娘さんから婦人科に相談してもらってください。約6ヵ月間、継続してダイレーターを使用して十分な進歩がない場合は、娘さんと婦人科医とで話し合い、期間をおいてからダイレーターを再使用するか、手術の選択肢を検討したほうがいいでしょう。

娘がダイレーターを使わない場合はどうしたらいいですか?

 

 娘さんがダイレーターを使わない理由があるのでしょう。時間がない、痛みが心配、それともプライバシーが十分でないと感じているのかもれしれません。娘さんに様子を聞いたり、治療計画に納得しているか聞いたりするのは問題ありません。ですが、ダイレーターを使うように何度も言うのは良くありません。大切なのは、定期的に婦人科を受診することです。そうすることで医療チームが問題点を見つけ、進捗状況に応じたアドバイスとサポートを提供します。もし娘さんがダイレーターの使用を避け続けるようであれば、それは単に腟を広げる準備が整っていないだけかもしれません。娘さんの心の準備ができるまで治療を延期することを話し合うことで、娘さんの不安をやわらげることができるかもしれません。そうすれば、今の娘さんにとってもっと大切な他のことに集中できるようになるでしょう。

娘は性的感覚を経験できるようになるのでしょうか?

 

 女性のほとんどの性的感覚とオーガズムはクリトリスへの刺激によってもたらされるもので、性交はその快感を高めるものです。一般的には、治療後の女性は性交で痛みを感じることはありません。もし娘さんが性交に不快感を感じるようであれば、K-Yゼリーなどの潤滑剤を使用する必要があるのかもしれません。腟内性交の機会がある前に、娘さんに婦人科医に相談してもらってください。。

私の娘は子どもを産むことができるのでしょうか?

 

 生まれつき子宮がない、もしくは子宮が小さい場合、妊娠することができません。娘さんの卵巣は正常で,卵子を作りますので、生殖医療の専門家の助けを借りて受精卵を作ることができます。その後、妊娠キャリアが出産まで胎児を保有します(代理懐胎)。この子どもは、娘さんの卵子とパートナーまたはドナーの精子を用いているため、娘さんが生物学的な母親です。養子縁組も選択肢のひとつです。生殖医療は日々進歩しています。みなさんの娘さんが子どもを持つ準備ができる頃には、より多くの選択肢があるかもしれません。子宮移植もそのひとつです。これは、他の女性の子宮をロキタンスキー症候群(MRKH)の女性に移植する方法です。子宮移植には大きな手術が必要で、回復までに数か月の投薬が必要です。子宮移植では本人が出産することができますが、現在のところまだ研究段階です。

 

 まれなケースですが、娘さんの腟が発達していなくても、子宮の大きさや位置が正常なら、生殖補助医療(体外受精)を受けて妊娠、出産できる可能性があります。

 

 

娘とセクシュアリティに関することを話すのは気が引けるのですが、どうしたらよいでしょうか?

 

 10代の子どもたちは、親のストレスを察知します。正直になりましょう。少し気まずいと感じていることを娘さんに正直に伝えてもかまいません。同時に、みなさんと話をしたいし、応援していると伝えてください。娘さんも気まずい思いをしているかもしれません。2人とも話すのが恥ずかしくても、娘さんは、みなさんがそばにいて助けてくれていることを知っています。

娘がロキタンスキー症候群について話したがりません。どうしたらよいでしょうか?

 

 娘さんがロキタンスキー症候群について話しにくいのは、それが自分のセクシュアリティに関することだからでしょう。腟欠損症の診断結果は、まだ若い女性に自分を性的存在として話すことを強いることになり、親・娘ともに気づまりで戸惑いを感じるでしょう。娘さんが話したがらないときに、無理に話をしようとすると、お互いにいらいらすることになります。ですから、娘さんが話す準備ができるまで待ちましょう。ロキタンスキー症候群(MRKH)についての本を読んだり、他のロキタンスキー症候群(MRKH)の女の子と信頼できる主催者が運営するチャットルームで話し合ったり、信頼できる友人、姉妹、または大人と自分の気持ちを話すように娘さんに勧めましょう。そして、話したいことがあれば、みなさんがいつでも聞くことを伝えてください。アメリカには,治療前、治療中、治療後にサポートやガイダンスを提供してくれるオンラインのサポートグループもあります。

 

 まずは娘さんに、どうすればみなさんが娘さんの力になり、支えられるのかを聞いてみてください! 自分のケアのプラン作りにできるだけ参加し、治療計画を決定するのは娘さん自身なのですから。

 

 

娘の診断結果を誰かに話すべきですか?

 

 娘さんの診断結果を誰かに伝えるかどうかは、それぞれの個人の考え方によります。最初に娘さんの許可を得るようにするのが良いでしょう。ほとんどの親御さんは、娘さんのプライベートな情報を話す相手を限定されています。ですが、少なくともひとりの近親者や友人に話をすることで、安らぎとサポートを得られるようです。

娘の診断結果や治療法、今後の影響について、人から質問されたらどう答えたらいいのでしょうか?

 

 娘さんの情報を共有するかどうか、誰と共有するかは、ご家族によって異なります。ですが、みなさんが娘さんの体の状態を理解し,受け止められるようになっていけば、具体的な質問にも答えやすくなっていくでしょう。あくまで事実に基づいて答えるようにすれば,話をしやすくなるはずです。さらに,相手の質問をよく聞くようにしましょう。相手が本当に知りたいことは何なのか? 医学的な情報なのか、それとも娘さんが身体的、精神的に健康なのか確認したいのか? 質問には自分のわかる範囲で答え、わからなければ,ためらわず「わかりません」と言えばよいのです。不適切と思われる質問をされた場合、答えなくて結構です。娘さんのプライバシーを尊重すべきことを忘れないでください。

娘に専門家の助けが必要かどうか、どう判断すればよいのでしょうか?

 

 ロキタンスキー症候群(MRKH)と診断されたばかりの若い女性が、自分の体の状態を受け止めることができるまでに、しばらくのあいだこころの動きや行動が変化することがあります。このようなこころの状態は、娘さんが自分の体の状態を理解し、自分の気持ちを言葉にできるようになり、治療を始めるようになれば,時とともにおさまっていくことでしょう。娘さんが動揺している兆候としては、睡眠や食事のパターンの変化、自分の体や治療,診察に関して心配する発言、そして行動の変化(無口になる、落ち込む、いらいらしたり怒ったりする)などがあります。

 娘さんの感情や行動の変化が数週間以上続き、とても心配になる状況であれば、娘さんは自分の診断結果が受け止めきれないのかもしれません。なるべく早く婦人科医と相談して、臨床心理士、もしくはソーシャルワーカーと娘さんの面談を手配してください。アメリカでは一般的には、プライマリーケア提供者(かかりつけ医)から紹介を受けることで手配することができます。臨床心理士やソーシャルワーカーがロキタンスキー症候群(MRKH)に詳しい必要はありませんが、医療問題を持つ若年層に対応した経験のある人が良いでしょう。面談時には、心理士がロキタンスキー症候群(MRKH)について正確な情報を持っていることは大切なので、この情報ページを紹介したり、娘さんの最初の面談前に、文書で情報を共有したりすることをお勧めします。

 また、みなさん自身が,親として娘さんの診断結果を知り、自分の感情をコントロールするのが難しいとお感じになっているということもあるでしょう。もし、みなさんの気分や感情の起伏が大きくなり、職場や家庭にまで影響しているならば、臨床心理士やソーシャルワーカーに相談するようにしましょう。そうすることで、娘さんに、誰かに助けを求めてもよいという例を示すことができるのです。

Image by Noah Buscher

診断結果を受け止めること

受け止め

 自分の娘さんがロキタンスキー症候群(MRKH)と診断されたとき、混乱や罪悪感、悲しみ、無力感などさまざまな感情を体験する親御さんはたくさんいらっしゃいます。中には,落ち込んだり、逆に“ハイ”になってインターネットや医療関係者から得られるあらゆる情報を集めだしたりする方もいらっしゃいます。娘さんの診断結果について家族や友人と何度も話したくなったり、しばらくの間は友人や家族と遠ざかりたいと感じる方もいらっしゃいます。また、保護者の方の中には、娘さんの考えや気持ちをより頻繁に聞きたいと思うようになる人もいらっしゃいます。保護者の方はこのような感情を「ジェットコースターに乗っているようだった」とたとえておっしゃいます。

 

 娘さんの疾患や治療法について知識を得るにつれ、こころの衝撃は和らいでいくでしょう。時が経つにつれて、娘さんの診断結果を受け止め、精神的にも、娘さんが選択した治療についても、娘さんを支えることができるようになるでしょう。

 

 

自分自身を大切にしてください

 

 どんな状況であっても、自分自身を大切にすることが、みなさんにとっても娘さんにとっても,とても大切です。特に娘さんが性や生殖に関わる疾患だと診断されたのですから、なおさらです。みなさんが娘さんの診断結果を受け止められるようになると、より強い気持ちを持つことができ、娘さんを支えることができるようになるでしょう。保護者の方は、ご自身の気持ちと、娘さんの気持ちを区別するようにしてください。

 

  • 信頼できる情報源を見つける:ロキタンスキー症候群(MRKH)に関する情報、外科的治療と非外科的治療の選択肢や、治療の時期を遅らせる選択肢について調べる。

  • ノートや日記に書く:疑問や質問を書き留める。娘さんの診察時に持参する。

  • 心配事や懸念事項を話す:娘さんの医療チーム、みなさんの配偶者や大切な人、親しい友人や家族に話してみましょう。多くの親御さんは、自分自身がサポートしてもらえると、娘さんをサポートすることがずっと楽になったとおっしゃってます。

  • ストレスに対処する方法を学ぶ:深呼吸、リラクゼーション・エクササイズ、瞑想、ヨガなど。

  • 親のサポートグループに参加する:近くの病院や診療所、オンラインチャットなどで、他の親御さんたちとのネットワークの機会に見つける。

  • 臨床心理士やソーシャルワーカーに相談:うまく対応できない場合は相談しましょう。

 

 

兄弟姉妹に伝える

 

 娘さんの疾患について、兄弟姉妹に何を知ってほしいのか、もしくは知らせたくないのか、娘さんと一緒に決めておきましょう。誰に何を言っていいか、娘さんが決めることができるようにアドバイスしてあげてください。娘さんは、最初は何も知られたくなく、自分の診断結果を受け止められるようになってから話すようにしたいと思われているかもしれません。ただ,もし娘さんがダイレーターを使うのであれば、プライベートな時間が必要になります。その場合、兄弟姉妹に、「姉・妹は健康だけど、少し自分でできる治療が必要なの。だから毎日ひとりの時間が必要なの。そっとしてあげてね。」などと声をかけてあげるとよいでしょう。みなさんと娘さんが兄弟姉妹と共有する情報は、年齢、性別、言語の発達、親しさ、性格によって違ってきます。兄弟姉妹が大人であれば、娘さんは兄弟姉妹ともっとオープンに話すことを選択するかもしれません。

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娘さんの支えになるために

支える

 保護者として娘さんの力になりたいと思うのは当然のことです。ですが、娘さんがどのように診断結果を受け止めていくかわからないので、いつ、どのように手助けをしてあげればよいのか、最初はわからないかもしれません。娘さんが無口になり、落ち込み、自分の部屋に引きこもり、話したいのか放っておいてほしいのかがわからないということもあるでしょう。月経がないために、友達と「生理」について話すことができず、孤立感や恥ずかしさを感じているかもしれません。ほとんどの10代の子どもたちは、保護者から自立しようとするのと同時に、保護者の支えを求めていることを忘れてはいけません。腟欠損症の診断、治療の選択肢、セクシュアリティ、将来の生殖医療の問題などは、この葛藤をより複雑にします。

 

 以下の提案は、みなさんと娘さんが、疾患について学び、受け止めていく過程で、みなさんが娘さんをサポートするのに役立つかもしれません。

 

  • みなさんに質問したり、心配事を話したりするように、娘さんに勧める:娘さんと会話を始めるのに、正しいタイミングや間違ったタイミングはありません。自然に話す方が楽だという親子もいれば、一緒に散歩するときなど、特別な時間を決めて話す方がいいという親子もいます。

  • 医療従事者に質問したり、心配を相談したりするように勧める:医療従事者、看護師、ソーシャルワーカーなどへの質問や相談を、ノートに書き留めておくように勧めましょう。娘さんは、みなさんの同席なしで、医療チームのメンバーと2人だけで話したいと思うかもしれないことを理解しておいてください。

  • 最大限のプライバシーを持てるようにする:すべての若者にとって、プライバシーは健全な成長のために必要です。特に、腟を広げるためにダイレーターを使う場合、寝室で一人の時間が必要になります。娘さんが姉妹と部屋を共有している場合は、部屋で一人になれる時間を必ず確保してあげてください。

 

  • 疾患について誰かと話すときは、必ず娘さんの許可を得ると約束する:みなさんを支えてくれる人、たとえば、大好きなおばさんと話してもよいかどうか聞いてみるようにしましょう。

 

  • 娘さんの質問にどう答えていいかわからなくても気に病まない:「わからない」と言っても大丈夫です。そして、娘さんが答えを探すのを助けてください。娘さんがもっと学びたいなら、いっしょに調べましょう。娘さん個人の問題から、ロキタンスキー症候群(MRKH)の疾患自体に焦点を移すと、より冷静に話すことができるようになります。娘さんの医療チームの専門家は、将来の生殖補助医療の選択肢などの質問に答える手助けをしてくれます。

 

  • 娘さんに何が必要なのかわからなければ、尋ねてみましょう:みなさんが、娘さんを心配して話そうとしても、娘さんが診断について話したがらないかもしれません。あるいは、娘さんはロキタンスキー症候群(MRKH)についてとてもオープンに話している一方、保護者のみなさんが診断結果を受け止めて対話できるようになるまで、もっと時間が必要だと感じているということもあるかもしれません。困難への向き合い方は人それぞれです。みなさんとみなさんの娘さんは、それぞれが何を必要としているかを知り、尊重することが大切です。自分たちの気持ちを率直に伝えることが、今まで体験したことがない領域を家族のみなさん全員で乗り越えていくための最善の方法なのです。

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