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Image by Alfons Morales

ライフストーリーズ

THE LIFE STORIES

「男でも女でもない人」でもなく「DSDの人」でもない
「私」の物語。

 DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)を持つ人やそのご家族は、自分のことを話す時、その多くは「カミングアウト」という言葉はあまり使わず、「自分の物語を話す(tell my story)」と表現されます。これは、DSDsというものをアピールしたいのではなく、苦難や孤独から自分が手に入れてきた、それぞれ「自分自身の人生」を語りたいという想いからでしょう。

 当然ですが、自分自身の人生を語るのは容易なことではありません。聞く人が社会的ステレオタイプや予断にとらわれやすいDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)については特に。ですが、だからこそ、「DSDを持った人」ではなく「自分自身」を語る重要性があり、その人生の物語の大切さがあるのかもしれません。

 DSDを持つお子さんのご家族の一番の不安は、お子さんの将来ではないでしょうか?また、ご家族、ご本人の方たちは、こういう思いをしているのは自分だけなのではないかという孤独を感じてらっしゃるかもしれません。

 ここに集めたのは、それぞれ様々なDSDsを持ち、苦難や孤独の中から自分自身の人生を手に入れてきた人々の物語です。読むのが辛くなるところもあるかもしれませんが、こういう思いをしているのは自分だけじゃない、辛い人生の場面があっても必ず出口があり、むしろそこから強ささえ得ていけるのだということを感じ取っていただければと思います。

  

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 僕らの物語を読む人はだれでも、 それぞれの語りの多くに、痛みと孤独を感じるだろう。

 でもきっと、正確な知識と支えがあれば、誰でも充実した人生を歩んでいけると気づいてもらえると思ってる。

 

 

尿道下裂の状態で生まれた男性

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アンドロゲン不応症(AIS)など
XY女性の物語

 アンドロゲン不応症(AIS)やスワイヤー症候群は、女性のDSDのひとつです。たいていの場合、生まれた時から外性器などは全くの女性なのですが、思春期前後、生理が始まらないことなどから、染色体がXYで性腺が精巣であることなどが判明します。判明した女性にとっては、子どもを産めないこと、体のことなど、大きなショックを受けられることがほとんどです。しかし彼女たちは、そのような苦難や社会的ステレオタイプによる偏見を乗り越え、大切なものを見つけていかれます。

 

 ここではそのような女性たちの物語をご紹介しましょう。 

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家族の物語

 DSDsは、親御さんたちも当事者です。赤ちゃんが生まれた時、お子さんが何らかの障害を持っているということは、親御さんたちにとっては、お子さんの死に等しいショックを感じると言われています。更にそのような状況の中で、大きな決断もしていかねばなりません。また、性分化の問題だけではない命に関わる問題に向かい合っていかねばならないこともありますし、お子さんにDSDのことをどう話をしていくのか、大きな苦難と葛藤を越えていかねばなりません。

 

 一時、DSDsを持つ子どもの親御さんは、「勝手に性別を決めている」「隠している」「隠して手術している」などの心無い社会的偏見から、一方的に責を負わされるということがありました。当然ですが、子どもの幸せを願わない親御さんはほとんどいませんし、すすんでメスを入れたいと思う親御さんもいらっしゃいません。

 

 ここでは、親御さんたちのありのまま、そのままの物語をご紹介します。

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ロキタンスキー症候群(MRKH)の女性たちの物語
 ロキタンスキー症候群(MRKH)は女性のDSDsのひとつで、思春期以降、初潮が訪れない「原発性無月経」から,膣の一部や子宮が発達していないことが判明する体の状態です。

 たいていの場合、自分自身の子どもを作れないということに大きなショックを受けられます。しかし彼女たちも、そのような苦難の中から、それぞれ自分自身にしか手に入れられない、大切なものを手に入れていかれます。
 
 苦難や哀しみを自分自身の強さにされていく女性たちの物語をご紹介しましょう。
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DSDsを持つ男性たちの物語
 男性のDSDsにもさまざまなものがあります。その中で最も多いのが「尿道下裂」という状態です。尿道下裂とは,一般的には男性器の先端にある尿道口が下側にずれた位置に生まれてくる状態で,男性器の付け根に尿道口がある高度尿道下裂の場合,生まれたときに性別判定検査が必要になることもあります(もちろん男性だということが判明します)。

 他にも男性のDSDsには,出生時に判明する男性の「部分型アンドロゲン不応症」や,男性不妊検査で染色体がXXだったということが判明する「XX男性」などがあります。

 男性のDSDsの場合は,自分の体の状態について話をされる方は,女性のDSDsに比べてとても少なく,貴重な体験談です。
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クラインフェルター症候群を持つ男の子・男性と家族の物語

 教科書などでは「男性の染色体はXY」と書かれていますが,これは基礎的な知識に過ぎません。本当は男の子・男性約1,000人に1人(日本では約6万人の男の子・男性)は「XXY」の染色体を持っているのです。

 Xがひとつ多いと「男でも女でもない」なんていう誤解や偏見をお医者さんでさえまだ信じている状況ですが,XXYの男の子・男性はただの男の子・男性です。そのため,現在でも全体の約25%しか一生涯診断されることもないのです。

  ですが近年では,赤ちゃんが生まれる前に染色体の検査を行う新型出生前検査(NIPT)が海外で一般的になり,赤ちゃんがクラインフェルター症候群の男の子であるということが分かり,なぜか中絶を勧められるというつらい現実もあります…。

 一方,欧米のサポートグループではこういった男の子・男性を「eXtraordinarYs」と呼んでいます。「extraordinary」とは「人より多い」「類まれな」「並外れた」という意味です。確かに染色体は1つ多いかもしれません。確かにいくつかの症状はあるかもしれません。ですが,XXYの男の子・男性のみなさんは,そんな状況の中でも自分の人生を生き生きと生きる「類まれな」男の子・男性たちなのです。

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