家族のページ
FOR FAMILIES
家族のみなさん
あなたはひとりではありません。
大丈夫です。やんとかやっていけます!
お子さんになんらかの性分化疾患(最近では「DSDs:体の性の様々な発達」とも呼ばれています)があるかもしれないと突然知らされれば,誰でも動揺し,おどろくものです。
みなさんもそうかもしれません。お子さんの体に何が起きているのか,これからどうなるのか,やっていけるのか,いろいろな不安,いろいろな疑問に圧倒されてもおかしくありません。
ですが,日本でも少なくないご家族の方が同じような経験をされています。けっしてあなたはひとりではありません!
昔とはちがって,現在では各種DSDsの医療情報も豊富になってきています。
このサイトを通じて,不安は一時的なものであることを知り,不安や悩みが少しでも軽くなることを願っています。
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出産前に赤ちゃんのDSDが判明した場合
現代のDSDsの医療の進歩には目覚ましい物もありますが、それゆえに、お子さんの出産前に、超音波検査などでお子さんのDSDの可能性が判明する場合もあります。さまざまな判明の仕方がありますが、今回ご紹介するのは、イギリスのDSDサポートグループ「dsdファミリーズ」に掲載された、出生前の超音波検査で、赤ちゃんの外性器の形状から、なんらかのDSDを持っている可能性が指摘されたお母さんの体験談と、同じような状況にあるご家族の皆さんへの大切なアドバイスです。
基本的なこととして、どのようなご家族の方でも、生まれてくる赤ちゃんの幸せを望まない人はいません。ですが、赤ちゃんに何らかの障害や体の特徴をがあると、特にお母さんにとってはとても心痛むことになるのは十分に理解できることです。一般的に、赤ちゃんが障害を持って生まれたお母さんの心理は、赤ちゃんを死産した心の痛みにも匹敵すると言われています。これは、まずは、「障害を認めていない」という単純な話ではなく、我が子の幸せを思う上での、これからどうなっていくのだろうという不安・恐れ故でしょう。ぶつけどころのない怒りが湧いてくることもありますし、自分が悪いんだという罪悪感にさいなまれることもあります
ここでご紹介するA君のお母さんは、そういう場面を乗り越えた上で、みなさんへのアドバイスを書いていらっしゃいます。続く文章では、サポートグループ「dsdファミリーズ」からの詳しい解説も載っていますので、是非そちらも読んでください。
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赤ちゃんが生まれる前に、然るべき人と会うようにしましょう。
出産前の検査などで、赤ちゃんの外性器の形が想像していたものとは違う形状で、DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)の検査が必要になるだろうという場合、できるだけ早くDSDs専門の小児内分泌科医を紹介してもらうようにするのが重要です。
日本では性分化疾患指定専門の病院があります。その中でも、みなさんやお子さんを障害サポートしてくれる様々な医療従事者を加えたチーム医療を行っている病院を選ぶことをお勧めします。見つかれば、先にコンタクトをとるようにしましょう。そうすれば病院のDSD医療チームも準備ができるでしょう。心理的な支援も、事前に、もしくは出産直後から得られるようにしましょう。心理的な支援は、みなさんが赤ちゃんのこれからの発達を理解したり、みなさんの友達や家族にどう話すかなどなどの事を考えていくのに役立ちます。
ともかく、出産前に然るべき専門家に会っておくことで、出産後の諸々を(少しだけでも)冷静に受け止めていくことができるでしょう。
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でも正直、そんな気分にはなれないかもしれませんね…。
でも正直、そんな気分にはなれないかもしれませんね…。
ですが、赤ちゃんが生まれる前にいろいろなことを知っておくことで、心の準備ができるものです。これからの計画を考える時間もできますし、いろいろな機会を事前に得ることもできます。胸の内を話すこともできるし、近しい家族、それ以外の人にどう話すのか決めていくこともできる。生まれてからしばらくの間、どういう治療をしていくかなどの決断について、かなりプレッシャーを低くすることもできます。
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もしインターネットで検索する場合は、自分自身の勉強のためだけにしましょう。
この時点で「絶対の正解」を求めるのは、むしろ有害です。どのような答えも、自分の思った通りになる確率は50%くらいなんだと思っておくようにしましょう。
お医者さんたちは赤ちゃんの体の状態がどのようなものか見極めるために、検査など十分な時間をかけます。インターネットの情報だけで診断を憶測するのはやめましょう。私は個人的には、お医者さんとの診察で使われる、(時にとても)分かりにくい専門用語の意味を理解するのにインターネットを役立てました。良いこと悪いこと、どちらも心の準備ができるようにしておきました。
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先のことを考えておきましょう。
出産後、分娩室を出た後の個室を取っておくようにしましょう。本来は病院が用意すべきところですが、一応確認しておいてください。
また、DSDsについて知らない病院スタッフが部屋に出入りしていいかどうか、先にリクエストしておいてください。担当のお医者さんや助産師さん、看護師さんなどはみなさんの状況を知っていると思いますが、清掃スタッフなど状況を知らない人もいますからね。
そういう人が最初に訊いてくるのって、たいていは「男の子ですか?女の子ですか?」でしょうから。心の準備もできていない時に出し抜けに訊かれたら、答えるのがつらいこともあります。
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超音波検査について
出産後の回復のため、産婦人科で数日入院するのが通常ですが、その間にまず最初の血液検査の結果が返ってくるでしょう。またこの間、赤ちゃんのおなかの中を調べるために超音波検査が行われる場合もあります。ですが私も後で学んだのですが、この状況での超音波検査はそれほど信頼できるわけではないようです。できれば誰かにそれを言ってもらえてればと思いました。
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赤ちゃんが生まれたときに
性別判定検査が必要だと言われた場合
みなさんのお子さんが、他の子どもたちとは少し違った形の外性器の状態で生まれた場合、こんな体験をしている親は、世界で自分たちだけなんじゃないかと思ってらっしゃるかもしれません。
でも、そんなことはないのです!
実は日本では、毎年200組以上の家族のみなさんが同じような状況を体験されています。
このコーナーでは、この分野の専門家と、同じような経験をした家族のみなさんが一緒になって作成したパンフレットをもとに、みなさんが出産から最初の数日・数週間を過ごしていくための情報をご案内します。
赤ちゃんが少し違う外性器の状態で
生まれた場合には…
ー 最初の日々のために ー
ヨーロッパの内分泌学会DSDs専門医療従事者と,イギリスのDSDsサポートグループが協働で作成した,赤ちゃんが性別判定検査が必要な外性器の状態で生まれた場合のガイドブックです。
ネクスDSDジャパンで日本語版を作成しました。このような状況に置かれたご家族のみなさんだけでなく,医療従事者のみなさんも,ぜひお役立て下さい。
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最初の日々のために…
みなさんのお子さんが、他の子どもたちとは少し違った形の外性器の状態で生まれた場合、まず私たちは、もっと広い視点から状況を見ていく必要があります。
みなさんの赤ちゃんは、お母さんの子宮の中での発達で、性分化疾患(もしくは、「体の性のさまざまな発達」:DSDs:ディーエスディーズ)というまとめ用語で呼ばれる、なんらかのさまざまな体の発達状態のひとつを持っていると考えられます。
体の性の発達は複雑なプロセスで成り立っていて、赤ちゃんの女の子か男の子かの体の性のつくりも、たとえば外性器の形だけではすぐにわからず、いくつかの検査で男の子か女の子かが判明するということもあるのです。
もっと広い視点で見てみましょう。赤ちゃんの体の性は、実はさまざまな要素から成り立っています。たとえば・・・
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外性器の形がどのようなものか?
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体の中の内性器はどのように発達しているか?
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ホルモンと、そのホルモンに対する赤ちゃんの体の反応
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遺伝子情報
そしてこういう時、赤ちゃんが子宮の中でどのように発達をしてきて、生まれてからどうやって、幸せで健康なお子さんに育っていくかを知るためには、DSDsヘルスケアの専門家たちと協力し合い、同じような状況を経験した親御さんたちと話をすることで、知識と知恵を備えていく必要があります。
同じ体験をした親御さんから
最初の日々・数週間の間は、聞かされる情報で扉が閉じられていって、最悪のように思われるかもしれまん。
でもその後、少しずつ情報を理解していけば、大丈夫だと思えるようになっていきます!
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なぜDSDsは起きるのか?
人の体の性の発達は、実はとても複雑なプロセスで成り立っていて、実際にはさまざま多くの違いがその途中で起こりえます。子宮の中の赤ちゃんが途中に少し違った道を通って発達したと考えるのがいいでしょう。
DSDsの中で最も多い原因が、先天性副腎皮質過形成(CAH)の女の子や、男の子の尿道下裂(にょうどうかれつ)、ホルモンバランスの問題や、赤ちゃんの染色体によるものです。
みなさんの赤ちゃんがどういう体の状態を持っているか(診断内容)を理解することが、赤ちゃんが男の子なのか女の子なのか判定する時や、これから将来のケアやよりよい人生のために、重要になります。
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診断のプロセス
診断には、いろいろな専門家が集まる医療チームが必要です。
また、さまざまなステップを踏んでいろいろな検査をしていく時間が必要になります。
DSDを持つ子どものケアには、理想的には、さまざまな分野の専門家、たとえば内分泌科医(ホルモン)、泌尿器科医/婦人科医(腎臓・膀胱・外性器)、カウンセラーから成るヘルスケアチームが必要とされます。
他のメンバーとしては、看護師・遺伝学者・新生児生理学者・検査技師もチームに含まれます。この「多分野」のチームが、大きな病院では基本になっています。
DSDを持つ赤ちゃんが生まれた場合、通常は、地方の病院での医師・助産師は、みなさんの赤ちゃんがDSDsでもどの体の状態を持っているかを明らかにする専門家ではありません。地方病院では、みなさん赤ちゃんを安全にケアし、いくつか最初の段階の検査のみを行うことはできますが(詳しくは「一般的にはどのような検査が行われるか?」のページをご覧ください)、さらに専門的な検査は、通常は大きな病院のDSDs専門の多分野チームがある病院を紹介されることになります。
みなさんは赤ちゃんの親として、これからのすべてのプロセスでのキーパーソンになるのです!
必要な検査結果がすべてそろえば、ヘルスケアチームはみなさんと共に、検査結果とこれからのことについて話し合います。
みなさんの赤ちゃんがどう育っていくか判明していくプロセス全体には、数日かかることもあれば、もう少し時間がかかる場合もあります。
赤ちゃんの出生届の提出は、日本では14日以内ということになっていますが、お医者さんの意見書をもらえば、伸ばすことも可能です。
みなさんの赤ちゃんがどのように育っていくかについての話し合いは、DSDsの専門医療では、一般的には長くても1ヶ月あれば可能です。出生届の詳細については、みなさんのDSDs専門ヘルスケアチームにお問い合わせください。
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どのような検査が行われるのですか?
医師はみなさんの赤ちゃんの検査を行い、みなさんのご家族の医学的履歴をおうかがいします。
まずは血液検査で、赤ちゃんの染色体パターンを調べます。染色体パターン(「核型(かくがた)」とも呼ばれています)がわかれば、医師がお子さんの発達状態の背景を理解し、この後どのような検査を行うか方向性を決めていく役に立ちます。最初の染色体検査の結果は、検査の種類によりますが、受けてから通常1~3週間で出ます。
血液中の塩分のレベルのモニターを行うため、赤ちゃんの多くは数日間病院に滞在することになります。また、血液中のホルモンレベル、そして尿の中のホルモンレベルも測定することもあります。これは副腎と性腺(せいせん)が機能しているか調べるためです。
超音波検査とスキャン検査によって、体の中の内性器(たとえば子宮など)がわかることもあります。こういった検査は専門のセンターで行われるのが一番ですが、わかりにくいという時もあります。
特別な内視鏡(膀胱鏡)で、膀胱や膣の開口部を検査することもあります。ごく稀ではありますが、腹腔鏡(ふっくうきょう)で性腺を調べ、組織サンプルを調べる(生体検査)こともあります。
同じ体験をした親御さんから
情報を全部一挙に、家族の方に理解してもらおうとは誰も思っていません。この段階では時間をかけて、なんでも疑問を質問し、情報を繰り返し整理していくことが大切になります。
そしてそれと同じくらい大切なのは、みなさんが赤ちゃんと共に一緒に過ごす時間です。みなさんには、出産後の体の状態から回復し、赤ちゃんにおっぱいをあげて、お風呂も入れてあげるための時間が必要です。
そして一番大切なのは、みなさんご自身が十分な睡眠をとることです!
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精神的なサポートも必要です
看護師や臨床心理士は、特別な状況にいるふつうのご家族のお手伝いをします。
看護師や臨床心理士はチームメンバーのキーパーソンです。看護師や臨床心理士は、みなさんが伝えられた情報を受け止め、さまざまな検査や医学的な話にみなさんが押しつぶされそうになる時、ひとつひとつ受け止めていく視点を手に入れていくのに、とても役に立つ存在になります。
また看護師や臨床心理士は、短期的にも長期的にも、生まれた赤ちゃんについての情報をどのように受け止めていくか、みなさんの赤ちゃんについての話を他の人にどのように話すのか、そして重要なのは、将来みなさんのお子さんに自分の体の状態をどのように伝えていくかなど、注意が必要なストレスの多い状況をどうやっていくか、みなさんをサポートする役割もあります。
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家族や友人にはどう伝えるか?
助産師さんが赤ちゃんの性別をすぐにはわからないという場合、ご家族やお友達に赤ちゃんのことをどう話せばいいかわからなくなりますよね。 みなさんと赤ちゃんが大丈夫かどうか、女の子か男の子か聞かれたらどうすればいいのか。自分を愛してくれる人たちになにを伝えるか、どこまで伝えるかは、それぞれに違ってきます。
このように話す親御さんもいらっしゃるでしょう。「男の子か女の子か、まだわからなくて…。体の大事なところに関係するホルモンの状態に問題があるようで…。お医者さんがもっと詳しく調べてくれてて、子どもの健康に問題があるかどうか確かめてくれてるから、もっといろいろわかったら、すぐに連絡するね…」。
家族や友人には、だいたいのところだけに留めて、詳しくは話さない親御さんもいらっしゃいます。たとえば、「赤ちゃんが(体の中のことで)これからどう発達していくのか、お医者さんが調べておきたいって言ってて。ちょっと説明がややこしくて。また連絡します」。相手がいろいろ聞いてくるのではないかと心配されている親御さんもいらっしゃるでしょう。「(今はまだ)私も説明できなくて」とはっきり言うのもありです。「ちょっと別の話をしてもいい?」と話を持っていってもいいでしょう。
あまり話を伝えたくない相手の質問には、「ごめんなさい、今はちょっと心配なことがあって。そっとしておいてもらえれば」とか、「今はとにかく赤ちゃんが大丈夫かどうかはっきりさせる必要があって…」と言っておくのもいいでしょう。
友人やご家族の方に電話すると約束されていた親御さんもいらっしゃるでしょう。誰でも納得がいくような、できるだけ簡単な報告、「母親も赤ちゃんも順調です。ただいくつか検査が必要で…。またお知らせします」で、話を切り上げてもいいでしょう。
友人やご家族の方に説明ができるまで、診断が出るのを待ちたいと望む親御さんもいらっしゃるでしょう。誰かに話す心の準備がまだできていないようであれば、「無事生まれました。でも出産が本当大変だったので、しばらく家族だけでゆっくりできればと思ってます。なので、しばらく電話には出られないと思いますけど、気にしないでください」と言ってもいいでしょう。しばらくの間は自分自身を守ることに専念してください。
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病院のスタッフには?
DSDsにはいくつかのタイプがあり、どれも稀な体の状態です。出産後のみなさんのケアや赤ちゃんのケアを担当する人でも、こういった体の状態は初めてだという人もいるでしょう。
中には戸惑って、赤ちゃんについて話すのをためらう人がいたり、みなさんの赤ちゃんのことを(性別がわかる前に)男の子/女の子と思わず言ってしまう人もいるかもしれません。そういう人もそういう人なりに、みなさんのケアに当たろうとしているのだということを頭の中に入れておいてください。
ケア担当者の中には、他の赤ちゃんで同じような体験をした!と言う人もいるかもしれません。ですが、DSDsの原因にはさまざまなものがあり、いくつか体験をしたからと言って、それが常に役に立つものだとは限らず、逆に更なる混乱のもとになることもあります。みなさんの赤ちゃんのDSDの原因について詳しいところがわかるまでは、インターネットで情報を探すのも、混乱と誤解を招く可能性があります。推奨されるウェブサイト(日本ではネクスDSDジャパン)にアクセスするようにしてください。
同じ体験をした親御さんから
外性器の見た目が他の子どもたちと違う子どもを育てるって、最初は想像もできませんでした。正直に言うと、他の人たちがどう思うかってことが怖かったんです。
でも、最後には、保母さんに内緒の話をするのをやめて、こう言うようにしました。「私の赤ちゃんはこう生まれました。検査も全部して、健康だってわかってます。他になにか質問はありますか?」って。
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なんて言えば…?
しばらくの間、赤ちゃんのことはどう呼べばいいですか?
お医者さんから、最初は赤ちゃんのことを女の子か男の子か少し待つようにアドバイスされるご家族もいらっしゃいます。
みなさんの赤ちゃんがどう育っていくか、検査の結果が出るまでは、「私の(僕の)赤ちゃん」「ベイビーちゃん」「僕の(私の)子」など簡単で親しみやすい呼び方はできるでしょう。(たとえば欧米ではハロウィンに生まれた赤ちゃんは、「パンプキン(かぼちゃ)ちゃん」と呼ばれています)。
日本でも海外でも、まだ赤ちゃんの名前を思いつかなかった場合、いい名前が思いつくまでしばらく待つということもよくあります。
きょうだいにはどう話せばいいのでしょうか?
先にお兄ちゃん・お姉ちゃんがいる場合、お兄ちゃん・お姉ちゃんも、弟が生まれたのか妹が生まれたのか聞いてこられるでしょう。
赤ちゃんに起きていることを話すときは、きょうだいの年齢に応じて話しましょう。なぜ赤ちゃんがいろいろな検査を受けなきゃいけないのか、きょうだいも心配されているでしょう。そういう場合は、くどくど話すのではなく、まずは安心させてあげるようにしてください。子どもというのは大人よりもずっと物事を受け入れていけるものです。いつもシンプルで誠実な言葉を使うようにしてください。
みなさんがきょうだいのお子さんにお話しされる内容は、これから将来、DSDを持つお子さん本人にも事実を話していく基盤となっていきます。たとえば、「赤ちゃんはまだ生まれたばっかりで、お医者さんもまだ言えないんだって」とか、「赤ちゃんは、まずお医者さんの検査を受けなきゃいけないんだ。だから赤ちゃんの名前はちょっと待ってるんだ。全部終わったら、素敵な名前を考えるの、手伝ってくれないか?」と言うこともできるでしょう。
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もう言ってしまってるのですが…
「でも、もう周りの人に言ってしまってるのですが…」
あまり多くはありませんが、赤ちゃんの外性器が、男の子もしくは女の子に一般的な形で、生まれた時もお医者さんや助産師さんが「男の子ですよ」「女の子ですよ」と伝えしたとしても、その数時間後(みなさんのご家族やご友人に既にメールなどで知らせた後)、お医者さんが赤ちゃんの外性器の違いに気づいて、実はまだ性別がわからないと言ってくるということもあります。また、必要な検査の後に、最初に言われたのとは逆の性別で育てた方がいいと、お医者さんが話してくるということもあります。
このような状況に対応していくには、まず、体の状態の診断とその原因を学ぶこと、そしてその説明の仕方を学ぶことです。お子さんの体の状態の説明を、パートナーやお医者さんたちと練習してください。こういう状況でもまた、カウンセラーやDSDs専門の看護師さんが大きな力になってくれます。そうしていけば、なぜお医者さんが別の性別で育てた方がもっといいと言ったのか、友人や親戚の人に(電話やメールで)しっかりした説明ができるようになるでしょう。
大切なこと:親御さんご自身がこの状況に対してどっしりしっかりできるようになれば、周りの家族や友人の方も落ち着いていくでしょう。どうか堂々としていてください!
別の方法もあります。友人や家族の方には、単純に間違いがあったとだけ話しておいておくことです。こんなふうに。「性器のところが、小さかった/皮膚に隠れてた/腫れてたので、私たちも/お医者さんが間違っちゃって…」。
出生前のスキャンや検査で、すでにもう男の子か女の子かが言われていて、赤ちゃんが生まれる前に周りの人に話をしていたけれども、生まれてから実はまだ性別がはっきりしなかったという場合もあるでしょう。こういう状況では、さらにいろいろな情報がわかるまで、焦って訂正する必要はありません。今までに書いたような言い方を使って、今は自分と赤ちゃんの健康と食事・授乳に専念してください。
すでに話していたのとは逆の性別だったとあまり友人や親戚でも話をしたくないという場合、「エコー検査が間違っててビックリした。こんなことってあるんだね!」とだけ言っておくというのも手です。
同じ体験をした親御さんから
もしまた今のみなさんと同じ状況にいるとしたら、今度はお医者さんにためらわずに言おうと思います。
「ごめんなさい、ちょっと待って下さい。わからなくなりました。もう一度最初から説明してくれませんか?」って。
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2週目以降は…?
赤ちゃんの誕生は喜ばしいことです。ですが、赤ちゃんに健康問題があるとなれば、喜びも心配と半々になことがあってもおかしいことではありません。
プライバシーと秘密は同じものではありません!
DSDsの体の状態でむずかしいことのひとつは、他の人たちがどこまでなにを知るか、息子さん娘さん自身が決められるようになるまで、子どものプライバシーを守らねばと多くの親御さんたちが感じることです。ですが、これでは親御さんみなさんの孤立を招きかねません。
なにか心配事があるんだとわかってくれるご友人がいれば、赤ちゃんのよりよい将来について話をする時間と自信ができて、精神的な余裕もできてくるでしょう。同じような経験をしているご家族が集まる日があるか、同じ地域に住んでいるそういうご家族とコンタクトがとれないか、家族会(サポートグループ)がないか、医療チームのお医者さんや看護師さんに尋ねてみるのもいいでしょう。(ネクスDSDジャパンにもぜひコンタクトして下さい!)
どんな質問でもするようにしましょう!
DSDs専門のお医者さんなら,エビデンス(医学的証拠)に基づいて,赤ちゃんが女の子か男の子か判定して説明をしてくれますが,親御さんにとってはいろいろな不安,疑問がわいてきてもおかしくありません。
DSDsのような複雑な話すべてを一度に理解できるような親御さんはほとんどいらっしゃいません。時に私たちは「変な質問」をしてるんじゃないかと心配になるようなこともあります。
ですが、こういう時には変な質問なんてありませんし、みなさんは医療チームのメンバーに何度でも説明をお願いすることをためらってはいけません。
覚えておけるように、ノートに書くようにもしてください。わからないことがあれば、もう一度全部説明してもらうよう、医療チームに頼むようにしてください。
医療チームと会った後は、誰を中心にコンタクトをとればいいか、緊急の質問がある時どのように連絡を取ればいいか(たとえばメールや電話など)確認するようにしてください。専門の看護師やチームの他のメンバーが担当になる場合がほとんどです。
おうちで赤ちゃんと過ごすようになれば、ふとしたどんな質問でもノートに書き留めておくようにしましょう。
同じ体験をした親御さんから
私が一番うれしかったのは、夜、染色体検査の結果を受け取ったことです。お乳をあげるために階段を降り、そこには青のシーツの上に寝ている私の赤ちゃんがいました。
それは小さなことに聞こえるかもしれません。ですが、私にはとてつもなく大きな事でした。私はうれしくてただただ泣くだけでした。
その青のシーツは、やっと赤ちゃんの性別が分かったという、スタッフからのちょっとしたお祝いでした。
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これからのこと
前に進みましょう。
― これから2・3ヶ月は? そして、これからのこと ―
次に行っていくことは、みなさんの赤ちゃん個々に、体の状態によって違ってきます。
赤ちゃんが女の子のCAHと診断されたなら、お薬のタイミングや用量を学んでいけるよう、医療チームがみなさんをお手伝いします。
おうちに帰れば、どうしていくのが息子さん・娘さんにとって一番いいのか、本人には体の状態をどのように話していけばいいのか、いつ・どのように息子さん・娘さん自身にも、どういうケアがいいか話し合えるようになるかなどなど、いろいろな疑問が浮かんでくることでしょう。
定期的な診察とは別に、1年前後の時期に、医療チームのメンバーと、誕生からの間どういう出来事があったかを振り返り、体の状態とその意味について再度話しあい、これからの長期のケア計画を準備する、詳しいミーティングを行うのもいいでしょう。
親の愛情と支え、そして医療チームによる、これからのよりよい人生を深く考えたケアを必要とするすべての子どもたちと全く同じように、DSDsを持つ子どもたちも、成長して幸せな人生を送ることができるのです。
同じ体験をした親御さんから
私たちの娘の場合、彼女は利口で自信に満ちた女の子で、去年の春はピンク色のジャケットを買い(好きだからだって)、今年の冬は黒のコートを買い(好きだからって)、スカートははかないと言ってます(あまり好きじゃないからって)。
数学が得意で(面白く教えてくれるよい先生がいるんです)、スペイン語も好きで(私の血筋でしょうね)、最近はマスカラをつけて学校に行くことに夢中です(お友達がそうしていて、娘も気に入ってます)。
そしてとうとう、マスカラして学校に来ちゃいけないって先生から注意されました。本当おバカです!
サポートが必要ですか?
DSDsの判明はご家族にとっても大変ショックな出来事になる場合もあります。
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DSDsの専門病院はどこにあるの?
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女の子か男の子か判定できる診断まで不安(出生時)
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思春期前後の診断ですが,とても不安
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周りにはなんて言えば?
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診断は付きましたが,他のご家族とつながりたい
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これからの子育てが不安
さまざまな想いになられて当然です。ネクスDSDジャパンではチーム医療を行っているDSDs専門病院のご紹介や,臨床心理士によるサポート,まだ数は少ないですが似たようなDSDsを持つ他のご家族とのつながりをつくる活動を行っています。
守秘義務は守ります。お名前はハンドルネームでも可能です。連絡のつくメールアドレスとご相談内容をお知らせ下さい。
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思春期前後に
お子さんのDSDsの可能性を
知らされた場合
幼児期・児童期での女の子の鼠径部(そけいぶ)ヘルニア,思春期での二次性徴不全,二次性徴はあったけど女の子で初潮が訪れない(原発性無月経)などで,娘さんや息子さんになんらかのDSDs(女性のアンドロゲン不応症やロキタンスキー症候群,ターナー症候群,スワイヤー症候群,女の子・男の子の卵精巣性DSDなど)が判明するということがあります。
実はDSDsの判明は思春期前後がもっとも多く,ご本人だけでなく,親御さんも大きなショックを受けられることでしょう。
ここでは,思春期前後に判明のDSDsの女の子・男の子で気をつけなければならない情報をご案内します。