第9章:政策展開の指針




 本調査報告にて語られた調査参加者は,インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ成人・子どもの限られた人数の人々であることを再度強調しておくのは重要だろう。本調査の参加者は,まず自分の体の状態について知っていて,医療的なフォローアップを受けている人々,そして/あるいは,患者仲間とのコンタクトを模索した人々,かつ,本調査に参加する意思を持った(あるいは注目した)人々である。したがって,この小規模の調査から得られる結論は,フランドルのインターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々の対象集団全体に一般化することはできず,政策推奨を判断する際には,このことを念頭に置いておかねばならない。本調査報告の著者は,それぞれ個人個人のそれぞれの状況と意見を尊重したいと望んでいて,この対象集団の今以上の単純化,ステレオタイプ化を望むところではない。したがって,政策推奨は広範囲のものとし,社会的困難や医療的な困難に肯定的に反応できるように,個人/家族の特有の立場とニーズを考慮して,社会的・健康的文脈において様々な有り様を満たすようにした。


 関連する領域では,このグループの独自性による解放とエンパワメントを進めていくための次の推奨政策では,政策関係者や政府,(患者)団体と調査研究者の役割も示した。 


特に上げる点は以下の通りである。


  • 多分野連携の医学的・心理的ケアとサポートへのアクセスを高める。

  • ケアの方向性と治療方針決定,登録義務の透明性を高める。

  • 多分野ケアの保険適用

  • 患者仲間とのコンタクトに対する社会的・資金的支援を進める。

  • それぞれの体の状態に応じて,QOLとケアに関する教育提供を進める。

  • 医療提供者,政府・社会は,治療や専門用語,分類方に対して,さらに繊細な心がけに務めること。

  • メディアや,生物学の講義,調査研究での,肯定的なイメージの創出。

  • インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ子どもたちが,治療方針決定のイニシアティヴを持てるようにする。



 体験専門者や親御さんたちの中には,診断が明らかになるプロセスについて,最初に訪れる病院に対する懸念を表し,専門職による専門的な態度が重要だとした人もいた。診断に至るには長い時間を待たねばならない場合(あるいは最初のところで誤診断を受ける場合)があり,また,「特殊なケース」というところが強調され,たとえば医療看護スタッフからセンセーショナルな反応を受けたというだけでなく,性器の検査でたとえば研修医たちから侵襲的とも考えられる態度を取られたという青年期の患者のケースもあった。医療提供者に対するインターセックスの体の状態/性分化疾患についてのトレーニングと教育は,この話のセンシティヴさの熟知と,患者家族とのコミュニケーションを改善していくのに重要な役割を果たすであろう。さらに,親御さんたちや体験専門者たちは,性分化疾患/インターセックスの体の状態が疑われる場合は,オランダと同じように,家族や患者は専門のセンターにすぐにリファーすることが重要であると示唆し,シカゴ・コンセンサス・ステイトメント(Hughes et al, 2006)のような,患者家族の利益を強調した臨床ガイドラインを支持した。専門のセンターはノウハウを熟知しており,たとえば遺伝子検査のような更なる検査も可能である。遺伝子検査は専門ではない病院が外注すると時間がかかる場合が多く,(内性器の構造などを調べる)イメージング検査も,解釈が難しい場合もある。このような検査の技術的な側面について経験豊富な専門病院であれば,患者家族の検査結果の受け取りや心理的ガイダンスにさらに時間を掛けることも可能である。


➢ 診断体制を提供できる専門家たちによる多職種協働センターへのケアの集約化だけでなく,家族/思春期・青年期の患者の心理的ケアにも目を向けること。


 どう考えていくかまだ問題はあるが,専門のセンターでは検査・診断だけでなく,外科的手術も取り扱えるようにするべきだろう。(特にインフォームドコンセントを受けられない子どもに対する)外科的介入の禁止については,国際的な交渉の遡上にあり,利害団体・人権団体の利害の中心点であるが,外科用メスとの争いだけがポイントではない(Davis. 2015)ということも分かっている。性分化疾患/インターセックスの体の状態を持つ人々が体験する社会的問題のすべてが,外科手術によって低減されるわけではない。手術を受けなかった人々も,同じようなセクシュアリティの問題,情緒的な問題を体験しているのである。


 しかし,このタイプの外科手術をどのように規定するかという(国際的)国内的な範囲での明確な枠組みの必要性,また,他の様々な治療選択肢や,現在行われている様々な介入法の中での外科医学的必要性についての透明性確保,さらに,子どもや青年期の患者,親御さんへのインフォームド・コンセントをどのように行っていくかという枠組みの必要性はある。


 本調査の体験専門者たちは,非外科的な他の治療選択肢(たとえば,自分で行う膣拡張など)について,医師から言われなかった,医師自身が経験がなかったということから,その存在自体を知らなかった。医学的に必要という言葉で表現されていること(たとえば尿漏や飛び散りが激しいといった,明らかな泌尿器の問題)は,実は(男子として立っておしっこできるようにとか,外性器の見た目はこのようでなければならないなどといった)社会的な理由で描写されているという点も重要だ。最近の調査では,医療提供者の100%が,そういった外性器の状態を,見た目として「異常な」性器と描写しているのに対して,親御さんがそのようにラベリングしているのは半分だったことが示されている(Nokoff et al,2017)。同じ調査の著者たちは,親御さんの大多数が,外科的介入後の外性器の美容的側面については満足を示していたということに特に満足していたが,まずは,このようなバリエーションを「矯正する」という扱いの偏りについては,真正面の疑問を投げかけることは可能だろう。少し逆説的ではあるが,自然に起きる性器のバリエーションの広範囲さを医師たちが見ることはよくあることだからだ。いくつかのバリエーションはホルモンのアンバランスを反映したものではあるが,このようなバリエーションを持った人々の大多数は健康なのである。体験専門者たちは,医療従事者や訓練中の医師でのこのようなバリエーションに対する意識の必要性と,「正常性」と健康の違いを強調していた。


 しかしながら,調査参加者の中には,もはや最適とは考えられていない術式や治療を受けてきた人もいて,現在では十分同じような転帰をもたらすことのできるオペ以外の他の治療法(自己ダイレーションなど)もあり,患者もどのような治療法にするか選択できるようになっているということを強調しておくのは重要だ。専門センターの任務は,できるだけ新しい研究調査からの情報によるアップデートを続けること(調査には積極的に参加すること),そしてエヴィデンスベースドなアプローチを旨とすることである。成人の体験専門者が特に強調しているのは,そういう調査の中では,治療選択が本当に選択になっていなければならないこと,また,選択の際の方向付け(たとえば,「こういうことはできます。私たちはそれについては多くの実績があります。何もしないということもできますが,私たちにはそういう経験は少ない/全く無いです」)の影響は大きいということであった。本調査でも,「理想的な」ケアの流れと決定についての親御さんと成人当事者の見方には,重なりがほとんどないこともあり,治療のリスクや,子どもと親には治療を行わない権利もあるということをはっきりと伝えるべきであることを示した。このような伝え方についてある程度の透明性を高めるには,専門センターがこの領域でのインフォームドコンセントのプロセスをマッピングする必要性があるだろう。


子どもや青年期の患者へのインフォームドコンセントの基準は,(これも今でも明確なものではないが)親御さんへのインフォームドコンセントの基準よりも厳密に適用されていないということをケアは考慮するべきであることを前提に,子どもや青年期の患者へのインフォームドコンセントの実証的な基準をさらに具体化していくことは可能だろう(Carmichael & Anderson, 2004)。


 インターセックスの体の状態/性分化疾患に関する話では,子どもが自分で決められる年齢になるまで,あるいは長期間での調査によって非介入の場合の転帰が明らかになるまでの,性器手術の猶予(Diamond & Garland, 2014)や,専門センターでの外科手術の集約化の義務化が指摘されているが,性器手術の最適下限の(最適とはされていない次善的な)治療法によって起こり得る転帰や,明確な医学的示唆なしに外科手術が行われた場合の転帰に対する,体験専門者や親御さんの合理的な懸念に答えられるだけの十分な調査というのは未だなされていないのだ。「最善の」機能・美容的転帰を得るには,手術を行う外科医の経験が一番に重要となる。1年に50回,同じような介入を行っていることという閾値はよく言及されているが(Cools, 2017, personal communication),ケアがあちこちでバラバラに行われており,法的なリファー義務もないという現状では,性分化疾患のような稀少疾患では,ベルギーのような小さな国では,この閾値は難しくなる。


 政府公認で著名な(手術についての知識と手術なしの治療の経験もある)専門センターへのケアの集約化によって,(手術ではない方法の「信頼性」も高まるだろうが)関係者の治療選択肢が増え,より良いものになるに違いない。そういう場では,関係者全員が起こり得る困難に対応していく自信も持てるだろう。


➢ 政府によって権限を与えられた専門センターは,患者の権利についての情報,および手術なしの(信頼するに値する)ケアプログラムも提供するべきであるが,医学的に必要な場合や,情報を提供された人が望む場合は,外科的な治療も行えるようにする。


 体験専門者や親御さんたちによれば,ケアセンターに専門家を集約化することで,他に,体の状態のケアについてすべての発達ステージでのフォローアップ治療(小児科医から成人患者のケアまで)も促進されることになる。さらに,種々の治療の連動や,治療の継続性を確保するための情報伝達だけでなく,ケア提供者との信頼関係の構築にも役立つ。現段階では,ケアは主に子どもや若い人々が中心になっており,成人患者に対するケアに力を配分することも重要だろう。


➢ 専門家の協働によるセンター化は,患者の完全な診断と,(子どもから成人へと至る)ライフサイクル全体の治療プロセスを俯瞰することを可能にする。


 専門センターはハイレベルの専門家が揃い,体験専門者へのコンサルテーションも可能になるため,緊急の疑問や危機的状況に支援を提供し,特定の重要な時期(たとえば学校入学,思春期,妊孕性の望みなど)での患者と家族のニーズを(再)評価することができる。また専門センターは,患者家族が家の近くで施設外の専門家(心理師など)とのコンタクトによるフォローアップの可能性,必要な際の他の医療従事者(心理療法家)や,他の患者とのコンタクトの可能性にもフレキシブルに対応する役割も持つ。


➢ 専門センターは,患者家族に対して,社会的サポートや情報を共有できる場として,他の患者とのコンタクトを提供するべきである。


 調査されたベルギー大学医療センターの医療従事者たちも,他の稀少疾患の状況と同じく,ベルギーにおける性分化疾患/インターセックスの体の状態を対象とした専門センターの役割を支持した。専門の医療従事者たちは,診断(疑い)後の特定のケアとガイダンスの必要性は認識していたが,そういうセンターの数や地域配分,センター同士の協働,あるいは,リファーと適格性についてセンターが満たすべき基準など,すべてを支持しているわけではない(Callens, Longman & Motmans, 2016)。


➢ 専門センターの政府による公認には,ヨーロッパ稀少疾患専門家委員会(EUCERD)といった専門組織によって裏打ちされ,かつ実行可能な基準が必要である。連邦政府(の健康政策)は,性分化疾患/インターセックスの体の状態に関するベルギーの状況に対してどのような基準が適用されるべきか,さらなる調査をするべきである。








 フランドル/ベルギーにおける性分化疾患/インターセックスの体の状態に対するケアポリシーの構築は,疫学的なデータの不足,患者についての長期間のデータの不足,関係するケア組織によるフォローアップの概観の不足によって,全く進んでいない。現在のところベルギーには,性分化疾患/インターセックスの体の状態とその治療に関する義務的な登録制度はない。そのためこの集団の正確な人口と治療の頻度についての知見もないのだ。


 現在ベルギーに存在する登録機関は,2008年に設立されたベルギー小児内分泌学・糖尿病学会(BESPEED)のBellux DSDレジストリで,主に遺伝子および内分泌学的パラメータに関する基礎科学的な研究を目的とするもので,QOLや心理に関するパラメータは含まれていない。性分化疾患を持つ患者が全員登録されているわけではないのは,ひとつは患者自身が拒否できるため(調査に参加したセンターの倫理委員会には同意・拒否の選択肢はない)だが,医師全員が登録に参加しているわけではないなど,いくつかの理由がある。


  • 登録は強制ではなく,登録業務の管理者も賃金が支払われているわけではない。一方BESPEEDレジストリは,系列センターからの入力を元にした登録で即座にアップデート可能な「研究看護師(study nurse)」に賃金が支払われている。医師も登録についてアピールしておらず,これにはある種の思惑が絡んでいることを示唆している可能性がある。患者の数に基づいて,その医師が性分化疾患の専門知識を持っているかどうか(そして十分な数の患者を見ているか)を明確にすることができるので,患者数の透明性を高めることは医師同士の競争を促すことになる。


  • レジストリ(登録簿)にアクセスできるのは,BESPEEDとつながっている小児内分泌科だけという場合が多い。小児内分泌科医は,家族との最初のコンタクト先になることが多いが,常にそうとは限らない(たとえばCAISやMRKHの女性は婦人科医で,尿道下裂の男児の場合は泌尿器科医で留まる場合が多い)。同じ病院内での異なる診察科同士の協議は現実には円滑に行われているとは限らず,(多くの病院がそうなのだが)多分野協働のインフラがない場合は更にそうである。この結果,内分泌科医が見ない特定のタイプの体の状態は,レジストリに現れないことになるのだ。


➢ 体の状態と治療法の登録義務だけでなく,心理的パラメータやウェルビーイングのパラメータの登録義務も加えることで,ヘルスケアや心理社会的サポートのプランニングも進めることができる。


 「I-DSDレジストリ」と呼ばれる,ヨーロッパ全体のDSD登録簿もある。これは国際的な性格(と言っても主にヨーロッパで取り入れられているものだが)を持つ大規模な調査登録機関で,登録患者数も大規模なため,大規模で価値のある科学的成果が得られている。このレジスターは主に内分泌学的パラメータと遺伝子学的パラメータが中心ではあるが,2017年より心理的パラメータ(QOLや性別同一性,出生後の親御さんへのカウンセリング,子どもに診断を伝えた年齢など)も加えられる予定である。ベルギーの患者もこのレジストリに加わることを選択することもできる。しかしここでも同意制度が適用されるため,この登録ではベルギーに何人の患者がいるのかは分からず,やはりベルギー独自の登録制度の必要性が強調される。作業の重複を避けるには,国際的な専門家への関連や,公的機関によって集約されたデータの補完の意味でも,I-DSDレジスターと同じような登録がもっとも論理的であろう。患者家族会や利害団体の協力も,性分化疾患/インターセックスの政策を更に発展させていくには必要であると思われる。


➢ 専門センターは確実に登録を行えるようにしなければならない。


 登録制度の例としては,小児がんレジスターなどがあり,これらは現実に機能している。理由としては,


  • (ベルギーのがん計画を通して)構造的に資金が提供されている。


  • 小児がん科医は,子どもの民主教育学者や泌尿器科医よりも,様々な述語の分野を通して資金提供を受けているため,遂行能力に対する障害はわずかで,質の高いプロジェクトに投資することができるから。


  • さらに,多職種協働コンサルテーションに対する補償(MOCコンサルテーション)もあるから。そのため,こういうコンサルテーションサービスは,看護師研修生に対して給与を支払うことができ,義務的な登録(MOC)を行い続けることができる。




 インターセックスの体の状態/性分化疾患の診断プロトコルや,患者とその家族に対するケア方針の決定は,医学的にも心理社会的にも複雑なものになることが多い。そのため以下のようなことが必要となる。


  • 医師が十分に学べる時間


  • 多職種協働による十分なコンサルテーションの時間。患者家族が診断内容について話し合える時間,治療方針の長所短所を計れる時間,本人関係の心理的な心配事や不安,ストレスを相談できる時間など,一つの過程の中で様々な専門家に相談できるようにする。


 多職種によるフォローアップは,最適な医療実践であると認識はされているが,病院側が,多職種チームの設立と管理,プランニングツールの設定,心理社会的ケアをチームに含めるための,管理的,技術的,経済的なサポートを提供していないことがほとんどである。現在,体系的なディスカッションミーティングには,制度的な支えがなく、個々のケア提供者の(自発的な)熱意で行われている。これでは,医療および心理社会的ケア提供者に余分な労力をもたらす可能性がある。


➢ 現行のDSDチームの経験豊かで質の高いケアは,インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人の多職種ケアに対して公的に償還制度が認められている場合にのみアクセス可能である。


 医師への正確な償還だけでなく,多分野チームにおける心理師への償還や、患者家族のための総合的なケア(心理的支援を含む)への償還はすでにうまく行っていてもおかしくないはずだ。


 また,性分化疾患/インターセックスの体の状態のバリエーションに関連する付随的な治療(例えば,男性の乳がんに対処するためのホルモン療法)や,以前受けた治療に関連する付随的な治療(例えば、性器手術後の痛みに対処するための理学療法)に対する償還方針の改訂が必要であろう。もちろんCAHに不可欠な投薬についてもだ。現時点では,性器の手術については完全に償還されている。


➢ 心理社会的・身体的ウェルビーイングを改善するためのホルモン治療や他の治療に対する償還制度の改定も必要である。









 同じような領域での心理的サポートは、関係者それぞれ個有のレジリエンス(回復力)に焦点を当てたものである。それぞれの体の状態について,またさらには追加的な精神医学的および社会的困難についての分かりやすい情報を,共感的かつ支持的な方法で提供することが重要で,そうすれば各々のインターセックス/性分化疾患の体の状態そのものや,それに関連して起こり得る具体的な心理的困難(たとえばY染色体を持つ女性の「完全な女性」ではないという不安や,クラインフェルター症候群を持つ男性のテストステロン治療後の性欲亢進)に対応できるようになる。心理社会的ケア提供者が,これらの性分化疾患特有の問題に精通していることは極めて重要である。本人や家族にはあまり関連性のないテーマ(例えば、性別に関わることや性的指向)に焦点を当てることは,患者家族が心理的ケアから撤退する原因となる。


➢ インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々と家族特有の心理的な問題に関しては,心理ケア提供者の専門的な訓練が必要であり,訓練の条件についてのより多くの情報が議論されるべきである。


 心理師は支援の要請がある患者を特定し,続いて体の状態および特定のライフステージ(例えばAISと新たに診断されたティーンエイジャー,閉経後の年齢のAISを持つ女性など)を考え合わせ,治療の違いを区別することができなければならない。具体的な効果のある心理的介入および性科学的介入についての専門的な訓練と訓練へのアクセスが良くなれば,ここで強調したことは自然に実現するであろう。


➢ 効果的な介入法の開発(Liao&Simmonds,2014)と,インターセックスの体の状態/性分化疾患に特化した評価ツール(Sandberg et al.,2011)に取り組むのは,心理師と性科学者の仕事である。


 医学的および性心理的ケアの評価において,性分化疾患に関する知識を,他の異なる集団(トランスジェンダーを含む)から推論すべきでないことも重要である。そうすることでしか,この特定の対象集団の,長期間でのポジティブな性心理的・社会的アウトカム(転帰)の予測要因・関連要因に関する正確な知識は得られない。


 医療ケア提供者と患者会との良好な協力関係は,より効果的なリファー,トレーニングと教育、相補的な知識・技能の相互利用を通じて,アクセシビリティを促進することになる。インターセックスの体の状態/性分化疾患の専門センターによる精神的ケアのアクセシビリティを高めるもう一つの手段は,専門的な遠隔治療だけでなく,治療における個人的な望みや治療の長所短所についても情報提供できるeヘルスのリソースやツールの使用であろう(Siminoff&Sandberg,2015)。しかしこういったツールは,フランドル・ベルギーの言語では当面(まだ)利用することができていない。









 これまで政治家の関心は、主に「インターセックス」や「インターセクシャル」に焦点づけられたもので,その結果,こういった用語を中心に使った法律案は,このような用語を元に自身を認識しない大部分の対象集団とのつながりを失う可能性がある。


 「インターセックス」という用語と比べれば,DSDに基づく用語はそれほどセンシティブではないが,この用語も「(他の人と)異なる・逸脱」や,「体の性(sex)や性別(gender)」の意味合いが強調されているため,回答者全員から肯定的に受け止められているというわけではなかった。体験専門者とその親御さんたちは,具体的な体の状態名や,身体的・生物学的側面の説明の仕方を好んでいることが多い。当事者家族などの関係者たちは,DSDを,自分の存在(something they are)ではなく,自分が持っているもの(something they have)と認識しているのだ。社会的認識では,男性/女性の標準を満たさない身体であるがゆえに起こるだろう性別同一性の問題といった心理的側面に対応しなくてはいけないと思われているが,それは社会的な予断であり,明らかに実際の当事者家族たちは,DSDを自分のアイデンティティではなく,あくまで自分が持っているものとすることで,自分の体の状態の医学的・生物学的な定義の方を強調しているのである(例えば,NNID,2013を参照)。


➢ インターセックス/性分化疾患との用語は両方とも,法律文では使用しないことが推奨される。代わりに,これらの障害の生物学的特性については記述できる。


➢ 代替となる専門用語(「生殖器官の非定型的発達(atypical reproductive development)」など)についてのコンセンサスはないが,いくつかの国(マルタやオランダ)で公式に導入された「体の性の特徴(sex characteristics)」といった用語を含め,関係する集団で(国ごとでも)新たな用語の提案が試されるべきであろう。


➢ 我々がインタヴューを行った体験専門者とその親御さんたちの間,またあるいは利害団体との間で,用語をめぐるこうした賛否がどの程度あるのか,政策的取組のための調査研究への体験専門者たちの参加意欲にどの程度影響することになるかは分からなかった。


 体験専門者と親御さんたちは,この対象集団をLGBT傘下につなげることには異論を唱えていた。その「目的」と「集団性」については,実はコンセンサスは全くないからだ。医学的な分類ではあるが,実際の当事者の人々はひとつの集団に属したくないと思っており,対象集団の輪郭を描くのは難しいのだ(オランダでも同じ状況である。van Lisdonk,2014参照)。体の状態によって医学的問題や心理社会的課題も異なり,親御さんや体験専門者たち自身も,体の状態によるそれぞれの違いを強調していた。性分化疾患/インターセックスの集団におけるセクシュアリティの課題や医学的問題は,LGBTグループとは,根本的に異なるという認識が主な理由として挙げられていた。インタヴュー対象者によれば,それは,打ち明ける場所が限られることや,否定的な反応を受ける不安・恐れ,自己受容の困難といった,マイノリティとしてのストレスなどの共通点を,はるかに超える違いであるとされていた。


➢ この集団に固有の問題のより良い認知と可視性に対して,この対象集団をLGBTの傘下に加えることが実際役立つのか?というところや,用語はどういうものがいいのかというところは,実は不明確なのである。


 インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々のグループが,(例えば機会均等政策の文脈において)LGBTグループに加えられる場合は,現実的な内容が提供されなければならず,これには患者会や利害団体のコンサルテーションがさらに必須になるということである。体験専門者と親御さんたちは,このような体の状態に対する(何かの犠牲者であるように見なされない)肯定的な態度と,広範囲な状況(医療や学校,社会状況全般)での様々な状況が明らかになることで,エンパワーメントと解放をもたらされることを強調した。この意味では,この集団の機会均等政策のさらなる発展は,現実的な価値をもたらすものとなるだろう。









 こういう体の状態に関して,体の状態による大きな違いを考慮し,can-do(やっていけるものだ)アプローチを強調した,肯定的かつ繊細な情報が必要である。


➢ 性分化疾患に関する正確な情報を,一般開業医(パンフレットの利用など)や婦人科医および助産師(例えば,患者家族とのコミュニケーションとサポートの最善の方法に関するガイドラインなど)に提供することは,一次医療での性分化疾患に対する偏見や誤解に対して有効であり,専門医療センターへの迅速なリファーも可能にする。


➢ 親御さんや子どもたち,青年,成人のための,内容としては,各体の状態についての更に特有の情報や,妊孕性に関する選択肢,セクシュアルヘルス,そして患者会のコンタクト先を含めた,肯定的な教育マテリアルも必要である。


 成人当事者や親御さんたちは,学校の授業内容でこの体の状態が直接オープンに話されることについては不安緊張を生むことがあると示唆しており,かつ,何の支えもないと感じている場では,社会参加することが減り,自分から孤立することがありうるとしている。当事者家族としては,生物学の教科書で,積極的かつあまり説明的にならない形でのこのような体の状態のバリエーションを含めることについて議論している。


➢ 初等教育の最終目標や,中等教育の学位達成目標,性教育の範囲内では,体の性の発達プロセスについては,(例えば、XXは女性だけ、XYは男性だけのような)単純化しすぎた定義を避け,中立的かつ記述的用語を使うようにするべきだろう(例えば「女性・男性ホルモン」の代わりにエストロゲンおよびアンドロゲンといった用語を使う)。


 ネガティヴで繊細さに欠けたメディア報道(例えばオリンピック競技大会への参加の文脈における,インターセックスの体の状態を持つ選手に関する議論)は,このような体の状態群の誤ったイメージを広めることが多いだけでなく(たとえば,ある特定の症状や側面,手術の話ばかりを過剰に照らし出そうとすることは,その他の特定のバリエーションを持つ人々すべてに当てはまるわけではなく,同じ症状であってもその影響は人によって異なるという説明がない),当事者たち自身を傷つけ,よって必然的に,隠したままにしておきたいとさらに思うようになることも多いのだ(Jones, 2016)。


➢ 前もって「教育」を目的としたメディアイニシアティヴとキャンペーンで,センシティヴな治療に関連する問題についてもあまりセンセーショナルにならない表現を通して,インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々の可視化をもたらすプラットフォームを提供することにより,対象集団の人々の先導となり,彼ら彼女らが望むのであれば,他の人と自分の体の状態についてよりオープンに話ができる出発点を提供できるかもしれない。


 最後に、患者会代表者の集まりなどで,それぞれの体の状態のグループごとの様々な状況を表明することは,ステレオタイプ化の可能性を防げることにもなるだろう。ある種の定義の上で,特定の体の状態を過度に代表させるような表現があるが,それではこのような体の状態群の困難の関係性や頻度を見立てることが難しくなるだけで,そのような定義からは見えない体の状態を持つ人々の葛藤が犠牲にされる結果となってしまう(Cools et al,2016)。インターセックスの体の状態/性分化疾患のコミュニティ全体でのロールモデルについては,このような多様性に常に注意を払う必要があるのだ(用語の好みや,ケアの違いと好み,年代・世代のギャップなど)。本調査に参加した人々の大多数は,活動家が行っているような活動に参加する必要を感じていないが,正確な情報へのアクセスや最善の医療ケアの可能性,生物学的妊孕性の可能性の最大化,セクシャルライフの満足,患者仲間とのコンタクトのリファーなど,ある意味,利害団体も掲げているテーマに関しては支持を示した。










 ベルギーでは,体の性の発達に非定型的な特徴を持つ乳児の場合,出生時の男性/女性の義務的な性別登録は3ヶ月間延期することができるが,現在の法律では,2007年5月15日施行の法律で,体の性の発達が不明確な状態で生まれた子どもたちの問題が認識され,その後,性別登録のために3ヶ月の延期期間が与えられている(2007年7月12日施行の法律を参照)。これは,関わる親御さんたちが,予後を予測できる診断のための種々の医学的検査を更に行うのに十分な時間である。いくつかのケースでは,非定型的な性器の見た目は生命を脅かす疾患を示す徴候であり,治療を行わなければ生死を決定することになる。例えば先天性副腎皮質過形成(CAH)のようなコルチゾールホルモンの不足がある場合がこれに当たる。ほとんどの場合は即時の医療介入に医学的必要性はなく,医学的基準には行政上の性別登録を課すことはできない。


 例えばマルタのような法律を,ベルギーが追加した方がいいかどうかは実は不明である。マルタの法律では,インターセックスの体の状態/性分化疾患の背景を持つ子どもの親に限らず,子どもが生まれた時,子どもの性別同一性がまだはっきりしない間は性別を登録しないことを認めるもので,遅くとも16歳で、子どもがどのような方向で発達しているのか,子どもの希望が何であるかを観察できるまで,親が性別登録をしないことを選べるというものである。これまでで,このような規制が児童福祉,解放,非差別の観点から,現実に望ましい効果をもたらすかどうかも不明である。解放政策がむしろ不必要なスティグマ化をもたらすことはよく述べられていることである(van Lisdonk,2014)。必ず長期的な評価が必要であろう。


➢ 性別登録の問題は,むしろトランスジェンダーの人々にとって重要なものである。性別と名前に関する法律改定の近年の提案は,性分化疾患/インターセックスの体の状態を持つ人々(または親御さん)の中でも,(後に)行政手続を通して公式文書の性別登録を変更する(少数の)人々には有効性があるように思われるが,インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々の大多数は,自分自身を男性/女性であると感じており,性別欄や性別同一性に関する選択肢のリストに「インターセックス」を含める必要性をほとんど感じていない。 性別のX欄はありえるが,それは「インターセックス」を暗示させる必要性はないのだ。


➢ インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々の大多数は,男性/女性欄にチェックすることに問題を感じていないため,トランスジェンダーの活動家による提唱で第三の性別カテゴリーを作ることが, インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々にとって利点があるかどうかも実は不明なのである。








 差別禁止法に「体の性の特徴」を根拠としたものが追加されている国もある(例えば、マルタ、オランダ、ギリシャ)。本調査では,性別同一性および性表現に関するベルギーの差別法に,新たに別の差別根拠を含めるべきか,その解釈はどのように考えなければならないのか,あるいはインターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々を一つの集団として,この差別禁止法に追加し保護することが良い結果をもたらすのかは明らかにできなかった。Jonesの研究(2016年)では,より一般的な用語である「体の性の特徴」を用いるのではなく,特定のインターセックスの体の状態/性分化疾患のバリエーションを明示的に表記する場合ならば,対象集団を含める方が良いと示されている。また,トランスジェンダーの人々でも(この場合は特に問題とされないが)生得的で非典型的な体の性の特徴を持つ人がいるということもあるが,それを差別禁止法に加える理由とすると,トランスジェンダーとインターセックスの体の状態/性分化疾患,この2つの集団の相当な違いを混同する可能性が出てくる。


 差別に関する特定の問題は、体の状態の可視性と一致する可能性が高い。インターセックスの体の状態/性分化疾患の大部分は(文字通りDNAレベルのものであり)外から見て分かるものではなく,隠すことが可能なものなのだ(例えば,非定型的な外性器)。ホルモンの影響により,その人の性別では見られない外的特徴(例えば男性の乳房の発達)が起きる人には(より多くの)問題が起こるかもしれず,(自分で撤退することも含め)差別・排斥が起きるという可能性もある。本調査ではこの問題について正確な絵を描くことはできなかったが,体の性の特徴に基づく差別的償還は報告されていた(例えば、特定の性分化疾患を持つ男性における抗エストロゲン治療の払い戻しがなかった)。また,保険会社によっては特定の性別基準のスクリーニング(Ghattas,2013)に関連するため,いくつかの検査(例えば,ある特定の性分化疾患を持つ男性の乳癌予防スクリーニング)には払い戻しがされなかったということもあった。


➢ 対象集団の中でのそれぞれの体の性の特徴を基にした差別に関しては情報が不足している。社会的側面については十分に調査されておらず,政府のこのテーマに関する政策の策定を支援するためには,政策展開に焦点を当てた調査が更に必要とされる。




 人は周りの環境から支えられていると感じられれば,その分主観的なウェルビーイングは高くなる。したがって,親御さんたちや体験専門者が,親戚や友人,同じような想いをしている人々とのコンタクトが可能になり,社会的ネットワークを発展させていくことは,当事者家族のウェルビーイングの向上には大きく,(ケア)ビジョン全体像の中でも必要不可欠なところである。


 文化的な違いがあるために海外の患者会に参加するのは敷居が高く,フランドル/ベルギーの患者会でも参加するのはためらわれる傾向がある。このような団体の存在についての情報が不十分で,医療従事者からの紹介も困難な状況である。いくつかの体の状態では,患者仲間同士のコンタクトもなく,既存の患者会も男性よりも女性に重点を置いている。例えば自分の体の状態をそれほど気にしていないなど,患者会への参加はあまり重要とは認識されていないということもあるかどうかはまだ分からない(van Lisdonk,2014)。


➢ 患者仲間同士のコンタクトのための既存の患者会については,その拡大と政策的支援が必要である。既存の患者会は,限られた予算で主にボランティアによって運営されている状態である。


 Genres Pluriels・OII ベルギーは,自身を利害関係者の上位組織としているが,ベルギー・フランドルでどれだけの当事者家族がこの組織にコンタクトしているのかは実際には明らかではない。さらにこの組織については,トランスジェンダーの人々の利益との同盟を意識的に進め,「アイデンティティ(同一性)」を旨とした活動を行っているため,このような組織はただ要注意であると感じる当事者家族には,むしろ「脅威」と認識されている可能性もある。したがって,患者会あるいは利害団体の発展に関しては,その政治的な要因を注視することが重要と思われ,政治的影響力がどのレベルで影響を及ぼし得るか,あるいはそういうことが実際必要とされているのかを吟味する必要がある。


➢ フランドルでのケアのあり方,解放政策の全体像の把握には,患者会や利害団体の立場など,様々なステークホルダーの見極めと集約が必要である。


 

 ケアの対象となる当事者・家族だけでなく,政府機関や一般の人々,あるいは医療従事者,患者会,各種利害団体に対して,オンラインで閲覧できる性分化疾患に関する知識をまとめた情報ポータル,および具体的な情報を伝えることができるコンタクトラインの構築による,情報・相談窓口の確立が優先事項であろう。この情報プラットフォームは,対象集団全体のニーズと必要とする情報を満たせるよう,体の状態ごとの既存の患者会やケア提供者のポータルよりも広い範囲をカバーするものとなる。このようなイニシアティブは,支援への閾値を下げ,このトピックへの一般の関心を高めるなど,他の領域にもプラスの副次的効果をもたらすだろう(例:Transgender Info Point)。


 このようなイニシアティブの最終目標は,他者との関係性や,セクシュアリティ・妊孕性で脆弱性が増したインターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ人々および家族の,個人レベルおよび社会レベルでのQOL向上の機会,社会的抑圧の軽減とウェルビーイングの向上、およびケアへのアクセス可能性を進めることである。このような情報発信を通して,国内外の社会・メディア・政府機関に対して情報提供および敏感な問題であるとの啓発を行うことで、インターセックスの体の状態/性分化疾患を取り巻く個人レベル・社会レベルでのスティグマに対抗することが可能となり,対象集団に対する革新的な機会均等政策として,フランドル・ベルギーが先駆的な役割を果たすことができる。


 情報プラットフォームの具体的な取り組みとしては,情報教育的なウェブサイトやパンフレットの作成,ケアや治療方針についての針路を決めることに役立つツールの作成,オンラインの窓口や個人的なアポイントメントを通してのサポーティヴな相談体制の実現,さらには性分化疾患の概要の説明の提供などがありうる。関連する様々な分野を考慮した,ケア提供者用のフィールドの提供も行う。インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ当事者家族の経験があるベルギーのケア提供者のための信頼保証カードを発行することで,親御さんや医療従事者の両者が,性分化疾患の専門知識を持つ専門家へのリファーも確実にできる。


 この情報プラットフォームでは,インターセックスの体の状態/性分化疾患に関する質が高く科学的に信頼性の高いアクセス可能な情報を積み上げていくこともでき,親御さんの知りたい情報のニーズを満たせるだけでなく,プライマリ・ケア医もこのテーマに周知させることができることになる。独立機関による情報提供は,それ自体が独立した立場を取れ,患者会や利害団体とのコンタクトとは異なる様々なアクションフィールドを持てるなど,いくつかの利点を持てるだろう。


➢ 家族,成人当事者,政府機関を対象とする,質が高く信頼できるアクセス可能な医学的情報・医学以外の情報のプラットフォームの開発が必要である。


  • 各体の状態および治療に関する医学情報には次のようなものがあろう。


  • どのような(タイプの)介入法(スクリーニング,リファー,診断,治療法)があるか?


  • 介入の目的は何か?


  • 最終的なエヴィデンスの質はどのようなものか?


  • 介入によって達成される健康的な利益について現在判明していること。 (スクリーニングの場合:早期発見から治療までの全体像)


  • これらの介入の悪影響について判明していること等


 また一方,自分自身あるいは自分の子どもの体の状態を受け止めていくプロセスや,他の人(親戚家族や友人など)に話をする時のプロセスなど,医学的文脈以外の社会的経験,QOLへの影響などについても,より広い情報の提供が必要である。社会参加,学校生活,就労,余暇活動における差別や障壁に関する情報も,より詳細に議論されるべきであろう。男性からの具体的な支援の要請についてももっと注意が払われるべきである。複数の調査でも,性分化疾患を持つ男性からの応答率は一般的に低いからだ。男性において,体の性の特徴や性器を取り巻く問題がもっとセンシティヴなものになっているかどうかははっきりしていない(van Lisdonk,2014)。


 移民の背景を持つ人々や家族からの,ジェンダー・セクシュアリティ・不妊などのテーマに関する疑問への対応も更に必要だ。いくつかの移民グループでは,遺伝的要因を持つ特定の形態のインターセックスの体の状態/性分化疾患が,血縁内での結婚の比率が高いためにより一般的という場合もある。こういった人々へのリーチも優先事項となる。


 この情報プラットフォームの運用が多分野総合的かつ調整的な役割を果たすためには,既存の,あるいはまだ確立されていない,パートナーとなる団体との広範な協力体制をフルに確立しなくてはならない。インターセックスの体の状態/性分化疾患というテーマに対する絶対的な専門知識を持ち,事業として確立できる,エヴィデンス・ベースドな実践と調査研究の能力を基にした新たな機軸の重要性を追求できる協力体制とならなければならない。協力団体として具体的には,ケア提供者(多分野の性分化疾患医療チームや心理師など),各体の状態の患者会(MRKH.be,ターナーコンタクトなど),利害団体,およびセクシュアルヘルスの分野の既存の教育機関(例えばSensoa:セクシュアルヘルスを総合的に扱うフランドルの団体)などがあろう。









 子どもの権利と人間の権利の観点からは,子ども自身が自分に関わる治療方針決定の過程に参加できる方法についての調査研究がなされるべきである。


 認知機能の発達モデル (eg Kohlberg, 1981, Piaget, 1957)では,子どもは一般的に12歳から徐々に抽象的概念で思考し,自分の体の状態の複雑性を理解することが可能になることが示されている。体の状態の判明時期が様々であるため,そのままの推奨は難しいが,もし思春期前の判明であれば,保護者の大多数によれば,(6歳から8歳頃の)早期から,それぞれの体の状態の身体的・心理的特徴のいくつかについては子どもに伝えていったほうが良いとのことであった。思春期に入ると,親子関係も変化し,他の人との違いをできるだけなくしたいという思いが強くなり(Warne, 1989),「普通になりたいだけ」という思いが,整形的な処置を行うプレッシャーにもなりうるからだ (Carmichael & Alderson, 2004) 。一般的には子どもは,親や医療専門家が考えているよりも,自分の体の状態を理解しているという場合もあり,ひとりで苦悩しているということもありうる。しかし,もしその苦悩について理解ある親や医療専門家と話せないと感じると,苦悩が更に大きくなることもありうるのだ (Lockwood, Cooklin, & Ramsden, 2004; van Heesch, 2009)。


➢ 本調査では概して子どもやまだ若い人の声が聞けなかった。親御さんとの関係など更に特定の調査が重要だろう。


 親御さんたちにとっては,子どもへの調査というのはセンシティヴなものであり,慎重さが必要となる。しかし,調査研究に対する親御さんたちからの批判は,社会的体験についての調査ではなく,性別(同一性)や外性器に焦点を当てた調査に関するものである。適切にデザインされた質的調査で,親御さんたちと患者会の協力があれば可能である。


➢ 我が国では,インターセックスの体の状態/性分化疾患を持つ若い人々による,治療方針決定などでのイニシアティヴが欠けている。たとえば,イギリスのウェブサイト,DSDティーンズ(www.dsdteens.org)は,成長していく子どもが,自分の体の状態を理解し,自分自身の治療方針決定に積極的に参加できるだけのボキャブラリーを教えるのに役立つものである。インターアクトが作成した,親御さんや医療提供者へのパンフレットも,子どもたちや若い人々が重要と考えていることをまとめたガイドラインになっている。このようなイニシアティヴがベルギーでも建てられるべきである。







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