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パリオリンピック、ボクシング競技の報道についての声明文

 

2024年8月6日


日本性分化疾患患者家族会連絡会

 

 

パリオリンピック、ボクシング競技の報道についての声明文
 

 

 私たちは日本性分化疾患患者家族会連絡会と申します。

 

 いまだ日本でも誤解や偏見の多い性分化疾患について,海外の患者家族会・サポートグループの皆さんのご協力をいただき,正確でサポーティブな情報を提供する活動を行ってきております。生命倫理学ご専門の先生や,性分化疾患専門の医療関係者の方のご協力もいただきながら,患者家族会連絡会として活動させていただいております。

 

 性分化疾患という用語,お聞きになられていることと思います。性分化疾患(DSDs)とは,外性器や内性器,染色体の構成など,いわゆる「体の性の作り」が,一般的な発達とは生まれつき一部異なる女性(female)・男性(male)の体の状態を指します。これまでに「両性具有」や「男でも女でもない」「男女中間」「男女両方の特徴を持つ」などという誤解・偏見がありますが,これは医学的にも人権支援上でも現在は不適切とされています。

 

 さて、今回のパリオリンピック、ボクシング競技において、性分化疾患が疑われるとされる女性選手の話題が、メディアやネット、特にSNS上で連日流れている状況です。ですがこれまでに確定できる情報はなく、該当選手をアンドロゲン不応症であるという憶測や、誤った情報が流されてしまっています。

 

 まずは、性分化疾患当事者のみなさん、親御さんのみなさん、パートナーのみなさんには、連日のニュースやネット、特にSNS上の未確定の情報、憶測に基づく情報に、本当に不安で、怖い思いをされていらっしゃることと思います。

 

 SNSでもすでにお伝えさせていただいたことの繰り返しになりますが、どうか、今しばらくはネットやSNSを閉じて、ご自身の、そしてお子さん、パートナーお相手の方の生活と心を大事にして、それを護ることに専念をいただければと願います。


 性分化疾患は、当事者のみなさん、親御さんのみなさん、パートナーのみなさんにはとてもつらいものです。ご家族のみなさんの罪責感や、当事者のみなさんにとっても非常にセンシティブでプライベートな体の状態の話であることから、判明後も、家族の中でも話しにくい状況になっていてもおかしくありません。ですが、このような場面こそ、どうか互いを支えあっていただければと願います。

 

 また、家族のない、あるいは家族と疎遠になった当事者のみなさん、ぜひ日本性分化疾患患者家族会連絡会のホームページから、私たちにコンタクトをしてください。このような状況になってから、連日新たな当事者のみなさん、家族のみなさんからコンタクトをいただいています。

 

 この嵐は大きく、とても不安で恐ろしいものですが、これまでの経験から、それほど長く続くものではないと考えています。

 

 みなさんは、決してひとりではありません。

 

 ここはみなで支えあい、この嵐を乗り越えていければと願っております。

 

 

 また、社会一般のみなさま。まず、私たちは決して誰かを「差別主義者」「フォビア」「ヘイター」と糾弾したいとは思っておりません。私たちはいかなる政治的運動にも与しておりません。誰も憎みたいとも思っておりません。

 

 今回のボクシング競技の映像のインパクト、染色体がXYであるとされるというインパクトは、みなさまにとっても衝撃であったと思います。対戦相手の女性選手が泣き崩れられた場面には私たちも心痛めました。ですから、みなさんも動揺されても全くおかしいとは思いません。なぜなら、このような動揺は、性分化疾患当事者や家族のみなさんも、性分化疾患の判明によって体験してきているものでもあるからです。

 

 今回のボクシングの女性選手が何らかの性分化疾患を持っているのかどうか、あるいは持っていたとしてもどのような性分化疾患なのかということは、国際オリンピック委員会と国際ボクシング協会の確執により情報が錯綜していて、いまだ明らかではありません。

 

 ですが、現実には染色体がXYでも女性に生まれ育つことはあります。アンドロゲン不応症もそうです。そしてそのほとんどの女性はテストステロンに完全にもしくは一部しか反応しません。これは胎児期からのものですので、したがって人間の胎児の原型である女性のまま生まれ育つわけです。アンドロゲン不応症以外にもXY染色体で女性に生まれ育つ体の状態はいくつかあります。今回の該当選手がアンドロゲン不応症であるという情報もソースとして全く出ておりません。ですが、Y染色体があっても女性に生まれ育つということはあるのです。

 

 そしてこのような体の状態は、思春期前後まで判明することはありません。本人も家族も全くわからないままというケースが大多数です。そして当然ですが、この判明は当事者・家族にとってもトラウマ的な体験になり、命を絶つ方もいらっしゃいます。

 

 また、一部以上テストステロンに反応する女性選手に対しても、現在では国際的な陸上競技などにおいて女性競技への参加が認められておりますが、それはテストステロン値を女性の一般的なホルモン値まで下げた上での参加という厳しい出場資格制限が課されております。また、性分化疾患ではない一般的な女性の方にもテストステロン値が高い方はいらっしゃいます。

 

 性分化疾患はこれまでも様々な政治運動・対立の代理戦争の場のように扱われてきた歴史があり、今回も様々な面での、私たちのあずかり知らない政治運動・対立に巻き込まれ、利用され、翻弄されている状況です。


 今回も背景の一つとして、国際オリンピック委員会と国際ボクシング協会との確執に選手が巻き込まれているようです。双方とも自分たちのプライドと政治信条を優先させているように思われます。あるいは今回の該当の選手が性分化疾患であっても、本人には何の罪もないということをみなさまにはご理解いただきたいと思いますし、私たち自身もいかなる政治運動にも与しておりません。むしろそのような対立に巻き込まれること自体が苦痛でもあります。私たちはどのようなお立場の方にも、性分化疾患の正確な理解を求めていくだけです。

 

 また私たちの性分化疾患はあくまで女性・男性の生物学的な身体の状態を指すものであり、性自認でも性的指向の話でもありません。性分化疾患はLGBTQなど性的マイノリティのみなさまとは全く異なるものであり、今回当初トランスジェンダーのみなさまとの混同がありましたが、どうか、トランスジェンダーのみなさま、LGBTQなど性的マイノリティのみなさまを巻き込まないようにお願いいたします。


 私たちは誰も巻き込みたくありませんし、誰にも巻き込まれたくありません。

 

 どうか社会一般のみなさまには、性分化疾患のある当事者、家族の苦しみをご想像いただき、動揺をお鎮めいただければと切に願うものです。

 

 どうかお願い申し上げます。


以上





2024年8月18日追記:


 おそらくですが,これから,オリンピックのボクシング競技でのDSDsの高アンドロゲン女性に対する何らかの出場規制が施されていることになると思われます。


 国際オリンピック委員会は,これまでも,自分の名誉は傷つけず(「多様性の尊重」),一度選手を見世物のように出場させて,世論を動かして選手に非難を浴びさせ,その後規制を敷くという流れを取っています。


みなさまには,お立場やお考えによって,いろいろな想いがあることは十分承知しております。


 ただ,私たちとしては人身御供にされた選手に対する非難には心痛めており,同時に,選手に対して意見を言った人に対して,これまた非難や殺害予告まで出ていることにも心痛めています。


 とても恐ろしく,とても悲しいことです。


 ここまでの対立は,お互いをかたくなにしていくだけで,なんの解決にもなりません。


 もう,こういう時代は終わりにしたいです。


 私たちは「第三の性別」は求めませんが,激しい友敵思考での分裂・排除ではない,第三の道を求めて行きたいと思っております。




 

 AbemaTVにて、国立成育医療センターの性分化疾患専門の堀川玲子先生が、XY女性について解説をされています。


(南弁護士の話は思春期以降判明のDSDsと関係ないですし,現在では性別判定が可能になっているので,かなり古い認識であるということを注意して下さい。)



 

 今回の報道で SNS 上では 該当女性選手をアンドロゲン不応症だと謝って断定する 風評 が流れました。またその内容についてもひどいデマが含まれています。アンドロゲン不応症(AIS)女性等のXY女性(female)の正確な情報についてはこちらをご参照ください。






 

 性分化疾患の高アンドロゲンの女性選手にはアドバンテージがあるのかどうかと,MTFトランスジェンダー選手の違いについてさらに詳しくは,こちらをご参照下さい。




 

 今回のオリンピックの件について,関係のないクラインフェルター症候群男性の誤解・偏見まで広がっているようです。クラインフェルター症候群(XXY-male)のよくある誤解をまとめました。(クラインフェルター症候群は男性(male)に生まれ育つ体の状態であり,たまたまMtFトランスジェンダーの方もいらっしゃいますが,「性別を選ぶ」というものではありません)。





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