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DSDのあるふたりの娘さんを育てたお母さんから

アンドロゲン不応症(AIS)女性の娘さんの母

アーリーンさん

家族がオープンな雰囲気を持ってお子さんのことを受け止めていけば、お子さんのこれからの人生はしっかりとしたものになっていきます。お子さんも成長すれば、自分は受け入れられているんだ、DSDを持っていることなんてそれほどたいしたことじゃないんだ、それはそれで良いと、いつしか分かってくれるでしょう。

 

 男の子ですか?女の子ですか?もし皆さんの赤ちゃんが見た目が少し違う外性器の状態で生まれたら、お医者さんはすぐには答えられないでしょう。そのような状態は、現在では「hermaphrodite(ハーマフロダイト:両性具有・男でも女でもない性)」という言葉は使われておらず、「DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)」と言われています。DSDsを持つ子どもたちは、他の人とは少し違ったX・Y染色体の構成や、他の人とは少し違った性腺(卵巣や精巣)、あるいは見た目が少し異なる外性器の状態という場合もあり、全人口の約0.5%の人がなんらかのDSDsを持っていると言われています。

 アーリーンさんは、医師であり、DSDsのある人々の支援者であり、そして
アンドロゲン不応症(XY染色体ですが,性腺からのテストステロンホルモンに体の細胞が反応しないため、まったくの女の子に生まれ育つ状態)を持って生まれ育った二人の娘さんの母親でもあります。AIS女性の親御さんのためのサポートグループとの共同活動として、アーリーンさんは娘さんと一緒にオプラショー(訳者注:アメリカで有名なトークショー)に出演され、娘さんはDSDの体の状態で育つこと、自分の体の状態のことも話されました。

 彼女はまた、当事者支援団体
の理事会に対して、家族として医師としてアドバイスをする立場でもあります。アーリーンさんには、DSDを持つ二人の子どもを育てる上での、男の子か女の子かがはっきりしていく過程や、子どもが自分自身のからだを受け入れていくにはどうすればいいかなど、さまざまなことをお話していただきました。 

 

――インタビュアー ミーガン・プレイチャ

同じような状況を体験してきた人の紹介はしてもらえませんでした。それはとても孤独でつらい状況でした。

 あれは小学校5年生、テレビで生理用品のコマーシャルを見ていた時です。ほとんどの10歳の子と同じように、私も生理用品のことなんて聞いたことがありませんでした。でも私の場合、母に、あれって何?と聞くと、母は涙を浮かべ泣き始めたのです。

 皆さんは自分の娘に、その子が生理用品を必要とすることがないだろうって、どんな風に言いますか?この子には生理がない、子どもも持てない、そしてこれは、この子が他の女の子と何か違っている、ほんの一部に過ぎないんだということを。

 外から見れば、ピッツバーグの郊外でテレビを見ている小さな子どもに、他の女の子と何かが違うところなんてありません。私は昔から女の子ぽかったし、ハロウィンにはキラキラのピンク色のドレスに、フェルト生地のプードルスカートをはいて、かわいいお化粧をすることで頭がいっぱいでした。

 

 外見からは、私がアンドロゲン不応症、つまりAISと呼ばれる稀な体を持っているということは分かりません。私は「普通だったら」男の子の組み合わせのXY染色体でも、女性に生まれたのです。AISでは、XYの胎児は男の子の性器を形成するように伝える重要なホルモンに身体が反応しません。生命の一番最初の段階から、私の体はその信号を受け取れず、女性器を持った女の子に成長したのです。でも、私の体の中のものは普通の女の子とは違いました。

 

 両親がこのことを知ったのは私が6歳のときでした。シャワーを浴びているとき、足の付け根のしこりが痛み、私は叫び声をあげました。両親も医師もこれはヘルニアに違いないと私を病院に連れて行きました。でも、外科医が手術したとき(ヘルニアはX線には映りにくく、手術で固定する必要があるのです)、しこりの後ろに腸のねじれはありませんでした。足の付根にあったのは性腺だったのです。腹部の反対側にももうひとつ性腺が見つかりました。そして私には、膣の上部や子宮頚部、子宮、そして卵管がありませんでした。

――娘さんがお生まれになったときには、DSDのことはどれくらいご存知だったんですか?

 医学生のときに、いわゆる「インターセックスの状態」についての講義は受けていましたし、
AIS(アンドロゲン不応症)について学んだことも覚えています。ですが、娘たちが生まれた時は、この子たちのAISについては分かりませんでした。分かったのは、姉の方が6歳でヘルニアの手術を受けたときです。幸運なことだったのですが、その時の小児外科の先生がすばらしい人で、ヘルニアの中に精巣があるかどうかをちゃんと調べて見つけられたんです。鼠径部のヘルニアを持つ女の子の約1%は、AISを原因とするものです。そしてその要因は家族にも流れていますので、妹も検査を受けるようおっしゃったんです。姉妹ともAISだと分かったのは、妹が4歳、姉が6歳のときです。



――お医者さんの反応はどうでした?アドバイスはありましたか?

 ええ。担当の専門医は実際すばらしい人でした。医大の小児内分泌学の専門の先生で、とてもサポーティブで支えになってくれました。娘たちは健康で完全な女性ですとおっしゃっていただきました。ただ、娘たちが大人になったときにはどういうことが起きるのか、それについてはあまりご存知ではありませんでしたので、私は娘たちの将来のことがずっと心配で、同じような状況を体験してきた人に会ってみたいと思っていたんですが、紹介はしてもらえませんでした。それはとても孤独でつらい状況でした。

 

 

――アーリーンさんが体験されたことは、お子さんが診断を受けた他の親御さんにも言えることだとお考えですか?

 はい。私はAIS/DSD親のためのサポートグループという150家族が参加するグループのメンバーですが、ご両親の大多数が、このグループに参加するまで、同じ状況にある他の人と会うことも話すこともありませんでした。

娘たちには肯定的に受け止めてもらいたかったんです。

――娘さんお二人にDSDのことをお話されたのはいつですか?診断されてからすぐに?どんなふうに話されたのですか?

 ふたりにはすぐに話をはじめました。娘たちには肯定的に受け止めてもらいたかったんです。里親になることを選択すれば、家族を持てるという期待も持ってもらいたいと思いましたので、さまざまな形の家族のいいところを中心に、自分自身を良しと思えるようがんばってきました。



――小さなお子さんに自分のからだのことをどんなふうに説明していかれたのでしょうか?

 まだ歩き始めの小さな子どもはたくさんの質問をしてくるものですが、違いというものも受け入れていきます。もし子どもが「私の大事なところって、他の人となんで違うの?」と聞いてきたら、「うん、中にはね、他の人と見た目が違う大事なところを持っている人もいるのよ」と言ってあげれば、子どもたちはそれを受け入れます。ただまだこの時期の子どもはとても具体的なことしか考えられませんので、この時点では細々した説明は必要ありません。 自分の性器などのことを変だと思っても、子どもはそれを受け止めていけます。最初からくどくど話すのではなく、必要に応じて少しずつ話していくのが大切です。そうすれば、子どもたちは幼稚園に入るまでには、自分の自己アイデンティティを成長させていけます。それとこの年代では、性別アイデンティティ(
性自認・性別同一性)も発達していきます。それに両親を自分のロールモデル(訳者注:生きていく上でのお手本)にしていくことでしょう。子どもたちへの話は、ちゃんと事実に即したことを話すことが大切です。そして「こういう人もいれば、ああいう人もいる。みんないろいろなの。さ、夕ごはん食べよ」と言ってあげてください。

 

 

――DSDを持つ子どものご両親に一番大事なアドバイスはどんなことだと思いますか?ご両親が守るべき一番大事なことは?

 ただただ、子どもを愛してあげてください。それとオープンに話せるようにしていってください。もし家族がオープンな雰囲気を持っていてお子さんのことを受け止めていけば、お子さんのこれからの人生はしっかりとしたものになっていきます。お子さんも成長すれば、自分は受け入れられているんだ、DSDを持っていることなんてそれほどたいしたことじゃないんだ、それはそれで良いと、いつか分かってくれるでしょう。もうひとつ。お子さんの支え役になってあげてください。どうすればいいのか親の直観を生かしてください。お医者さんは必ずしもこの分野の経験をたくさん持っているとは限りませんし、ご両親のほうが医療従事者よりも大事なことを知っていることなんて沢山あるのですから。

 

実際は、DSDsのことと、性自認や性的指向とは関係がありません。

――DSDsは性自認や性的指向と関係があるのですか?

 

(訳者注:「性自認」とは自分のことを「男性である」「女性である」と認識すること、「性的指向」は男性を好きになるか女性を好きになるか両方を好きになるかということを指します。ここでは、性同一性障害の方のように育ちの性別と異なる性自認を持つようになることや、同性愛・両性愛の方との違いを意味しています。)


 みなさんそこに注目したがりますし、ご両親にとっても大きな関心事にもなりますね。けれども実際は、DSDsと、性自認や性的指向とは関係がありません。医学的・身体的なこととは関係なく、自分のことを男でも女でもないと感じる人はいますが、ほとんどいらっしゃいません。DSDsを持った赤ちゃんや子どもはみな、男の子か女の子かちゃんと調べて、性別判定されています。判定は、子どもが将来成長して感じる性自認を、両親と医療チームが考えて行われます。大多数のケースで、よく考えられた性別判定なら正しいものになります。もちろん性別変更するお子さんもいらっしゃいますが、極めて少数です。
 

――性別判定はどのように行われるのですか?

 ちゃんと考慮せねばならないのは、外性器の外観と、子どもが持っている性腺は何か、その性腺はどの種類のホルモンを生成するかということです。
CAISを持つ女の子は、染色体がXYで精巣を持っていても、女の子です。他の何者でもありません。胎児の脳が男性ホルモンに暴露されると、ある種の脳の男性化がありうることはご存知だと思います。(訳者注:現在では、胎児期のアンドロゲン暴露は男の子のような活動性を促すことはあっても、性自認にはほとんど影響しないことが分かっています。)そのことをお聞きになりたいんですよね。男の子を女の子にすることはできません。でもつい最近まで、そういう間違いが繰り返されていたんです。染色体がXYで、小さなペニスと精巣を持つ男の子を医者が見て、「このペニスでは、小さすぎてちゃんとしたインターコースができない。だからこの子は男の子じゃない」と言って、外科手術で膣を作って精巣を切除して女性ホルモンを投与する。もちろんその子どもたちは必ずしも自分を女の子だと思うとは限りません。ですので、この劇薬みたいな「治療」を施した後、子どもには何をしたか絶対言わないように両親は言われていたんです。そうして、大きくなって、何か絶対おかしい、自分の身体なのに自分の身体じゃない感じがする子どもたちがたくさん出てくることになっていたのです。



――その当時、ペニスの長さを測るのに”ペニス定規”を使って、ある長さ以上なら男の子、ある長さ以下なら女の子ということにされていたんですね。

 そうです。本当にあったことです。
 

DSDsを持つ子どもたちも皆と同じ素晴らしい子どもなんだ。

――DSDsについて人々が論じる時によくある間違いにはどのようなものがありますか?

 そういう人たちは、性分化疾患を持った子どもたちは
トランスセクシャルトランスジェンダー(性同一性障害)だと思ってらっしゃるでしょうね(トランスジェンダーやトランスセクシャルの人たちが、誤った性別で育った人のことです)。全然そうじゃない場合がほとんどなのに、みなさん、DSDsのことをジェンダー・性別の問題にしたがるのです。そのような状況自体が、実は私たちが問題としていることです。ただいろいろな男性がいる、いろいろな女性がいるというだけの問題に過ぎないのですが。



――なるほど。オプラショーはいかがでしたか?

 ああ!彼女はとても素晴らしかったです。とても親切な方でした。オプラは私たちの文化の最高の女性祭司のような存在でしょうね。オプラがOKと言えば、みんなOKになるんですから。「見てください。私たちはこの人たちについて考え、受け入れていかなきゃいけません」と彼女が言えば、たくさんの人たちが目を開くんです。私達のグループに参加されているDSDsを持つ子どもの親御さんたちは、いつもお子さんのプライバシーを心配され、子どもを守りたいと思ってらっしゃいます。今回の番組はアメリカ中の何百万人という人が見ました。TVを見る人たちには、DSDsを持つ青年たちを本当に理解し、DSDsを持つ子どもたちも皆と同じ素晴らしい子どもなんだと理解してもらえ、親御さんたちも重荷から解放されたとおっしゃっています。