top of page

妻になれる?母になれる? 先天性副腎皮質過形成(CAH)の診断を受けて、私に何が可能だったのか?

  • 執筆者の写真: nexdsdJAPAN
    nexdsdJAPAN
  • 6月10日
  • 読了時間: 4分


私は今…


 私は現在37歳、3人のイケメン息子の母であり妻でもあります。そして私は「塩喪失型先天性副腎皮質過形成(CAH)」という病気を持っています。


 私の話をシェアしたいと思ったのは、CAHのある子どもたちやその親御さんたちに、この病気の浮き沈みを「実際に生きてきた人の目線」で伝えたいからです。


 私は生まれつきCAHで、出生時に診断されました。医師たちは気づきませんでしたが、2人の娘に同じ病気を持つ母が見抜きました。外性器は少し異常がありましたが、曖昧なわけではなく、出生時にはちゃんと女の子に判定されました。




 正直に言うと、自分がこの病気を持っているという自覚はあまりなく、唯一それを思い出させたのは毎日の薬と、あの6ヶ月ごとの診察でした(私は小児内分泌科の先生が嫌いだったので、行くのが本当に嫌でした)。


 成長過程では、確かにちょっと「男の子っぽい」ところがあるとは感じていました。できるだけ女の子らしく振る舞おうと努力はしたけど、よく失敗していました。


 でも思春期は、他の女の子と同じように進みました。



みなさんへのアドバイス



 この病気は、家族にとって本当に混乱を招くものです。私の視点から伝えたいのは、「娘さんには『あなたはとってもかわいい娘よ』と伝えてあげて、愛情を見せて、自己肯定感の低さを理解して、自信を持たせてあげてほしい」ということです。


 そして何より、この旅路を一緒に歩んでくれる“理解ある医師”を見つけてください。


 私はまた、幼少期の間にこの病気のことをあちこちで言いふらさないようにとアドバイスしたいです。


 世界中の人に知られる必要はありません。この病気は複雑で、誤解や偏見も多く、他人にはなかなか理解されません。


 私の母は、教師や歯科医、友達、親戚など、誰にもこの病気のことを話しませんでした。私はそれをとてもありがたく思っています。そのおかげで、私は“レッテル”を貼られることなく成長できました。


 今でも私は家庭医にこの病気のことは話していません。代わりにこう言います。


「副腎不全があります。プレドニゾンを飲んでいます」。それ以上は話しません。


 私が受けた手術のことなんて、彼らには関係のない話です。



手術。そして結婚・出産。



 手術は12歳と18歳の時に受けました。


 18歳の手術後、すぐに(将来の夫となる)ボーイフレンドと性的な関係を持ちました。


 「自分の体がちゃんと機能するのか、普通になりたい」と、ただそれだけでした。


 なぜか分からないけど「妊娠は無理だろう」と勝手に思い込んでいて、医師に聞いたら「妊娠できる確率は60%」とのこと。


 結婚する前に、私は夫に自分の病気のことと、60%の妊娠可能性を話しました。


 彼はそれを受け止めてくれて、気にもしませんでした。


 結婚後、彼にCAHの遺伝子検査を受けてもらいましたが、彼はキャリア(保因者)ではありませんでした。


 結婚から10ヶ月後に自然妊娠し、健康な男の子を自然分娩で出産しました。


 次の子は15ヶ月後に生まれ、3人目は4年後、IUD(子宮内避妊具)を外した数週間後に妊娠しました。


 妊娠は全く大変ではありませんでした。


 むしろ「私は普通の女性よりも妊娠しやすかったのでは?」と思うくらいです。


 今では、夫ととても健康的で充実した性生活を送っています。


 初体験のあと、オーガズムを感じるまでには何年もかかりましたが、今ではちゃんと感じられるようになりました。



幸せをつかむために…



 この人生については、何ページも書き続けられますが、退屈させたくはないのでここまでにします。


 私が自分の病気を受け止められたのは、10代半ばになってからでした。


 それもすべて、私の2人目の小児内分泌医のおかげです。


 彼は私を美しい、特別な存在だと感じさせてくれて、とても思いやりのある先生でした。


 その医師のおかげで、今の私はいます。


 私は幸せで、成功していて、人に理解を与えられる人間になれました。


 いつかまた彼と再会して、「あなたがどれほど私にとって大切だったか」を伝えたいです。


 私はあなたやあなたの娘さんたちの道のりが、少しでもラクになるように、ここにいます。

Comentarios


海外国家機関DSDs調査報告書

ベルギー国家機関性分化疾患/インターセックス調査報告書
オランダ社会文化計画局「インターセックスの状態・性分化疾患と共に生きる」表紙

 近年、教育現場や地方・国レベルで、LGBTQ等性的マイノリティの人々についての啓発が行われるようになっています。その中で,DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)が取り上げられるようになっていますが、昔の「男でも女でもない」という偏見誤解DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 そんな中,人権施策や性教育先進国のオランダとベルギーの国家機関が,DSDsを持つ人々とご家族の皆さんの実態調査を行い報告書を出版しました。

 どちらもDSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。世界でもこのような調査を行った国はこの2カ国だけで,どちらの報告とも,DSDsを持つ人々に対する「男でも女でもない」というイメージこそが偏見であることを指摘しています。

 ネクスDSDジャパンでは,この両報告書の日本語翻訳を行いました。

DSDs総合論考

 大変残念ながら,大学の先生方でもDSDsに対する「男でも女でもない」「グラデーション」などの誤解や偏見が大きい状況です。

 

 ですが,とてもありがたいことに,ジェンダー法学会の先生方にお声がけをいただき,『ジェンダー法研究7号』にDSDsについての論考を寄稿させていただきました(ヨヘイル著「DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患/インターセックス) 排除と見世物小屋の分裂」)。

 今回,信山社様と編集委員の先生方のご許可をいただき,この拙論をブログにアップさせていただきました。

 DSDsの医学的知見は大きく進展し,当事者の人々の実態も明らかになってきています。ぜひ大学の先生方も,DSDsと当事者の人々に対する知見のアップデートをお願いいたします。

 

 (当事者・家族の皆さんにはつらい記述があります)。

ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
性分化疾患YouTubeサイト(インターセックス)
ネクスDSDジャパン:日本性分化疾患患者家族会連絡会
bottom of page