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「他のお母さんたちには起きてほしくない」ソフィアさんの物語


クラインフェルター症候群の男の子とお母さん 出生前検査

 ソフィアさんは,クラインフェルター症候群の男の子の母親です。赤ちゃんの性別を発表するパーティーを開くために新型出生前検査(NIPT)を受け,その診断結果に驚きました。そして,医療機関から人工妊娠中絶を勧められたのです。彼女はこんなことが他のお母さんたちには起こらないようにと願っています。

診断結果  ふたり目の妊娠を楽しみにしていたソフィアさんは,赤ちゃんの性別が分かるのを待ちわびていました。子宮に問題があり,ハイリスクの妊娠であったため,彼女は新型出生前検査(NIPT)を受けました。もちろん赤ちゃんの性別も知りたいと思っていました。そして,友人や家族と一緒に赤ちゃんの性別発表パーティーを開くことを楽しみにしていました。ですが,主治医からの検査結果の連絡は衝撃的でした。医師はあなたにはすぐに赤ちゃんの性別を伝えなければならないと伝えたのです。友人や家族と一緒に報告を待つという選択肢はありませんでした。  病院で主治医は,胎児の問題は「一刻を争うもの」と言いました。胎児の性別も含め,診断結果をすぐに知る必要がある,そして「決断をしなくてはならない」と言われたのです。看護師から,赤ちゃんはクラインフェルター症候群(KS),つまり47,XXYの可能性が高いと告げられました。診断結果を聞いて,ソフィアさんは固まってしまいました。彼女がショックを受けている間,看護師はこれから赤ちゃんが経験する可能性のある問題を延々と説明し始めました。


母親にとっては最悪の恐怖  ソフィアさんは,自分の赤ちゃんが自立した人生を送れないと言われたことに恐怖を感じていました。この当時の話の時,彼女の目には涙が浮かんでいました。彼女は,2週間以内に妊娠を中断するかどうかを決めなければならない,それを過ぎると中絶するには州外に行かなければならないと言われました(訳者注:アメリカでは州ごとに中絶の期限が異なる)。看護師との会話を思い出すと,彼女の目からは涙がこぼれ落ちました。  ソフィアさんは悩みながらも,診断結果をもっと知りたいと思いました。産科医に予約を取って説明を受けようと思いましたが,その医師も詳しい情報を持っておらず,プリントアウトした情報を渡されただけでした。看護師は確定診断のために羊水穿刺検査も勧めてきましたが,ソフィアさんはそれを拒否しました。そしてその代わりに専門医の紹介を依頼したのです。

遺伝カウンセラー


 2週間という期限を言われ,彼女は1週間以内に遺伝カウンセラーに会いました。カウンセラーはスライドを用意して,ソフィアさんとご主人に見せました。カウンセラーはソフィアさんと話しながら,看護師が提供した情報が間違っていることを伝えました。実際,クラインフェルター症候群の男性の多くは,健康で充実した人生を送り,家族を作ろうとしたときに初めて診断結果を知るということをその時初めてソフィアさんは知ったのです。  不安が解消された後,カウンセラーは,クラインフェルター症候群の男性と会って,息子に期待できることを話し合う機会も提供してくれました。カウンセラーはKSの症状のリストを見ながら,「誰にでも起こりうることです」と言ってくれました。  そしてまた「誰でも染色体は持っていて,あなたの赤ちゃんにはそれにたまたま名前がついているだけですよ」と言われたことで,ソフィアさんの気持ちは変わりました。ふたりは息子の命を救ってくれたカウンセラーに感謝し,自信を持って妊娠を継続することを決めました。新たな視点を得たふたりは,赤ちゃんとの対面をこれまで以上に楽しみにするようになりました。



マテオ君との出会い  ソフィアさんの妊娠にはKSとは違うリスクがあったため,彼女は毎週のように診察を受け,慎重に経過を観察しました。そして,マテオ君は安産で元気に生まれました。  出産後,マテオ君のへその緒から採取した血液で診断が確定しました。その病院の小児科医はクラインフェルター症候群について詳しくなかったため,逆にソフィアさんが教育係を務めることになりました。

成長と発達  マテオ君の発達は全般的にとても順調です。マテオ君の発達はすべての節目でお兄ちゃんよりも進んでいて,順調に成長しています。唯一の心配事は,顎の筋力が低下しているため,食事を摂ることです。ですが,ソフィアさんはすぐに療育支援を受けて,今マテオくんはセラピストに診てもらっています。また,遺伝学の専門医との面談も受けることになりました。  マテオ君は活発な子供で,ソフィアさんは「マテオは高いところに登るのが大好きなんです」と言います。意思があれば道は開けるものです。5歳のお兄ちゃんもマテオ君のことが大好きです。お兄ちゃんは,自分がお兄ちゃんになったことをとても喜んでいました。彼はマテオ君の世話をしてくれて,ソフィアさんの大きな助けになっています。


XXYとともに生きる  ソフィアさんご夫妻は,今のところ友人や家族にはマテオ君の診断結果を伝えていません。マテオ君が批判や同情の対象になってもらいたくないから,そして特に,KSに関する正確な情報を見つけるのが難しいからです。南米系のコミュニティでは,診断名や健康問題は伏せられる習慣があります。彼女は南米系のネット上の母親グループに匿名でつながりを求めています。ですが今でもKSの子どもを持つ南米系の母親には出会えていません。  ソフィアさんはマテオ君が自分の家族の一員になってくれたことに感激していますが,社会ではいまだに誤った情報や否定的な情報が蔓延している状況です。ですので,ソフィアさんとご主人は,マテオ君の診断結果をどのように伝えるかを決めかねています。思春期になるまで待つかもしれません。周りにいつどう話すか考えているソフィアさんは,「Living With XXY」のコミュニティがあることに安心感を覚えています。彼女は,自分たちだけではないことを知り,KSの息子さんを育てている他の家族の話を楽しめるからです。

他の母親たちを助けるために  診断を受けたとき,ソフィアさんはマテオ君の将来を心配しました。息子の人生はどうなるのだろうかと。それに,産むことにした自分の判断は正しいのかとも考えました。ですが,マテオくんが生まれて腕に抱いた瞬間,彼女は自分たちの選択が正しかったことを確信しました。  ソフィアさんは最初,健康な赤ちゃんを授かったことに喜びを感じていました。ですが,出生前検査の結果の伝え方が,ソフィアさんの心を傷つけました。誤った情報を伝えられたことが,健康な赤ちゃんを中絶する決め手になっていたかもしれません。  彼女は,自分の体験を語ることで,クラインフェルター症候群に対する医療関係者の考え方を変えていきたいと思っています。ソフィアさんは,このニュースを伝えた医療者には大きな不満を感じていて,このようなことが他のお母さんたちには起きてほしくないと願っています。

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