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あなたには価値がある。:クラインフェルター症候群のあるノアくんの家族の物語



 今日の午後,何気なくインスタグラムを見ていたら,コメディアンのローラ・クレリーの新しいビデオを見て興奮しました。ローラは,依存症,母親業,産後うつ,そして最近では,息子さんのアルフィーが自閉症と診断されたことへの苦悩を率直に語っています。このビデオのトーンは,いつもの彼女の面白い話とは異なり,彼女が語る現実が私の心を深く打ちました。私の息子は自閉症ではありませんが,ローラが言った多くのことが私の心に響きました。  周りの人たちと「違う」子どもを持ち,間違った知識を持った人たちから勝手な判断をされるかもしれない人生がどんなものか私は知っています。それがもたらす深い痛みも知っています。ですが同時に,内も外もとてもかわいい子どもを育てることで得られる,強く,そして信じられないほどの喜びも知っています。X染色体が多くなければ,今の彼はありません。


クラインフェルター症候群(XXY)の男の子

 クラインフェルター症候群のコミュニティには,自閉症の診断を受けている人がたくさんいることを知っています。私は若い頃,自閉症の子どもたちのコミュニティサポートワーカーとして働いてきました。さまざまなレベルの自閉症の子どもたちのケアを何年もしましたが,私の心に残ったのは,彼らのたくさんのポジティブな特性でした。言葉が話せなかったり,感覚的な処理の違いがあったりと,(私たちと同じように)いくつかの課題を抱えていても,私の目を引いたのは彼らの人間としての核心部分でした。彼らの素敵な笑顔,ユーモアのセンス,興味,そして世界の仕組みを発見すること。これらは,自閉症のネガティブな「症状」ではなく,彼らを彼らたらしめているものでした。  ローラは,涙や怒り,そして笑いを交えながら,アルフィーが重度の自閉症と診断されたことについて,何時間もかけて調べたことを話してくれました。私も息子のクラインフェルター症候群の診断を受けたときの気持ちを思い出しました。ローラと同じように,私も圧倒され,正確でサポートとなる情報が不足していることにショックを受け,ネガティブな情報に焦点が当てられていることに不安を感じました。  自閉症と同様,クラインフェルター症候群も様々な症状がありうるスペクトラム障害です。ノアは,他の子どもたちが経験しない症状を経験するかもしれませんし,その逆もあるでしょう。彼が苦労していることは,他の子どもたちも苦労していることかもしれませんし,そうでないこともあるでしょう。彼の人生がどのように展開していくのか,どのような課題に直面するのかは,まだわかりません。私たちは,彼を見守り,待ち,サポートすることしかできません。


クラインフェルター症候群(XXY)の男の子とお父さん

 ビデオでローラが「生きているだけで価値がある」と宣言したとき,私は泣きました。私の心が惹かれたのは,「あなたには価値がある」ということです。私たちの息子には価値があります。染色体が多いかどうか,年齢を重ねてどんな症状が出るか出ないか関係ありません。野球ができるかどうか,内気かどうか,体つきがどうかも関係ありません(クラインフェルター症候群の子どもたちもボールを投げることができますし,みながみな他の子どもたちよりも内気ではありませんし,クラインフェルターの子どもたちも皆と同じくそれぞれ自分の体を持っているのです)。ウェブサイトに書かれているようなネガティブなことは,あなたの子どもの価値の総体ではありません。子どもたちは,愛と尊敬を受け,批判されることなく安全に世の中を渡っていく価値があるのです。私たちは人間としてこの権利を持っており,「違い」を持つ子どもの価値が低いわけではないのです。


 クラインフェルター症候群の診断を受けると,圧倒され,打ちのめされるような気持ちになることがあります。ですが,そのような場所で人生を生きないことをお勧めしたいと思います。そのような感情を認め,感じ,必要なだけそこに留まることはあるでしょう。ですがそれに呑み込まれないようにしてください。世の中のネガティブな意見や社会からの圧力,他人の無知によって,自分の子どもに対する喜びが一瞬でも損なわれてしまわないようにしてください。

クラインフェルター症候群(XXY)の男の子

 ローラは,息子さんのアルフィーの世界を知り,彼に自分の世界を教えることで,アルフィーと半分ずつ向き合うことを目標にしました。私は,みなさんの子どもにも同じことをしてほしいと思います。彼がどんな人間で,何を愛し,何を愛さないのか,そしてどのように世界を体験しているのかを知るのです。自分の世界を彼と共有することで,彼が大人になったときにどうやってその世界を渡っていけばいいのかを理解してもらうのです。彼の違いを受け止め,その中からポジティブなものを見つけてください。クラインフェルター症候群の子どもたちは,多くの優れた点を持っています。賢く,思いやりがあり,内省的で,思慮深く,親切です。また,思いやりがあり,芸術的で,面白く,明瞭で,革新的で,かわいいのです。また,手先が器用で,寛大で,責任感があり,信頼できる人が多いです。このような子どもを欲しくない人はいないでしょう。  息子さんが新たに診断された場合でも,以前から診断のことを知っていた場合でも,あなたは一人ではありません。コミュニティはあなたと息子さんのために存在しています。いつも私たちは共にあります。私たちはどこにも行きません。

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海外国家機関DSDs調査報告書

ベルギー国家機関性分化疾患/インターセックス調査報告書
オランダ社会文化計画局「インターセックスの状態・性分化疾患と共に生きる」表紙

 近年、教育現場や地方・国レベルで、LGBTQ等性的マイノリティの人々についての啓発が行われるようになっています。その中で,DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)が取り上げられるようになっていますが、昔の「男でも女でもない」という偏見誤解DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 そんな中,人権施策や性教育先進国のオランダとベルギーの国家機関が,DSDsを持つ人々とご家族の皆さんの実態調査を行い報告書を出版しました。

 どちらもDSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。世界でもこのような調査を行った国はこの2カ国だけで,どちらの報告とも,DSDsを持つ人々に対する「男でも女でもない」というイメージこそが偏見であることを指摘しています。

 ネクスDSDジャパンでは,この両報告書の日本語翻訳を行いました。

DSDs総合論考

 大変残念ながら,大学の先生方でもDSDsに対する「男でも女でもない」「グラデーション」などの誤解や偏見が大きい状況です。

 

 ですが,とてもありがたいことに,ジェンダー法学会の先生方にお声がけをいただき,『ジェンダー法研究7号』にDSDsについての論考を寄稿させていただきました(ヨヘイル著「DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患/インターセックス) 排除と見世物小屋の分裂」)。

 今回,信山社様と編集委員の先生方のご許可をいただき,この拙論をブログにアップさせていただきました。

 DSDsの医学的知見は大きく進展し,当事者の人々の実態も明らかになってきています。ぜひ大学の先生方も,DSDsと当事者の人々に対する知見のアップデートをお願いいたします。

 

 (当事者・家族の皆さんにはつらい記述があります)。

ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
性分化疾患YouTubeサイト(インターセックス)
ネクスDSDジャパン:日本性分化疾患患者家族会連絡会
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