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ネクスDSDジャパンニューズレター20230825

  • 執筆者の写真: nexdsdJAPAN
    nexdsdJAPAN
  • 2023年8月27日
  • 読了時間: 4分

ネクスDSDジャパン更新情報




 ターナー症候群とは,女性のDSDs:体の性の様々な発達のひとつです。


 一般的には女性はXXの染色体ですが,ターナー症候群の女性は染色体がXの1つ(45,X)で女性に生まれ育ちます。卵巣の機能不全による女性二次性徴不全や不妊状態,低身長,そしてセリアック病や甲状腺の病気など,様々な症状が現れることがあります。


 医療では今では笑い話でしかありませんが,日本では今でもコミックなどの影響で,ターナー症候群の女性たちを「男でも女でもない両性具有」「男性化する」という誤解・偏見を持っている人もいます。


そして現在の日本では,非認定施設での新型出生前検査(NIPT)で,生まれる前にターナー症候群の疑いがかけられることも。この場合,ターナー症候群の女の子の胎児の人工妊娠中絶率は85%とも言われています…。


 ですが,ターナー症候群の女性たちは,様々な誤解・偏見,そして様々な付随症状がありながらも,自分自身の人生と生活を精一杯生きていらっしゃいます。


 イギリスのターナー症候群サポートグループから許可をいただき,ターナー女性のみなさんのライフストーリーを翻訳して公開しました。

ぜひご覧下さい!


 

ご存知でしたか?

 現在の医療では笑い話でしかありませんが,実はターナー症候群の女の子・女性たちは,1960年からしばらくの間,まるで「男でも女でもない」「中性」であるかのように言われていました。

 下の画像は,「性同一性(gender identity)」という概念を提唱した心理学者ロバート・ストラ-の1968年の著作の引用ですが,この心理学者が最初に「性同一性」という概念をDSDsに当てはめたのは、ターナー症候群(45,X)の女性に対してなのです。


 ターナー症候群の女の子・女性たちはただの女性(female)であるにもかかわらず,「人間として許される範囲の,生物学的に中性状態」「生物学的には中性 」「自分の性が発生学的にも解剖学的にもまちがっている」など,染色体がXひとつであることや,女性二次性徴不全があるというだけで本当に酷い捉え方でした。。

 このようなひどい捉え方になったのは,生物学者等による1960年のデンバー会議で,X・Y染色体が「性染色体」と呼ばれるようになってからです。この時から,「女性(female)は絶対XX,男性(male)は絶対XY」という「社会的生物学固定観念」が強迫的になり,それ以外の染色体の構成のDSDsの女性(female)・男性(male)が,まるで「中性」「その他」のように排除されていったというのが実際だったのです。


 ターナー症候群女性をはじめとするDSDsを持つ女性・男性に対して,「性同一性」という概念が適用されたのも,「体は女性(female)・男性(male)とは言えないのに,自分を女性・男性だと思い込んでいる」という,差別的な思考があったわけです。



 もちろんトランスジェンダーのみなさんにとっては変わらず「性同一性・性自認」の概念は重要で,その尊重は大切なことです。

 ですが,DSDsのある人々に「性同一性・性自認」という概念を当てはめるのは,大きな間違いで,欧米のDSDs先端医療では,「性同一性・性自認」という概念はほとんど使われないようになっているのです。

 



 ターナー症候群女性をはじめとするDSDsのある人々を「男女以外」であるかのようにした「社会的生物学固定観念」の強迫化については,リベラル系の学術誌『ジェンダー法研究第7号』に掲載いただいた論考で詳しく解説しています。

 現在,下のリンクから無料でお読みいただけます!

 

無料パンフレット

「学校や教室でDSDsについて触れるには?」




 現在,様々な学校でLGBTQなど性的マイノリティーの皆さんの「性の多様性」についての授業が行われるようになりました。それはとても喜ばしいことなのですが,大変残念ながら,時にDSDsについて古い誤った話が伝えられることによって,教室にいるDSDsを持つ子どもが不登校になってしまったケースが起きています。

 DSDsの判明・説明後,特に思春期は重要な時期で,誤解や偏見に基づく横やりは当事者家族の命に関わりかねません。

 性別欄の取り扱いも「男・女・その他」といった選択肢では,DSDsを持つ子どもたち・人々に二次的なトラウマを与えかねません。ではどうすればいいのか,パンフレットに記載しています。

 皆さんには,ぜひこのパンフレットを周りの方とシェアいただき,DSDsの正確な知識の啓発にご協力いただければと願います。





 
 
 

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海外国家機関DSDs調査報告書

ベルギー国家機関性分化疾患/インターセックス調査報告書
オランダ社会文化計画局「インターセックスの状態・性分化疾患と共に生きる」表紙

 近年、教育現場や地方・国レベルで、LGBTQ等性的マイノリティの人々についての啓発が行われるようになっています。その中で,DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)が取り上げられるようになっていますが、昔の「男でも女でもない」という偏見誤解DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 そんな中,人権施策や性教育先進国のオランダとベルギーの国家機関が,DSDsを持つ人々とご家族の皆さんの実態調査を行い報告書を出版しました。

 どちらもDSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。世界でもこのような調査を行った国はこの2カ国だけで,どちらの報告とも,DSDsを持つ人々に対する「男でも女でもない」というイメージこそが偏見であることを指摘しています。

 ネクスDSDジャパンでは,この両報告書の日本語翻訳を行いました。

DSDs総合論考

 大変残念ながら,大学の先生方でもDSDsに対する「男でも女でもない」「グラデーション」などの誤解や偏見が大きい状況です。

 

 ですが,とてもありがたいことに,ジェンダー法学会の先生方にお声がけをいただき,『ジェンダー法研究7号』にDSDsについての論考を寄稿させていただきました(ヨヘイル著「DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患/インターセックス) 排除と見世物小屋の分裂」)。

 今回,信山社様と編集委員の先生方のご許可をいただき,この拙論をブログにアップさせていただきました。

 DSDsの医学的知見は大きく進展し,当事者の人々の実態も明らかになってきています。ぜひ大学の先生方も,DSDsと当事者の人々に対する知見のアップデートをお願いいたします。

 

 (当事者・家族の皆さんにはつらい記述があります)。

ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
性分化疾患YouTubeサイト(インターセックス)
ネクスDSDジャパン:日本性分化疾患患者家族会連絡会
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