10代で子宮がないと知った少女。数年後、彼女は「自分のやり方」で母親になることを目指している(ロキタンスキー症候群)
- nexdsdJAPAN
- 6月26日
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更新日:7月1日

御覧の皆様へ
ロキタンスキー症候群(MRKH)とは、女性のDSDのひとつです。ロキタンスキー症候群は、主に思春期の無月経から、膣や子宮、卵管の一部もしくは全てが無い状態であることが判明します。女性にとっては、とても心痛められることが多く、またこれまで、同じような体の状態を持つ女性との出会いもないまま、孤独の中を過ごさせねばなりませんでした。
現在,欧米ではロキタンスキー症候群のある女性への医療体制や,当事者女性たちのサポートグループも整備されるようになりましたが,世界には今でも十分なサポートも得られない女性たちがたくさんいらっしゃいます。それでも強く生きている女性たちの物語を中心に,さまざまな女性たちの体験談ご紹介します。
彼女たちの姿は,日本のロキタンスキー症候群のある女性のみなさんがこれまで体験してこなくてはならなかった姿でもあります。
ロキタンスキー症候群をはじめとするDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)は、「女性にもいろいろな体がある、男性にもいろいろな体がある」ということです。
私たちは「性のグラデーション」でも「男女の境界の無さ」でもありません。むしろそのようなご意見は、私たちの女性・男性としての尊厳を深く傷つけるものです。
どうか、お間違いのないようにお願い致します。
詳しくは「DSDsとは何ですか?」のページをご覧ください。
母親として、娘が自分の身体を理解できるよう全力で支えてきた女性が、今はその娘が母親になるための旅路に寄り添っている。
レイシーは、10代の頃、生理が始まらないことで何かがおかしいと感じ始めた。周囲の友達はみなその節目を迎えており、彼女は不安を抱いた。
「医者からは『待てば来るよ』と言われたので、親としては小児科医の言うことを信じて『もうすぐ来るんだろう』と思って待っていたんです」と、母親のアンディーは語る。

診断まで…
数か月後、別の小児科医に相談し、超音波検査を受けたが、「問題なし、もう少し待って」と言われた。
次に小児婦人科医にかかり、まずは効果が2週間ほどで出る可能性のある薬を処方されたが、効果はなかった。別の薬も試したが変化はなく、身体検査へと進んだ。
医師は「壁のようなものが見えるが、何なのか確信が持てない。レイシーを傷つけたくない」と話し、探査手術が行われ、そこでも“壁”の存在が確認され、MRIの予定が組まれた。
アンディーは「家に帰って静かな中、気になったキーワードで調べていたんです」と振り返る。
そして初めて「ロキタンスキー症候群(MRKH)」という言葉に出会った。クリーブランド・クリニックによれば、ロキタンスキー症候群は「子宮や腟が未発達、あるいは欠如した状態で生まれる先天性の状態」と定義されている。
「その説明を読んだ瞬間、医師が私と彼女の父親に説明していたことを思い出して、『まさかこれじゃないよね』と。でも心の奥で『ああ、これだ』という直感があったんです」
予定されたMRIは2時間以上もかかり、レイシーの両親は医師が出入りするのを不安な気持ちで見守っていた。数日後、結果が伝えられた。
MRI当日、母は何も知らず無邪気に笑う娘の姿を動画に収めていた。「あの日、なぜか『今日で娘の人生が変わる』という直感がありました」とアンディーは語る。
医師から「レイシーさんには子宮がありません」と告げられたときのことを、レイシーははっきりと覚えている。
「先生が子どもが4人いるって世間話をした後、『あなたは自分の子どもを産むことはできません』って言われて、心が沈みました。小さい頃からずっと、母親になることが夢だったんです」
「『そんなに落ち込まないで。方法は他にもあるから』って言われても、あなたはさっき自分の“実の子”の話してたじゃない。私にとってそれがどれだけ辛いか、わかってないでしょって思いました」
その後も、家族は「何か解決法があるはず」と希望を捨てず、ボストン小児病院の医師に紹介され、精密検査を経て正式にロキタンスキー症候群と診断された。
性交渉に関わる将来的な問題や、そのための選択肢についても説明されたが、「治す方法」は存在しなかった。
仲間の女性たちとの出会い

娘が孤独を感じないよう、アンディーは支援団体を探し、シアトルで開かれるロキタンスキー症候群の当事者会に一緒に参加した。
「30〜40人くらいの同じ経験を持つ女の子たちと会えて、『私一人じゃないんだ』と感じられたのは本当に大きかった」とレイシーは話す。
「年上の子たちが何年も向き合っている姿を見て、『私もやっていける』って思えた。話せる相手がいるというのは大きな救いです」
母親の発信をきっかけに、今ではレイシー自身も声をあげるようになった。
「ロキタンスキー症候群の女の子たちが十数人、私にDMを送ってきてくれました。みんな、同じ病気の誰かと話すのは初めてだって。そういう子たちを助けられてるって思えるのが嬉しい。私自身も救われてるんです」
夫と一緒に…

今、彼女と夫のピートには、多くのフォロワーが「家族づくりを応援したい」と見守っている。
「ピートはとても理解があって、優しいんです。何が必要かすべて分かってくれてる。妊娠しようと決めても、そこから実際に赤ちゃんが生まれるまでに最低でも数年はかかる。そこも受け止めてくれてるんです」
交際中の18歳のときに診断を伝えたが、ピートは「そのときが来たら一緒に考えよう。気にしないよ」と答えた。
「その言葉で、心がとても軽くなったんです。『彼は一緒に乗り越えてくれる』って確信できたから」
「レイシーは兄弟姉妹が多くて、すでに2回もゴッドマザーをしているんです。彼女は本当に愛情深い子。高校時代の先生が『レイシーには輝きがある。誰にもその輝きを消させてはいけない』って言ってくれたのを覚えてます」

「でも同時に、他の人があまりにも簡単に妊娠・出産しているのを目の当たりにして、それを当然だと思ってる人もいて……。レイシーのような人には、とても大変なことなんです。私たち家族は“不妊”について深く理解しました」
レイシーとアンディーは、「子どもはいつ?」という質問を慎むよう訴える。
「結婚したからってすぐに聞かないで。どんな悩みを抱えているか、あなたには分からないんだから」
レイシーもこう繰り返す。
「ただ、そっと寄り添ってあげてください。支えになって、話を聞いてくれるだけでいいんです」

ロキタンスキー症候群(MRKH)とは、女性のDSDs:体の性の様々な発達のひとつです。ロキタンスキー症候群は、主に思春期の無月経から、膣や子宮、卵管の一部もしくは全てが無い状態であることが判明します。女性にとっては、とても心痛められることが多く、またこれまで、同じような体の状態を持つ女性との出会いもないまま、孤独の中を過ごさせねばなりませんでした。
ですが,近年では海外各国で「MRKH Connect」のようなサポートグループができあがり,ベティーさんのように自分自身のプライヴェートな想いを語る女性も出てきました。仲間同士のつながりは世界に広がりつつあります。
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