世界でたった一人の、素晴らしいあなたへ。:お母さんから、部分型AIS女性のソフィーへ。
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更新日:1 日前

御覧の皆様へ
私たちは「性のグラデーション」でも「男女の境界の無さ」でもありません。むしろそのようなご意見は、私たちの女性・男性としての尊厳を深く傷つけるものです。
アンドロゲン不応症をはじめとするDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)は、「女性にもいろいろな体がある、男性にもいろいろな体がある」ということです。
どうか、お間違いのないようにお願い致します。
詳しくは「DSDsとは何ですか?」のページをご覧ください。
最近ではお医者さんたちの集まりも、チャリティ活動の一環として、たくさんの患者サポートグループの活動を積極的に支援されています。この物語は、国際内分泌学会のサイトに、DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)と共に生きる子どもと若者、そしてその家族の皆さんが作るサポートグループ、”dsdファミリーズ”のエリーさんが投稿された,女性の部分型のアンドロゲン不応症の娘さんのために親御さんやお医者さんたち,臨床心理士さんが作られたパンフレットの翻訳です。
体の性の発達について、他の人とは少し違う染色体や体の状態を持つ子どもを持つ家族の皆さんは、最近では、子どもの成長に合わせて少しずつ、お子さんに体の状態について説明をしていかれています。その中には、自分の子どもを産めないことなど、つらい話もしていかねばならないこともあり、ご家族の負担はとても大きなものになります。
しかも、今も学校では、人の体の性については、「男性はXY、女性はXX」「女性はみんな生理が来る」「女性なら子どもが産める」など基本的・一般的なことしか教えず、さまざまな体の状態があること、子どもを産めないこともあることなどについては、あまり教えられていません。
また、たとえDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)について教えたとしても、偏見や誤解に基づいた正確ではない知識で教えることもあり、逆にDSDを持つ子どもたちやその家族を傷つけてしまうこともあります。
エリーさんの娘さんは、染色体がXYで不妊の状態の女性の部分型アンドロゲン不応症(PAIS)を持っていらっしゃいます。お母さんであるエリーさんが、どんな想いをしながら、どんなふうに娘さんにお話されているか?同じ立場にある家族の皆さんには、共感されるところやヒントになるところがあるでしょうし、DSDsについて理解したい皆さん、特に学校の先生など、理科や性教育の授業で、どういうところに注意したらいいか、学べるところがたくさんあると思います。
親御さんたちが心を込めて作ったこのパンフレットの後日談は,「私を知ること。あなたを知ること。:女性の部分型アンドロゲン不応症のある娘さんと母親の物語」をご覧ください!
はじめに:あなたはどうやってあなたになったのか?

お母さんとお父さんは、あなたの体について、とても大切で、そしてワクワクするような話をしたいと思っています。
いつでも好きなときに、あなたのペースで見返せるように、このノートに書き留めておくことにしました。
あなたはどのようにして、今の「あなた」になったのでしょう?
私たちはみんな、同じ人間の「設計図」(お父さんの精子とお母さんの卵子が出会い、お母さんのお腹の中で赤ちゃんが育つ)で作られています。でも同時に、一人ひとり全く違っています。みんな同じ設計図を持ちながら、それぞれちがう道を歩んで、自分らしく成長していくのです。
音楽の好み、お笑いのセンス、声の高さ、顔の形にいたるまで、あなたを他の誰とも違う存在にしている理由は、何百、何千とあります。
では、どうやってあなたは「世界に一人だけのあなた」になったのでしょうか?
そのヒミツの半分は、あなたの「遺伝子(いでんし)」にあります。
お母さんとお父さんが、あなたと全く同じ遺伝子を持った女の子をもう一度授かろうとしたら、あと「1,000,000,000,000,000(1000兆)人」も赤ちゃんを産まなければならないほどの、ものすごい確率(奇跡)なのです!
そしてヒミツのもう半分は、あなたがこれまで過ごしてきた「経験」にあります。
一番上のお姉ちゃん(長女)であること、今住んでいる街、通っている小学校、いつも一緒にいる友達。お母さんとお父さんが「こういうことを大切にしてほしいな」と伝えてきたこと。家族で行った旅行や、そこで食べた美味しいもの。お父さんが部屋や車で流すいろんな音楽(最初は『ワン・ダイレクション』や昔のバンドばかりだったけど、あなたが新しい音楽を教えてくれるようになったよね!)など、たくさんの思い出があなたを作っています。
他にどんなことが、あなたの個性を形作っていると思う?
まじめさ(お皿洗いを自分から手伝う?それとも、絶対にやらない?)
おしゃべり度・行動力(新しい友達と話したり、遊園地の絶叫マシンに乗ったりするのが好き?それとも、のんびり過ごすのが好き?)
きゅんとする心(感受性)(人の気持ちにとても敏感で感動しやすい?それとも、あまり動じない?)
やさしさ・きく耳(いつも周りに合わせる優しいタイプ?それとも、自分の意見をしっかり言うタイプ?)
新しいことへの好奇心(初めてのことや、変化していくことがワクワクする?それとも、いつものお気に入りが安心する?)
あなたが誰であるかということは、あなたの好み、好きな色、夢中になっていること、そしてあなたが何かを見たり、聞いたり、学んだりしたときにどう感じるかによって、毎日すこしずつ変わっていく、とても素敵なコレクションのようなものです。
ティーン向けの雑誌にある、心理テストや性格診断って楽しいよね。ちょっとクイズをやってみない?

ちょっとドキドキするような、新しいことに挑戦するのが好き?
友達と意見がちがうとき、自分の気持ちを伝えるのがちょっと怖い?
友達の誕生日を覚えるのが得意?
1人や2人の大親友といるより、クラスのみんなとワイワイ過ごす方が好き?
注意されたり、注意書きを読んだりすると、ちょっと落ち込みやすい?
初めて会った子と話をして、仲良くなるのが楽しい?
宿題はいつも、出す日(宿題のしめきり)までにちゃんと終わらせる?
周りの人から「はじめは人見知りだね」って言われる?
自分の部屋(または自分の机)は、いつもキレイに片付いている?
自分のことを、ちょっと頑固(がんこ)でマイペースなところがあると思う?
ちょっとしたことで、すぐにイライラしちゃうことがある?
音楽や洋服、ヘアスタイルの好みがコロコロ変わる?
お皿洗いや、おうちの手伝いを自分から進んでやることがある?
このクイズの答えは、あなたの性格のいろんな一面を教えてくれます。
誰もが、他の誰とも違う個性やこだわりを持っています。何よりも、その個性が「あなた」を「あなた」にしているのです。
こういうことは、あなたが最高に素晴らしい女の子だという事実を、何一つ変えません。
あなたの個性を変えるものでもありません。

でも、このノートは「性格」についての本ではありません。
あなたの「体の一部」について、そしてあなたがまだお母さんのお腹の中にいたときに、あなたの体がどのように育ってきたか、それが今と未来にどうつながっているかをお話しするためのノートです。
今までに、おうちでどんなことを話してきたか覚えているかな?
あなたには「生理(月経)」が来ないこと、そして将来、お腹の中で赤ちゃんを育てることができないことについてお話ししました。
あなたがこれから大人(思春期)になっていくにつれて、体の中で作られ始める「ホルモン」に、あなたの体がどう反応しているかを詳しく調べるために、病院で血液検査をしています。
あなたの「膣(ちつ:赤ちゃんの通り道や生理の血が通る場所)」は体の中に隠れていて、将来、大人の女性として過ごしやすくするために、手術で入り口を作ったり、少しずつ広げる(拡張する)練習をするかもしれない、というお話もしました。
骨をずっと元気で強く保つために、これからのどこかのタイミングで、お薬(ホルモンのお薬)を飲む必要があることもお話ししましたね。
もしあなたが「同じような体の特徴を持った他の女の子とお話してみたいな」と思ったら、いつでも私たちの友人であるマルタさんのように、同じ経験をしてきた仲間たちと会うことができるよ。
今こうして話しておくことで、自分の体についてしっかり知り、「自分の体のことは、自分で決めて、自分で大切にする(自分の体の主人公になる)」ことができるようになるわけなの。
第1部:体の中の「地図」

(1)生まれる前……。
お腹の中で赤ちゃんが育っていくのは、「地図(マップ)」を見ながら冒険を進めるようなものです。
「私はどんな形の体になっていくのかな?」
「どんなルートを進むのかな?」
お父さんと一緒に、おうちから小学校まで歩いたとき、選べる道がいくつかあったのを覚えている?「いつもの通学路」「ちょっと遠回りの静かな道」「探検できる細い道」……。
お腹の中で体が作られるときも、それとよく似ています。人間の体へと成長していくために、いくつかの異なるルート(道筋)が存在するのです。
私たちの体がどのルートを進むかは、小さな命が宿った瞬間に決まります。お父さんの精子とお母さんの卵子が出会った、あの瞬間のことです。そうして、あなたは私たちの最高の宝物になりました。
(2)染色体
私たちはみんな、「染色体(せんしょくたい)」と「遺伝子(いでんし)」という2つの地図を持って生まれてきます。この地図が、体に「このルートを進んでね」と教えてくれるのです。
最初の地図は、とても大まかなものです。それは「染色体」と呼ばれます。
ソフィーは、お母さんから半分(23本)、お父さんから半分(23本)をもらって、合わせて46本の染色体を持っています。
そのうちの2本は、体の性別に関係する「X・Y染色体」と呼ばれます。
この最初の地図は、スマホの地図アプリをすごく遠くから見たような、大まかなものです。高速道路や大まかな方角(東か西か)しか載っていなくて、細かい道はまだ分かりません。
学校では、理科や保健の授業で「多くの人が持っているお決まりのルート」しか習わないことがほとんどです。そのため、男の子や女の子の体には、実はもっとたくさんのルートや組み合わせがあることを、大人の人でも知らない人がたくさんいます。
たとえば、こんなにたくさんのルートがあるのです。

多くの女の子は「46,XX」というルート
多くの男の子は「46,XY」というルート
「46,XY」のルートを進む女の子(あなたです!)
「46,XX」のルートを進む男の子
「45,X」のルートを進む女の子
その他にも、いくつかの地図が組み合わさったルートを進む男の子や女の子
あなたは、XYという染色体の地図を持って生まれた、とっても素敵な女の子です。
学校の授業だけでは載っていないルートだからこそ、お母さんとお父さんはあなたにこの特別なヒミツをしっかり伝えておきたいと思いました。
(3)遺伝子

私たちが持って生まれてくる2番目の地図は、「遺伝子(いでんし)」の地図です。
ここには、髪の毛の色、目の形、そして体がどうやって大人になっていくかという全ての細かい情報(DNA)が、バーコードのようにギッシリ詰まっています。
この地図は、ものすごく細かくて具体的です。
家族で大きな公園やハイキングに行ったとき、地図を見ながら「この細い橋を渡って、大きな木の右側を通って、すべり台の裏の道を進むんだよ」と教えてもらう時のように、一歩一歩の進み方が書いてあります。
お母さんのお腹の中にいる最初の数週間、赤ちゃんは基本的に女の子の形からはじまります。そこから、遺伝子の地図の指示(道しるべ)に従って、女の子・男の子それぞれのルートへと進み始めます。
第2部:ホルモンと、体の中のちいさな工場

(1)ホルモンって?
大人になるために、もう一つ大切なのが「ホルモン」です。
遺伝子の地図とホルモンが、お互いに「おしゃべり(お互いの声に耳を傾けること)」をすることで、あなたの体はまさに今の形へと育ちました。
ホルモンは、体の中で作られる特別な「化学物質(メッセージ)」です。
思春期(10歳〜15歳くらい)になると、体の中で「さあ、大人の体に変わっていく時間だよ!」というホルモンのメッセージがたくさん作られます。
ホルモンは体を変えるだけでなく、時に「心の天気(気分の変化)」を変えることもあります。
(たとえば、お母さんがときどき、急にイライラしたり、いつもより大きな声でお小言を言ったりすることがあるよね。お母さんはあなたのことが大、大、大好きなのに、そうなってしまうのは、体の中のホルモンがいたずらをしているせいなのです!)
(2)ホルモンを作る工場
体の中には、ホルモンを作るいくつかの「ちいさな工場(器官)」があります。
お腹の中には、将来の性別に関わるホルモンを作る工場があります。
この工場は、進むルートによって「卵巣(らんそう)」になったり、「精巣(せいそう)」になったりします。
では、あなたの体の中にある、2つの大切な遺伝子(地図のメッセージ)に注目してみましょう。
① SRY(エス・アール・ワイ)遺伝子
このメッセージがあると、お腹の中の工場は「精巣(せいそう)」に近い形へと育ちます。
あなたはXYの地図を持っているので、あなたのお腹の中の工場も、精巣のような形に育ちました。
「えっ、私は女の子なのに、どうして男の子と同じ名前の工場があるの?」と思うかもしれません。
でも、それは全然おかしなことでも、変なことでもありません。ただ、学校の教科書や一般的な本には「多くのケース」しか書かれていないため、みんなに知られていないだけなのです。
このお腹の中の工場は、骨を丈夫にしたり、胸をふくらませたりするための大切なホルモンを作るお手伝いをしてくれます。この工場は、2つのメッセージ(ホルモン)を出します。
ホルモンT(テストステロン):体の形を男の子らしく変化させようとするメッセージです。
ホルモンAMH:子宮(赤ちゃんを育てるお部屋)や、膣(ちつ)の奥のほうの発達をストップさせるメッセージです。
② アンドロゲン受容体(じゅようたい)遺伝子

これは、さっきの「ホルモンT」のメッセージを翻訳(ほんやく)して理解するための遺伝子です。
ホルモンがメッセージを届けても、受け取る側(受容体)がその言葉を理解できなければ、メッセージは伝わりません。
たとえば、家族で韓国や台湾、ヨーロッパへ旅行に行ったときのことを思い出してみてね。
現地に着いたとき、私たちはその国の言葉をほんの少しだけ真似して話すことができます。
「アニョハセヨ!」「カムサハムニダ!」
「ニーハオ!」「シエーシエー!」
「ボンジュール!」「メルシー!」
でも、現地の人たちが早口でしゃべる難しい言葉は、何を言っているのかさっぱり分かりませんよね。
それと全く同じことが、あなたの体の中でも起こりました。
あなたの体の中の受け取り役は、やってきた「ホルモンT」の言葉を……ほんの少しだけ、いくつかの単語だけは理解しました(だから、あなたのクリトリス(おまたのふくらみ)は他の女の子より少しだけ大きめです)。
でも、それ以外の難しいメッセージは、何を言っているのかさっぱり理解しませんでした。受け取り役にとって、それは「ちんぷんかんぷんな言葉」だったのです。
そのため、あなたの体は「男の子の体になりなさい」というメッセージのほとんどを、そのまま聞き流しました。だからあなたの体は基本形のかわいい女の子のままで生まれてきたわけです。
(他の女の子の中には、アンドロゲン受容体遺伝子に「イタリア語もフランス語もスペイン語も全く話せない」というようなバリエーションを持つ子もいます。それはその遺伝子にとって完全にちんぷんかんぷんな言葉なので、遺伝子はホルモンTを完全に無視します。これを「完全型アンドロゲン不応症(CAIS)」と呼びます)。
一方で、もう一つのメッセージである「ホルモンAMH」の言葉には、しっかりと耳を傾けました。そのため、子宮や膣の奥の発達はストップしました。
こうして、あなたの体は、メッセージの受け取り方の個性によって、他の誰ともちがう特別なルートを歩んできました。
そして……今の、優しくて、おしゃれで、素敵なソフィー(あなた)になったのです!

お気に入りのK-POPやアイドルの曲が大好き!
スキーやスノーボードがとっても得意!
またみんなで行きたいお気に入りの街がある!
お父さんのことが大好きな、自慢の娘!
お気に入りの洋服のブランドがある!
学校や習い事に、大好きな友達がたくさんいる!
「大人になるっていうことは、お母さんの言うことと反対のことをすることだ」って、たまに反抗しちゃう!
一番好きな色は紫!
お皿洗いの手伝いは絶対にやりたくない!(そして部屋の片付けもちょっと苦手!)
新しいお菓子やスイーツに挑戦するのが大好きで、おうちでのお菓子作りもどんどん上手になっている!
第3部:これからのこと

生まれる前のお話が分かったところで……。
これからは、どんなことが待っているのでしょう?
(1)🏥 これからの病院のこと(血液検査など)
あなたがこれから大人の体へと成長していく中で、あなたの体がホルモンをどのように翻訳しているのか、そしてそのホルモンを「エストロゲン(女性らしい体を作る大切なホルモン)」にどれくらい変えることができているのかを調べるために、これからも時々、病院に行きます。
一緒に考えてくれるのは、「内分泌(ないぶんぴつ)科」という、ホルモンの専門の先生です。
これからどんな風に変化していくかは、人によって違います。お医者さんたちも、もっともっとあなたの体の声を聞いていく必要があります。
もし、このまま「男の子になるホルモン」を無視し続けたほうが体にとって健康的だと分かったら、将来、お腹の中にある小さな工場を取り除く(摘出する)手術をすることを選ぶかもしれません。
その手術は「泌尿器(ひにょうき)科」の先生がサポートしてくれます。その後、骨を強く保ち、他の友達と同じように胸がふくらんだり、女の子らしいまあるい体つきになったりするのを助けるために、お薬(ピルなどのホルモン剤)を飲み始めることになります。
あなたのホルモンが、自然と胸を成長させてくれる可能性もあります。様子を見ながら、あなたのペースに合わせて、一番良い方法を先生と一緒に考えていきましょう。
もうすぐ、学校の友達の間でも「生理(初経)」が始まる子が出てきます。「自分には生理が来ないことを、いつ友達に話せばいいんだろう」と不安になるかもしれません。
誰に、いつ話すかは、あなたが自分で決めていいのです。誰にも言わずに秘密にしておいてもいいし、本当に信頼できる親友にだけ話してもいい。あなたが「今なら話してもいいかな」と思うときが来たらで大丈夫です。
女の子に生理が来ないのには、実は思っている以上にたくさんの理由(病気や体質の違い)があります。あなたにとっては、それがあなたの体の自然なルートなのです。
(2)👩⚕️ 将来の手術やケアのこと
あなたがもう少し大きくなって、高校生や大人に近づいたら、膣(ちつ)の入り口をきれいに整える手術についてお話をするために、「産婦人科(さんふじんか)」の先生にも会うことになります。
大人の女性として心地よく過ごしたり、将来大切な人と過ごしたりするために、膣を少しずつ広げる(拡張する)練習(ダイレーション)についてもお話をします。専用の器具(ダイレーター)などを使って、自分でゆっくりケアする方法があります。
「今はまだそんなこと考えられない」と思っても大丈夫。これから考える時間はたっぷりありますし、手術をするかどうかも、最終的にはあなたが決めることができます。
中学校や高校の保健体育の授業では、セックス(性行為)について「男の子の体と女の子の体を合わせること」ばかりが教えられるかもしれません。でも、大切な人と心を通わせ、幸せを感じる方法は、それだけではありません。
それは「スポーツ」とよく似ています。
走るのが好きな人、自転車が好きな人、ダンス、水泳、サッカー、ヨガが好きな人……。楽しむ方法がたくさんあるように、自分に合ったお気に入りの方法を見つければいいのです。
第4部:世界でたった一人の、素晴らしいあなたへ!

これだけは、ずっと心に留めておいて。
「お互いを思いやる優しい気持ち」
「自分の体を大切にすること」
「自分が『嫌だな』と思うことは絶対に無理にしないこと」
「あなたのことを心から大切にしてくれる人と一緒にいること」
こういうことぜんぶが、将来、誰かと幸せな関係を築くために一番大切な、基本の材料なのです。
もし、自分の気持ちや体のこと、友達のこと、これからのことでモヤモヤしたり、不安になったりしたときは、いつでも「臨床心理士(りんしょうしんりし)」という、心のお話を聞いてくれる専門の先生に会うこともできます。
それに、あなたと同じように「XYの地図を持って生まれた女の子たち」もたくさんいるので、もし希望すれば、同じ経験をしている女子仲間とつながることもできます。
そしてもちろん、お母さんとお父さんは、今でも、これから先いつでも、あなたが困ったときや質問があるときは、絶対にあなたの味方になって時間を作ります(これは約束です!)。
たくさんの愛を込めて。
お母さんとお父さんより。
追伸:性分化疾患のある娘さんを育てている家族の皆さんへ
このPAIS(部分型アンドロゲン不応症)に関するビジュアルストーリーは、11歳になった私たちの娘、ソフィーのために書いたものです。
5月のよく晴れた日曜日の朝、お母さんとお父さんの大きなベッドの中で、ソフィーを抱きしめながら一緒にこのお話を読みました。
なぜ、そのタイミングだったのか……?
ただ、それが正しいと感じたのです。ソフィーは少し前からその準備ができており、質問をすることが増え、私が話をするときにより真剣に耳を傾けるようになっていました。そして今、私自身もようやく心の準備が整い、このカラー印刷されたストーリーを片手に持ち、もう片方の手で彼女を近くに引き寄せれば、決して説明を間違えたり、頭が混乱したりすることはないと確信できたのです……。
色鮮やかなイラストや、パーソナルな物語を用いたことで、ソフィーは最初から最後まで興味と好奇心を持ち続けてくれました。
彼女はすべての中身に対して、楽しそうに向き合ってくれました。(「私はいつも6番目の道を通りたかったけど、友達はみんな1番目の道を行きたがったんだよ!」。セックスの話になったときは「お母さん、もうその話は十分だよ!」って…)
部屋を降りたあと、私たちは(下の幼い妹弟たちが私たちの邪魔をしないように見ていてくれた)お父さんに、一緒にこのストーリーを読んだこと、そして受け止める内容がたくさんあったことを話しました。お父さんはソフィーに、いつでも、何度でもこれを見返していいこと、分からないことがあればいつでも質問していいこと、そしてどれほど彼女を愛しているかを改めて伝えてくれました。
その日の午後、お母さんとソフィーは、その週の初めから計画していた買い物に出かけました。午前中に起こった出来事の大きさ(重み)が心に染み渡るにつれて、お母さんの足はほとんどずっと震えていました。
でも…。11年前にはあれほど厄介で恐ろしいものに思えたことが、今ではポジティブな経験に変えることができたと思います。
もちろん、ソフィーにとってはこれが始まりに過ぎません。もっと多くのことを学び、より深く理解するための扉は、完全に開かれています。
5月のあの日以来、少なくとも週に1回は、彼女に伝えたストーリーを再び振り返り、さらに掘り下げて会話を重ねています。その日に彼女が学んだり耳にしたりしたことに応えながら:
「お母さんが前に言ったこと、覚えてる?」、「私が説明したときのこと、覚えてる?」……。
自分の体がどのように発達したかについての知識と理解がどんどん深まっていること、お母さんとお父さんからのサポートと愛があること、そしてソフィーのしあわせをケアの中心に据えてくれる医療チームがいること、そして何よりも——彼女の素晴らしい個性と熱意にあふれる性質のおかげで、私たちは未来をとても楽観的に捉えています。
さあ、進みなさい、我が子よ!あなたの翼を大きく広げて羽ばたいて!
制作:
「お母さん」Magritte, Ellie (dsdfamilies.org)
Achermann, John (小児内分泌専門医, UCL小児保健研究所, ロンドン)
協力:
「お父さん」、Elizabeth、Joanne(DSD/性分化疾患を持つ子どもの保護者)
Miriam、Sara、Marta(DSDを持って暮らす成人の当事者)
Lih-Mei Liao(心理士, UCLH ロンドン)
Katy Auckland(精神科医, シック・キッズ病院, エディンバラ)
いかがでしたでしょうか?ソフィーさんの親御さんや医療従事者のみなさんが,どれだけ丁寧に心を込めてこのパンフレットを作られたか,みなさんにもきっと伝わったことと思います。
ここでは、親御さんのエリーさんが言及されていた、「遺伝子とか染色体とかそういうの」について、パンフレットで使われている図をご紹介しておきます。

ポイントとしては、「ほとんどの男性の染色体はXY、ほとんどの女性の染色体はXXだけど、男性でもいろいろな染色体がある。女性でもいろいろな染色体がある」というところです。(「XX・XY以外は、”男でも女でもない性別”である」ではないところに注意して下さい)。
DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)については、学校などで教える場合、当然DSDを持つ子どもたちがクラスの目の前にいることもあり、またDSDsには様々な状態があるため、通り一辺倒に教えたり、誤解に基づいて教えたりすると、かえって不用意にDSDを持つ子どもたちや家族の方たちを深く傷つけることもあります。特に思春期は、本人も家族の方にとっても、とてもセンシティヴな時期になります。
学校でDSDsについて教えたい皆さんには、是非正確な知識を身につけて、ひとりひとりの子どもを大切にするには何が大切なのか、よく考えた上で、授業をいただければと思います。
アンドロゲン不応症女性(AIS女性)とは?

アンドロゲン不応症(AIS)とは、女性のDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)のひとつです。エレーナさんの場合のAISでは、染色体はXYで性腺も精巣なのですが、男性に多いアンドロゲンホルモンに体の細胞が完全に反応しない状態のために、母親の胎内の段階から、まったくの女性に生まれてきました。ですが、子宮や膣の一部がなく、生物学的な子どもを持つことができません。一般的に女性のこの体の状態が判明するのは思春期前後で、ご本人もご家族も大きなショックを受けられることがほとんどです。
アンドロゲン不応症(AIS)等のXY女性はなぜ女性(female)に生まれ育つのかについては,以下を御覧ください(画像をクリック)。




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