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性分化疾患の小学校での対応:性器の違いのある男の子トーマス君と親御さんの物語

  • 20 時間前
  • 読了時間: 7分




御覧の皆様へ


 尿道下裂とは男の子・男性のDSDsであらわれる外性器の状態で、生まれた時、尿道口の位置が陰茎の先端ではなく、陰茎の下側、陰茎の途中から陰嚢にかけてのどこかに開いた状態です。日本では男の子の1,300人に1人の割合で起きると言われています。そのほとんどが尿道口が陰茎の先端から少しずれた「軽度尿道下裂」ですが、陰嚢に近いところに尿道口が開いている「高度尿道下裂」の場合は、ペニスが小さく、外性器の見た目だけでは性別がすぐには分からない状態であり、然るべき検査が必要になり、その多くが陰茎が弯曲した状態です。


 そしてこれは時代によってもかなり異なりますが、他の男の子と自分との違いや、自分の男性性・男らしさを損なわれるのではないかという恐れから、不安や,自信喪失、友人関係・恋愛関係から遠ざかってしまう人もいます。ですが、昔の時代を生きてきた男性たちはかなり辛い思いをしながら生きてこられていましたが、欧米の最近の世代の男性たちは、医療での支援やサポートグループが整備されたことから、これも一つのちょっとした違いに過ぎないと思える人も多くなってきています。


 ここでは外性器の違いをもって生まれた男の子の親御さんの体験談をお送りします。DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)によって外性器の違いがあるトーマス君の小学校入学と、トイレをめぐるトラブルに向き合った親御さんの手記です。周りと同じように小便器を使おうとしたことでからかわれ、いじめに直面した我が子。親は学校の支援チームと連携し、プライバシーに配慮しながら解決へと踏み出していきます。我が子のプライベートな情報を守りつつ、学校や周りとどう協力していくか。子育て中の多くの人に寄り添う体験談です。


 性分化疾患についてどのように話せば良いのか,どのようなサポートが必要なのか,同じ立場にある親御さんの皆さんにも参考になる体験談です。


 外性器の違いのある男の子・男性をはじめとするDSDsは,「性のグラデーション」でも「男女の境界の無さ」でもありません。むしろそのようなご意見は、私たちの女性・男性としての尊厳を深く傷つけるものです。


​ 外性器の違いのある男の子も男の子に変わりなく、DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)は、「生物学的にも、女性にもいろいろな体がある、男性にもいろいろな体がある」ということです。


  どうか、お間違いのないようにお願い致します。


 詳しくは「DSDsとは何ですか?」のページをご覧ください。






(訳者注:イギリスでは4歳で小学校(準備学年)に入学し、5歳になる9月から正式な「1年生」に進級します。また、学校には児童の生活面や心のケアを専門にサポートするスタッフが配置されています。)



 息子が小学校に入学したときは、私にとって大きなストレスと不安の連続でした。もちろん、親なら誰しもこの人生の大きな節目に対して、ある程度の不安を感じるものでしょう。


 でも私の頭にあったのは、これからの未来のこと、そして学校に通い始めた息子が大きくなるにつれて、自分の身体的な違いをより強く意識するようになるのではないかという懸念でした。新学期が始まる前、私たちは学校の児童支援チームと面談をしました。息子の医療面での背景や経緯を伝え、男子トイレの確認も行いました。個室は2つありました。


 新学期が始まりました。私は固唾をのんで見守りました。


 でも何も起きませんでした。


 息子は友達を作り、学校生活になじみ、すべて順調でした。ところが入学から半年して世界的なパンデミックが直撃し、突然それどころではない大きな心配事が持ち上がりました。9月になり、いよいよ1年生(あの1年生に!)が始まる頃には、トイレのことなどすっかり頭から消えていました。




 ですが間もなくして、息子が帰宅するなりこう言ったのです。「トイレに、立っておしっこをする大きなトレイがあるんだよ!」。それまでは座っておしっこをしていた息子ですが、他の男の子たちと同じように朝顔(小便器)を使いたがるようになりました。


 それから数週間後、息子はトイレを使っているときに他の男子からからかわれていることを明かし始めました。悪口を言われたり、指をさされたり、笑われたりしていると。私が幼い息子に対してずっと恐れ、危惧していたことのすべてが起きてしまったのです。




 私たちは担任の先生、児童支援チーム、そして校長先生との面談を求めました。何が起きていたのかを話し合い、息子のこれまでの経緯について(改めて)話をしました。ちょうどその日の朝、主治医のひとりから手紙が届いたばかりだったため、難しい専門用語の多くが私の頭の中に鮮明に残っていました。


 息子には様々な症状をカバーするヘルスケアプラン(支援計画)がありましたが、DSD:体の性の様々な発達(性分化疾患)に関する部分については、あえて意図的に曖昧にしておきました。自分が誰に話し、どこまで詳細を伝えるかを自分でコントロールしたかったからです。(ヘルスケアプランがあったことで、話し合いを始めるためのしっかりとした土台ができましたし、面談を円滑に進めることもできたと感じています。もし最初の面談要請でプランに触れていなければ、教室での些細な問題に対応する通常の手続きに回されていたかもしれません)。


 私個人のスタンスとして、情報を共有しすぎないようにしてきました。後から詳しく話すことはいつでもできますが、一度与えてしまった情報を取り戻すことはできないからです。息子がこの地域で成長し、いつかここで十代を過ごすという現実を、私は強く意識しています。


 息子の同意なしに、私が代わりに息子の物語(プライベートな事情)を語ってしまわないようにしたいのです。これはあくまで私個人の見解ですが、もっと一般的な意味でも、同じ理由から私はネット上や友人たちに明かす情報を限定しています。大きくなれば、本人が望む相手と好きなように話せばいいのですから。




 学校のスタッフの皆さんはしっかりと耳を傾け、不躾ではない適切な質問を投げかけ、息子が学校でより良い時間を過ごせるよう心から力になろうとしてくれているのが感じられました。学校側は「違い」について話し合い、尊重し合う取り組みを行う計画を立ててくれました。


 我が家でそうした話し合いに役立てていた本のタイトルをいくつか伝えたところ、学校でその本を購入し、授業で活用してくれることになりました。その計画とは、特定の誰か(息子も含め)を指さすようなことはせず、クラス全体として話し合うというものでした。また、不適切な行為を防ぐため、児童がトイレを使用する時間帯にはスタッフがトイレの外に立つようにしてくれました。


 さらに学校からは、在学期間を通じてサポートを提供することを見据え、児童支援チームとの信頼関係作りを始めようという提案もありました。これにより、もし息子が望めば、学校内に自分の気持ちを吐き出せる安全な場所を継続的に確保できることになります。


 現在、息子はトイレの個室を使うことを選んでいます。親としては安堵の気持ちと、どこか切ない痛みの両方を覚えます。徐々にですが、いじめの問題は和らいできたようです。似たような面談や話し合いをしなければならないのはこれが最後ではないかもしれませんが、教職員や生徒たちの心に種は撒かれたはずです。次に何かあったときには、きっと今回よりもスムーズに解決に向かうと信じています。










 現在欧米では、尿道下裂の状態で生まれた男の子・男性たちが辛い思いをしないよう、医療での支援体制や、サポートグループが整備されています。辛い思いも嫌な思いもみんなで共有して、活き活きと人生を生きていらっしゃいます。



尿道下裂の状態で生まれた男の子と家族のサポートグループ
尿道下裂の状態で生まれた男の子と家族のサポートグループ

 DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)は、「男か女か曖昧な人」「両方合わせ持った人」「男でも女でもない性」「第三の性別」などを差す概念ではありません。また、体の性の発達状態は、性同一性・性的指向とも関係はありません。外性器の違いのある男の子も他の男の子と変わりありません。









 イギリスのDSDs:体の性のさまざまな発達(性分化疾患)のある人々・子どもたちと家族のみなさんのサポートグループ「dsdファミリーズ」の協力のもとで作成された,尿道下裂や低陰嚢形成など外性器の違いがある男の子が保育園に入る時期に,安心して保育園を選び,園と良い関係を築くための実践的なガイドです。


 保育士さんへの伝え方やプライバシーの配慮,トイレやおむつケアの具体的な相談,手術後の登園など,気になる疑問にQ&A形式で丁寧に応えています。


 園への相談方法や伝え方の工夫は、外性器の違いがある女の子の親御さんにとっても大変参考になる内容です!(画像をクリックしてください!)


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海外国家機関DSDs調査報告書

ベルギー国家機関性分化疾患/インターセックス調査報告書
オランダ社会文化計画局「インターセックスの状態・性分化疾患と共に生きる」表紙

 近年、教育現場や地方・国レベルで、LGBTQ等性的マイノリティの人々についての啓発が行われるようになっています。その中で,DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)が取り上げられるようになっていますが、昔の「男でも女でもない」という偏見誤解DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 そんな中,人権施策や性教育先進国のオランダとベルギーの国家機関が,DSDsを持つ人々とご家族の皆さんの実態調査を行い報告書を出版しました。

 どちらもDSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。世界でもこのような調査を行った国はこの2カ国だけで,どちらの報告とも,DSDsを持つ人々に対する「男でも女でもない」というイメージこそが偏見であることを指摘しています。

 ネクスDSDジャパンでは,この両報告書の日本語翻訳を行いました。

DSDs総合論考

 大変残念ながら,大学の先生方でもDSDsに対する「男でも女でもない」「グラデーション」などの誤解や偏見が大きい状況です。

 

 ですが,とてもありがたいことに,ジェンダー法学会の先生方にお声がけをいただき,『ジェンダー法研究7号』にDSDsについての論考を寄稿させていただきました(ヨヘイル著「DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患/インターセックス) 排除と見世物小屋の分裂」)。

 今回,信山社様と編集委員の先生方のご許可をいただき,この拙論をブログにアップさせていただきました。

 DSDsの医学的知見は大きく進展し,当事者の人々の実態も明らかになってきています。ぜひ大学の先生方も,DSDsと当事者の人々に対する知見のアップデートをお願いいたします。

 

 (当事者・家族の皆さんにはつらい記述があります)。

ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
性分化疾患YouTubeサイト(インターセックス)
ネクスDSDジャパン:日本性分化疾患患者家族会連絡会
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