性分化疾患のある息子の学校でのサポート:尿道下裂の状態で生まれたサミー君と親御さんの物語
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御覧の皆様へ
尿道下裂とは男の子・男性のDSDsであらわれる外性器の状態で、生まれた時、尿道口の位置が陰茎の先端ではなく、陰茎の下側、陰茎の途中から陰嚢にかけてのどこかに開いた状態です。日本では男の子の1,300人に1人の割合で起きると言われています。そのほとんどが尿道口が陰茎の先端から少しずれた「軽度尿道下裂」ですが、陰嚢に近いところに尿道口が開いている「高度尿道下裂」の場合は、ペニスが小さく、外性器の見た目だけでは性別がすぐには分からない状態であり、然るべき検査が必要になり、その多くが陰茎が弯曲した状態ですが、検査の上で男の子だということが判明します。
男性に一般的とされている位置に尿道口を持っていく手術もありますが、特に高度の場合は複数回の手術が必要となり、本人や家族の精神的な負担がかかりえます。
また、手術の有無に関わらず、他の男性と自分との違いから、そしてこれは時代によってもかなり異なりますが、自分の男性性・男らしさを損なわれるのではないかという恐れから、自尊心を失い、友人関係・恋愛関係から遠ざかってしまう人もいます。ですが、昔の時代を生きてきた男性たちはかなり辛い思いをしながら生きてこられていましたが、欧米の最近の世代の男性たちは、医療での支援やサポートグループが整備されたことから、これも一つのちょっとした違いに過ぎないと思える人も多くなってきています。
ここではイギリスの尿道下裂で生まれた男の子サミー君の親御さんの体験談をお送りします。親御さんとしては、性器の違いがあるお子さんを保育園や小学校に送られるときは、いじめやからかいを受けたりしないか心配される方もいらっしゃるでしょう。実はサミー君もそのような状況に遭遇してしまい,親御さんが学校に相談に行くことになりました。
性分化疾患についてどのように話せば良いのか,どのようなサポートが必要なのか,同じ立場にある親御さんの皆さんにも参考になる体験談です。
尿道下裂の状態のある男性をはじめとするDSDsは,「性のグラデーション」でも「男女の境界の無さ」でもありません。むしろそのようなご意見は、私たちの女性・男性としての尊厳を深く傷つけるものです。
尿道下裂の状態で生まれた男の子は全くの男性であり、DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)は、「生物学的にも、女性にもいろいろな体がある、男性にもいろいろな体がある」ということです。
どうか、お間違いのないようにお願い致します。
詳しくは「DSDsとは何ですか?」のページをご覧ください。
5歳になる息子のサミーは、生まれつきDSDs(性分化疾患)のひとつがあり、幼児期に何度か手術を受けました。合併症によって1年ほど尿路感染症を断続的に繰り返しましたが、この2年間は感染症も手術もなく過ごせています。でも、サミーが新しく通う小学校には彼のおかれている状況を伝えておくことが不可欠だと分かっていました。
彼は今でも座っておしっこをしますし、排尿には平均よりも時間がかかります。私達は感染症の兆候を見抜く方法を学び、潜在的な漏れを防ぐために彼が定期的に膀胱を空にすることの重要性を熟知しています。また、彼の身体的な見た目(外性器)は他の男の子たちとは異なっています。

最近、サミーは保育園から帰ってくると、クラスメイトが庭でおしっこをしていたり、オブラートに包んだ言い方をすれば、お互いに「見せ合いっこ」をしているという話をするようになりました。
4〜5歳という年齢で子どもたちがプライベートゾーンに好奇心を持つのは極めて正常なことだと理解しつつも、私は母親として息子を強く守りたいと思っており、たとえそれが悪気のない行動であっても、彼がそれに参加するよう圧力を感じないか心配でなりませんでした。
もし彼の体の違いを見られたら、良くて「純粋に好奇心旺盛な友達の視線」に晒され、最悪の場合は「彼をあざけり、痛めつけようとする心ないいじめ」の標的になってしまうのではないかと危惧したのです。
サミー自身も自分の身体的な違いに気づいていますし(何しろ彼には2歳になる弟がいて、お風呂で「自分を発見する」のが大好きですから)、自分の大切な場所はプライベートなものであるという重要性も理解しています。
でも、サミーからの最近の報告を聞いて、私は彼の新しい小学校への進学に対してこれまで以上に不安を募らせていました。どんな行動、言葉、価値観、性格の子どもたちと出会うのか、そして彼がこの未知の領域をどう乗り越えていくのかと。。

小学校に入学すれば親の手が届かないことがたくさんあると理解していますし(受け入れるために時には深く深呼吸しなければなりませんが)、だからこそ、日中の大半の時間を息子の世話に費やす大人たちとコミュニケーションのラインを開いておくことが、私にとってより一層急務となったのです。
単に物理的な情報(トイレにかなり時間がかかるが、遊んでいるのではなく本当におしっこをしている最中なのだと知っておいてほしい等)だけでなく、そうした状況が起こる可能性を最小限に抑えるため、これらの潜在的な人間関係のシナリオについても知っておいてほしいと考えました。
これらすべてを踏まえて、私は主導権を握ることにし、事前の予防策として校長先生と面談することにしました。
息子がペニスの小ささを理由にいじめられた後に登校させること、そして息子の身体的・生物学的な発達だけでなく、それが家族である私たちに与えた心理的影響について話すことは、ある意味で本当に辛いことでした。

面談の中で私は上記の情勢や懸念事項を伝えましたが、校長先生が優しく「ああ、それほどのことをご家族だけでずっと抱え込んで来られたのですね」と言ってくださったときは、胸のつかえが下りるような思いがしました。校長先生の素早い対応と「息子のサポートのために全力を尽くす」という力強い言葉に、胸をなでおろしました。
でも一方で、ただ、そのあとに校長先生が以前在籍していたトランスジェンダーの生徒のエピソードをすぐに持ち出し、性別違和や「インターセックス」の話をし始めたのは、ありがた迷惑というか、助けにはなりませんでした。ここでもやはり、こうした体の状態は「性自認」の問題ではないのだということを、もっとうまく説明できるよう準備しておけばよかったと悔やまれましたが、私はサミー自身が自分の性自認に何の疑問も抱いていないことを丁寧に説明しました。息子は生物学的に男の子に生まれ育っていることは確実で、息子自身もを明確かつ強く「男の子」だと認識していると。
でも、いじめを許さず支援的な風土を築いてきた歴史ある学校に通えるのは本当に嬉しいことだと伝えました。実際、その通りの学校なのです。トランスジェンダーとDSDsが誤解して混同されたことは誤った善意からくるものであっても、現実として、DSDsを持つ子どもたちも、その生まれ持った生来の姿ゆえに、追加の心理的・感情的なサポートシステムを必要とするからです。
親である私達には、子どものケアを分担する信頼できる大人へ明確にニーズを伝えることで、子どもが必要とするサポート体制を作り出す力があります。
息子は学校に新しく入ってくる大勢の子どもの中の「ただのひとつの名前」ではありません。学校側は彼の特別な状況を把握してくれており、これからはその状況に配慮してもらえる安心感を得ることができました。体育の着替えや小便器の使用の際に彼が戸惑ったとしても、誤解や混乱は生じないだろうと安心して枕を高くして寝られます。

1週間後、夫がサミーを連れて、校長先生ご直々の案内による校内ツアーに参加しました。校長先生はサミーに「あなたのことは全部聞いているよ、お父さんやお母さんとも話したからね」と伝えてくれました。そして、もし話したいことがあれば、校長室の外にある「ハスの葉」の上に自分の「アマガエル」を置くだけでいいんだよ、とサミーに約束してくれたのです……。
校長先生は一日を通してそのハスの葉をチェックしていて、カエルが置いてあったらその子を探して一対一でお話しするのだと説明してくれました……。みんなに何が起きているかを知るのが自分の仕事であり、どんなことでも喜んで話を聞き、力になるよ、と。
学年末の忙しい時期に時間を割いてサミーと会い、自己紹介をしてくれたことにとても感動しました。もちろん夫や私自身が「サミーがサポートされる」と知ることも大切ですが、サミー自身が「自分はサポートされているんだ!」と実感することの方が遥かに重要なのです!
それに、校長先生がサミーの一番大好きな保育園の先生と大親友で元同僚だったという話をしてくれたのも大正解でした。見学から帰ってきたサミーに様子を聞くと、「校長先生、エレーン先生と知り合いなんだよ!」と奇跡的な繋がりに目を輝かせて教えてくれ、サミーの中で校長先生の株が爆上がりしたのは間違いありません。

面談が終わった時点で肩の荷が下りた気がしていましたが、サミーが校長先生との面談のことや、自分のアマガエルをどうやってデコレーションしようかを楽しそうに話しているのを聞いて、さらに心の重荷が取り除かれました。
これでようやく、制服を注文したり、あらゆる持ち物(これは保護者会で耳にタコができるほど繰り返されたポイントです)に名前を書いたりしながら、サミーが人生の新しいステージに進むワクワク感を一緒に楽しむことができそうです。もちろん今でも恐ろしい気持ちはありますが、同時に大きな希望も抱いています。
現在欧米では、尿道下裂の状態で生まれた男の子・男性たちが辛い思いをしないよう、医療での支援体制や、サポートグループが整備されています。辛い思いも嫌な思いもみんなで共有して、活き活きと人生を生きていらっしゃいます。

DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)は、「男か女か曖昧な人」「両方合わせ持った人」「男でも女でもない性」「第三の性別」などを差す概念ではありません。また、体の性の発達状態は、性同一性・性的指向とも関係はありません。尿道下裂の状態で生まれた男の子は全くの男性です。
イギリスのDSDs:体の性のさまざまな発達(性分化疾患)のある人々・子どもたちと家族のみなさんのサポートグループ「dsdファミリーズ」の協力のもとで作成された,尿道下裂や低陰嚢形成など外性器の違いがある男の子が保育園に入る時期に,安心して保育園を選び,園と良い関係を築くための実践的なガイドです。
保育士さんへの伝え方やプライバシーの配慮,トイレやおむつケアの具体的な相談,手術後の登園など,気になる疑問にQ&A形式で丁寧に応えています。
園への相談方法や伝え方の工夫は、外性器の違いがある女の子の親御さんにとっても大変参考になる内容です!(画像をクリックしてください!)




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